財産管理委任契約とは|任せられる範囲の決め方と、金融機関で通らないことがある理由
10秒でわかる この記事の要約
- 財産管理委任契約とは、本人に契約の内容を理解する力があるうちに、預貯金の管理・各種の支払い・契約や行政の手続きを第三者へ委ね、必要な代理権を与えておく契約です。
- 体は不自由になってきたが判断能力はしっかりしている、遠方に住む家族に一部を任せたい、入院に備えたい。使う場面はさまざまです。任意後見が始まるまでのつなぎとして使うのは、そのうちの一つにすぎません。
- 民法に「財産管理委任契約」という名前の契約があるわけではありません。委任(民法643条)と準委任(同656条)を組み合わせて作ります。
- 型が決まっていないので、任せる事務と代理権の範囲は、契約書と代理権目録で具体的に決めます。
- そして、実務でいちばんつまずくのがここです。契約書を作っても、金融機関の窓口が通るとは限りません。
- 本記事では、委任する範囲の決め方、受任者が法律上負う義務、使い込みを防ぐ条項、任意後見への移し方を整理します。
「入院が続いていて、銀行にも役所にも行けない」
「でも、頭ははっきりしているので後見人はつけたくない」
この状態の方に使えるのが、財産管理委任契約です。
判断能力があるうちから使えて、本人が自分で受任者と範囲を決められます。
民法上の基本的な義務は契約書に書かなくても受任者にかかりますが、任せる事務と代理権の範囲、上限額、報告の方法は、書かなければ決まりません。
本記事では、契約書に何をどう書くかを、条文と実務の両面から整理します。
判断能力があるうちから財産管理を任せる契約
まず、位置づけを確認します。
民法第643条は、委任について「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と定めています。
預金の払戻しや役所への申請は法律行為ですが、郵便物の整理や入院中の事務連絡のように、法律行為ではない事務も含めたいことがあります。
法律行為でない事務については、民法第656条により委任の規定が準用されます。
財産管理委任契約は、この2つを組み合わせて作る契約です。
法律に定められた契約類型ではないため、名称も内容も当事者が決めます。
ここで、はじめに押さえておいていただきたい区別があります。
委任と代理権は、別のものです。
委任は、本人と受任者のあいだの約束です(民法643条)。
一方、受任者が銀行や役所といった第三者と取引して、その効果を本人に帰属させるには、代理権が要ります(民法99条)。
委任契約のなかで代理権を与えることはできますが、委任契約を結んだだけで、あらゆる相手に対する代理権が当然に生じるわけではありません。
そのため実務では、委任する事務を定めたうえで、代理権を授与する旨と、その範囲を書いた代理権目録を別に付けます。
日本公証人連合会が示す代理権目録の例にも、「不動産、動産等すべての財産の保存、管理及び処分に関する事項」「金融機関、証券会社とのすべての取引に関する事項」といった項目が並んでいます。
任意後見契約と比べると、違いがはっきりします。
| 財産管理委任契約 | 任意後見契約 | |
|---|---|---|
| 結べる時期 | 本人が契約内容を理解して意思表示できるあいだ | 本人が契約内容を理解して意思表示できるあいだ |
| 効力の発生 | 契約で定めた時から | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から |
| 判断能力が低下した後 | 低下しただけでは当然には終わらない | 監督人の選任によって発効する |
| 公正証書 | 法律上の要件ではない | 必要(任意後見契約に関する法律3条) |
| 登記 | されない | される |
| 第三者の監督 | なし(契約で作り込む) | 任意後見監督人 |
「判断能力が低下した後」の行に注意してください。
民法653条が定める委任の終了事由に、委任者の判断能力の低下は入っていません。
放っておくと、任意後見が発効した後も委任契約が並走します。
終わらせ方は、契約書に書いておく必要があるのです。
「登記」と「第三者の監督」の行も効いてきます。
任意後見には監督人がつきますが、財産管理委任契約にはつきません。
登記もされないため、後見登記事項証明書のように登録にもとづいて代理権を証明する制度はありません。
自由に作れるかわりに、歯止めも自分で用意する必要があるのです。
なお、どの制度を選ぶかで迷っている段階なら、認知症に備える財産管理|任意後見・家族信託・財産管理委任の違いと選び方を先にご覧ください。
