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共同遺言の禁止とは|夫婦連名の遺言が無効になる理由と正しい作り方

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遺言書作成

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない(共同遺言の禁止・民法第975条)。夫婦に限らず、親子・兄弟など2人以上すべてが対象。
  • 夫婦が1枚の紙に連名で書いた遺言は「共同遺言」に当たり、無効になる。内容が良くても形式で無効になりうる。
  • 禁止の理由は、遺言の自由な撤回と、各自の独立した意思を確保するため。1人1通が原則。
  • 夫婦で遺言を残したいときは、必ず1人ずつ別々の遺言書を作る。確実性を重視するなら公正証書遺言が確実。
  • 通常の遺言で決められるのは「自分の死亡時に、自分の財産を誰へ」まで。配偶者が取得した後の承継先まで拘束したいなら、遺言だけでは限界があり信託等も検討する。

「夫婦そろって、1通の遺言書に思いを書き残したい」。気持ちは分かりますが、これは法律上できません。民法は、2人以上の者が同一の証書で遺言することを禁止しています(共同遺言の禁止・民法第975条)。これは夫婦に限らず、親子・兄弟など2人以上であればすべて対象です。良かれと思って夫婦連名で作った遺言が、形式の問題で無効になってしまうことがあるのです。

本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、共同遺言が禁止される理由、無効になる具体例、夫婦で遺言を残す正しい方法を整理します。


共同遺言は禁止されている(民法第975条)

民法第975条は、「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない」と定めています。これを共同遺言の禁止といいます。

たとえば、夫婦が1枚の便箋に「私たちは、財産を子に相続させる」と連名で書き、2人が署名・押印したような遺言は、共同遺言に当たり無効になります。せっかく作っても効力が認められず、遺言がなかったのと同じ状態になってしまいます。

「夫婦の意思は同じだから、1通でまとめたほうが分かりやすい」と考えてしまいがちですが、法律はこれを認めていません。遺言は、あくまで1人ひとりが、自分自身の意思で、自分の証書に残すものなのです。


なぜ共同遺言は禁止されるのか

共同遺言が禁止されているのには、理由があります。

ひとつは、遺言の撤回の自由を確保するためです。遺言は、本人がいつでも自由に撤回・変更できるのが原則です。しかし、2人が同一の証書で遺言すると、一方が撤回・変更したいときに、他方の遺言部分にも影響が及び、自由な撤回が難しくなります。

もうひとつは、各自の独立した意思を守るためです。共同で1つの遺言を作ると、一方が他方の意思に引きずられたり、内容が相互に依存したりして、それぞれの真意がゆがめられるおそれがあります。こうした不都合を避けるため、民法は「1人1通」を原則としているのです。

このように、共同遺言の禁止は、遺言する人の自由と真意を守るためのルールです。形式的なルールに見えますが、遺言の根本的な性質に関わる重要な決まりです。


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どこまでが「同一の証書」か

問題になるのは、「同一の証書」で遺言したかどうかです。

  • 無効になりうる例:1枚の用紙に2人が記載し、署名・押印している。複数人の遺言が物理的に一体となっていて分けられない
  • 原則として問題ない例:夫婦それぞれが別の用紙に独立して作成した遺言書。たまたま同じ封筒に保管していても、証書自体が別であれば共同遺言には当たらない

実務では、「証書が一体かどうか」が判断の分かれ目になります。次のような作り方は、共同遺言と判断されるリスクがあります。

作り方判定・注意点
夫婦が1枚の紙に連名で書く共同遺言として無効リスクが高い
夫婦が1冊のノートに続けて書く同一証書と見られるリスクがある
夫婦の遺言をホチキス・製本で一体化する一体の証書と見られるリスクがある
夫婦それぞれが別々の紙に全文・日付・署名押印する共同遺言ではない
別々の遺言書を同じ封筒に保管する証書自体が別なら原則問題ない
公正証書遺言を夫婦それぞれ別々に作る最も安全な方法

裁判例では、同一の証書に2人の遺言が記載されている場合に全体が共同遺言に当たるとされた例があります。判断が微妙なケースもあるため、「有効になる余地」を探すのではなく、最初から完全に別々の遺言書として作成するのが安全です。とくに自筆証書遺言は、自分で作るぶん、うっかり共同遺言の形になってしまうリスクがあるため注意します。なお、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合も、1人1件・1人1通で作成・申請します。

すでに共同遺言の形で作ってしまった場合、本人が生きているうちなら、1人ずつ別々の有効な遺言を作り直せます。すでに本人が亡くなっていて作り直せない場合は、その遺言が有効かどうかが争いになることがあり、遺言無効確認などの対応は弁護士の領域です。


夫婦で遺言を残す正しい方法

夫婦で遺言を残したい場合は、夫と妻がそれぞれ別々の遺言書を1通ずつ作成します。内容をそろえたい場合でも、1通にまとめるのではなく、各自が自分の財産について、自分の遺言書で定めます。

たとえば、夫は「妻が自分より後に生存している場合は妻へ、妻が先に死亡している場合は子へ」と定め、妻も同様に定める方法があります。これは、配偶者が先に亡くなっていた場合に備える予備的な定め(予備的遺言)です。各自が自由に撤回できるため、相手の遺言に依存しすぎない設計にしておくことも大切です。

