相続税の未成年者控除をわかりやすく徹底解説

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

お父さん、お母さんが若くして亡くなってしまった場合や未成年の孫が養子になっている場合など相続人の中に未成年者がいる場合もあり得ます。
未成年者であっても相続税の申告が必要となります。
今回は、相続人に未成年者がいる場合の相続税申告について、その注意点等について徹底的に解説します。

動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!

なお、相続税の税額控除を網羅的に知りたい人は、相続税の税額控除をわかりやすく解説。相続人の税額から一定額を差し引く制度をご参照ください。

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未成年者とは

未成年者とは、20歳未満の人をいいます。
根拠条文は、下記民法です。

民法第4条

年齢二十歳をもって、成年とする。

成年に達していない人=未成年者であるから20歳未満の人(19歳以下の人)が未成年者に該当するのです。

なお、この未成年者の定義も民法改正により、2022年(令和4年)4月1日から18歳未満となります。
後ほど紹介する未成年者控除の計算も18歳になったことにより一定の調整が必要となりますので注意しましょう。

未成年者がいる場合の遺産分割協議

未成年者が法律行為をするときはその法定代理人(親権者)の同意を得る必要があります。したがって、未成年者単独で遺産分割協議をすることはできません。また、共同相続人の中に法定代理人である親権者がいる場合には未成年者と法定代理人で利益相反してしまうため特別代理人を家庭裁判所にて選任する必要があります。なお、特別代理人の選任申立ての際に遺産分割協議案を家庭裁判所に提出することになりますが、未成年者に不利な遺産分割協議案(未成年者の取得が法定相続分未満など)の場合には、その特別代理人の選任が認められないことがあります。

特別代理人は誰にする?

特別代理人に資格等は必要ないため共同相続人以外であれば基本的に誰でもなれます。
実務的には共同相続人以外の親族を選任することが多いでしょう。
具体例で考えてみましょう。

被相続人:夫
相続人:妻、長男5歳、長女3歳
【解説】
法定代理人である妻は共同相続人に該当するため長男と長女の代理人にはなれません。
夫や妻の親が存命ならばその両親(未成年者からしたら祖父母)に特別代理人をお願いするケースが多いでしょう。
夫の両親がいいのか、妻の両親がいいのか、正直どちらでもいいとは思いますが、夫の両親にお願いしたほうがより家庭裁判所の心象はいいかもしれません。
なお、未成年者二人に別々の特別代理人を選任する必要があります。二人に同じ特別代理人だとそこも利益相反になってしまいますからね。例えば、長男には祖父が長女には祖母がそれぞれ特別代理人なるというような感じです。

特別代理人の選任方法

特別代理人の選任は家庭裁判所で行います。
申し立てを行う家庭裁判所は、相続人である未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。
特別代理人の選任申立には下記の書類が必要となります。

申立書
□未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
□親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
□特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
□利益相反に関する資料(遺産分割協議書案)

なお、申立にかかる費用は収入印紙800円と連絡用の切手代(所轄の裁判所に確認してください)となります。

未成年者控除

相続人の中に未成年者がいる場合にはその未成年者の相続税額から一定額を控除することができます。
これを「未成年者控除」といいます。

未成年者控除の要件

未成年者控除の要件は下記4つです。

要件①:相続開始日に未成年者であること
要件②:相続又は遺贈により財産を取得したこと
要件③:法定相続人であること(相続放棄があった場合にはその放棄がなかったものとした場合の相続人)
要件④:相続開始日に日本国内に住所があること(一定の者を除く)

要件で悩ましい論点をQA方式で解説します。

①相続財産を一切取得しなかった未成年者

未成年者控除適用不可
【解説】
要件②の相続又は遺贈により財産を取得していないため適用ができません。したがって、未成年者控除の適用をしたい場合には1万円でもいいので財産を取得させなければなりません。
 

②相続放棄をして生命保険金などのみなし相続財産の取得もしていない未成年者

未成年者控除適用不可
【解説】
要件②の相続又は遺贈により財産を取得していないため適用ができません。
相続税がかかるケースで未成年者が相続放棄をすることは想定できませんが、次問も含め考え方を理解するための設問のためご容赦下さい。

③相続放棄をしたが生命保険金を受け取った未成年者

未成年者控除適用可
【解説】
生命保険金の受け取りは相続又は遺贈により財産を取得した者に該当するため未成年者控除の適用が可能です。
相続放棄により相続人じゃなくなったから要件③を満たさないのでは?と思われるかもしれませんが、この法定相続人要件は、相続放棄がなかったものとした場合の相続人であるため、相続放棄をしたとしても元々相続人であれば大丈夫なのです。

④遺贈により財産を受け取った相続人でない孫

未成年者控除適用不可
【解説】
要件③の法定相続人であることに該当しないため適用できません。

⑤未成年者が結婚して成年擬制により成人になった場合

未成年者控除適用可
【解説】
未成年者が結婚して民法上成年に達したものとみなされても未成年者控除の適用は可能です。

⑥相続開始時に胎児の場合

未成年者控除適用可
【解説】
胎児が生きて生まれたときにはその子は相続人になりますので未成年者控除は、180万円(10万円✕18年)となります。

未成年者控除の計算方法

未成年者控除は下記計算式で求めることができます。

(20歳※1-相続開始日の未成年者の年齢※2) ✕ 10万円

※1  民法改正により未成年者の年齢が18歳に引き下げられる影響で、2022年4月1日以降の相続案件より、18歳で判定します。
※2  1年未満切捨て

具体的に計算してみましょう。

相続開始時の年齢が15歳5ヶ月の場合
(20歳-15歳(端数は切り捨て))✕10万円=50万円

控除しきれない場合

未成年者控除前の相続税額より未成年者控除額の方が大きい場合にその控除しきれない金額をその未成年者の扶養義務者から控除することができます。
扶養義務者の定義は下記通達に定められています。