本記事は、財産管理委任契約を使うと決めた方に向けて、中身の話をします。
遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
任せられること、任せられないこと
契約書には、任せる事務を列挙します。
実務では、次のような項目を並べます。
- 預貯金の預入れ・払戻し・振込(口座と上限額を特定する)
- 家賃・公共料金・税金・保険料などの支払い
- 年金その他の定期的な収入の受領の確認
- 住民票・戸籍・課税証明書などの請求
- 介護保険・医療保険の申請や手続き
- 入院や施設入所の費用の支払い
- 郵便物の受取りと整理
「財産の管理に関する一切の事務」とだけ書くのは避けてください。
金融機関の窓口では、その取引が委任の範囲に入っているかを個別に見られます。
包括的な書き方だと、確認に時間がかかったり、応じてもらえなかったりします。
一方、任せられないものもあります。
| 任せられないもの | 理由 |
|---|---|
| 婚姻・離婚・養子縁組・遺言 | 本人の意思そのものが必要な行為 |
| 医療行為への同意 | 財産管理の代理権があっても当然には代われない |
| 入院や施設契約の保証人になること | 受任者自身が債務を負う話で、委任とは別 |
| 日常生活の世話そのもの | 介護サービスの契約手続きは委任できるが、介護行為自体は別 |
業務の分担にも触れておきます。
ここは、2つの立場を分けて考えてください。
| 立場 | 行うこと |
|---|---|
| 契約書を作る立場 | 財産管理委任契約書や代理権目録の作成と、その内容についての相談(行政書士法1条の3・1条の4) |
| 受任者として管理する立場 | 契約にもとづく金銭の管理、支払い、書類の保管、報告 |
| 他の資格者の業務 | 登記又は供託に関する手続の代理は司法書士(司法書士法3条1項1号)、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士(税理士法2条1項)、訴訟その他の紛争対応は弁護士等、その手続について法令上の権限を有する専門職 |
契約書を作ってもらうことと、その人に管理まで任せることは、別の依頼です。
同じ人に頼むかどうかは、報告のチェックが効くかどうかで決めてください。
売却や申告まで視野に入るなら、契約を作る段階で誰に何を頼むかを決めておいてください。
後から慌てて探すことになるのが、いちばん困る場面です。
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契約書があっても、窓口は通らないことがある
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
有効な契約書を持って銀行へ行っても、その場で取引ができるとは限りません。
全国銀行協会が2021年2月18日に公表した「金融取引の代理等に関する考え方」は、任意代理人との取引について、こう書いています。
本人から親族等への有効な代理権付与が行われ、銀行が親族等に代理権を付与する任意代理人の届出を受けている場合は、当該任意代理人と取引を行うことも可能
よく読むと、条件が2つ並んでいます。
有効な代理権が与えられていること。そして、銀行がその届出を受けていること。
契約書に代理権を書いても、後者は別に手続きが要ります。
しかも、独自に作った財産管理委任契約を、どの金融機関でもそのまま受け付けてくれるとは限りません。
そこで、順番を逆にしてください。
契約書を作ってから銀行へ行くのではなく、先に銀行へ聞いてから契約書を作ります。
- 取引のある金融機関と、保有している商品を一覧にする
- 各金融機関に、財産管理委任契約にもとづく代理人の登録を受け付けているかを聞く
- 所定の委任状や代理人届出書があるか、本人と受任者の来店が要るかを確認する
- 対象になる口座・商品・取引の範囲と、判断能力が低下した後の取扱いを確認する
- 回答を踏まえて、契約書と代理権目録を作る
- 契約を結んだら、金融機関所定の届出まで済ませる
先に聞いておけば、使えない契約書を作らずに済みます。
ただし、事前の確認で分かるのは、制度の有無・所定の様式・来店の要否・対象となる取引といったところまでです。
契約書の文言まで事前に審査してもらえるとは限らず、最終的な可否は提出した後に判断されることがあります。
払戻しの上限額についても、金融機関の側で登録して管理してもらえるかは別に確認してください。
