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遺産分割後に新しい財産が見つかったら|追加の遺産分割協議と名義変更の進め方

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 遺産分割協議を終えて名義変更も済ませた後に、把握していなかった預金口座や不動産が見つかることは、実務では珍しくありません。数年経ってから保険会社や自治体からの通知で判明することもあります。
  • このとき、原則としてすでに済ませた遺産分割協議をすべてやり直す必要はありません。遺産分割は財産の一部ずつ行うことが認められており(民法907条1項)、当初の協議はそのままに、見つかった財産についてだけ追加の協議をすれば足りるのが基本です。
  • その前に確認したいのが、当初の遺産分割協議書にある「本協議書に記載のない財産」の条項です。取得者を決める条項があれば、追加協議を経ずに名義変更へ進める可能性があります。
  • 本記事では、条項の確認から、追加の遺産分割協議書の作り方(文例つき)、財産の種類別の名義変更、相続税の再計算(修正申告・更正の請求)、見落としを防ぐ財産調査まで、相続を専門に扱う行政書士が順を追って解説します。

「相続手続きはすべて終わったはずなのに、証券会社から父宛ての取引残高報告書が届いた」「実家の物置から、知らない銀行の通帳が出てきた」——。遺産分割協議の後に新しい財産が見つかったとき、多くの方が「協議は無効になるのか」「全部やり直しなのか」と不安になります。

結論からいえば、当初の遺産分割協議が無効になることは原則としてなく、全部をやり直す必要もありません。対応は、①当初の協議書の条項確認、②見つかった財産だけの追加協議、③名義変更と相続税の再計算、という流れで進めれば足ります。ただし、協議を全部やり直す場合や、条項で取得者が決まっている財産を別の人に渡す場合には、贈与税・譲渡の問題が生じ得るなど、知らないと損をする論点がいくつかあります。

本記事では、遺産分割後に財産が見つかったときの対応を、冒頭の判断表・協議書の条項確認・追加協議のしくみ・全部やり直しのリスク・追加協議書の作り方・財産別の名義変更・相続税への影響・見落としの防ぎ方の順に解説します。

なお、相続税の修正申告や更正の請求などの税務は税理士、不動産の相続登記は司法書士、財産の隠匿や遺産の範囲を巡る相続人間の紛争は弁護士の領域です。行政書士は、追加の遺産分割協議書の作成・委任の範囲での財産調査の支援・預貯金等の名義変更手続きを担い、各専門家と連携します。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀を拠点に、全国からのオンライン相談に対応しています。


まず全体像——状況別の対応早見表

新しい財産が見つかったときの対応は、状況によって変わります。まず全体像を早見表で示します。

状況 原則的な対応
当初協議書に、後から判明した財産の取得者が明記されている 条項の適用範囲と提出先の取扱いを確認して名義変更
「別途協議する」とある、または条項がない 見つかった財産だけを追加協議
条項で取得者が決まっているが、別の相続人へ渡したい 贈与・譲渡課税の可能性を税理士へ確認
巨額の財産、または財産隠匿の疑いがある 追加協議書を作る前に弁護士へ相談
相続税を申告済み 見つかった財産を含めて再計算し、修正申告・更正の請求等を判断
不動産が見つかった 相続登記の期限を司法書士へ確認

最初にすべきは当初の遺産分割協議書の読み直し

まず確認するのは、当初の協議書にある次のような条項の有無です。

  • 「本協議書に記載のない積極財産及び後日判明した積極財産は、相続人○○○○が取得する」(取得者を決める型)
  • 「本協議書に記載のない財産が発見された場合は、相続人全員で別途協議する」(別途協議型)

この条項は積極財産(プラスの財産)に限定して書くのが安全です。借入金などの金銭債務は原則として法定相続分で各相続人に承継され、特定の相続人が全額負担する内部合意は債権者の同意なしには債権者に対抗できないため、債務は積極財産の包括条項とは分けて扱います。

取得者を決める条項があれば、追加協議が不要になる可能性がある

取得者を明記した条項がある場合、追加の遺産分割協議が不要となる可能性があります。ただし、条項の文言、見つかった財産の種類・金額、金融機関や登記手続の運用によっては、追加協議書や相続人全員の確認を求められることがあります。名義変更に着手する前に、提出先(金融機関・法務局)へ必要書類を確認してください。

