【小規模宅地の特例】これって同居親族?パターン別に徹底解説
こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。
今回は、特定居住用宅地の中で重要な論点である「同居」について事例形式で確認していきたいと思います。亡くなった人の同居親族に該当するかどうかで相続税が数百万円、数千万円違ってくることもありますので要チェックです!
動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!
小規模宅地等の特例について、基本的な情報をわかりやすくまとめた記事を新たに作成いたしましたので、ぜひご覧ください。
小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額
1.同居親族とは?
まず、同居親族とは、どういった人を指すのでしょうか?
税法上、「同居」の定義は明らかにされていませんが、法令解釈通達上、「同居親族」とは、「亡くなる直前に亡くなった人と同じ家で共に起居していた人」と書いてあります。
起居とは簡単に言うと日常生活を一緒にしていたということです。
これだけだとまだ漠然としていますので過去の裁決事例等からもう少し深掘りしたいと思います。
過去の裁決事例等では、亡くなった人と同居していたかどうかは下記の事項を総合的に考慮して判断しています。
● その親族の日常の生活状況
● その建物への入居目的
● その建物の構造及び設備
● その親族に係る生活の拠点となるべき他の建物保有の有無
実務上は、上記4要件を総合的に鑑みながら同居か非同居かを判断していきます。
これでも若干漠然としている部分があるので具体的事例で確認していきましょう。
2.具体的事例
①亡くなる前に単身赴任
【事例】
亡くなった太郎さん(東京在住、太郎さんの妻は5年前に死亡)は、長男Aと長男の嫁Bとその子Cと4人で同居していました。太郎さんの亡くなる半年前に長男Aが転勤で長崎県に単身赴任することになりました。したがって、太郎さん死亡時は、太郎さんとBとCの三人暮らしとなっていました。太郎さんの亡くなった後もAは単身赴任から戻ることはありませんでした。
この時にAが太郎さんから相続した自宅の敷地は小規模宅地の特例の適用が可能でしょうか?
【回答】
適用が可能です。
単身赴任という特殊事情が解消された時にBやCとまた同居することが明らかであり、生活の本拠は太郎さんの自宅にあったと考えられるためです。
②亡くなった後に転勤
【事例】
亡くなった次郎さん(東京在住、次郎さんの妻は5年前に死亡)は、長男Dと長男の嫁Eとその子Fと4人で同居していました。次郎さんが亡くなった半年後に長男Dは会社の辞令で北海道に転勤になってしまいました。なお、EとFは次郎さんの家に申告期限まで住んでいます。
小規模宅地の特例は、申告期限(亡くなってから10ヶ月)まで亡くなった人の家に住んでないといけないという要件があると思いますが、この場合には特例の適用が可能でしょうか?
【回答】
適用が可能です。
転勤という特殊事情が解消された時にEやFとまた同居することが明らかであり、生活の本拠は引き続き次郎さんの自宅にあったと考えられるためです。なお、申告期限前にEとFが別の家に引っ越した場合には小規模宅地の特例の適用はできないと考えられます。
③介護のために同居
【事例】
亡くなった三郎さん(東京在住、三郎さんの妻は5年前に死亡)は、ひとり暮らしをしていましたが、亡くなる半年くらい前から介護のために長男Gが三郎さんと一緒に暮らして面倒を看ていました。Gは、千葉に持ち家で家族と住む家がありましたが、亡くなるまでの半年間はほぼその家に帰ることはありませんでした。
また、三郎さんが亡くなった後も相続税の申告期限までは千葉の家族のもとに帰らずに三郎さんの家に住んでいました。
この場合、Gは小規模宅地の特例の適用は可能でしょうか?
【回答】
適用はできません。
Gは、介護のために一時的に三郎さんと暮らしていたに過ぎず、生活の本拠は、千葉の自宅にあると考えられるためです。
④住民票のみ同じ
【事例】
亡くなった四郎さん(東京在住、四郎さんの妻は5年前に死亡)は、ひとり暮らしをしていました。四郎さんの相続人は長男Hのみで長男は埼玉に持ち家がありそこで家族と暮らしています。Hが四郎さんの生前に相続税を試算したところ自宅に小規模宅地の特例が使えないため多額の相続税が発生することがわかりました。Hは家族に相談して、四郎さんと同居することにより小規模宅地の特例の要件を満たそうとしましたが、家族に反対されたため住民票だけ東京の四郎さんの自宅に移しました。
この場合Hは小規模宅地の特例の適用が可能でしょうか?
【回答】
適用はできません。
同居親族に該当するかどうかは、住民票ではなく実態で判断するため住民票だけ移しても適用はできません。でも、住民票が同じなら同居していなかったことが税務署にはわからないのではないか?と思う方もいるかもしれませんが、税務署は、郵便物の配達状況、水道光熱費の状況、近所へのヒアリング、勤務先での通勤定期券等で生活の本拠がどこであったかは簡単にわかってしまうのです。
⑤二世帯住宅
【事例】
亡くなった五郎さん(東京在住、五郎さんの妻は5年前に死亡)は、二世帯住宅に長男Iと長男の嫁Jで暮らしていました。その二世帯住宅は玄関が五郎さんと長男I夫婦とで別々になっていて、1階に五郎さん、2階に長男夫婦で住んでいました。なお、1階と2階は建物内部で行き来ができません。ちなみに、この建物は区分登記建物ではありません。
この場合Iは小規模宅地の特例の適用が可能でしょうか?
【回答】
適用が可能です。
二世帯住宅については、平成25年度税制改正により、建物内部で行き来できない完全分離型のものであっても同居親族と考えることができるようになり、小規模宅地の特例の適用が可能になりました。
なお、この建物が区分登記建物(1階と2階で登記が分かれているなどの建物)のときは二世帯住宅であっても同居親族とはならず小規模宅地の特例の適用ができませんので注意が必要です。
二世帯住宅のより詳しい内容は、二世帯住宅をパターン別に徹底解説!(建物構造・登記編)を参照してください。
⑥家賃を払っていた場合
【事例】
亡くなった五郎さんと長男家族は二世帯住宅でした。
建物は五郎さん名義で区分所有家屋ではありませんが構造上分離されていて玄関も2つ、建物内部で行き来はできません。
1階に五郎さん、2階に長男家族が住んでました。
長男が五郎さんに毎月家賃として近隣相場相当の10万円を払っていましたが、長男は同居親族として小規模宅地等の特例の適用が可能でしょうか?
【回答】
適用が可能です。
2階部分は同居親族居住用と貸付事業用という2つの側面があります。賃貸借で親族に貸し付けていたとしても長男の居住用としての用途まで認められないことはありませんので2階部分も含めて被相続人の居住用部分と考えることが出来ます。
したがって、特定居住用宅地でも貸付事業用宅地でも適用が可能となります。
ただし、貸付事業用宅地の場合には相続人が申告期限まで貸付事業を継続しないといけないため借主である長男が取得した場合には混同により貸付状態を継続することが出来ないため要件を満たさないこととなります。
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