この点は、銀行ごとの制度の違いも含めて銀行の代理人カードは認知症対策になるのか|予約型代理人・代理人指名手続との違いと申込みの流れにまとめました。
届出をするときは、契約書の写しの提出を求められることがあります。
そのため、契約書の書き方も窓口を意識したものにしておきます。
- 対象となる口座を、金融機関名・支店名・口座番号まで特定する
- 1回あたり、または1か月あたりの払戻しの上限額を決める
- 受任者の氏名・住所・生年月日を、本人確認書類の記載どおりにそろえる
- 契約の期間と、終了する場合の定めを入れる
上限額は、受任者を守るためにも入れておいてください。
金額の枠があれば、後から親族に問われたときに説明ができます。
なお、公正証書にすることは法律上の要件ではありません。
公正証書にすると、本人が自分の意思で結んだことと契約の内容について、証明力が高まります。
ただし、公正証書だからといって金融機関が必ず代理取引に応じるわけではありません。
所定の代理人制度や届出の手続きは、別に確認してください。
任意後見契約と併せて作る場合は、両方を同時に公正証書にすることを検討します。
その場合、財産管理委任契約の分の公証人手数料が別に必要になります(日本公証人連合会の案内)。
受任者が法律上負っている義務
「家族に頼むだけだから、契約書は簡単でいい」と言われることがあります。
むしろ逆です。
受任者は、契約書に書かなくても民法上の義務を負います。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法644条 | 委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって事務を処理する |
| 民法645条 | 委任者の請求があればいつでも報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する |
| 民法646条 | 事務の処理にあたって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡す |
| 民法647条 | 引き渡すべき金額を自己のために消費したときは、消費した日以後の利息を支払う。なお損害があるときは賠償の責任を負う |
647条は、預かった金銭を自分のために使った場合の責任を定めた条文です。
預かったお金を自分のために使えば、利息をつけて返すことになりますし、損害があればその賠償もしなければなりません。
家族が受任者であっても、この規定は変わりません。
報酬の扱いも押さえておいてください。
民法648条1項は、受任者は特約がなければ報酬を請求することができないとしています。
つまり、何も書かなければ無償というのが民法の原則です。
ただし、相手が商人で、その営業の範囲内の行為であれば、商法512条により相当な報酬を請求できることがあります。
専門職に依頼する場合は、いずれにしても契約で報酬を定めます。
家族に頼む場合は無償にすることが多いのですが、実際には手間がかかります。
月額を決めておくか、無償と明記するか、どちらかにしておいてください。
曖昧なまま続けると、後から「あれは報酬のつもりだった」という話になりかねません。
費用についても条文があります。
民法649条は、費用を要するときは委任者が受任者の請求により前払をしなければならないと定めています。
民法650条1項は、受任者が必要と認められる費用を支出したときに、その費用と支出日以後の利息の償還を請求できるとしています。
交通費や書類の取得費を受任者が立て替える形にすると、そのつど精算の話になります。
実務では、本人名義の管理専用口座を用意して、そこから支出する形にしておくほうが揉めません。受任者名義の口座へ本人の資金を移さないでください。
使い込みを疑われない仕組みを、契約書に入れる
財産管理委任契約で典型的なトラブルの一つが、他の親族から使途不明金や使い込みを疑われることです。
受任者に悪意がなくても起きます。
記録がなければ、説明ができないからです。
民法645条の報告義務は「委任者の請求があるとき」が原則ですが、本人の状態によっては、報告を請求すること自体が難しくなります。
そこで、契約書のほうで具体化しておきます。
| 入れておく条項 | 効き方 |
|---|---|
| 報告の時期と方法(毎月◯日までに書面で) | 請求がなくても記録が残る |
| 本人以外への報告先(本人が指定した親族など) | 親族間の情報の非対称をなくす |
| 通帳・領収書の保管と、閲覧に応じる義務 | 後から検証できる |
| 1回・1か月あたりの上限額 | 枠を超える支出は本人の同意が要ると分かる |