「別途協議する」型・条項なしなら追加協議へ

「別途協議する」と定めている場合や、そもそも条項がない場合は、見つかった財産の帰属が決まっていないため、次の見出しのとおり追加の遺産分割協議を行います。


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条項がなければ「見つかった財産だけの追加協議」でよい

「記載のない財産」条項がない場合でも、全部をやり直す必要はありません。民法907条1項は、共同相続人がその協議で「遺産の全部又は一部の分割」をすることができると定めており、遺産分割は一部ずつ行うことが認められています(2018年の民法改正で条文上も明確化されました)。

当初の協議は有効なまま

当初の遺産分割協議は、そのとき把握していた財産についての一部分割として有効に成立しています。新しい財産が見つかっただけで、当初協議やそれに基づく名義変更が当然に無効になるわけではなく、その効力は原則として維持されます。ただし、当初協議について錯誤・詐欺・財産隠匿などによる取消しが問題となる場合は別で、この点は後述します。

追加協議の対象は「見つかった財産」だけ

追加で行う協議の対象は、新しく見つかった財産だけです。当初協議で帰属が決まっていない財産については、現在の権利者全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分けることも原則として可能です。「当初は長男が多めに取得したから、今回の預金は次男が取得する」といった調整も、全員が合意すればできます。ただし次の点に注意してください。

  • 当初協議の条項ですでに取得者が決まっている財産を別の人に渡すと、追加の遺産分割ではなく、贈与・譲渡と評価される可能性があります
  • 代償金が取得財産の価額と著しく不均衡な場合は、贈与税の問題が生じることがあります
  • 換価分割・代償分割は、協議書の記載と実際の資金の動きを一致させる必要があります

追加協議も「相続人全員」で

追加協議も遺産分割協議である以上、相続人全員の参加と合意が必要です。当初の相続人がすでに亡くなっている場合は、その地位を引き継いだ人(数次相続の相続人)も加わります。疎遠になった相続人と改めて連絡を取る必要がある場合の進め方は、相続人と連絡が取れない場合の記事もあわせてご確認ください。

例外:協議の前提が根本から崩れている場合

見つかった財産があまりに大きく、その存在を知っていれば当初の協議に合意しなかったといえるような場合には、錯誤(民法95条)を理由に当初の協議の取消しを主張し得る余地があります。一部の相続人が財産を故意に隠して合意させていた場合は、詐欺(民法96条)の問題になり得ます。いずれも財産の金額だけで当然に取消しになるわけではなく、当時の認識や合意の経緯から個別に判断され、取消権には期間の制限もあります。こうしたケースは相続人間の紛争そのものであり、交渉・主張の代理は弁護士の領域です。早めに弁護士へ相談してください。


後から見つかった財産の追加協議書作成から名義変更まで、専門家連携でサポート。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、遺産分割後に見つかった財産について、当初協議書の条項確認・後日判明財産の資料整理・追加の遺産分割協議書の作成・委任の範囲での財産調査の支援・預貯金や株式の名義変更に対応します(相続税の修正申告・更正の請求は税理士、不動産登記は司法書士、紛争は弁護士へ連携)。ご相談時に当初の遺産分割協議書と新たに見つかった財産の資料をご用意いただければ、追加協議が必要か、当初の条項で処理できる可能性があるかを整理します。初回相談無料。

03-6280-5188

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00


協議全体のやり直しは可能だが「贈与税」に注意

「せっかくだから、今回見つかった財産も含めて分け方を全部組み直したい」と考える方もいます。この「全部やり直し」は法律上は可能ですが、税務上の大きな注意点があります。

法律上:全員の合意があればやり直せる

判例上、共同相続人全員の合意があれば、いったん成立した遺産分割協議を合意解除して、改めて分割協議をやり直すこと自体は可能とされています。「当初の協議に不満が残っていた」「事情が変わった」という場合の選択肢ではあります。

税務上:贈与税・所得税が課されるリスクがある

しかし税務では、いったん有効に成立した遺産分割をやり直して財産を動かすと、相続人間の新たな贈与(または譲渡)として贈与税・所得税の課税対象になり得ます。「相続のやり直しだから相続税の枠内」とはならない点が、実務上の最大の落とし穴です。やり直しを検討する場合は、実行する前に必ず税理士に確認してください。課税関係の詳細は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【遺産分割協議をやり直すと贈与税が課税に】税金の課税関係をわかりやすく解説」で詳しく解説されています。

