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危急時遺言とは|死期が迫ったときの特別な遺言の要件と注意点

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 危急時遺言とは、死期が迫り通常の方式で遺言できないときに認められる特別方式の遺言。代表的な死亡危急時遺言は証人3人以上(民法第976条)、船舶遭難者遺言は証人2人以上(民法第979条)。
  • 作成しても、遺言の日から20日以内に証人の1人または利害関係人が家庭裁判所へ「確認」を請求し、確認を得なければ効力が生じない(民法第976条)。家庭裁判所の「確認」と相続開始後の「検認」は別の手続き。
  • 普通の方式で遺言できるようになった時から6か月生存すると失効する(民法第983条)。容体が回復したら作り直しが必要。
  • 要件が厳格で争いのリスクもあるため、あくまで最後の手段。元気なうちの公正証書遺言が最善。

危急時遺言とは、病気や事故などで死期が迫り、自筆証書や公正証書といった通常の方式で遺言する余裕がない場合に、特別に認められる方式の遺言です。 代表的なのが「死亡の危急に迫った者の遺言」(民法第976条)で、証人3人以上の立会いのもと、口頭で遺言の趣旨を伝えて作成します。

危急時遺言は、いざというときに想いを残せる大切な制度ですが、要件が厳格で、後日その有効性が争われることもあります。本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、危急時遺言のしくみと注意点、そして「そもそも頼らずに済ませる」ための備えを解説します。


危急時遺言とは|特別方式の遺言

遺言の方式には、普段使う普通方式(自筆証書・公正証書・秘密証書)と、緊急時などに限って認められる特別方式があります。危急時遺言は後者にあたります。

特別方式の遺言根拠主な場面
死亡の危急に迫った者の遺言民法第976条病気・事故で死期が迫り、通常の方式が困難
船舶遭難者の遺言民法第979条船舶が遭難し、船中で死亡の危急に迫った

これらは、通常の方式で遺言できない緊急事態に限って認められる例外です。日常的に使うものではなく、「最後の手段」と位置づけられています。


死亡の危急に迫った者の遺言(民法第976条)の要件

最も問題になるのが、病気などで死期が迫った場合の危急時遺言です。要件は次のとおりです。

  1. 証人3人以上の立会い
  2. 遺言者がその1人に遺言の趣旨を口授する
  3. 口授を受けた証人がこれを筆記し、遺言者と他の証人に読み聞かせる(または閲覧させる)
  4. 各証人が筆記の正確なことを承認して署名・押印する

さらに重要なのが、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人が家庭裁判所に確認を請求し、その「確認」を得なければ、効力が生じないという点です(民法第976条)。家庭裁判所が、その遺言が遺言者の真意に出たものとの心証を得て初めて確認されます。

なお、ここでいう家庭裁判所の「確認」は、危急時遺言が遺言者の真意に基づくものかを確認する手続きで、相続開始後に必要となる「検認」とは別の手続きです。確認を受けた危急時遺言でも、相続開始後には検認が必要になります(民法第1004条)。

証人にも注意が必要です。未成年者、推定相続人・受遺者やその配偶者・直系血族などは証人になれません(証人欠格。民法第974条)。緊急時に適格な証人を3人以上確保するのは容易ではなく、これが危急時遺言の実務上のハードルになります。


容体が回復すると失効する(民法第983条)

危急時遺言には、もう一つ重要なルールがあります。

遺言者が普通の方式で遺言できるようになった時から6か月間生存したときは、その遺言は効力を生じません(民法第983条)。これは、危急時遺言があくまで「通常の方式で遺言できないときの例外」だからです。

つまり、容体が持ち直して自筆や公正証書で遺言できる状態になり、その後6か月生存すれば、危急時遺言は失効します。回復したら、あらためて公正証書遺言などで作り直すことが必要です。「一度書いたから安心」とはならない点に注意してください。


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船舶遭難者の遺言(民法第979条)

特別方式には、船舶が遭難した場合の遺言もあります。船舶が遭難し、その船中で死亡の危急に迫った人は、証人2人以上の立会いのもと口頭で遺言できます(民法第979条)。証人が遺言の趣旨を筆記して署名・押印し、さらに証人の1人または利害関係人から、遅滞なく家庭裁判所へ確認を請求して確認を得る必要があります。死亡危急時遺言は「20日以内」ですが、船舶遭難者遺言は「遅滞なく」とされる点が異なります。

このほかにも、伝染病による隔離者の遺言や、在船者の遺言といった特別方式があります。いずれも限定的な場面のためのもので、普通方式で遺言できるようになって6か月生存すると失効する点は共通です。


危急時遺言に頼らないための備え

危急時遺言は大切な制度ですが、次のような難しさがあります。

  • 証人3人以上を緊急時に集めるのが難しい
  • 20日以内の家庭裁判所の確認が必要
  • 後日、遺言者の真意だったかが争われるリスクがある

これらを踏まえると、最も確実なのは、元気なうちに公正証書遺言を作っておくことです。判断能力があり体調が落ち着いているうちに準備しておけば、危急時遺言という不確実な手段に頼らずに済みます。

当法人では、早めの公正証書遺言の作成をおすすめし、文案整理・公証役場調整・証人手配までサポートしています。「まだ元気だから」と先延ばしにせず、備えておくことが、ご家族への何よりの安心につながります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 危急時遺言とは何ですか?

