相続でサブスク地獄!? 遺族がやるべき順序と注意点

- スマホ・メール解約を先にすると、後のサブスク手続きが物理的に不可能になる。
- 故人のサブスクは「自動で止まらない」ため、気づかないと数年課金されることも。
- 相続放棄予定なら、支払い行為そのものが放棄を無効にする危険性がある。
- 契約の発見は「銀行明細」から始まり、その後にスマホ確認へ進むのが正順。
- ログイン不可でも各社カスタマーサポートで解約可能。焦らず対応するのが吉。
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目次
- 1 なぜスマホ・メール解約が「一番最後」でなければならないのか
- 2 放置されたサブスクが生む、見えない損失
- 3 相続放棄を検討している場合、サブスク支払いは要注意
- 4 「銀行明細」から始まる、サブスク契約の逆算的発見
- 5 メール検索による「通知の確認」という第二段階
- 6 スマホ・パソコンへのアクセスが可能な場合の効率的確認法
- 7 「ログイン不可」であっても各社サポートで解約できる仕組み
- 8 デバイスがロックされている場合の現実的な対策
- 9 相続人が「早めに対応すべき理由」を整理する
- 10 解約できない・わからないときの「最後の砦」
- 11 よくある誤解と現実
- 12 最後に:スマホ・メールの「命綱」を最後まで保持すること
なぜスマホ・メール解約が「一番最後」でなければならないのか
通信契約を先に止めると起きる「デジタル孤立」
相続手続きが発生したとき、最初の判断ミスが全てを台無しにすることがあります。
それが「故人のスマホ・携帯電話を先に解約してしまう」という決定です。
多くのご遺族は「もう使わないから」という理由で、相続のあらゆる手続きに先駆けてこれらの契約を停止してしまいます。
しかし、この判断は、その後に続く「デジタル資産の整理」を完全に困難にさせる引き金になるのです。
なぜなら、ほぼ全てのサブスク解約には「SMSコード」または「メール認証」が必須だからです。
スマホの電話番号が使えなくなれば、SMS認証コードは受け取れません。
メールアドレスが機能しなくなれば、確認メール・解約リンク・パスワードリセットが全て不可能になります。
結果として、解約したくても「システム上、本人以外は操作できない」という岩盤に突き当たることになるのです。
実際に起きた「スマホ解約後の地獄」ケース
あるご遺族の例です。
故人(68歳・女性)のスマホ回線を「相続直後」に停止しました。
その3週間後、通帳から毎月1,490円の「Amazon Prime」引き落としが発覚。
「すぐに解約したい」と思ったご遺族でしたが、Amazonのログイン画面にたどり着いた時点で壁にぶち当たりました。
Amazonのアカウントには、本人メールアドレスと、認証用に登録された電話番号(既に停止済み)が紐付いていました。
パスワードを忘れているため、再設定しようにも「確認コードはSMSで送信されます」という画面が出るだけです。
SMS受信ができないため、パスワード再設定すら不可能。
結局、Amazon カスタマーサービスに「契約者死亡による解約」を正式に申し出て、書類3通を郵送し、2ヶ月半待った末にようやく解約できました。
その間、Amazon Prime の課金は止まらず、計4,460円余分に引き落とされていました。
このご遺族は「もしスマホを止めなかったら、その日のうちに解約できたはずです」と後に述べられています。
通信契約の停止が「唯一のアクセス手段」を奪う理由
デジタル時代の相続では、スマホと通信回線が「唯一の鍵」になっています。
Apple、Google、Bank系アプリなど、重要なアカウントのほぼ全てが「電話番号でのSMS認証」に依存しているからです。
「Googleアカウント」さえ失うと、Gmail内の契約通知は見られず、Playストアのサブスク一覧も確認できなくなります。
つまり、スマホ・メール回線は、相続人が「故人の全デジタル資産を確認・整理するための入り口」そのものなのです。
それを先に塞いでしまえば、後は「郵送での書類手続き」「カスタマーサポートへの電話確認」など、極めて時間のかかる迂回ルートしか残りません。
放置されたサブスクが生む、見えない損失
1年間気づかなかった場合の実損額
故人がサブスク契約を多数持っていた場合、1年間の放置でいくら損失が生じるでしょうか。
以下は、一般的なサブスク構成例です。
- Netflix(スタンダード):月1,590円 ×12ヶ月 = 19,080円
- Spotify Premium:月1,580円 ×12ヶ月 = 18,960円
- Amazon Prime:月600円 ×12ヶ月 = 7,200円
- iCloud+(200GB):月400円 ×12ヶ月 = 4,800円
- Adobe Creative Cloud Pro:月9,080円 ×12ヶ月 = 108,960円(ビジネス利用の場合)
これら5つのサービスだけで、年間約14万円の損失です。
「小さな額」と思いますか。
何より、「使っていないサービス」にお金が流れ続けているという非効率さは、遺族にとって精神的な負担にもなるのです。
クラウド上の「消える思い出」
