上場株式、投資信託等の遺産分割と証券口座の相続手続きの注意点まとめ

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相続手続き

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

亡くなった人が証券口座を保有していた場合、その証券口座の遺産分割や相続手続きについてどんな注意点があるのか、わからない人も多いと思います。

遺産分割や相続手続きを誤ったことにより将来的に損をしてしまうこともあります。

今回は、証券口座の遺産分割、相続手続きの注意点についてわかりやすく徹底解説します。

動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!

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1. 上場株式、投資信託等の遺産分割の注意点

上場株式、投資信託等の有価証券を遺産分割する上で留意すべき主なポイントは下記の通りです。

① 評価時期、評価方法の確認
② 含み損益(購入価額)も加味すべし
③ 税金を節約するために配偶者が取得すべき銘柄
④ 単元株未満の遺産分割の可否
⑤ 取得銘柄と未収配当金の関係

なお、遺産分割協議書の書き方については、遺産分割協議書の書き方 注意点も含めてわかりやすく徹底解説!をご参照ください。

① 評価時期、評価方法の確認

上場株式、投資信託等の有価証券は日々時価が変動します。
遺産分割でいつの時価を採用するかは非常に重要な事項となります。

相続税申告では、死亡時の時価(上場株式については死亡月やその前月等の平均値も採用可能)を採用しますが、遺産分割ではどの時点の時価を採用しないといけないのでしょうか?

例えば、A株式の死亡時の株価が100円で、半年後の遺産分割の株価が200円となってい場合に100円と200円のどちらを基準とすべきかという問題が生じます。
より、公平な遺産分割を考えるのならば遺産分割日に近い株価を採用すべきですが、遺産分割日をいつにするか等を考えていくときりがありません。

結論としては、遺産分割における有価証券の評価時期、評価方法には特段の決まりがなく、相続人間で合意した方法であれば問題ないということになります。

なお、調停や審判の現場だと特定の一定時点での株価(死亡日や遺産分割日の前日の終値等)ではなく、遺産分割日に近接する一定の期間を定めてその間の株価を平均した金額で評価することが多いです。

相続税申告での有価証券の評価方法は、相続税申告 有価証券(上場株式、債券、投資信託)、ゴルフ会員権等の評価方法と調査方法をご参照ください。

相続財産の評価時点の解説は、遺産分割、相続税申告、特別受益、遺留分、生前贈与加算などの評価基準日(評価時点)を徹底解説をご参照ください。

② 含み損益(購入価額)も加味すべし

有価証券の遺産分割に当たり考慮すべきは現在の時価だけで良いでしょうか?

それでは、公平な遺産分割は出来ません。

各銘柄の遺産分割時点の評価損益も加味しなければなりません。

例えば、下記2つの銘柄があったとします。

A株
現在の株価:500万円、購入価額:100万円
B株
現在の株価:500万円、購入価額:1,000万円

さて、上記のA株とB株だとどちらの株式を相続したいですか?
現在の株価が同じなんだからどっちでもいいと思った人は将来損してしまいますよ!

それぞれの株式を売却したときの手取り額を確認してみましょう。

A株:500万円-80万円(所得税、住民税(売却益400万円×20%))=420万円
B株:500万円-0円(譲渡損のため所得税等は発生せず)=500万円

※取得費加算や復興特別所得税は考慮してません。

手取り額は80万円もの差額が生じてます。
それだけでなく、B株については500万円の譲渡損があり、この損を他の譲渡益と相殺できるのです。
すなわち、潜在的な利益を考えると実際の手取り額80万円だけでなく他の譲渡益とぶつけた結果による所得税節税額100万円(譲渡損500万円×20%)の合計180万円もの差が生じているのです。

有価証券の遺産分割には、上記のように各銘柄の購入価額も非常に重要な要素となるためその辺も踏まえた上で遺産分割を検討するようにしましょう。

③ 税金を節約するために配偶者が取得すべき銘柄

配偶者がどの有価証券を相続するかも重要なポイントとなります。
理由としては、次の配偶者の相続のことや相続した有価証券を売却した際の所得税が関係するためです。

二次相続の観点 所得税の観点
相続後に値下がりした銘柄を取得すべし 利益が出ていない銘柄を取得すべし

相続後に値下がりした銘柄を取得すべし

相続税評価は前述の通り死亡時の時価が採用されます。
死亡時の時価が高ければ配偶者の取得する財産が多くなり、配偶者の税額軽減の適用金額が大きくなります。
すなわち、全体の相続税を抑えることが出来るのです。
配偶者の税額軽減の詳しい解説は、相続税の配偶者控除で1億6千万円まで無税!二次相続も踏まえて適用をご参照ください。

