相続税の期限は10ヶ月!期限までに終わらせる秘訣と期限を超えた場合のペナルティ
こんにちは、相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。
相続税の申告期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」と決められています。
こちらは法律用語なので、わかりやすくいうと、「亡くなった日の10ヶ月後の同じ日(「応当日」といいます)」となります。
また、相続税を支払う期限、すなわち、納付期限も申告期限と同じ日です。
この相続税の期限を過ぎてしまうと特例が受けられなくなったり、無申告加算税や延滞税などのペナルティがかかったりと納税者にとっては不利なことばかり。
相続税の申告は、常に期限を意識しながら手続きを進めなければなりません。
そこで、この記事では、「相続税の申告期限」について詳しく解説していきます。
また、申告期限間近になってしまった場合の対処法や、期限までに相続税の手続きを終わらせるコツも解説していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
※もし、お時間がない方はぜひ一度ご相談を。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
目次
相続税の申告期限と納付期限は「相続の開始の翌日から10か月後」
相続税の申告期限と納付期限は「相続の開始の翌日から10か月後」、すなわち、原則として亡くなった日の10ヶ月後の同じ日となります。
もう少し正確に順序立てて理解してもらうと下記の通りです。
①相続開始日の翌日が起算日
②上記①の起算日から10ヶ月後の応当日
③上記②の前日👈申告期限
2つの具体例で確認していきましょう。
【ケース1】相続開始日 R4.6.5
①起算日:R4.6.6
②10ヶ月後の応当日:R5.4.6
③上記②の前日:R5.4.5👈申告期限
【ケース2】相続開始日 R4.9.30
①起算日:R4.10.1
②10ヶ月後の応当日:R5.8.1
③上記②の前日:R5.7.31👈申告期限
※ケース2の事例はR5.7.30を期限と勘違いしやすいので気をつけましょう!
ただし、上の例は原則です。特殊な場合の申告期限についても最後に詳しく解説します。
相続税の申告手続きを申告期限・納付期限までに終わらせる準備やコツ
相続税の期限は、亡くなってから10ヶ月。
「1年近くもあるからなんとかなりそうだ」と考えていても、意外とあっという間に期限は近づいてきてしまいます。
亡くなった後でも相続人には日常の生活が待っています。相続税申告以外の相続に関する手続きも非常に多いです。最初にスケジュールを立てて逆算して計画的に進めないと期限後申告となってしまう可能性も大いにあるのです。
そこで、「相続税の申告手続きを申告期限までに終わらせるコツ」を3つ紹介します。
1. 相続手続の流れを知っておく
計画的に手続きを進める上で最初にやるべきことは、相続手続きの一連の流れを把握することです。
- 亡くなった後すぐに行う葬儀
- 3ヶ月以内の相続放棄
- 4ヶ月以内の準確定申告
- 10ヶ月以内の相続税申告
など、期限のある手続きや期限はなくても、迅速に対応しなければならない手続きがたくさんあります。
まずは、「相続手続きには何があるのか」「いつまでにやらないといけないのか」「どのような作業でどのくらい時間がかかるのか」を、把握することから始めましょう。
2. 相続税の申告に必要な書類を早めに集める
相続税申告で一番時間を要するのは、必要書類の準備です。
相続税申告には、様々な書類が必要となります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続戸籍
- 証券口座や銀行口座の残高証明書
- 過去の通帳
- 生命保険の支払通知書
- 過去の所得税の申告書
- 老人ホームの契約書 など
これらの書類を早めに効率的に収集できれば、期限後申告になることはないでしょう。
参考:相続税申告の必要書類まとめ|集めるのに必要な期間もあわせて解説
3. 相続税に詳しい税理士に早めに相談する
期限後申告としないための最大のコツは、早めに相続専門の税理士に依頼することです。
相続税の申告をする人の9割が税理士に依頼します。税理士に依頼してしまえばスケジュール管理なども税理士でやってくれますので安心して任せられます。
ただし、税理士にも得手不得手があり、相続専門でない税理士も存在しますので、その見極めには注意しましょう。
