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フィリピンの銀行口座を相続したら|裁判所を通さない遺産分割(Extrajudicial Settlement)とeCAR

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 遺言がなく債務もないなどの条件を満たせば、裁判外分割(EJS)を利用できます。
  • 相続の権限を示す書類と、eCARなどの税務書類は別に確認します。
  • 死亡から1年以内の6%の源泉徴収による払戻しには条件があり、源泉税は還付されません。
  • 銀行への必要書類の確認、日本側の英訳・認証、日本への送金の準備は並行して進められます。

「母がフィリピンに口座を残したまま亡くなりました。裁判所の手続きが要ると聞いて止まっています。」

フィリピンでは、遺言がなく債務もないなどの条件を満たせば、裁判所で遺産管理人を選任してもらわずに、相続人による裁判外の遺産分割を進められます。これをExtrajudicial Settlement(EJS)といいます。

一方で、遺言に基づいて財産を移転するには、原則として管轄の裁判所で遺言の証明・認可を受ける必要があります(民法838条、Rules of Court Rule 75第1節)。「フィリピンには裁判所の手続きがない」という話ではありません。

銀行から払戻しを受けるときは、相続の権限を示す書類に加えて、遺産税とeCAR、または一定の条件で使える6%の源泉徴収の扱いを確認します。

本記事は、2018年1月1日以後に開始した相続についての一般的な説明です。それより前の相続や、外貨預金、被相続人の国籍・税務上の居住性によって適用される規定が変わります。

フィリピンの遺産税の基礎や、土地・コンドミニアムも相続する場合の注意点は、税理士法人トゥモローズの関連記事「フィリピン相続|外国人の土地所有制限と税務を解説」をご覧ください。


最初に確認すること(相続の手続きと、税務の手続きは別)

銀行が預金者の死亡を知ると、単独名義の口座は保留されます。

Metrobankは、共同名義の口座について、生存する名義人が自分の持分にアクセスできる場合があると案内しています。ただし、実際の払戻しは口座の契約、法令、銀行の確認条件によります。亡くなった方の持分については、別に相続の書類や手続きを確認します。

確認することは、大きく2つに分かれます。

確認すること 内容
1. 相続の手続き 裁判外分割(EJS)、相続人が1人の場合の宣誓供述書、遺言の認可や遺産管理などの裁判所の手続きのうち、どれが必要か
2. 払戻しに関する税務手続き 遺産税の申告などを経たeCARの提示か、死亡から1年以内の6%の源泉徴収による払戻しか
税務上の方法 主な条件・特徴
eCARを提示して払い戻す 遺産税の申告と必要な納付・審査を経て、BIR(内国歳入庁)が発行するeCARを提示する。死亡から1年以内でも選べます
6%の源泉徴収で払い戻す 死亡から1年以内に引き出す金額に対して、銀行が6%を源泉徴収する。源泉税は還付されません

どちらの方法でも、誰が受け取る権限を持つかは別に確認されます。期間だけで自動的に決まるものではありません。

誰が相続人かは、故人の本国法で判断します。

フィリピン民法16条は、相続の順位、相続分、遺言の実質的な有効性について、原則として被相続人の本国法によると定めています。故人が日本国籍なら、相続人の範囲は日本法に基づいて確認するのが出発点です。フィリピン人の相続順位をそのまま当てはめることはできません。

銀行への提出書類、裁判所の手続き、フィリピンの税務は、これとは別に確認します。Metrobankも、フィリピン人でない預金者について「正当な請求権者は、法律顧問が確認した法的書類に基づいて特定される」としています。

死亡の連絡は、相続人が全員そろう前でもできます。

まず銀行へ死亡を連絡し、口座の取扱いと必要書類を照会します。相続人の調査と、必要書類の確認は並行して進められます。


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残高・取引履歴の開示条件を銀行に確認する

フィリピンでは、預金の情報が法律で保護されています。共和国法1405号(銀行秘密法)2条は、預金を「absolutely confidential(絶対的に秘密)」としたうえで、預金者の書面による許可や、同条が定める裁判手続きなどを例外として挙げています。