| 本人の口座と受任者の口座を混ぜない旨 | 民法646条の引渡し義務を実行しやすくする |
5つ目は、当たり前のようで守られていない項目です。
受任者名義の口座にいったん入れて、そこから支払う運用をしている例をよく見ます。
混ざってしまうと、どれが本人のお金だったのかを後から分けられません。
相続が起きたときに、その口座の残高が誰のものかで揉めることになります関連解説(税理士法人トゥモローズ)「名義預金とは?相続税の対象になる判断基準と税務調査対策を徹底解説」。
もうひとつ、条文の裏づけがある大事な話があります。
本人のためにお金を使うことと、受任者や家族がお金をもらうことは、別です。
受任者が本人の代理人として、本人から自分自身へ贈与するような形は、自己契約にあたります。
民法108条1項は、同一の法律行為について相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為を、代理権を有しない者がした行為とみなすとしています(債務の履行と、本人があらかじめ許諾した行為を除きます)。
さらに同条2項は、代理人と本人との利益が相反する行為についても、同じく無権代理とみなすと定めています(本人があらかじめ許諾した行為を除きます)。
つまり、代理権を使って自分に利益を移す行為は、本人の個別のあらかじめの許諾がなければ、有効に行えません。
許諾があれば法律上は可能ですが、後から使い込みや本人の意思をめぐって争いになりやすい形です。
そこで、契約書には次の取引を禁止する条項を入れてください。
- 受任者自身への贈与・貸付け・債務免除
- 受任者やその家族の債務の弁済、保証
- 受任者との売買・賃貸借
- そのほか、本人と受任者の利益がぶつかる取引
本人が「世話になっているから」と受任者へ財産を渡したい場合は、本人が内容を理解できる状態で、本人自身が贈与の意思を示し、財産管理委任契約とは別に贈与契約を結んでください。
贈与税の扱いや契約書の書き方は関連解説(税理士法人トゥモローズ)「贈与契約書の書き方とひな形【Excelテンプレート無料ダウンロード】」をご確認ください。
生活費の支払いにまぎれさせると、後から性質が分からなくなります。
私見ですが、受任者を1人にするなら、報告先はできるだけ別の人にしてください。
管理する人と見る人が同じだと、契約書がいくら整っていても疑いは消えません。
適した報告先がいない場合は、月次の収支表、領収書の保存、残高証明書の定期取得で、後から検証できる形にしておきます。
任意後見への移行と、契約の終わり方
実務では、財産管理委任契約と任意後見契約を同時に結んでおくのが一般的です。
これを移行型と呼びます。
任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます(任意後見契約に関する法律2条1号)。
その選任までの期間を、財産管理委任契約で埋める形になります。
ここで注意していただきたいのは、判断能力が低下したからといって、自動的に切り替わるわけではないことです。
日本公証人連合会も移行型について、任意後見監督人が選任されて任意後見契約の効力が発生した場合に、委任契約の効力を失効させて移行する形だと説明しています。
失効させるのは契約の定めです。書かなければ、そのままです。
そのため、契約書には移行の段取りを書いておきます。
- どのような状態になったら任意後見監督人の選任を申し立てるか、検討を始める目安
- 誰が判断能力の変化を確認するか
- 本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のうち、誰が申立てを担当するか(同法4条1項)。本人以外が申し立てるときは、原則としてあらかじめ本人の同意が要ります(同条3項。本人が意思を表示できないときは不要)
- 任意後見が発効したら、財産管理委任契約は終了する旨
- 終了した時点で、預かっている通帳・書類・金銭をどう引き継ぎ、最終の報告と収支計算をいつ出すか
3つ目を書いておかないと、2つの契約が並走します。
任意後見人としての権限と、委任契約上の権限が重なると、監督人のチェックが及ばない部分が残ってしまいます。
判断能力の低下に気づく仕組みについては見守り契約とは|任意後見が始まるまでの空白を埋める契約、任意後見そのものは任意後見契約とは?認知症に備える終活の重要契約をご確認ください。
終わり方についても、条文を見ておきます。
民法651条1項は、委任は各当事者がいつでもその解除をすることができるとしています。