実務の原則:追加協議で完結させる

以上から、実務の原則は「当初の協議は動かさず、見つかった財産だけの追加協議で完結させる」ことです。当初協議で帰属が決まっていない財産を、相続人全員の合意により初めて分割する場合には、通常、相続による取得として扱われます。一方、当初協議の条項ですでに取得者が決まっていた財産を動かす場合や、代償金が取得財産と著しく不均衡な場合などには、贈与税等の問題が生じ得ます。全部やり直しは、錯誤や隠匿など当初の協議の効力自体に問題がある場合の例外的な選択肢と考えるのが安全です。


追加の遺産分割協議書の作り方——記載のポイントと文例

追加協議がまとまったら、追加の遺産分割協議書を作成します。基本の形式は通常の遺産分割協議書と同じですが、追加協議ならではのポイントがあります。

ポイント1:当初の協議との関係を明記する

当初協議の効力に争いがなく、相続人全員がその内容を維持する意向である場合には、今回の協議が「後日判明した財産のみ」を対象とすることを冒頭に明記します。これにより「全部やり直し」との誤解を避けられます。ただし、当初協議について錯誤・詐欺・財産隠匿などの疑いがある場合は、安易に「当初協議は有効」と確認する条項を入れず、先に弁護士へ相談してください。

ポイント2:見つかった財産を正確に特定する

預金なら金融機関名・支店名・種別・口座番号を、不動産なら登記事項証明書のとおり所在・地番・家屋番号を記載します。特定が曖昧だと、金融機関や法務局で手続きが通らないことがあります。

ポイント3:署名・押印は実務上の要件を確認

遺産分割協議の成立自体には法律上の様式はありませんが、金融機関や相続登記等の手続に使用するため、実務上は相続人全員が署名し、実印を押印して、印鑑登録証明書を添付する方法が一般的です。海外居住の相続人については、署名証明書(サイン証明)等で代替する場合があります。

文例(作成前の確認事項)

当初協議について錯誤・詐欺・財産隠匿その他の取消原因が疑われる場合は、この文例を使用せず、弁護士へ相談してください。(「当初協議に異議はない」といった追認的な文言を安易に入れると、後で取消しを主張しにくくなるおそれがあります。)そのほか、当初協議の条項で取得者が決まっていないこと、当初の相続人が存命であること(死亡している場合は現在の権利者を確認)も前提です。高額な代償金を設定する場合は、使用前に税理士へ確認してください。

<文例1:後日判明した預金のみを追加分割する場合>

被相続人○○○○(令和○年○月○日死亡)の相続人全員は、その後新たに判明した下記財産について、次のとおり分割することに合意した。本協議は、令和○年○月○日付け遺産分割協議書に記載された財産を対象とせず、その後新たに判明した下記財産のみを対象とする。
1. 次の預金は、相続人○○○○が取得する。
 ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

<文例2:一人が取得し、他の相続人へ代償金を支払う場合>

  1. 下記不動産は、相続人○○○○が取得する。(不動産の表示は登記事項証明書のとおり記載)
  2. 相続人○○○○は、前項の取得の代償として、相続人△△△△に対し金○○円を、令和○年○月○日までに△△△△の指定する口座へ振り込む方法により支払う。

代償金方式では、取得財産・代償金額・支払義務者・受領者・支払期限・支払方法を明記します。

ポイント4:再発に備える条項

今後さらに財産が判明した場合に備え、帰属先や再協議のルールを定める条項を入れておくと、手続きの繰り返しを避けられます。どの型が適するかは、想定される財産の金額や公平性の重視度によります。

条項の型 向いているケース 注意点
特定の相続人が取得する型 少額財産、手続担当者へ集約したい 巨額財産が見つかると不公平感が生じ得る
別途協議する型 財産額が読めない、公平性を重視 再度、全員の合意が必要

協議書作成の基本形や、行政書士に依頼した場合の流れは、遺産分割協議書の記事で詳しく解説しています。


見つかった財産の種類別・名義変更の進め方

追加協議書(または当初協議書の帰属条項)ができたら、財産ごとに名義変更・解約の手続きを進めます。

預貯金

金融機関に、追加協議書(または帰属条項のある当初協議書)・戸籍一式(法定相続情報一覧図でも可)・取得者の印鑑登録証明書等を提出して解約・払い戻しを受けます。長期間取引のない口座は休眠預金として扱われている場合がありますが、権利が消えるわけではなく、所定の手続きで払い戻しを受けられます。

