タイ不動産相続|知らないと没収?外国人の土地制限

・タイの相続税は、受け取る財産の純額が1億バーツ(約4億円)を超える部分に課税され、配偶者は非課税
・外国人は原則土地を保有できず、コンドミニアムも要件(49%枠など)次第では相続後に売却が必要
・タイの相続手続きは裁判所の「遺産管理人選任」が必要で6か月~1年以上かかる
・日本居住者はタイ財産も含めて日本で相続税申告が必要
・遺言書があれば手続きが大幅に簡略化される
「タイに長期滞在していた父が亡くなりました。タイの財産はどうすればよいですか?」
タイは日本人のロングステイ先として人気No.1で、コンドミニアムや銀行口座を持つ方が増えています。
しかし、タイの相続手続きは日本と大きく異なり、裁判所の関与が必要です。
今回は、タイに財産がある場合の相続手続きについて、不動産・銀行口座の名義変更から税金まで、詳しく解説します。
各国のプロベート比較については「プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較【税理士解説】」も参考にしてください。
目次
タイの相続制度の概要
タイの準拠法
タイの国際私法では、不動産の相続は所在地法(タイ法)、動産の相続は被相続人のドミサイル(住所地)法が適用されます。
したがって、日本人がタイに財産を持っていた場合:
・タイの不動産 → タイ民商法典が適用
・タイの預金等 → 被相続人の死亡時ドミサイルが日本なら日本法、タイならタイ民商法典が適用
ただし、タイ国内での手続きは、いずれもタイの裁判所を通じて行う必要があります。
準拠法の詳細は「国際相続があった場合の準拠法」をご覧ください。
タイ民商法典の法定相続人
タイ法が適用される場合、法定相続人は以下の順位で決まります。
| 順位 | 相続人 |
| 第1順位 | 直系卑属(子・孫) |
| 第2順位 | 父母 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹の全血 |
| 第4順位 | 兄弟姉妹の半血 |
| 第5順位 | 祖父母 |
| 第6順位 | 叔父叔母 |
生存配偶者は常に相続人となり、順位に応じて異なる相続分を受けます。
法定相続分
タイの法定相続分は、相続人の組み合わせにより異なります。
・配偶者と子:配偶者は子と同等の相続分
・配偶者と父母:配偶者は2分の1
・配偶者と兄弟姉妹(全血)または祖父母:配偶者は2分の1
・配偶者と兄弟姉妹(半血)または叔父叔母:配偶者は3分の2
・配偶者のみ:全財産
タイの相続手続き(遺産管理人選任)
裁判所の関与が必要
タイでは、日本のような「遺産分割協議書」だけでは相続手続きが進みません。
裁判所で「遺産管理人(Administrator)」を選任してもらう必要があります。
この手続きは、遺言がある場合でも必要です(遺言執行者を遺産管理人として認定してもらう)。
手続きの流れ
ステップ1:必要書類の準備
・被相続人のパスポート
・相続人の戸籍謄本(英訳・公証・アポスティーユ付き)
・相続人のパスポート
・遺言書(ある場合)
・タイの財産に関する書類(権利証、通帳等)
ステップ2:遺産管理人選任の申立て
タイの管轄裁判所に、遺産管理人選任の申立てを行います。
通常、タイの弁護士に委任して手続きを進めます。
ステップ3:裁判所の審理・決定
裁判所は、申立ての内容を審理し、遺産管理人を選任します。
異議がなければ、通常2~3か月で決定が出ます。
ステップ4:遺産管理人証明書の取得
裁判所から「遺産管理人証明書」が発行されます。
この証明書があれば、銀行口座の解約や不動産の名義変更が可能になります。
所要期間と費用
| 項目 | 目安 |
| 手続き期間 | 6か月~1年以上 |
| 弁護士費用 | 15万~50万バーツ(50万~180万円) |
| 裁判所費用 | 数千バーツ |
| 翻訳・認証費用 | 5万~10万円 |
外国人の不動産所有制限
土地所有の原則禁止
タイでは、原則として外国人は土地を所有できません。
これはタイ土地法に基づく規制で、相続の場合も例外ではありません。
相続した土地の取扱い
外国人が土地を相続した場合、以下の対応が必要です。
・タイ人に贈与する
・タイ法人に譲渡する
許可が得られない場合は原則として1年以内に処分が求められ、未処分のときは当局が処分手続を行うことがあります。
コンドミニアムは所有可能
ただし、コンドミニアム(分譲マンション)については、外国人でも所有が認められています。
条件は、そのコンドミニアム全体の外国人所有割合が49%以下等であることです。
日本人がタイで購入する不動産は、ほとんどがコンドミニアムです。
コンドミニアムの相続手続き
コンドミニアムを相続する場合、以下の流れで名義変更を行います。
1. 裁判所で遺産管理人選任
2. 遺産管理人証明書を取得
3. 土地局(Land Office)で名義変更手続き
4. 移転登記税等の支払い
タイの銀行口座の相続
口座凍結と解約
被相続人の死亡がタイの銀行に通知されると、口座は凍結されます。
解約には、遺産管理人証明書の提示が必要です。
海外銀行口座の解約については「海外銀行口座の相続解約で失敗しない!5つの落とし穴と対策」も参考にしてください。