本人からも、受任者からも解除できるということです。
ただし、同条2項に続きがあります。
相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません。
施設費の支払日の直前に受任者が突然辞めれば、本人に実害が出ます。
解除を申し出る予告の期間と、引継ぎの方法まで契約書に書いておいてください。
そして民法653条は、委任者又は受任者の死亡、破産手続開始の決定、受任者が後見開始の審判を受けたことを終了事由としています。
死亡後も存続させる定めがなければ、本人が亡くなった時点で終了するのが原則です。
代理権も、原則として本人の死亡によって消滅します(民法111条1項1号)。
もっとも、民法653条は当事者の合意で変えられる規定と解されています。
最高裁平成4年9月22日判決は、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意の効力を認めました(金融法務事情1358号55頁)。
ここで見落とされやすい条文が2つあります。
民法654条は、委任が終了した場合でも急迫の事情があるときは、受任者等は委任者の相続人等が事務を処理できるようになるまで、必要な処分をしなければならないとしています。
これは例外的な措置です。
亡くなった後も受任者が今までどおり預金を動かしてよい、という意味ではありません。
そもそも銀行が払戻しに応じるかどうかも、別の問題です。
民法655条は、委任の終了事由は、相手方に通知したとき、又は相手方が知っていたときでなければ対抗できないとしています。
死亡後の事務まで頼みたいなら、財産管理委任契約では足りません。
葬儀や役所への届出、公共料金の解約などは、死後事務委任契約とは?できること・できないこと完全解説の対象になります。
生前の管理と死後の事務は、別の契約で用意するか、死亡後も存続することを明記した条項で定めてください。
最後に、ここまでの内容を契約書の項目としてまとめておきます。
- 委任する事務(口座や手続きを特定して列挙する)
- 代理権目録(第三者に対して代理する範囲)
- 効力が始まる時期
- 通常の取引と、本人の承認が要る重要な取引の区分
- 1回あたり・1か月あたりの払戻しの上限額
- 急を要する支出の手順
- 本人名義の管理専用口座による分別管理
- 報告の時期・報告先・領収書などの保管
- 自己契約と利益相反取引の禁止
- 任意後見への移行・終了・引継ぎと最終報告
この10項目がそろっていれば、実務で困る場面はかなり減ります。
なお、契約書の作成にかかる費用は任意後見契約の費用相場|公正証書作成から後見人報酬までにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 財産管理委任契約を結んだことは、どこかに登記されますか?
A. 登記されません。任意後見契約は登記され、後見登記事項証明書で代理権を示せますが、財産管理委任契約にその仕組みはありません。私文書で作った場合は、そのつど契約書の原本や写しを見せて確認を受けることになり、紛失すると立て直しに手間がかかります。公正証書で作っておけば、正本や謄本で内容を示せますし、なくしても公証役場へ再交付を請求できます。ただし、公正証書であっても金融機関所定の届出が不要になるわけではありません。
Q2. 受任者を2人にすることはできますか?
A. できます。ただし、2人が同じ範囲の代理権を持つと、金融機関の窓口でどちらの指示に従うかが問題になります。「預貯金の管理は長男、役所の手続きは長女」のように事務ごとに分けるか、共同でなければ行使できない事項を限定して定めるのが実務的です。分け方まで契約書に書いておかないと、結局は届出を受ける側で判断できません。
Q3. 確定申告や不動産の売却も、あわせて頼めますか?
A. 不動産の売買契約を本人に代わって結ぶことは、代理権目録に具体的に定めておけば受任者が行えます。ただし財産への影響が大きいので、対象の不動産、最低の売却価格、本人の事前承認が要るかどうか、代金の受取口座まで書き分けてください。実際の取引では、仲介会社や司法書士から本人の意思と代理権について追加の確認を求められることもあります。一方、売却にともなう登記申請の代理は司法書士(司法書士法3条1項1号)、税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務です(税理士法2条1項)。受任者は、これらの専門家との連絡調整や資料の準備もあわせて行えます。
Q4. 離れて暮らす親と結ぶ場合、気をつけることはありますか?
