韓国相続手続き【在日韓国人向け】書類取得から申告まで

・在日韓国人の準拠法は原則韓国法 ※遺言で“常居所地法”等を選べる例外あり
・韓国の相続税は最高税率50%で日本(55%)より若干低い
・韓国の遺留分:配偶者・直系卑属は法定相続分の1/2(直系尊属は1/3)※兄弟姉妹は2024/4/25の憲法裁判所決定で遺留分なし
・韓国戸籍(家族関係証明書等)の取得が必須、日本の戸籍では代替不可
・二重課税は外国税額控除で調整可能だが、申告手続きは両国で必要
「父は韓国籍のまま日本で亡くなりました。相続手続きはどうすればよいですか?」
在日韓国人の相続は、日本で生まれ育った方でも韓国民法が適用されるという点で、非常に複雑です。
日本に住んでいるのに、なぜ韓国の法律が適用されるのか?
相続税は日本と韓国のどちらに払うのか?
今回は、在日韓国人・韓国籍の方の相続手続きについて、準拠法から相続税、必要書類まで詳しく解説します。
国際相続の準拠法については「国際相続があった場合の準拠法」も併せてご覧ください。
目次
在日韓国人の相続に韓国法が適用される理由
日本の国際私法(通則法)の規定
日本の「法の適用に関する通則法」第36条は、「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。
つまり、日本で相続手続きを行う場合でも、被相続人の国籍がある国の法律が適用されます。
韓国籍の方が日本で亡くなった場合、相続人の範囲、相続分、遺留分などは韓国民法に従って決まります。
韓国の国際私法との関係
韓国の国際私法でも相続は原則“死亡時の被相続人の本国法”ですが、遺言で①指定時の常居所地法(死亡まで維持が条件)②不動産は所在地法を指定できる例外があります。
日本と韓国の間で原則として「反致」(準拠法の送り返し)は発生せず、韓国籍の方の相続には一貫して韓国民法が適用されます。
国籍と準拠法の詳細は「国際相続 国籍についてわかりやすく徹底解説」をご参照ください。
帰化した場合の取扱い
日本に帰化して日本国籍を取得した場合は、日本民法が適用されます。
ただし、帰化前に発生した相続については、当時の国籍(韓国籍)に基づき韓国民法が適用されます。
韓国民法の相続制度
法定相続人と相続順位
韓国民法の法定相続人と相続順位は、日本と類似していますが、一部異なる点があります。
| 順位 | 韓国民法 | 日本民法との違い |
| 第1順位 | 直系卑属(子・孫) | 同じ |
| 第2順位 | 直系尊属(父母・祖父母) | 同じ |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 同じ |
| 第4順位 | 4親等以内の傍系血族 | 日本にはない |
配偶者は常に相続人となり、第1順位・第2順位の相続人と同順位で共同相続します。
法定相続分
韓国民法の法定相続分は以下のとおりです。
・配偶者と子が相続人の場合:配偶者は子の相続分の1.5倍
・配偶者と直系尊属が相続人の場合:配偶者は直系尊属の相続分の1.5倍
・同順位の相続人が複数いる場合:均等
具体例:配偶者と子2人の場合
・子1人あたりの相続分を「1」とすると
・配偶者の相続分は「1.5」
・合計:1.5 + 1 + 1 = 3.5
・配偶者:1.5/3.5 ≒ 42.9%
・子1人:1/3.5 ≒ 28.6%
日本民法では配偶者1/2、子1/4ずつですので、韓国民法の方が配偶者の取り分がやや少なく、子の取り分がやや多くなります。
遺留分
韓国にも遺留分制度があり、日本と同様の考え方です。
・直系卑属:法定相続分の2分の1
・配偶者:法定相続分の2分の1
・直系尊属:法定相続分の3分の1
韓国では従来、兄弟姉妹にも遺留分がありましたが、2024年4月25日の韓国憲法裁判所決定で兄弟姉妹の遺留分規定(民法1112条4号)が単純違憲とされ、同日から効力を失いました。したがって、現在は兄弟姉妹の遺留分は認められません。
遺留分の詳細は「遺留分 わかりやすく徹底解説!」をご覧ください。
韓国の相続税制度
相続税の課税対象
韓国の相続税は、被相続人が韓国居住者の場合は全世界財産、非居住者の場合は韓国国内財産のみが課税対象となります。