株式・投資信託

証券会社経由の場合は、取得する相続人の口座へ移管する手続きになります。単元未満株や、証券会社を通さず保有していた端株が後から見つかることも多く、株主名簿管理人(信託銀行等)への照会が必要になる場合があります。

不動産

見つかった不動産(共有持分・私道持分・山林などが典型です)は、相続登記が必要です。相続登記には申請義務があり、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内(正確には、相続の開始と、自分がその不動産を相続で取得したことの両方を知った日から3年以内)に申請します(不動産登記法76条の2)。この義務は2024年4月1日より前に開始した相続にも及び、その場合は原則として2027年3月31日までが期限です(施行後に取得を知ったときはその日から3年以内となる場合があります)。後から判明した不動産は、この期限管理も重要です。登記の申請は司法書士の領域で、行政書士は前提となる戸籍・協議書の準備を担って連携します。費用感は相続登記費用の記事をご参照ください。

自動車・その他

自動車は運輸支局での移転登録、ゴルフ会員権は運営会社の名義書換など、財産ごとに手続き先が異なります。

注意:生命保険金は原則として遺産分割の対象外

後から保険証券が見つかった場合でも、受取人として特定の人が有効に指定された死亡保険金は、通常、受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象にはなりません(受取人が単独で保険会社に請求します)。ただし、受取人が被相続人本人になっている、受取人が先に亡くなっている、受取人指定が不明といった場合は、約款と契約内容の確認が必要で、遺産分割の対象になることもあります。相続税の計算上は課税対象に含まれ得るため、税務上の扱いは税理士に確認してください。


相続税への影響——修正申告か更正の請求かを見極める

新しい財産が見つかったときは、遺産分割だけでなく相続税への影響も必ず確認が必要です。ここは税理士の領域のため、行政書士の立場からは「何を確認すべきか」の整理にとどめます。

「財産が見つかった=修正申告」とは限らない

申告済みの場合でも、財産が見つかっただけで必ず修正申告になるわけではありません。見つかった財産を含めて相続税を再計算し、その結果で手続きが分かれます。

発生原因 手続き 主な期限
申告期限前に申告漏れ財産が判明 正しい内容の期限内申告書を提出(し直す) 申告期限内
申告期限後に申告漏れ財産で税額が増加 修正申告 税務署の更正前に速やかに
誤った評価等で当初税額が過大 国税通則法23条の更正の請求 原則、法定申告期限から5年
未分割申告後に遺産分割が成立し税額が減少 相続税法32条の更正の請求 原則、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内
分割後に税額が増加 修正申告 速やかに
分割によって初めて申告義務が発生 期限後申告 速やかに

特に見落としやすいのが、未分割申告のあとに分割が決まって税額が減るケースで、相続税法32条の更正の請求は「分割があったことを知った日の翌日から4か月以内」という短い期限です。追加財産と追加分割の内容を反映し、各相続人の課税価格・相続税総額の按分・配偶者の税額軽減・2割加算・各種税額控除等を再計算して、各人の確定税額が当初申告額を上回るか下回るかで修正申告か更正の請求かを判断します(取得財産額の増減だけで機械的には決まりません)。修正申告の必要なケース・ペナルティ・やり方は関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続税の修正申告とは?必要なケースとペナルティ・やり方を税理士が解説」で、更正の請求のしくみは同「国税通則法23条1項の更正の請求(通常の更正の請求)をわかりやすく解説」で詳しく解説されています。

放置は税務調査のリスクに直結

金融機関の口座や保険は、税務署が把握しやすい財産です。「少額だから」と放置すると、後の税務調査で申告漏れを指摘され、かえって負担が増えることがあります。

行政書士と税理士の連携

行政書士法人トゥモローズは、同一グループの税理士法人トゥモローズと連携しているため、追加協議書の作成から相続税の再計算(修正申告・更正の請求)の要否確認までを一体で進められます。「どちらに先に相談すべきか分からない」という段階のご相談でも差し支えありません。


財産の見落としを防ぐ——調査の方法と今後の備え

最後に、財産の見落としを防ぐ(これ以上出てこないか確かめる)ための調査方法を整理します。各制度には調べられる範囲に限界があるため、複数を組み合わせるのが実務です。