同条が挙げる例外がすべてではありません。税法などの個別の法律による例外もあるため、相続人が銀行へ請求できる情報と、税務当局などの照会権限は分けて確認します。「裁判所の命令さえあれば必ず開示される」という条文でもありません。

実際に何を求められるかは、請求する情報の種類で変わります。

相続人が求めること Metrobankが公表している取扱いの例
相続手続きに必要な残高を確認したい 遺産の清算のために、相続人が口座の残高を求めることはできるとされている
死亡前の口座や取引の履歴を見たい 相続人の1人からの請求では応じられず、他の相続人全員の書面の同意が必要。得られなければ裁判所の命令
共同名義人が誰かを知りたい その共同名義人本人の同意が必要
相続人の間で争いがある 銀行は中立の立場を取り、どちらの当事者にも情報を出さない

残高を請求するときは、死亡日現在の残高を示す資料と、現在の残高・払戻可能額を区別してください。書類の名称、基準日、通貨、必要な明細は銀行に照会します。税務で必要な基準日や追加の評価資料は、担当する税務の専門家と確認してください。

これは同行の取扱いを示す例で、全銀行に共通する法定の書類一覧ではありません。相続人、遺言執行者、遺産管理人のいずれが請求するかによっても、求められる権限の証明が変わります。口座のある銀行に確認してください。

外貨預金には別の秘密保持の法制も関係します。開示の可否が問題になる案件では、銀行の法務部門や現地の弁護士に相談してください。

共同名義の口座も、契約の内容によって扱いが変わります。

同行は、共同名義の口座について生存している名義人が自分の持分にアクセスできるとしていますが、名義人が2人なら残高の半分が相続財産になる、といった単純な結論にはなりません。契約、資金の帰属、婚姻財産の関係、税務の処理を確認します。

残高を書面で出してもらう一般的な進め方は、海外口座の残高証明書の取り方にまとめています(一般的な案内です)。


裁判外分割(EJS)を利用できる条件

Rules of Court Rule 74第1節は、一定の条件を満たす場合に、遺産管理人の選任を受けずに相続人だけで遺産を分けることを認めています。

要件 Rule 74第1節の定め
遺言 遺言を残していないこと。遺言がある場合は裁判所での認可の手続きを確認する
債務 債務がないこと。死亡から2年以内に債権者が遺産管理の申立てをしなければ、債務がなかったものと推定される
相続人 全員が成人していること。未成年者がいる場合は、そのために権限を与えられた代理人が関与すれば利用できる
方式 公証を受けた遺産分割書(Deed of Extrajudicial Settlement。Rule 74はpublic instrumentによることを定めています)を作成し、登記所(register of deeds)に提出する。相続人が1人なら宣誓供述書(Affidavit of Self-Adjudication)
保証 提出と同時に、対象となるpersonal propertyの価額に対応する保証(bond)を登記所に差し入れる
公告 広く流通する新聞に、週1回・3週連続で公告する

日本の遺産分割協議書を英訳しただけでは、EJSにはなりません。

Rule 74が求めるpublic instrumentは、公証などを経た所定の形式の文書で、日本の公証人に作ってもらう公正証書とは制度が異なります。日本で署名する場合も、EJSそのものに署名するのか、現地の代理人への委任状を作るのかを先に決め、文面、署名する人、代理権、公証・認証、アポスティーユについて提出先の要件を確認してください。

日本側で作る相続の書類の考え方は、海外相続で使う英文遺産分割協議書の作り方で整理しています(英訳した日本の協議書とEJSは別の制度です)。

bondは、同じ金額の現金を納めるという意味ではありません。

personal propertyは家具などの有体物だけを指すものではなく、預金などの権利も含めて問題になります。保証の額と、保証を用意するために実際に支払う費用や差し入れる担保は別です。方式と費用は現地で確認してください。

合意していない相続人には効きません。

同節は「参加していない者、通知を受けていない者に対しては、この分割は拘束力を持たない」と定めています。新聞に公告したからといって、把握している相続人への対応が不要になるわけではありません。