期限を過ぎると、デメリットのある期限後申告に
相続税の期限を過ぎて申告(期限後申告)した場合には、「一定の特例が適用できないこと」「ペナルティがかかること」の2つのデメリットがあります。
デメリット①: 相続税の特例が適用できなくなる
相続税には様々な特例が存在します。
特例とは簡単に言うと「相続税を抑えるための特別な方法」です。相続税の特例で有名なものが、配偶者控除(配偶者の税額軽減)と小規模宅地の特例でしょう。
期限後申告をするときには、いくつかの特例が適用できなくなります。
まず、期限後申告のときに完全に適用できない特例は、以下の2つです。
- 農地の納税猶予
- 事業承継税制(非上場株式の納税猶予)
これらの特例は申告期限までに申告書を提出することが要件(期限内申告要件)となっています。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は期限後申告でも原則として適用できます。
ただし、小規模宅地等の特例は期限後申告だと適用できないケースもありますので、詳しくは、小規模宅地の特例 期限後申告の場合を事例別に徹底解説を参照してください。
デメリット②:期限後申告をした場合にかかる加算税
相続税には期限があって、その期限を過ぎた場合には、ペナルティがかかります。ペナルティがないと期限を守らなくてもいいと思う方が出てきてしまいます。
ペナルティとは、以下の3つです。
- 無申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
①無申告加算税
期限までに申告をしなかったことにかかるペナルティです。
無申告加算税の税率は、以下のとおりになります。
- 税務調査通知前:5%
- 税務調査通知後・税務調査前:10%(50万円を超える部分は15%)
- 税務調査後:15%(50万円を超える部分は20%)
②重加算税
事実をごまかして(仮装隠蔽)、期限までに申告をしなかったことにかかるペナルティです。なお、重加算税がかかるときは、無申告加算税はかかりません。
重加算税の税率は40%です。
③延滞税
期限までに納付しなかったことにかかるペナルティです。
税率は年によって変わりますが、令和4年現在は年2.4%です。
仮装隠蔽がなければ、期限後申告のときには、無申告加算税と延滞税の2つのペナルティがかかることになります。
相続税の申告期限・納付期限を過ぎてしまいそうな場合の対処法
期限後申告となってしまう主な理由は、期限までに「財産目録が完成していない」「遺産分割が決まらない」の2つです。それぞれの場合の対処法について解説します。
1. 期限までに財産目録が完成していない
相続税の申告は、「土地・建物・預金・上場株式・投資信託・書画骨董・名義預金」などの相続財産について、それぞれ金額を査定しなければなりません。これを相続財産の評価といいますが、この評価が終わらなければ財産目録は完成しないのです。
申告期限までに財産目録が完成しない場合の対処法は、2つ考えられます。
- 財産目録が完成してから期限後申告をする
- 概算でもいいから期限内に申告をしてしまう
この2つの方法にどちらが正解というのはありません。
使える特例や財産の内容に応じていずれかの方法を選択することになります。
例えば、名義預金など絶対的な評価基準がなく、税務当局と見解の相違が予想されるような財産について、あまり精査せずに期限内に多めの概算申告をしてしまって、精査後に修正したとします。この場合の立証責任は納税者側になるため、名義預金の見解が税務署と相違した場合には、納税者にとって不利な形で話を進めることとなってしまうのです。
将来的に不利になりそうな金額と期限後申告にかかるペナルティを天秤に掛けて、ペナルティのほうが傷が浅ければあえて期限後申告という選択肢も考えなければなりません。
これに対して、農地の納税猶予の適用をしないといけないような場合、小規模宅地の特例を期限内で必ず適用しておきたいような場合、ペナルティを納付したくない場合には、概算で相続財産を評価し、期限内申告を実施すべきでしょう。
2. 期限までに遺産分割が決まらない
相続税の申告期限までに遺産分割が決まらないことは多々あります。遺産分割が決まらないと相続税の計算はできません。
しかし、相続税の申告期限は延長することができません。
申告期限までに遺産分割が決まらなかったとしても、民法に定める法定相続分で仮に分割したものとして「未分割申告」という方法で仮の申告をする必要があるのです。