Dropbox、Google Photoなどのクラウドストレージに保存された故人の写真・動画が、放置によって失われることがあります。
有料から無料へダウングレードされると、各サービスの規約に基づき一定の猶予(例:30日等)後に超過データが削除される場合があります。
期間はサービスにより異なります。
それまでに対応しなければ、二度と取り戻せない形で消失してしまうのです。
「数年前の家族の思い出」を失う。
これは金銭的な損失では計り知れない苦しみを生むのです。
相続放棄を検討している場合、サブスク支払いは要注意
「支払い行為」が放棄を無効にする法的根拠
相続放棄とは、民法915条で「自己のために相続があったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述する」手続きです。
相続放棄を検討中は、民法915条の熟慮期間である3ヶ月以内に手続が必要です。
放棄前に相続財産を処分すると、民法921条1号の「みなし単純承認」と評価され、放棄ができなくなる可能性があります。
サブスクリプション費用の支払いが「処分」に当たるかは、目的・必要性・態様等の事情で評価が分かれ得るため、一律に安全とは言えません。
放棄を視野に入れる場合は、支払い・ログイン・解約依頼の名義や方法を慎重に設計し、早期に専門家へ相談してください。
「銀行明細」から始まる、サブスク契約の逆算的発見
なぜ銀行明細が最初の手がかりなのか
故人のサブスク契約を安全に把握するには、「最初のアプローチ」が極めて重要です。
最初にすべきは、スマホを触ることではなく、銀行口座・クレジットカード明細を入手することです。
理由は単純です。
サブスク契約のほぼ全てが「毎月同じ日に同じ金額の引き落とし」という痕跡を残すからです。
この「痕跡」は、故人のメールを見られなくても、スマホにアクセスできなくても、確認できるのです。
つまり、銀行明細こそが「スマホ・メール・デバイスに依存しない、唯一の確実な発見ルート」なのです。
明細から読み取る「サブスク引き落としのパターン」
銀行明細に以下のような名称が出ていれば、サブスク契約の可能性が高いです。
- 「APL*」→ Apple系(iCloud、Apple Music等)
- 「GOOGLE*」→ Google系(YouTube Premium、Google One等)
- 「AMAZON.JP」→ Amazon Prime(月額600円が一般的)
- 「NETFLIX.COM」→ Netflix(月額1,490円~2,390円)
- 「SPOTIFY AB」→ Spotify(月額1,580円)
- 「RAKUTEN.CO.JP」→ 楽天系サービス
- 「DMM.COM」→ DMMの各種定額サービス
「毎月●日に980円」「毎年●月に●●円」という定期的なパターンがあれば、それはほぼ確実にサブスク契約です。
3ヶ月から1年分の明細を遡って確認することが、隠れたサブスク発見の第一歩です。
メール検索による「通知の確認」という第二段階
「ご請求」「更新」「料金」で検索
銀行明細で「何か月額が引かれている」ことが判明した後に、次のステップは故人のメール確認です。
「検索」機能を使って、以下のキーワードで検索すると、サブスク関連のメールが一覧表示されます。
- 「ご請求」
- 「ご利用明細」
- 「サブスク」
- 「更新」
- 「定期購入」
- 「月額」
- 「年額」
これらのキーワードで検索することで、家族が知らなかった契約が次々と浮かび上がることがあります。
例えば、「Adobe」のメールを見つけるまで、家族は故人がAdobe Creative Cloudを年4万円近く払っていたことに全く気づいていなかった、というケースもあります。
メール検索は、銀行明細で発見した「謎の定期引き落とし」が「何のサービスか」を特定するための重要な手段なのです。
スマホ・パソコンへのアクセスが可能な場合の効率的確認法
iPhone・Androidの「定期購入一覧」を一括確認
もしスマホにアクセスできるなら、最も効率的なのが「定期購入管理画面」の確認です。
iPhone(Apple ID経由):設定 → 自分の名前 → サブスクリプション → 全契約が一覧表示
Android(Google Play経由):Google Playストア → プロフィールアイコン → お支払いと定期購入 → 定期購入 → 全契約が一覧表示
ここに表示されるサブスクは、「その人が実際に契約している」ことを意味します。
銀行明細と照合すれば、漏れなく全数把握ができるのです。
パスワード管理アプリの確認
1Password、Lastpass、Google パスワードマネージャーなどに保存されたログイン情報から、複数のサブスク契約が一度に判明することもあります。
これらのアプリにアクセスできれば、後の「ログイン情報がわかっている状態での解約」が可能になるのです。
「ログイン不可」であっても各社サポートで解約できる仕組み
なぜ各社カスタマーサポートが「本人確認」で対応するのか
多くのご遺族が「パスワードがわからないから解約できない」と諦めてしまいます。
しかし、これは大きな誤解です。
ほぼ全てのサブスク会社は「相続人による解約」を制度化しているのです。
その理由は、法的なコンプライアンスです。