A. 金融機関の届出で本人の来店を求められることがあるため、本人が窓口へ行ける状態のうちに済ませてください。あわせて、公共料金や介護費用の請求書がどこに届くのかを決めておきます。郵便物が実家に届いたままだと、受任者が支払いの発生に気づけません。転送の手配や、請求書の送付先の変更まで含めて段取りしておくのが確実です。
遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
財産管理委任契約は、判断能力があるうちに使う契約です。
民法に定められた類型ではないため、委任(643条)と準委任(656条)で組み立てます。
民法上の基本的な義務は書かなくても適用されますが、任せる事務・代理権の範囲・上限額・報告の方法・任意後見への移り方は、書かなければ決まりません。
「財産に関する一切」ではなく、口座や事務を特定して並べてください。
そして、契約書を作っただけでは金融機関の窓口は通りません。
全国銀行協会の考え方も、有効な代理権の付与と銀行への届出を別の条件として並べています。
契約を結んだら、取引先ごとに届け出るところまでを1セットにしてください。
受任者は、契約書に書かなくても民法上の義務を負います。
特に647条は、預かった金銭を自分のために使えば利息と損害賠償の責任が生じると定めています。
報告の時期と報告先、上限額、口座を混ぜない旨。この4つを契約書に入れておけば、受任者自身を疑いから守ることにもなります。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、財産管理委任契約・任意後見契約・見守り契約・公正証書遺言の原案作成と、金融機関ごとの代理人の届出に必要な書類の整理まで、一体でお手伝いしています。
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根拠法令・公的資料
- 民法第99条(代理行為の要件及び効果。委任と代理権は別。第三者との取引には代理権が必要)
- 民法第108条第1項(自己契約及び双方代理は無権代理とみなす。債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為を除く)・第2項(代理人と本人との利益が相反する行為も同じ)
- 民法第643条(委任。法律行為の委託と承諾により効力を生ずる)
- 民法第644条(受任者の善管注意義務)
- 民法第645条(受任者による報告。請求があればいつでも、終了後は遅滞なく)
- 民法第646条(受任者による受取物の引渡し等)
- 民法第647条(受任者の金銭の消費についての責任。消費した日以後の利息と損害賠償)
- 民法第648条第1項(特約がなければ報酬を請求することができない)
- 民法第649条(受任者による費用の前払請求)・第650条(費用等の償還請求等)
- 民法第651条第1項(委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる)・第2項(相手方に不利な時期の解除等は、やむを得ない事由がある場合を除き損害賠償)
- 民法第653条(委任の終了事由)
- 民法第654条(委任の終了後の処分。急迫の事情があるときの必要な処分)
- 民法第655条(委任の終了の対抗要件。通知または相手方の悪意)
- 民法第656条(準委任。法律行為でない事務の委託への準用)
- 商法第4条(商人の定義)・第512条(商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる)
- 最高裁平成4年9月22日判決(金融法務事情1358号55頁。委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意の効力を認めた)
- 民法第111条第1項第1号(代理権は本人の死亡によって消滅する)
- 任意後見契約に関する法律第2条第1号(任意後見監督人が選任された時から効力が生じる)・第3条(公正証書によることを要する)
- 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」(2021年2月18日)
- 司法書士法第3条第1項第1号(登記又は供託に関する手続についての代理は司法書士の業務)
- 税理士法第2条第1項(税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務)
- 任意後見契約に関する法律第4条第1項(任意後見監督人の選任を請求できるのは、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者)・第3項(本人以外の者の請求によるときは、あらかじめ本人の同意を要する。ただし本人が意思を表示することができないときは不要)
- 日本公証人連合会「任意後見契約」(移行型=任意後見契約の効力発生時に委任契約の効力を失効させて移行する。代理権目録の例。財産管理等委任契約を併せて作成する場合は別途手数料)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)※税務申告の代理は税理士、登記申請の代理は司法書士の業務です