2つの「2年」は、意味が違います。

第1節の2年は、債務がないことの推定に関する期間です。EJSを2年待ってから行う、という意味ではありません。第4節の2年は、分割・分配のあとの責任や請求に関する期間です。

しかも、第5節は、その2年の満了時に請求できる人が未成年者、判断能力を欠く状態、収監中、またはフィリピン国外にいる場合について、その事情がなくなってから1年以内の請求を認めています。日本にいる相続人を除いて進めたり、2年が過ぎたから安全と考えたりしないでください。


フィリピンの銀行から届いた書類やメールを、そのままご相談ください。

銀行名、亡くなった日、故人の国籍と主な居住地、口座の通貨、遺言と債務の有無など、分かる範囲の情報から必要書類と進め方を整理します。東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、戸籍の収集と英訳・認証の段取り、銀行への照会、払戻し・送金に向けた準備を支援します(フィリピン法に基づく判断、遺産税の申告支援、裁判所での代理は、内容に応じて現地の専門家に確認・依頼します。日本の相続税は税理士法人トゥモローズが対応)。対応範囲と費用は初回のご相談でご案内します。資料がそろっていなくてもご相談いただけます。

0120-600-232

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00


遺産税の申告とeCARの役割

eCAR(Electronic Certificate Authorizing Registration)は、BIRが発行する、財産の移転についての税務上の証明です。

RR 12-2018は、eCARが相続人・受益者へ財産を分配する権限になるとし、eCARが発行されなければ銀行は名義を移せないとしています。

ただし、eCARの提示によって相続人の範囲や相続分が決まるわけではありません。銀行は、税務の書類とは別に、EJSの書類や裁判所の書類などで払戻しを受ける権限を確認します。

項目 RR 12-2018の定め
申告期限 死亡から1年以内
申告期限の延長 正当な理由がある場合に、30日を超えない範囲で認められることがある
通常の納付 原則として申告書を提出するときに納付する(電子・書面のいずれでも可)
納付期限の延長 著しい負担が生じる場合などに、BIRの承認のもとで認められる別の制度。上限は裁判所で清算するときは5年、裁判外で清算するときは2年。利息や担保の条件も確認する
現金不足による分割納付 遺産の現金が納税額に不足する場合のさらに別の制度。NIRC91条(C)は法定の納付日から2年以内、RR 8-2019は申告書の提出日から2年以内としている。申請と承認、納付の計画などの条件を確認する
公認会計士の明細 総遺産の価額が500万ペソを超える申告は、CPA(公認会計士)が証明する財産と控除の明細を添付
非居住者の税務登録・申告経路 遺産のTIN(納税者番号)の登録やeCARの審査を担当するRDOと、申告書の提出・納付の方法は別の論点。RR 12-2018は、フィリピンに執行者・管理人がいない場合についてRDO No. 39-South Quezon Cityを挙げているが、2024年のRA 11976により、申告書は電子または書面で、認定代理銀行、Revenue Collection Officerを通じたRDO、認定税務ソフトウェア提供者などへ提出すると改められた。現在利用できる経路と担当窓口をBIRに確認する

課税の対象と、申告に必要な資料は別の問題です。

被相続人がフィリピンの税務上の非居住外国人に当たる場合、課税の対象は原則としてフィリピンに所在する財産です。

ただし、TRAIN改正後のNIRC 86条(B)は、非居住外国人の遺産について、一定の控除をフィリピン所在財産が全世界の総遺産に占める割合で按分すると定めています。国外の財産の価額が必要になる場面があるため、「国外の資料は一切不要」ではありません。

なお、被相続人がフィリピン国民であれば、日本に住んでいた場合でも、この国内財産に限る扱いにはなりません。判断するのは主に被相続人側の属性です。無体財産についての相互主義による免除などの例外もあるため、適用の可否は個別に確認してください。