「配偶者の死亡後は子へ」は遺言だけでは限界がある

ここで注意したいのが、通常の遺言で決められるのは「自分が亡くなった時点で、自分の財産を誰に承継させるか」までだということです。「いったん配偶者に渡した財産を、その配偶者が亡くなった後は子へ」というように、配偶者が取得した後の次の承継先まで、自分の遺言で当然に拘束できるわけではありません(いわゆる後継ぎ遺贈的な希望には限界があります)。配偶者が取得した財産は、最終的には配偶者自身の遺言や遺産分割で決まります。

二次相続まで確実に道筋をつけたい場合は、遺言だけで足りるか、受益者連続型の信託(家族信託)・生命保険・生前贈与なども含めて検討します。

確実性を重視するなら、公正証書遺言で1人ずつ作成しておくと、方式不備や紛失のリスクがありません。夫婦の相続では、一次相続(先に亡くなった方の相続)だけでなく、二次相続(残された配偶者の相続)まで見据えて設計すると、相続税の負担も含めて全体を整えやすくなります。相続税を含めた設計は、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の節税は二次相続で決まる! 一次相続の遺産分割と対策の重要性

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):公正証書遺言の効果と作成方法をわかりやすく解説!!


遺言の作成や、夫婦での遺言設計については、こちらもあわせてご覧ください。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 夫婦で1通の遺言書を作ってもよいですか?

A. できません。遺言は2人以上が同一の証書ですることができず(民法975条)、夫婦が1枚の紙に連名で書いた遺言は共同遺言として無効になります。内容が良くても、形式が共同遺言に当たると全体が無効になりかねません。夫婦で遺言を残したい場合は、必ず1人ずつ別々の遺言書を作成します。

Q2. なぜ共同遺言は禁止されているのですか?

A. 遺言は、本人がいつでも自由に撤回でき、各自の独立した意思で行うべきものだからです。2人が同一の証書で遺言すると、一方が撤回したいときに他方の遺言にも影響し、自由な撤回や独立した意思の確保が難しくなります。こうした不都合を避けるため、民法は共同遺言を禁止しています。

Q3. 同じ封筒に2人分の遺言を入れたら共同遺言になりますか?

A. 問題になるのは「同一の証書」で遺言したかどうかです。それぞれが別の用紙に独立して作成した遺言書であれば、同じ封筒に入っていても、原則として共同遺言には当たりません。一方、1枚の用紙に2人が記載するなど、証書が一体になっていると無効と判断されるおそれがあります。判断が微妙なケースもあるため、別々に明確に作成するのが安全です。

Q4. 夫婦で内容をそろえた遺言を残したい場合はどうすればよいですか?

A. 夫婦それぞれが、自分の遺言書を1通ずつ作成します。内容をそろえたい場合でも、1通にまとめず、各自が自分の財産について別々の証書で定めます。「配偶者が先に死亡していたら子へ」という予備的な定めも、各自の遺言に置けます。確実性を重視するなら、公正証書遺言で1人ずつ作成しておくと安心です。

Q5. 共同遺言とわかったら、どうすればよいですか?

A. 共同遺言に当たる遺言書は無効になるおそれが高いため、有効な遺言を残したいなら、改めて1人ずつ遺言書を作成し直します。すでに本人が亡くなっていて作り直せない場合は、その遺言が有効かどうかが争いになることがあり、対応は弁護士の領域です。早めに専門家へ相談し、作り直しや方針を確認します。

Q6. 配偶者に渡した財産を、配偶者の死亡後に子へ渡す指定はできますか?

A. 通常の遺言で指定できるのは、ご自身が亡くなったときに、ご自身の財産を誰に渡すかという点です。配偶者がいったん受け取った財産を、その後どうするかは、最終的に配偶者自身の遺言や遺産分割で決まります。世代をまたいで承継先を固定したい場合は、受益者連続型の信託(家族信託)の活用などを検討します。遺言だけで実現できるか、専門家と確認するとよいでしょう。


まとめ

遺言は、2人以上の人が同一の証書ですることができません(共同遺言の禁止・民法第975条)。夫婦が1枚の紙に連名で書いた遺言は、内容が良くても無効になりかねません。禁止の理由は、遺言の自由な撤回と、各自の独立した意思を守るためです。夫婦で遺言を残したいときは、1人ずつ別々の遺言書を作成します。内容をそろえることは別々の証書でも可能です。ただし、通常の遺言で決められるのは「自分の死亡時に自分の財産を誰へ」までで、配偶者が取得した後の承継先まで遺言で当然に拘束することはできません。二次相続まで確実に道筋をつけたい場合は、受益者連続型の信託(家族信託)等もあわせて検討します。確実性を重視するなら、公正証書遺言で1人ずつ作成しておくと方式不備や紛失を避けられます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言作成のご相談に対応しています。遺言の有効性が争われる場合は提携弁護士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第960条(遺言は法定方式による)・第963条(遺言能力)
  • 民法第968条(自筆証書遺言の方式)・第969条(公正証書遺言)・第975条(共同遺言の禁止)
  • 民法第1004条(自筆証書遺言の検認)
  • 民法第1022条(遺言撤回の自由)・第1023条(前の遺言と後の遺言の抵触・撤回擬制)・第1024条(遺言書破棄による撤回)
  • 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)
  • 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。