在日韓国人で日本に長年居住している場合、韓国の税法上は原則として『非居住者』となるため、韓国国内に財産がなければ韓国での相続税は発生しない可能性が高いでしょう。
韓国相続税の税率
| 課税標準 | 税率 |
| 1億ウォン以下 | 10% |
| 1億~5億ウォン | 20% |
| 5億~10億ウォン | 30% |
| 10億~30億ウォン | 40% |
| 30億ウォン超 | 50% |
最高税率は50%で、日本(55%)より若干低くなっています。
基礎控除
韓国の相続税には以下の控除があります。
・子などの人的控除:子1人につき5,000万ウォン(未成年者控除などの加算あり)
・一括控除:5億ウォン(「基礎控除+人的控除の合計」と比べて大きい方を採用)
・配偶者控除:配偶者が実際に相続した額(最低5億ウォン、上限30億ウォン等。原則、申告期限後6か月以内の分割が条件)
日本での相続税申告
日本の相続税の課税対象
在日韓国人が日本で亡くなった場合、日本でも相続税が課税されます。
被相続人・相続人ともに日本に住所がある場合、全世界の財産が日本の相続税の課税対象となります。
納税義務の判定については「国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!」をご参照ください。
二重課税の調整(外国税額控除)
韓国国内に財産があり、韓国でも相続税を支払った場合、外国税額控除により日本の相続税から控除できます。
外国税額控除については「相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説」をご覧ください。
相続税申告の実務上のポイント
日本の相続税申告では「日本民法の法定相続人」で基礎控除を計算しますが、遺産分割は「韓国民法」に従って行います。
この「法律の二重構造」が、在日韓国人の相続を複雑にしている要因の一つです。
必要書類と取得方法
韓国の家族関係証明書
在日韓国人の相続では、韓国の家族関係登録簿に基づく証明書が必要です。
2008年に韓国の戸籍制度が廃止され、現在は「家族関係登録制度」に移行しています。
・基本証明書:本人の出生、死亡、国籍等の基本情報
・家族関係証明書:父母、配偶者、子との関係
・婚姻関係証明書:婚姻に関する情報
・親養子入養関係証明書:養子縁組に関する情報
証明書の取得方法
韓国の家族関係証明書は、以下の方法で取得できます。
方法1:駐日韓国大使館・領事館で取得
日本国内の韓国大使館または領事館で申請できます。本人または委任を受けた代理人が申請可能です。
方法2:韓国の市区役所で取得
韓国に行く機会があれば、本籍地の市区役所で取得できます。
方法3:オンラインで取得(大韓民国政府24)
韓国のオンラインサービスを利用して取得することも可能ですが、韓国の住民登録番号が必要です。
日本の戸籍との関係
在日韓国人は日本の戸籍には記載されていません(外国人登録制度→在留カード制度)。
日本の金融機関や不動産登記では、韓国の家族関係証明書に加えて、日本での住民票(除票)や在留カードの写しなども求められます。
翻訳と認証
韓国語の証明書は、日本語への翻訳が必要です。
金融機関や法務局によっては、翻訳者の資格証明や宣誓供述書を求められる場合もあります。
翻訳・認証手続きについては「相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説【海外提出用書類の準備】」をご参照ください。
相続手続きの流れ
ステップ1:相続人の確定
韓国民法に基づき、法定相続人を確定します。
家族関係証明書を取得し、被相続人の親族関係を確認します。
ステップ2:財産・債務の調査
日本国内の財産(不動産、預貯金、有価証券等)に加え、韓国国内に財産がないかも確認します。
韓国に不動産や預金がある場合は、韓国での相続手続きも必要です。
ステップ3:遺産分割協議
相続人全員で遺産分割協議を行います。
韓国民法の法定相続分を参考に協議しますが、相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる分割も可能です。
ステップ4:相続税申告(日本)