財産の種類別・調査の入口

  • 預貯金:通帳・郵便物・入出金履歴から取引金融機関を推測し、各行に全店照会(現存調査)を依頼する。全金融機関を全国一括で検索できる制度はないため、金融機関ごとの照会になります
  • 株式・投信:証券保管振替機構(ほふり)への開示請求で、口座のある証券会社等(口座管理機関)を確認できます。ただし銘柄・残高・取引履歴や、非上場株式・外国株式などは分からないため、判明した証券会社へ別途照会します
  • 不動産:市区町村の名寄帳で同一市区町村内の所有不動産を確認。2026年2月から始まった法務局の所有不動産記録証明制度で全国分を調べる方法もありますが、登記上の氏名・住所と検索条件が一致しないと抽出されず、未登記建物は対象外のため、旧住所・旧姓・表記揺れも含めて検討し、名寄帳と併用します
  • 生命保険:生命保険協会の生命保険契約照会制度で加入契約の有無を照会できます(会員会社・一定の有効契約が対象。共済等は別途確認)。存在確認後、詳細は各保険会社へ問い合わせます
  • 借金:信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への開示請求。ここで分かるのは登録された信用情報のみで、個人間の借入・税金・医療費・家賃・保証債務などは把握できません

郵便物の保管が有力な手がかり

後から財産が見つかる大きな端緒は被相続人宛ての郵便物です。残高報告書・配当通知・固定資産税の納税通知書・保険の契約内容通知などは、少なくとも1年分(できれば数年分)保管し、届くたびに財産の手がかりとして確認しましょう。

行政書士に依頼できる財産調査の範囲

行政書士は、相続人間に争いがない範囲で、相続人の委任を受け、各制度が認める範囲で財産調査の申請支援や代理を行えます。ただし、申請資格・代理人の範囲・開示結果の受取方法は制度ごとに異なり、すべての調査を同じ方法で一括代行できるわけではありません。不動産の登記手続き・必要資料・法務局の取扱いは、司法書士を通じて確認します。調査手順の全体像は、相続財産の調べ方の記事で解説しています。申告漏れになりやすい財産の傾向は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続税申告で漏れやすい財産ベスト10」も参考になります。

隠している相続人がいる疑いがあるなら弁護士へ

「同居していた相続人が財産を隠しているのではないか」という疑いがある場合、任意の調査には限界があります。紛争性のある調査・開示請求・交渉は弁護士の領域のため、早めに弁護士への相談へ切り替えてください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 遺産分割から何年も経ってから財産が見つかった場合でも、追加協議はできますか?

A. できます。遺産分割協議そのものに期限はなく、10年後・20年後に見つかった財産でも相続人全員の合意で分割できます。ただし2点に注意が必要です。第一に、年月の経過で当初の相続人が亡くなっていると、その人の地位を承継した人(数次相続の相続人)も協議に加わる必要があり、当事者が増えて協議が難しくなります。第二に、2023年4月施行の民法904条の3により、相続開始から10年を経過した後は、家庭裁判所の審判等では原則として特別受益・寄与分を反映した分割ができなくなります。もっとも、相続人全員が合意すれば、10年経過後でもこれらを考慮した分け方をすること自体は可能です。いずれにせよ、見つかったら早めに動くことが大切です。

Q2. 後から見つかったのが財産ではなく借金だった場合はどうなりますか?

A. 被相続人の金銭債務は、遺産分割協議の対象ではなく、原則として法定相続分に応じて各相続人に承継されます。相続人間で「長男が全部返す」と合意しても、債権者の同意がなければ債権者には対抗できません。多額の借金が後から判明した場合、相続開始から3か月の熟慮期間が過ぎていても、事情によっては相続放棄が例外的に認められる余地がありますが、借金を知らなかったというだけで熟慮期間が当然に再開するわけではありません。また、すでに相続財産を処分していると法定単純承認の問題も生じます。督促状などの資料を持って、すぐに弁護士または司法書士へ相談してください。

Q3. 見つかった口座が被相続人ではなく家族名義だった場合も、遺産分割の対象ですか?