税額の計算と申告は、内容に応じて現地の専門家に確認します。

日本の相続税は税理士の業務です。当法人が行うのは、日本側の書類を整えることと、銀行とのやり取りの支援です。


6%の源泉徴収で払い戻す方法と注意点

eCARを待たずに払戻しを受けられる方法があります。2019年6月25日に発出されたRR 8-2019が定めるものです。

同規則は、銀行が預金者の死亡を知った場合、単独名義でも共同名義でも、引き出す金額の6%の最終源泉徴収税を課したうえで引き出しを認めるとし、条件として死亡から1年以内に行うことを挙げています。

このルートでも、事前の準備が必要です。

目的 書類・確認事項の例
死亡と対象口座の確認 死亡を証明する書類、銀行名・支店・口座の情報
請求する人の権限の確認 本人確認書類、相続関係を示す書類、EJSや単独相続の書類・裁判所の書類、必要な委任状
遺産の税務登録 遺産のTIN。RR 12-2018は、銀行が引き出しの前にBIRの受領印のある遺産のBIR Form 1904の提示を求めると定めている
払戻しの申請・引出票 預金者の死亡を銀行に伝え、死亡後の払戻しに対応した銀行所定の申請書・引出票を使用する。源泉徴収の取扱いと記載欄を確認する
源泉徴収後の証明 銀行が交付するBIR Form 2306。相続人等は受領から5日以内に副本を、被相続人の住所地を管轄するRDOへ提出する(非居住者の案件の提出先はRDOに確認)

共同名義人の生存に関する記載欄がある場合も、死亡の事実と異なる宣誓はせず、銀行に相続払戻しに適した書式と記入方法を確認してください。

全銀行共通の確定した一覧ではありません。制度上の要件と、銀行から求められる資料は分けて確認してください。

還付されない点が、判断の分かれ目になります。

RR 8-2019は、源泉徴収した税は還付されないとしたうえで、その預金を実際に総遺産に含めて申告した場合には、遺産税額から控除できるとしています。

一方、RR 12-2018は、6%の源泉徴収の対象となった引き出しの金額を総遺産から除外すると定めています。除外したうえで、さらに税額控除も受けるという使い方はできません。どちらの整理で進めるかを先に決めてください。

遺産税の6%は控除後の純遺産を基礎にしますが、この源泉徴収は引き出す金額そのものを基礎にします。遺産税がかからない規模でも、このルートで引き出せば6%は戻りません。

期限を過ぎると、このルートは使えません。

死亡から1年を過ぎている場合は、遺産税の申告とeCARで進めます。逆に、1年以内でも、eCARのルートを選ぶことはできます。

外貨預金と、古い相続には注意してください。

外貨預金については、長く免税の根拠とされてきた共和国法6426号6条が、2025年の共和国法12214号27条(s)で廃止されました。同法28条には、2025年7月1日より前に発行・取引された金融商品などについての経過措置があります。

経過措置は、対象となる金融商品や契約の残存期間などの確認が必要です。「2025年7月1日より前に開設した口座だから、その後の相続もすべて免税」とは判断できません。

死亡した日、口座の契約や商品、法改正の経過措置によって取扱いが変わります。ペソ預金と同じ結論をそのまま当てはめず、通貨と死亡日を伝えて銀行と現地の税務の専門家に確認してください。


日本の書類の英訳・公証・アポスティーユ

フィリピンは2019年5月14日にアポスティーユ条約の適用が始まりました。日本も締約国です。

在日フィリピン大使館は、適切にアポスティーユを受けた文書について、大使館・総領事館の領事認証を重ねる必要がないと案内しています。

ただし、領事認証が不要であることと、銀行や登記所でそのまま受理されることは別です。アポスティーユは文書の出所についての証明で、内容、翻訳の正確さ、相続人としての権利や委任の範囲までを証明するものではありません。

書類・方法 日本側で進める手続き
戸籍などの公文書 外務省へアポスティーユを申請する。対象の文書か、発行日の条件を確認する
委任状・宣誓供述書などの私文書(通常の方法) 公証役場で公証人の認証 → (地方)法務局長の公証人押印証明 → 外務省のアポスティーユ
ワンストップサービスを使う場合 東京などの対象の公証役場では、公証人の認証、法務局の証明、外務省のアポスティーユを一度に取得できる(対象地域は外務省の案内で確認)
英訳 原文の認証とは別に、提出先が求める訳文と翻訳者の宣誓などの形式を確認する