A. 危急時遺言とは、病気や事故などで死期が迫り、自筆証書や公正証書といった通常の方式で遺言できない場合に、特別に認められる方式の遺言です。代表的なのが、死亡の危急に迫った者の遺言(民法976条)で、証人3人以上の立会いのもと、口頭で遺言の趣旨を伝えて作成します。あくまで緊急時の例外的な方式です。

Q2. 危急時遺言はどんなときに使えますか?

A. 病気の重篤化や事故などにより、死亡の危急に迫っていて、自筆や公正証書で遺言する余裕がない場合に使えます(民法976条)。ほかに、船舶が遭難して死亡の危急に迫った場合の遺言(民法979条)などの特別方式もあります。いずれも通常の方式で遺言できない緊急事態が前提です。

Q3. 死亡の危急に迫った者の遺言(民法976条)の要件は何ですか?

A. 証人3人以上の立会いのもと、遺言者がその1人に遺言の趣旨を口授し、口授を受けた証人がこれを筆記して遺言者と他の証人に読み聞かせまたは閲覧させ、各証人が筆記の正確なことを承認して署名・押印する、という手続きです。さらに、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人が家庭裁判所へ確認を請求し、その確認を得なければ効力が生じません(民法976条)。

Q4. 危急時遺言は作ればすぐ有効になりますか?

A. すぐには確定しません。危急時遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人が家庭裁判所に請求して「確認」を得る必要があります(民法976条)。家庭裁判所が、遺言が遺言者の真意に出たものとの心証を得なければ確認されません。緊急時の方式ゆえに、慎重な手続きが求められます。

Q5. 普通の方式で遺言できるようになったら、危急時遺言はどうなりますか?

A. 効力を失います。危急時遺言などの特別方式の遺言は、遺言者が普通の方式で遺言できるようになった時から6か月生存したときは、効力を生じません(民法983条)。容体が回復したら、あらためて公正証書遺言などの通常の方式で作り直す必要があります。

Q6. 船舶遭難者の遺言とは何ですか?

A. 船舶が遭難し、その船中で死亡の危急に迫った人が、証人2人以上の立会いのもと口頭で行える遺言です(民法979条)。これも特別方式の一つで、証人が遺言の趣旨を筆記して署名し、遅滞なく家庭裁判所へ確認を請求する必要があります(死亡危急時遺言の「20日以内」とは異なります)。普通方式で遺言できるようになって6か月生存すると失効する点は、他の特別方式と同じです。

Q7. 危急時遺言があれば、普段は遺言の準備をしなくてよいですか?

A. おすすめできません。危急時遺言は要件が厳格で、20日以内の家庭裁判所の確認が必要なうえ、後日その有効性が争われるリスクもあります。あくまで「いざというときの最後の手段」です。元気なうちに公正証書遺言を作っておくことが、確実に想いを残す最善の方法です。

Q8. 元気なうちの遺言の作成を相談できますか?

A. できます。当法人では、判断能力があり体調の落ち着いている段階での公正証書遺言の作成をおすすめし、文案整理・公証役場調整・証人手配までサポートします。危急時遺言に頼らずに済むよう、早めの備えのご相談を歓迎します。容体の急変に直面している場合は、まず通常方式の公正証書遺言で対応できる可能性を優先的に確認し、必要に応じて公証役場や司法書士・弁護士等へおつなぎします。危急時遺言の確認申立てなど家庭裁判所への手続きが必要な場合は、司法書士・弁護士と連携して対応します。


まとめ

危急時遺言は、死期が迫り通常の方式で遺言できないときの「最後の手段」です(民法第976条・第979条)。証人3人以上、20日以内の家庭裁判所の確認といった厳格な要件があり、普通方式で遺言できるようになって6か月生存すると失効します(民法第983条)。後日の争いのリスクもあるため、確実に想いを残すには、元気なうちの公正証書遺言が最善です。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、公正証書遺言の作成をサポートしています。「そろそろ準備を」とお考えの段階で、早めにご相談ください。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第974条(証人及び立会人の欠格事由)
  • 民法第976条(死亡の危急に迫った者の遺言)
  • 民法第979条(船舶遭難者の遺言)
  • 民法第983条(特別の方式による遺言の効力)
  • 民法第1004条(遺言書の検認)・第1005条(検認・開封違反の過料)
  • 司法書士法第3条・第73条(家庭裁判所提出書類の作成は司法書士の業務)
  • 弁護士法第72条(紛争性のある対応は弁護士の業務)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。