【遺言書の効力は何?】遺言書でできることと書き方を文例付きで紹介
遺言書は、作成した人の最後の意思表示であり、様々な法的効力を持つ書類です。
「誰にどんな財産を相続させるのか」を示す以外にも、遺言書でできることは多くあります。
ここでは、遺言書が持つ法的効力と効力を持つための遺言書の書き方について紹介します。
遺言の全体像を詳しく知りたい人は、遺言を書いて争族回避! 遺言書の作成方法、効力等をわかりやすく徹底解説!をご参照ください。
目次
遺言書の法的な効力は限定されている
遺言書には、書き方次第で様々な法的な効力を持たせることができますが万能ではありません。
遺言書に記載することで法的な効力を持つ事項は、民法によって定められた事項しか認められておらず、この事項のことを「法定遺言事項」と言います。
法定遺言事項は「相続に関する事項」「財産の処分に関する事項」「身分に関する事項」「遺言の執行に関する事項」の4つに限定されており、それ以外の事項を遺言書に記載したとしても法的な拘束力を持ちません。
法定遺言事項以外のことを「付言事項」と言います。
例えば「遺言書を作成する心境」や「ペットの世話について」「葬儀方法についての希望」などが付言事項としてあげられます。
付言事項に従うかどうかについては、相続人に委ねられることになります。
遺言書の効力を文例付きで紹介
法的な効力を持つ主な法定遺言事項について、その効果と遺言書の書き方を紹介します。
遺産分割の指定ができる
「誰に、どんな資産を、どれくらい相続させるのか」を記載し、遺産分割について指定することができます。
これが一般的な遺言書のイメージではないでしょうか。
遺産分割について指定する際は、財産の記載を正確に行わなければなりません。
もし、遺言書に記載した財産が不明確であり、財産を特定することができない場合は遺言が成立しないこともあります。
遺産分割の指定についての文例は「【その遺言書は有効?】遺言書の書き方を文例付きでわかりやすく解説!」をご覧ください。
遺産分割を禁止することができる
遺言書により「一定期間、遺産分割を禁止する」ことができます。
遺産分割の禁止期間は最大で相続開始より5年間です。
遺産分割が禁止されている間は、原則的に遺言書と異なる遺産分割を行うことはできません。
この事項は、相続時に冷静に遺産分割ができないと思われる状況で、冷却期間を置きたい場合や相続人に未成年者がおり、家庭裁判所による特別代理人の選任を回避したい場合などに活用されます。
遺産分割を禁止する際の遺言書は、次のように記載します。
第〇条 遺言者は遺産の全部において、その分割を相続開始の時から5年間禁止する。
相続人を廃除することができる
相続人の廃除とは、被相続人が特定の相続人に虐待など、被相続人が相続人に財産を相続させたくないと思っても当然な理由がある場合、遺言書にその旨を記載することでその相続人から相続権を失わせる制度です。
相続人の廃除が行われた場合、その相続人は被相続人の財産を一切相続することができず、遺留分についても認められません。
遺留分については「遺留分 わかりやすく徹底解説!」で詳しく紹介しています。
相続人を廃除する際の遺言書は、次のように記載します。
第〇条 遺言者は、次男 日本橋 次郎を相続から廃除する。日本橋 次郎はギャンブルにおぼれて借金を繰り返し、金がなくなると遺言者へ金をせびりにきて「早く死んで保険金をよこせ」などと暴言を吐き、暴力をふるい、金を盗むこと行為をし続けた。このような行為は遺言者に対する虐待、侮辱、非行であると言えるため、同人を廃除する。
第三者へ財産を遺贈できる
亡くなった人の財産は、原則的には法定相続人が相続することになりますが、遺言書に記載することで第三者へ財産を引き継がせることができます。
相続人以外へ財産を引き継がせる行為を「遺贈」と言い、相続人へ財産を引き継がせる相続とは異なります。
遺贈される人のことを「受遺者」と言い、受遺者は自分の意思で遺贈を受け入れるかどうか選択することができます。
また、受遺者は相続が発生した時点で生存している必要があり、もし遺言書に記載されている受遺者が遺言者よりも先に死亡している場合は、遺贈は無効となります。
遺言書による遺贈は、親に対して財産を遺す場合に活用されることが多くあります。
