【小規模宅地の特例】同居親族と二世帯住宅をパターン別に徹底解説(建物構造・登記編)

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小規模宅地の特例

10秒でわかる この記事の要約

  • 二世帯住宅の小規模宅地の特例は「区分所有登記」の有無で適用可否が決まる
  • 区分所有登記でなければ完全分離型(玄関別・内部行き来不可)でも特例適用可能
  • 区分所有登記がされている建物は原則として特例適用不可
  • 平成25年度税制改正で判定基準が建物構造から登記形態に変更された
  • 二世帯住宅を新築する際は区分所有登記を避けることが最も重要な対策

小規模宅地等の特例(自宅の土地の評価額を最大80%減額できる制度)には様々な複雑な論点が存在しますが、その中でも今回は「二世帯住宅」について解説します。

二世帯住宅では生計一や家なき子に関わる論点もありますが、今回は「被相続人と生計別」で「家なき子に該当しない」相続人が相続した前提で、建物の構造や登記の論点にフォーカスして解説します。

小規模宅地の特例 二世帯住宅をパターン別に徹底解説!(建物構造・登記編)

【前提】
被相続人 父
相続人 母、長男
父と長男は生計別
土地の所有者は父
土地及び建物をすべて長男が相続

【用語の意義】
完全分離型:構造上、建物内部で行き来ができないもの
非分離型:構造上、建物内部で行き来ができるもの

動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!

小規模宅地等の特例の基本については「小規模宅地等の特例とは?最大80%減額の要件と計算方法【税理士が図解で解説】」をご覧ください。

同居親族の判定全般については「【小規模宅地の特例】これって同居親族?パターン別に徹底解説」で解説しています。

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基本編

① 区分所有登記でない建物(非分離型)

160721二世帯住宅3【概要】
建物内部で行き来が可能で、区分所有登記がされていない建物です。

【結論】
小規模宅地の特例の適用可

【解説】
二世帯住宅というよりは同居ともとれますが、2階にキッチン・リビング・寝室があり2階だけで生活できる状態が前提です。このパターンは何も迷うことなく特例の適用が可能です。平成25年度税制改正(以下「H25改正」)前でも適用が可能であったパターンです。

② 区分所有登記でない建物(完全分離型)

160721二世帯住宅5【概要】
玄関別、建物内部で行き来ができない構造ですが、区分所有登記がされていない建物です。

【結論】
小規模宅地の特例の適用可

【解説】
最近は親子であってもプライベートな空間を確保するため、玄関が別で建物内部でも行き来ができない二世帯住宅が増えています。H25改正前は原則として長男は同居親族に該当せず特例の適用はできませんでしたが、H25改正により適用が可能になりました。

③ 区分所有登記建物(完全分離型)

160721二世帯住宅7【概要】
玄関別、建物内部で行き来ができない構造で、区分所有登記がされている建物です。

【結論】
小規模宅地の特例の適用ができません。

【解説】
H25改正により、建物の構造ではなく建物の不動産登記が区分所有登記となっているか否かにより適用可否を判断することとなりました。このケースでは区分所有登記建物に該当するため、特例の適用はできません。長男居住部分を父が所有していたとしても判定に影響はありません。

応用編

① 区分所有登記建物(非分離型)

160721二世帯住宅9【概要】
建物内部で行き来ができる区分所有登記がされている建物です。

【結論】
原則として小規模宅地の特例の適用ができませんが、一定の場合には適用できる可能性があります。

【解説】
建物内部で行き来ができる構造の場合、原則として区分所有登記はできませんが、事後的に改修したりして区分所有登記建物であっても内部で行き来ができる家屋が実務上存在します。

このような家屋は原則として特例の適用ができません。ただし、父の居住の用に供されていた部分が2階にもおよぶ場合には、長男は同居親族に該当し特例の適用が考えられます。例えば1階部分にキッチンがなく2階で父・母・長男で食事をしているような場合です。この場合には2階部分も父の居住用と認められるため特例の適用が可能です。

② 未登記建物(完全分離型)

160721二世帯住宅11【概要】
玄関別、建物内部で行き来ができない構造で、未登記の建物です。

【結論】
小規模宅地の特例の適用可

【解説】
基本編②と同様の考え方です。未登記であれば区分所有登記がされている建物に該当することはありえないため、特例の適用が可能です。

③ 別棟登記である二棟の建物(非分離型)