一部の県の公証役場では、公証人の認証と法務局長の証明を一度に取得でき、そのあと外務省で手続きします。

2026年10月5日から、外務省(東京)の窓口申請には予約が必要です。

外務省は、同日以降の東京の窓口での申請にオンライン予約を求め、予約がない場合は申請できないとしています。交付は郵送のみになるため、追跡できる返信用封筒を持参します。郵送での申請も受け付けています。

戸籍の翻訳前に確認することは戸籍謄本の英訳、死亡を証明する書類の使い分けは死亡証明書を英語で用意するにはで説明しています。いずれも一般的な案内のため、フィリピンの銀行が求める翻訳の形式は別に確認してください。


払戻しと日本への送金で確認すること

最後は、受け取り方の問題です。ペソの払戻しと、外貨への両替・日本への送金は、分けて確認します。

フィリピンの銀行でペソを外貨に換える場合、中央銀行(BSP)の外国為替規則と、銀行の確認手続きに従います。必要な書類は、送金する人の居住性、資金の由来、使う口座、取引の種類、金額によって変わります。

相続で取得した資金であることを説明し、受取権限と資金の出所を示す書類、両替・送金の申込書類を銀行に確認してください。

確認すること 理由
払戻しの方法 ペソ建ての口座への入金、小切手、外貨での送金のどれになるかで、必要な準備が変わる
日本への直接送金の可否 対応していない場合、銀行が認める代替の受取方法と、その後の両替・送金の方法を確認する。現地の口座を使うなら、非居住者の開設・利用の条件や代理の可否も確認する
誰の名義で受け取るか 相続人の代表1人か、各相続人かで、提出する同意書が変わる
通貨と費用 送金の通貨、送金・中継・受取の手数料、適用される為替レート
日本側の資料 受取銀行から、相続で受け取る資金であることの説明資料を求められることがある

着金までの流れと、中継銀行の手数料の考え方は、海外口座の相続金を日本に送金する手順で説明しています(フィリピン固有の両替と資金移転の条件は本章のとおりです)。

日本の相続税の確認は、並行して進めます。

フィリピン側の手続きが長引いても、日本の相続税の期限は動きません。払戻しの完了を待たずに、税理士に相談してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 相続人が日本にいる場合、フィリピンへ渡航せずに書類を準備できますか?

A. 日本で署名と認証の手続きを進められる場合があります。まず、EJSの書類に本人が署名するのか、現地で手続きを行う代理人への委任状を作るのかを、銀行や現地の担当者と確認します。日本の公証役場を使う場合、通常は公証人の認証、(地方)法務局長の公証人押印証明、外務省のアポスティーユという順番ですが、東京などの公証役場ではこれらを一度に取得できるワンストップサービスも利用できます。必要な文面と英訳の形式を先に確認すると、作り直しを防げます。渡航が必要かどうかは、銀行の本人確認や代理手続きの条件も含めて確認してください。

Q2. 故人が日本国籍でした。フィリピン人の場合と手続きは同じですか?

A. 同じとは限りません。フィリピン民法16条は、相続の順位、相続分、遺言の実質的な有効性について、原則として被相続人の本国法によるとしています。日本国籍の方であれば、相続人の範囲は日本法に基づいて確認するのが出発点です。一方、銀行へ提出する書類や、フィリピンでの税務・裁判所の手続きは別に確認します。Metrobankは、フィリピン人でない預金者について、正当な請求権者は法律顧問が確認した法的書類に基づいて特定されるとしています。相続人の範囲を日本の戸籍で示せるか、どこまでの翻訳やアポスティーユが要るかは、銀行の判断を先に確認してください。

Q3. 6%を引かれて引き出すのと、eCARを待つのは、どちらが有利ですか?

A. 遺産の規模と、現金がいつ必要かによります。6%の最終源泉徴収税は還付されません。遺産税がかからない規模でも、引き出せば戻らない点が判断の分かれ目です。死亡から1年以内であってもeCARのルートは選べます。総遺産からの除外と税額控除の関係は本文の「6%の源泉徴収で払い戻す方法と注意点」で説明しています。税額の見込みを踏まえて、現地の税務の専門家に相談してください。

Q4. 日本の行政書士には何を頼めますか?