また、二次相続においては、配偶者が取得した有価証券の時価が下がっていれば下がっているほど二次相続の相続税を抑えることが可能です。

結論としては、一次相続の相続税、二次相続の相続税の両方を節約するためには、相続後に値下がりしている有価証券は配偶者に寄せるというのがポイントです。

利益が出ていない銘柄を取得すべし

利益が出ている銘柄は、売却したときにその利益に対して所得税、住民税が課税されます。
相続財産を売却したときの所得税計算の大きな特例に、取得費加算の特例というものがあります。
納めた相続税の一部を所得税上の経費に算入できるという特例です。
取得費加算の詳しい解説は、相続税の取得費加算の特例をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

取得費加算の特例を適用できるのが相続税を納めている人です。
配偶者については配偶者の税額軽減により相続税が発生しないことが多いです。
したがって、配偶者については取得費加算の特例を適用できない可能性も高いのです。

結論としては、近い将来売却する予定の有価証券で利益が出ている銘柄は配偶者に寄せないというのがポイントです。

④ 単元株未満の遺産分割の可否

上場株式には、単元株という取引できる最小の株数が決まっています。
以前は銘柄ごとに1株、100株、1,000株等と単元株数が異なっておりましたが、現在では全銘柄につき100株が単元株となっています。

単元株未満の株数で遺産分割をすると市場で売却できない可能性があるため、できるだけ遺産分割後に100株以上となるように注意しましょう。

なお、最近だと証券会社によってはミニ株、S株、単元未満株等の名称で100株未満の取引もできるケースもあります。
ただし、単元株未満だと下記のようなデメリットもあるため注意が必要です。

□売買できる時間が決まっている(証券会社によっては終値でしか売買できない)
□売買手数料が割高になる
□銘柄によっては単元株未満の売買ができない
□証券会社によっては単元株未満の売買ができない

単元株未満で遺産分割をしてしまって、後日証券会社から単元株未満の市場取引はできませんと言われた場合には、市場では通常の売買できずに「単元未満株式買取請求」といって証券会社又は株主名簿管理人である信託銀行に買い取ってもらうしか方法がなくなります。

必ず、事前に証券会社に単元株未満の売買が可能かどうか等の確認をしてから遺産分割協議をするようにしましょう。

⑤ 取得銘柄と未収配当金の関係

相続財産に未収配当金が含まれることがあります。
未収配当金も遺産分割の対象であるためその元となった有価証券とは切り離して遺産分割をすることも可能です。
ただし、将来、相続人の確定申告で配当所得の申告をする際に複雑なことにならないように有価証券と未収配当金の取得者は銘柄ごとに同じ人にしておいたほうが良いでしょう。
未収配当金の相続税評価についての詳しい解説は、未収配当金、配当期待権、未収分配金の相続税評価を徹底解説をご参照ください。

2. 証券口座の相続手続きの注意点

証券口座の相続手続きをするに当たり、留意すべき事項をまとめていきます。

① 被相続人と同じ証券口座を開設しないといけない?

被相続人が保有する証券口座を相続人が持っていなかった場合には、原則として同じ証券口座を相続人にて新規に開設する必要があります。

例えば、被相続人が大和証券の口座を保有していて、相続人は野村證券の口座しかもっていなかった場合を想定してください。
被相続人の大和証券の口座から相続人の野村證券の口座へは直接移管できません。
まずは、相続人の大和証券の口座を新たに開設してその後相続人の野村證券の口座に移管することとなります。

日本国内の殆どの証券会社が相続手続きで相続人の口座に移管する場合には同じ証券会社の口座に移管しないといけないようです。

② 特定口座、一般口座、NISA口座の移管先口座の決まりはある?

被相続人の証券口座が特定口座、一般口座、NISA口座のいずれかだった場合に相続人の移管先の口座に縛りはあるのでしょうか?

あります!

相続人の特定口座に移管するためには取得費が判明していなければなりません。
また、被相続人のNISA口座は相続人のNISA口座へは移管できません。
被相続人のNISA口座の銘柄を売却した場合、相続発生日の時価と取得費の差額は非課税となるため、相続発生日の時価を相続人の取得費としてその後の所得税の計算を行います。

以上をまとめると下記の通りです。

被相続人の口座種類 相続人の口座種類
特定口座 特定口座
一般口座
一般口座
(取得費判明)
特定口座
一般口座
一般口座
(取得費不明)
一般口座
NISA口座 特定口座
一般口座

NISA口座の相続手続きの詳しい解説は、NISA口座は相続できる?所得税の取扱は?をご参照ください。

③ 非居住者は原則として国内証券口座を相続できない?!

非居住者は国内の証券口座を開設できないことが多いです。
その居住国の金融商品取引関連法に抵触するおそれがあるためです。
どうしても非居住者が有価証券を相続する必要がある場合には、その非居住者の親族等の日本居住者名義で代理人口座を開設してその口座に移管する方法を採用するしかないでしょう。

上場株式、投資信託等の遺産分割と証券口座の相続手続きの注意点まとめの写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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