160721二世帯住宅13【概要】
玄関別、建物内部で行き来ができる構造で、左側が父所有の1棟建物として登記され、右側が長男所有の1棟建物の登記がされています。全く別の登記の建物が物理的にくっついているパターンです。

【結論】
原則として小規模宅地の特例の適用可。
ただし、それぞれの建物が1棟の建物と認定された場合には適用ができません。

【解説】
この建物は区分所有登記建物には該当せず、建物内部で行き来ができるため、原則として長男は同居親族と考えてよいでしょう。

ただし、それぞれの家屋が1棟の建物と認められた場合には長男は同居親族に該当せず、特例の適用はできません。

租税特別措置法上「1棟の建物」の定義は明確になっていませんが、建築基準法関連の判例では「社会通念に照らし、構造上、外観上及び機能上の各面を総合的に判断して、一体性があると認められる建築物」とされています。上記図のように一辺の壁のすべてが接している場合には、同居親族と考えられるのではないかと思います。

④ 増築(完全分離型)

160721二世帯住宅15【概要】
父所有の母屋に付属家として増築。建物内部で行き来はできません。増築部分のみで生活可能な設備が整っています。

【結論】
小規模宅地の特例の適用可

【解説】
区分所有登記建物にも該当せず、増築のため全て合わせて1棟の建物と認められるため、長男は同居親族に該当し特例の適用ができると考えられます。

⑤ 渡り廊下がつながっている別登記建物(非分離型)

160721二世帯住宅17【概要】
それぞれ別棟登記がされている家屋を事後的に渡り廊下でくっつけて、内部で行き来を可能とした建物です。

【結論】
小規模宅地の特例の適用ができません。

【解説】
渡り廊下で接している程度だと互いに1棟の建物とは認められないため、内部で行き来できたとしても長男は同居親族には該当せず、特例の適用はできません。

なお、建物の登記が別々であろうが一つの登記であろうが判定は変わりません。「一の建築物」と認められるかどうかで判断しますので、登記上の形式は問いません。区分所有登記建物の判定が登記上の形式で判断するのとは異なる点であり、混同している専門家も多いので注意が必要です。

⑥ 三世帯住宅(完全分離型)

160721二世帯住宅19【概要】
玄関別、建物内部で行き来ができない構造ですが、区分所有登記がされていない三世帯住宅の建物です。

【結論】
3階部分も含めすべてにつき小規模宅地の特例の適用が可能です。

【解説】
基本編②と同様の考え方で、区分所有登記建物でない限り父の親族の居住部分も特例の適用が可能です。父の弟も父の親族に該当するため、3階部分も特例の適用対象となります。

なお、3階部分を親族以外の者の居住用に供していた場合には、1階および2階の床面積に対応する部分しか特例の適用はできません。

二世帯住宅×小規模宅地の特例 判定一覧表

パターン 構造 登記 特例適用
基本① 非分離型(行き来可) 区分所有登記なし ○ 適用可
基本② 完全分離型 区分所有登記なし ○ 適用可
基本③ 完全分離型 区分所有登記あり × 適用不可
応用① 非分離型(行き来可) 区分所有登記あり △ 原則不可(例外あり)
応用② 完全分離型 未登記 ○ 適用可
応用③ 別棟が壁で接合(行き来可) 別棟登記 ○ 原則可(1棟認定時は不可)
応用④ 母屋に増築(完全分離型) 付属家 ○ 適用可
応用⑤ 渡り廊下で接続(行き来可) 別棟登記 × 適用不可
応用⑥ 三世帯・完全分離型 区分所有登記なし ○ 全フロア適用可

まとめ

二世帯住宅における小規模宅地の特例の適用可否は、平成25年度税制改正以降、建物の構造ではなく「区分所有登記の有無」で判定します。完全分離型であっても区分所有登記がなければ適用可能であり、逆に行き来できる構造でも区分所有登記があれば原則として適用不可です。

二世帯住宅の新築を検討する際は、区分所有登記を避けることが最も重要な対策となります。すでに区分所有登記がされている場合は、合体登記への変更を検討しましょう。

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根拠法令・通達

  • 租税特別措置法第69条の4第1項(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
  • 租税特別措置法施行令第40条の2第4項(被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族)
  • 租税特別措置法関係通達69の4-7の2(被相続人等の居住の用に供されていた家屋が二以上ある場合)
  • 建物の区分所有等に関する法律第1条(建物の区分所有)

【小規模宅地の特例】同居親族と二世帯住宅をパターン別に徹底解説(建物構造・登記編)の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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