A. 日本側の相続関係の整理、戸籍などの収集、英訳・認証の手配、銀行への照会、払戻しと送金に向けた手続きの支援です。フィリピン法に基づく専門的な法律判断、遺産税の申告の支援、裁判所での代理などは、業務の内容と必要な資格・権限に応じて現地の専門家への確認や依頼が必要になります。相続人や執行者、適法な権限を持つ代理人が自分で行える手続きもあるため、すべてが現地の会計士・弁護士でなければできないわけではありません。具体的な担当範囲と分担は案件ごとにご案内します。日本の相続税は税理士法人トゥモローズが対応します。

Q5. フィリピンの口座のお金にも、日本の相続税はかかりますか?

A. 国外にある財産が課税対象に含まれるかは、被相続人と財産を取得した人の住所、国籍、過去の居住状況などで判定します(国税庁タックスアンサーNo.4138)。課税対象に含まれることと、基礎控除や特例を踏まえて申告・納税が必要かどうかは別の問題です。申告が必要な場合、期限は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(同No.4205)。フィリピンで納めた税との調整には外国税額控除がありますが、要件と限度額があるため、引かれた6%がそのまま日本の相続税から全額差し引けるとは限りません。判断は税理士の業務です。


海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

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まとめ

フィリピンの銀行口座の相続では、相続の権限を示す書類と、払戻しに必要な税務の手続きを分けて確認します。裁判外分割を使えるかは、遺言・債務・相続人の状況によって変わります。

死亡から1年以内の6%の源泉徴収による払戻しは、税の負担と必要書類を確認してから検討してください。1年以内でもeCARのルートは選べます。

まず銀行に死亡を連絡し、故人の国籍、死亡した日、口座の通貨を伝えて必要書類を照会します。日本側の英訳・認証、フィリピンと日本の税務、日本への送金の準備を並行して進めると、手戻りを減らせます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、フィリピンを含む海外の口座の相続手続きについて、口座と残高の確認、戸籍の収集と英訳・認証の段取り、銀行とのやり取り、解約・払戻し・日本への送金までを日本側の窓口としてお手伝いしています。


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根拠法令・公的資料

  • Rules of Court Rule 74第1節・第2節・第4節・第5節(裁判外分割の条件、公告、保証、2年の期間とその例外)/Rule 75第1節(遺言は裁判所の認可がなければ財産を移さない)
  • フィリピン民法(RA 386)16条(相続は被相続人の本国法による)・838条(遺言の認可)
  • 共和国法1405号(銀行秘密法)2条(預金の秘密と開示が認められる場合)
  • RA 10963(TRAIN)によるNIRC 86条(B)(非居住外国人の控除と、全世界の総遺産に対する按分)
  • Revenue Regulations No. 12-2018(申告期限1年・30日の延長・申告時の納付・500万ペソ超のCPA明細・RDO No. 39-South Quezon City・eCAR・BIR Form 1904・6%の対象額の総遺産からの除外)
  • Revenue Regulations No. 8-2019(死亡から1年以内の引き出しに対する6%の最終源泉徴収税、BIR Form 2306、還付不可と条件付きの税額控除、現金分割納付は申告書の提出日から2年以内)
  • RA 10963(TRAIN)26条によるNIRC91条(C)(現金が不足する場合の分割納付は法定の納付日から2年以内)/27条によるNIRC97条(引出票の記載)
  • RA 11976(Ease of Paying Taxes Act・2024年)13条によるNIRC90条(D)・14条によるNIRC91条(申告と納付の経路)
  • 共和国法12214号27条(s)・28条(共和国法6426号6条の廃止と経過措置)
  • 相続税の申告期限(国税庁タックスアンサーNo.4205)/国外財産の課税範囲(同No.4138)
  • 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
  • Metrobankの公表資料、在日フィリピン大使館および外務省の案内(2026年9月21日確認)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。