契約者が亡くなった後も勝手に課金を続ければ、それは「故人の資産から無断で差し引いている」ことになり、相続法に抵触する可能性があるからです。
だから各社は「死亡届 + 戸籍謄本 + 相続関係図」などの書類を提出されれば、ログイン情報がなくても解約を受け付けるのです。
大手サービスの「死亡に関する解約」窓口
Netflix、Amazon、Apple、Google などのサービスには、公式サポートページに「契約者死亡時の対応」が明記されています。
各社の手続きはやや異なりますが、基本は共通です。
1. カスタマーサポートに「契約者が亡くなった」と連絡。
2. 必要書類を確認。
3. 書類を郵送またはメール提出。
4. 審査後、解約または契約終了。
この流れが「1~3週間」で完結することがほとんどです。
手間はかかりますが、ログイン情報がなくても確実に解約できるのです。
小規模なサービスの場合は「直接問い合わせ」が有効
大手以外のサブスクでも、カスタマーサポートがあれば同様の対応が可能です。
むしろ小規模サービスほど、「ご遺族からのお問い合わせ」に対して丁寧に対応してくれることが多いのです。
「契約者が亡くなりました。解約したいのですが、ログイン情報がわかりません」と伝えれば、ほぼ必ず道筋を示してくれます。
デバイスがロックされている場合の現実的な対策
iPhoneロックと「デジタル遺産アクセス機能」の限界
故人のiPhoneが「Face ID」でロックされている場合、通常の操作では開けません。
Apple は iOS 15.2以降「デジタル遺産アクセス機能」を提供していますが、生前に「信頼できる連絡先」として登録されていることが条件です。
事前登録がなければ、解除には「死亡証明書」や「裁判所命令」が必要になり、個人レベルでは対応困難です。
つまり、この機能は「生前準備がある人のための機能」に過ぎないのです。
データ復旧業者への依頼という選択肢
スマホのロック解除が本当に必要な場合は、データ復旧専門業者に依頼することが選択肢になります。
ただし費用は数万円単位で発生し、データ消失のリスクもあります。
「本当にそこまでの対応が必要か」を見極めることが重要です。
実は、スマホがロックされていても、銀行明細やメール確認からサブスク契約を把握できれば、ロック解除は不要なことも多いのです。
相続人が「早めに対応すべき理由」を整理する
支払い滞納による「未払い通知ハガキ」の波状攻撃
クレジットカードを停止し、銀行口座を凍結すれば、サブスクの引き落としはできなくなります。
すると、サービス会社から「料金未納」のハガキが殺到することになります。
その段階で初めて「これらのサービス、全部契約していたんだ」と気づくご遺族も少なくありません。
つまり、「後から気づく」というプロセスを避けるためにも、早期の対応が重要なのです。
時間経過による「証拠隠滅」のリスク
メールボックスの受信期限切れ、サービス側の記録保持期限、クレジット明細の確認可能期間なども、全て有限です。
数年放置すれば、「本当にこのサービスに契約していたのか」という証明自体が困難になることもあります。
解約できない・わからないときの「最後の砦」
デジタル遺品整理専門業者の活用
「何のサブスクがあるか全くわからない」「ログインできない」「対応しきれない」
そうした状況では、デジタル遺品整理の専門業者に依頼するのが現実的です。
こうしたサービスは以下が可能です。
- デバイス解析による隠れたサブスク発見
- 複数社への正式な解約申請・代行
- 未払い通知への対応
- その他のデジタル資産(ネットバンク、仮想通貨など)の調査
費用は「一時的な出費」ですが、その後の相続手続きの正確性と効率を考えれば、投資の価値があることも多いのです。
よくある誤解と現実
Q. 銀行口座を凍結すれば、サブスクは止まる?
支払いが滞ればサービスは停止しますが、「解約」ではなく「未払い状態」として扱われます。未払い金が膨らみ続け、延滞通知が届くことになります。正式な解約手続きが必須です。
Q. クレジットカード会社に「契約者死亡」を報告すれば、勝手に対応してくれる?
いいえ。カード会社は「支払いを止める」だけで、サブスク会社には何も通知しません。サービス側は「支払えない状態」と認識するだけです。各社への解約申請は、遺族が行う必要があります。
Q. 年払いのサブスクは、返金される?
サービスによって異なります。Amazon Primeなど返金制度があるものもありますが、全サービスがそうとは限りません。利用規約を確認し、各社に問い合わせるのが確実です。
最後に:スマホ・メールの「命綱」を最後まで保持すること
相続におけるサブスク対応で最も重要なのは「決定の順序」です。
不動産、預貯金、株式など従来の相続手続きと異なり、デジタル契約は「物理的なアクセス手段を失えば、完全に対応不可能になる」という特性があります。
故人のスマホが手元にあり、電話番号が機能している間に、サブスク整理をしておく必要があります。
「まだ使うかもしれない」という理由で、スマホ・メール・通信契約を「最後の最後」まで保持することが、結果的に最も効率的で、損失を最小化する道なのです。
その間の月額料金は「サブスク整理の正確性と完全性を確保するための必要コスト」と考えるべきなのです。
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