相続税法基本通達1の2-1

相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条((扶養義務者))の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
  なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。

簡単に言うと下記の人たちです。

【扶養義務者】
□夫や妻
□父や母
□子や孫
□祖父母
□兄弟姉妹
□家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族
□生計を一とする3親等内の親族
など

具体的に計算してみましょう。

被相続人:母
相続人:長男22歳、次男17歳2ヶ月
未成年者控除前の相続税額:長男100万円、次男20万円
①次男の未成年者控除額
(20歳-17歳(端数は切り捨て))✕10万円=30万円
②次男の相続税額
20万円-20万円※=ゼロ
※20万円<未成年者控除30万円 ∴20万円
③長男の相続税額
100万円-10万円※=90万円
※未成年者控除30万円-次男の相続税額20万円=10万円⬅控除しきれなかった金額

未成年者年齢の引き下げと未成年者控除の関係

未成年者の年齢が民法の改正により2022年4月1日から18歳未満に引き下げられるというのは前述の通りです。
未成年者控除への影響を確認してみましょう。
まずは、通達から確認します。

相続税法基本通達19の3-1

法第19条の3第1項の未成年者控除の規定は、財産を取得した者が相続を放棄したことにより相続人に該当しないこととなった場合においても、その者が無制限納税義務者で20歳未満(注)の者に該当し、かつ、当該被相続人の民法第5編第2章の規定による相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)に該当するときは、適用があることに留意する。

(注) 令和4年4月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得する者については、18歳未満。

一番最後の(注)書きが追加されました。
令和4年(2022年)4月1日以降の相続開始案件から20歳となっていた計算式を18歳に引き下げて計算します。控除額が減少するので納税者にとっては不利な改正ですね。

これだけなら難しくないのですが、未成年者控除を複数回適用する場合には若干ややこしくなります。これも通達から確認しましょう。専門家以外は読み飛ばして大丈夫です。

相続税法基本通達19の3-5

法第19条の3第3項に規定する「第1項の規定による控除を受けることができる金額」とは、相続又は遺贈により財産を取得した者(制限納税義務者を除く。)が当該相続(以下19の3-5において「今回の相続」という。)の前に開始した相続(当該開始した相続が2回以上あった場合には、最初の相続。以下19の3-5において同じ。)によって財産を取得した際に控除することができる未成年者控除額をいうのであるから留意する。

(注) 上記の「控除することができる未成年者控除額」は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める年数1年につき10万円の割で計算することに留意する。

(1) 今回の相続が平成27年1月1日から令和4年3月31日までの間に開始したものである場合 今回の相続の前に開始した相続の際のその者が20歳に達するまでの年数

(2) 今回の相続が令和4年4月1日以後に開始したものである場合 今回の相続の前に開始した相続の際のその者が18歳に達するまでの年数

未成年者が複数回相続した場合には、それぞれの相続において未成年者控除の適用が可能です。
ただし、2回目以降の相続では1回目で適用した金額を控除することはできません。
この場合において、2回目の相続が未成年者年齢引き下げ後の令和4年4月1日以降だった場合にどのように計算すべきかを上記の通達で述べているのです。

ややこしいので具体例を使って確認しましょう。具体例は国税庁HPの設例と同じです。

〇 第1回目の相続 平成27年
未成年者の年齢 1歳
未成年者の相続税額 90万円…①
(扶養義務者の相続税額はないものとする。)
未成年者控除額
10万円✕(20歳-1歳)=190万円…②
控除された金額 ①<②…90万円…③

〇 第2回目の相続 令和5年
未成年者の年齢 9歳
未成年者の相続税額 100万円…④
(扶養義務者の相続税額はないものとする。)
1回目の相続における未成年者控除限度額
10万円×(18歳-1歳)=170万円…⑤
⑤-③(既往の控除額)=170万円-90万円=80万円…⑥
2回目の未成年者控除額
10万円✕(18歳-9歳)=90万円…⑦
⑦>⑥ ∴ 80万円…⑧
納付すべき相続税額
④-⑧=20万円

2回目の控除額計算における1回目の控除額を20歳ではなく18歳として再計算するのがポイントです。(赤字部分)

戦略的未分割申告

未成年者が共同相続人にいる場合にはその未成年者に法定相続分相当の財産を取得させなければならず、未成年者である子に何千万円、何億円もの財産を所有させるのは問題があると考える親権者も実務上は多いです。
また、遺産が1億6,000万円以下の場合にはすべての遺産を配偶者が相続することにより配偶者の税額軽減により相続税の負担をゼロにすることができますが、未成年者に相続させる必要がある場合には相続税の負担も生じてしまいます。
このような場合に、未成年者が成人になるのを待って遺産分割協議をする方法が考えられます。
この際に未成年者が成人になる前に相続税申告期限が到来してしまった場合には、未分割で一度相続税申告をする必要があります。
なお、この戦略的な未分割申告を使えるケースは、その未成年者の年齢が20歳に近い場合に限られます。
すなわち、未成年者の年齢が成人になるまで3年以上ある場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出する必要があり、共同相続人の中に未成年者がいるだけの理由では承認されない可能性が高いためです。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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