A. 名義だけでは判断できません。被相続人が自分のお金を家族名義の口座に入れていた、いわゆる名義預金は、実質的には被相続人の財産として遺産分割や相続税の対象になり得ます。誰が原資を出したか・通帳や印鑑を誰が管理していたかなどで実質判断されます。役割分担としては、名義預金が民事上の遺産に含まれるかについて相続人間に争いがある場合は弁護士、相続税の課税財産に含まれるかは税理士が判断します。行政書士は、帰属について相続人間に争いがない場合に、資料の整理や合意内容に基づく協議書の作成を支援します。

Q4. 追加協議を、相続人の一人が拒否した場合はどうなりますか?

A. 追加協議も遺産分割協議である以上、相続人全員の合意が必要で、一人でも拒否すれば協議は成立しません。この場合、その見つかった財産について、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を図ることになります(当初協議で分割済みの財産まで蒸し返す必要はありません)。調停・審判の申立てや相続人間の交渉の代理は弁護士(裁判所提出書類の作成は司法書士も可)の領域です。行政書士は、その前提となる戸籍・財産資料の整理を担って連携します。

Q5. 相続税の申告期限前に財産が見つかった場合も、修正申告になりますか?

A. いいえ。修正申告は、いったん提出した申告の内容を後から訂正する手続きです。申告期限前であれば、まだ当初の申告書を出していないか、出していても期限内なので、見つかった財産を含めた正しい内容で期限内申告書を提出(または出し直し)すれば足ります。修正申告や更正の請求が問題になるのは、申告期限を過ぎてから財産が判明したケースです。期限が迫っている場合は、期限までに分割がまとまらない場合は、未分割のまま期限内申告をし、分割後の再計算結果に応じて修正申告または(税額が減るなら)相続税法32条の更正の請求(分割があったことを知った日の翌日から4か月以内)を行います。期限が迫っている場合は早めに税理士へ相談してください。


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まとめ

遺産分割後に新しい財産が見つかっても、慌てる必要はありません。まず当初の遺産分割協議書の条項を確認し、取得者を決める条項があれば提出先の取扱いを確認して名義変更へ、決まっていなければ見つかった財産だけの追加の遺産分割協議を行います(民法907条1項)。当初の協議は有効なままで、全部をやり直す必要はありません。

注意すべきは税務です。協議全体のやり直しや、条項で取得者が決まっている財産を別の人へ渡す場合には、贈与税・譲渡の問題が生じ得ます。実務の原則は「当初の協議は動かさず、追加協議で完結させる」こと。また、申告済みの場合は財産を含めて再計算し、税額が増えれば修正申告、減れば更正の請求を検討します(見つかった=必ず修正申告ではありません)。不動産なら相続登記の申請義務(相続の開始と不動産の取得を知った日から原則3年以内。2024年4月1日前の相続も対象で、原則2027年3月31日まで)の期限管理も忘れないでください。

修正申告・更正の請求などの税務は税理士、不動産の相続登記は司法書士、財産隠匿や遺産の範囲を巡る紛争は弁護士の領域です。行政書士は、追加の遺産分割協議書の作成・委任の範囲での財産調査の支援・預貯金等の名義変更を担い、各専門家と連携して進めます。「これで全部か」を確かめる財産調査までセットで行い、相続手続きを本当の意味で完了させましょう。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺産分割後に見つかった財産について、追加の遺産分割協議書の作成・委任の範囲での財産調査の支援・預貯金や株式の名義変更手続きに対応しています。ご相談の際は、当初の遺産分割協議書・新たに見つかった通帳や残高証明・登記事項証明書・当初の相続税申告書などをご用意いただくと、追加協議が必要か、当初の条項で処理できる可能性があるか、税理士・司法書士・弁護士への連携が必要かを整理してご案内できます。相続税の修正申告・更正の請求は税理士法人トゥモローズ、不動産登記は司法書士と連携して対応します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法907条1項(遺産の全部又は一部の分割の協議)
  • 民法909条(遺産の分割の効力)
  • 民法95条(錯誤による取消し)・96条(詐欺又は強迫による取消し)
  • 民法120条〜126条(取消権者・追認・法定追認・取消権の期間制限)
  • 民法904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
  • 民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  • 国税通則法19条(修正申告)・23条(更正の請求)
  • 相続税法27条(申告)・31条(修正申告)・32条(更正の請求の特則・分割後4か月)・55条(未分割遺産の申告)
  • 不動産登記法76条の2(相続登記の申請義務)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。