必要書類
・遺産管理人のパスポート
・被相続人の死亡証明書
・通帳、キャッシュカード(あれば)
日本への送金
口座解約後、日本に送金する場合は、タイの外国為替管理法に基づく手続きが必要です。
相続による送金であることを証明する書類(遺産管理人証明書等)を銀行に提示します。
タイの相続税
2016年から相続税導入
タイでは2016年2月1日から相続税が導入されました。
ただし、タイの相続税は、受け取る財産の純額が1億バーツを超える部分に課税され、配偶者は非課税であるため日本人の多くは影響がないでしょう。
税率
| 相続人の区分 | 税率 |
| 直系尊属・直系卑属 | 5% |
| その他の相続人 | 10% |
1億バーツを超える部分にのみ課税されます。
日本での相続税申告
日本居住者がタイの財産を相続した場合、日本でも相続税が課税されます。
タイで相続税を支払った場合は、外国税額控除を適用できます。
外国税額控除については「相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説」をご覧ください。
遺言書の重要性
遺言があれば手続きが簡略化
タイの財産について遺言書を作成しておくと、相続手続きが大幅に簡略化されます。
・遺言執行者をそのまま遺産管理人に選任できる
・相続人間の協議が不要
・裁判所の審理期間が短縮される
タイでの遺言書作成
タイで有効な遺言書の形式は以下の5種類です。
1. 自筆証書遺言
2. 公正証書遺言
3. 秘密証書遺言
4. 口授遺言(特別の方式)
5. 略式遺言(特別の方式)
日本で作成した遺言書も、タイで有効と認められる場合があります。ただし、タイ法に適合した内容・形式であることが重要です。
英文遺言書については「国際相続で有効な英文遺言書の作成方法と注意点」をご参照ください。
実務上の注意点
長期化リスクへの備え
タイの相続手続きは、日本と比較して長期化する傾向があります。
・裁判所の審理に時間がかかる
・書類の不備があると追加提出が必要
・異議申立てがあるとさらに長期化
手続き中も不動産の管理費や固定資産税は発生するため、資金計画を立てておくことが重要です。
現地弁護士の選定
タイの相続手続きは、現地の弁護士に依頼するのが一般的です。
バンコクには日本語対応可能な弁護士事務所もあります。
弁護士選びのポイントは「国際相続に強い税理士・弁護士の選び方【失敗しない5つのポイント】」をご覧ください。
タイ語書類の翻訳
タイの裁判所に提出する日本の書類(戸籍謄本等)は、タイ語への翻訳と認証が必要です。
在タイ日本大使館での認証、またはアポスティーユの取得が必要となります。
アポスティーユについては「相続でアポスティーユが必要な場合の取得方法を完全解説」をご参照ください。
まとめ:タイの相続は遺言書と早めの準備が鍵
タイの相続手続きは、裁判所の関与が必要で時間がかかります。
□ 裁判所で遺産管理人選任が必要(6か月~1年以上)
□ 外国人は土地を相続しても1年以内に売却が必要
□ コンドミニアム・銀行口座は外国人でも相続可能
□ タイの相続税は基礎控除1億バーツで影響は限定的
□ 日本では全世界財産として相続税申告が必要
□ 遺言書があれば手続きが大幅に簡略化
タイに財産をお持ちの方は、生前に遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。
当事務所では、タイの弁護士とも連携し、日本の相続税申告からタイでの手続きまでサポートしております。
タイの財産がある相続でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. タイ人の配偶者がいる場合、土地を相続できますか?
外国人配偶者は土地を相続できませんが、タイ人配偶者は相続できます。実務上は、タイ人配偶者に土地を相続させ、外国人相続人はコンドミニアムや預金を相続するケースが多いです。
Q2. タイの銀行口座の残高がわかりません。調べる方法はありますか?
遺産管理人に選任されれば、タイの銀行に照会することができます。選任前の段階では、被相続人の書類(通帳、取引明細、銀行からの郵便物等)から推測するしかありません。
Q3. タイの不動産を売却した場合、日本で税金はかかりますか?
はい、日本居住者がタイの不動産を売却した場合、日本で譲渡所得税が課税されます。タイでも売却に伴う税金(源泉徴収等)が発生しますが、外国税額控除の対象となります。
Q4. 父がタイで再婚していました。日本の家族も相続できますか?
タイ法では、法律婚の配偶者と子が相続人となります。日本の家族(子)も相続人として認められますが、タイの配偶者との間で遺産分割協議が必要です。準拠法や相続分の問題もあり、専門家への相談をお勧めします。
Q5. タイでの相続手続きを日本から進めることはできますか?
タイの弁護士に委任すれば、日本にいながら手続きを進めることができます。ただし、書類への署名や公証のために、日本の公証役場やタイ大使館に出向く必要があります。裁判所への出廷は弁護士が代理で行います。
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