例えば、配偶者や子がいる場合、親は相続人ではありません。親に財産の一部を遺す場合には、相続ではなく遺贈になります。
遺贈する際の遺言書は、次のように記載します。
第〇条 遺言者は下記の財産を父 日本橋 一郎に遺贈する。
1.預貯金
〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
口座名義人 〇〇〇〇
遺贈の場合は「相続させる」ではなく「遺贈する」になりますので注意しましょう。
後見人を指定することができる
相続人である子が未成年の場合、自分が亡くなった後の子の未成年後見人を遺言により指定することができます。
未成年後見人は、法定代理人として未成年者の法律行為や財産管理を行うことができ、未成年者が両親を亡くした場合や両親が離婚後、親権のある親を亡くした場合などに選任されます。
未成年後見人は、相続財産の名義変更や死亡保険金の受け取りなどの手続きを行うために必要になり、遺言書で未成年後見人を指定していなければ家庭裁判所への申立てが必要になります。
遺言書で未成年後見人を指定する場合には後見監督人を指定することもできます。
未成年後見人を指定する際の遺言書は、次のように記載します。
第○条 次男 日本橋 次郎は未成年であるため、未成年後見人として次の者を指定する。
住所 東京都中央区日本橋○番地○
氏名 日本橋 花子
第○条 次男 日本橋 次郎の未成年後見監督人として次の者を指定する。
住所 東京都中央区日本橋○番地○
氏名 田中 太郎
遺言執行者の指定ができる
遺言の内容を実現するための手続きを行う遺言執行者を遺言書で指定することができます。
遺言執行者は、相続財産目録を作成したり、預金口座や不動産の名義変更手続きを行なったり、遺言の内容を実現するための必要な権限を持ちます。
「遺言書のとおりに円満に相続してくれるだろうか」「遺言に従わずに遺産分割協議で決めてしまわないだろうか」などの不安がある場合に遺言執行者の指定が有効です。
遺言執行者は個人だけではなく法人がなることも可能です。
遺言執行者を指定する際の遺言書は、次のように記載します。
第○条 本遺言の遺言執行者として次の者を指定する。
住所 東京都中央区日本橋○番地○
氏名 日本橋 花子
生命保険の受取人を変更できる
遺言書に記載することにより「生命保険の受取人を変更することができます。
新たに受取人になる人は誰でもいいというわけではなく、原則的に保険約款等で決められている人の範囲内になります。
生命保険の受取人を変更する際の遺言書は、次のように記載します。
第○条 遺言者は、下記生命保険契約による生命保険金の受取人を、日本橋 花子に変更する。
保険証書番号 ××××
保険契約日 令和〇年〇月〇日
保険の種類 ××保険
保険金額 〇〇〇万円
保険者 ○○保険
契約者 日本橋 一郎
被保険者 日本橋 太郎
婚外子を認知することができる
婚姻関係にない人との間に生まれた子(婚外子)を遺言書で認知することができます。遺言書で認知したうえで、その子に遺産を相続させることも可能です。
遺言書で認知した場合には「10日以内に認知の届出」を行わなければなりません。
婚外子を認知する際の遺言書は、次のように記載します。
第〇条 遺言者は東京都中央区日本橋○番地○(本籍) 田中 花子を認知する。
祭祀主宰者の指定ができる
代々のお墓や仏壇などの管理や法事の主宰を行う祭祀主宰者を遺言書で指定することができます。
祭祀主宰者は必ずしも相続人の中から指定する必要はありません。また、複数人指定することも可能です。
祭祀主宰者の指定する際の遺言書は、次のように記載します。
第〇条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として次男 日本橋 次郎を指定する。
遺留分の侵害には注意が必要
遺留分とは、相続人が最低限相続できる相続財産の割合のことを言います。
遺留分を侵害する遺言書は原則的に有効ですが、遺留分を侵害された相続人が他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」を起こしトラブルに発展してしまう可能性がありますので、遺留分を侵害しないように配慮した遺言書を作成しましょう。
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