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、日本の税務署に相続税申告書を提出します。
申告期限については「相続税の申告期限はいつまで!?」をご覧ください。
ステップ5:名義変更手続き
不動産の相続登記、預貯金の解約・名義変更、有価証券の名義変更などを行います。
韓国の家族関係証明書と日本語訳を添付する必要があります。
特別永住者の相続の注意点
特別永住者とは
特別永住者とは、サンフランシスコ平和条約により日本国籍を離脱した在日韓国人・朝鮮人およびその子孫で、「出入国管理及び難民認定法」に基づく特別永住許可を受けた方です。
相続における特別永住者の取扱い
特別永住者であっても、韓国籍であれば韓国民法が適用されます。
日本での長期居住歴は、準拠法の判定には影響しません。
ただし、相続税については、日本居住者として全世界財産が課税対象となります。
朝鮮籍の方の相続
「朝鮮籍」は国籍ではなく、便宜上の記号です。
朝鮮籍の方が亡くなった場合、準拠法は複雑な問題となりますが、実務上は韓国民法または日本民法を類推適用するケースが多いです。
韓国に財産がある場合
韓国での相続手続き
被相続人が韓国に不動産や預金を持っていた場合、韓国でも相続手続きが必要です。
韓国では日本のような「遺産分割協議書」ではなく、「相続財産分割協議書」を作成し、公証を受けることが一般的です。
韓国不動産の相続登記
韓国の不動産を相続する場合、韓国の登記所(登記局)で相続登記を行います。
必要書類は以下のとおりです。
・被相続人の基本証明書、家族関係証明書
・相続人全員の基本証明書、印鑑証明書
・相続財産分割協議書(公証済)
・不動産登記簿謄本
・取得税等の納付証明書
韓国の預金の解約
韓国の銀行口座を解約する場合、韓国の銀行に直接出向くか、韓国の弁護士・司法書士に委任する必要があります。
海外銀行口座の解約については「海外銀行口座の相続解約で失敗しない!5つの落とし穴と対策」も参考にしてください。
よくある質問
Q1. 在日韓国人3世ですが、韓国語が話せません。韓国の書類を取得できますか?
日本国内の韓国大使館・領事館で取得できます。日本語での対応も可能です。委任状を作成すれば、行政書士等に取得を依頼することもできます。
Q2. 被相続人が帰化を申請中に亡くなりました。準拠法はどうなりますか?
帰化は許可されるまで効力が発生しません。帰化申請中に亡くなった場合は、死亡時の国籍(韓国籍)に基づき、韓国民法が適用されます。
Q3. 韓国に不動産がありますが、日本の相続税申告に含める必要がありますか?
はい、日本居住者の相続では、韓国の不動産も含めて全世界財産が課税対象となります。韓国で相続税を支払った場合は、外国税額控除を適用できます。
Q4. 日本民法と韓国民法で相続分が違いますが、どちらで遺産分割すべきですか?
韓国民法に基づく法定相続分が適用されますが、相続人全員の合意があれば、どのような割合で分割しても構いません。重要なのは、遺産分割協議書の作成と全員の署名・押印です。
Q5. 相続放棄は韓国の裁判所に申し立てる必要がありますか?
相続放棄は準拠法に左右されます。実務上は、韓国家庭法院での相続放棄手続が必要になることが多いため、日本側だけで完結するかは個別に確認が必要です(期限管理も含め専門家へ)。
相続放棄については「【相続放棄の期限は3か月】期限の延長方法についても詳しく解説!」もご覧ください。
まとめ:在日韓国人の相続は専門家への相談を
在日韓国人の相続は、日本法と韓国法の両方が関係する複雑な手続きです。
□ 相続人・相続分は韓国民法が適用される
□ 韓国の家族関係証明書の取得が必須
□ 日本で相続税申告、韓国に財産があれば韓国でも申告
□ 二重課税は外国税額控除で調整可能
□ 不動産登記・預金解約には韓国語書類の翻訳が必要
手続きを誤ると、相続登記ができない、相続税の申告漏れが発生するなどのトラブルにつながります。
当事務所では、在日韓国人の相続税申告の実績も豊富です。
韓国籍の方の相続でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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