なお、この仮の申告のときには、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例は適用できません。
これらの特例は、遺産分割が確定した後に再度税務署に申告をすることにより適用が可能となります。
また、後日特例を適用するためには、未分割申告のときに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する必要があるので注意しましょう。
未分割申告の詳しい解説は、【相続税】申告期限までに遺産分割が決まらない場合の未分割申告をご参照ください。
参考書籍:イレギュラーな相続に対処する 未分割申告の税実務(Amazon)
特殊なケース 相続税の申告期限
①申告期限が土日祝日の場合
亡くなった日の10ヶ月後の応当日が土曜日・日曜日・祝日だった場合には、申告期限はその翌日以降の営業日(平日)となります。
②死亡日と相続開始を知った日が異なる場合
戸籍上の死亡日とその死亡を知った日が異なることがたまにあります。
例えば、前妻との子供が、被相続人の死亡をしばらく後妻から教えてもらえなかったケースなどがあります。
- 被相続人の死亡日:2021年12月3日
- 後妻が死亡を知った日:2021年12月3日(同日)
- 前妻の子が死亡を知った日:2022年2月14日
この場合、申告期限は以下のようになります。
- 後妻の申告期限:2022年10月3日
- 前妻の子の申告期限:2022年12月14日
相続税の申告期限は「相続の開始があったことを知った日から10か月後」ですが、相続財産の評価基準日はあくまでも「被相続人の死亡日」となります。
相続財産である預貯金残高や株式の価額は、「被相続人の死亡日」を基準として考えます。
相続の開始を知った日を税務署に知らせる方法
相続税の申告書には、「相続人が相続の開始を知った日」を記載する欄はありません。
弊社では、「相続人が相続の開始を知った日」を税務署に知らせるために、申告書第1表の上の余白部分に「相続の開始があったことを知った日:2022年2月14日」の様に記載しています。
また、それを証明する郵便物やメール等を申告書に添付するようにしています。
③死亡日が特定できない場合
孤独死などであるケースですが、戸籍上の死亡日が「令和4年2月10日から10日間」、「令和3年12月頃死亡」、「推定令和4年1月10日死亡」等の記載になっていることがあります。
この場合には、その戸籍上の最終日が相続開始日となります。
具体的には、以下のように考えます。
- 「令和4年2月10日から10日間」⇒「令和4年2月20日」
- 「令和3年12月頃死亡」⇒「令和3年12月31日」
- 「推定令和4年1月10日死亡」⇒「令和4年1月10日」
したがって、上の右側の日付を評価基準日として相続財産の評価をします。
なお、相続税の申告期限が「相続人等が死亡を知った日の10ヶ月後の応当日」であることは変わりません。
④相続人以外への遺贈の場合
相続人以外に対する遺贈があった場合のその受遺者の相続税申告期限は、自己のために当該遺贈のあったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
相続人の場合には死亡を知った日から起算しますが、相続人以外の受遺者の場合には、自分が財産をもらえるかどうかは死亡日時点ではわかりませんので、遺言を内容を知った日から起算できるのです。
⑤停止条件付の遺贈によって財産を取得した場合
停止条件付遺贈とは、「〇〇の条件を満たしたときに財産をあげるよ」という内容の遺贈のことです。例えば、「孫が20歳になったときにA土地を遺贈する。」という遺言を書いた遺言者が死亡したとします。遺言者死亡日の孫の年齢は15歳です。
このような停止条件付き遺贈があった場合の相続税の申告期限は、当該条件が成就した日の翌日から10ヶ月以内となります。
すなわち、孫が20歳になった日の10ヶ月後の応当日が孫の相続税の申告期限となるのです。
⑥数次相続の場合
数次相続というのは、相続が相次ぐことをいいまして、一次相続の遺産分割完了前に二次相続が発生しているような場合を指します。
例えば、父が令和4年1月15日に亡くなり、父の相続に係る遺産分割協議前の令和4年2月9日に母が亡くなった場合について検討しましょう。相続人は、長女と次女とします。
この場合、一次相続である父の相続税申告に係る申告期限は、以下のとおりです。
相続人 | 相続開始日 | 当初申告期限 | 母の相続開始日 | 最終的な申告期限 |
母 | 令和4年1月15日 | 令和4年11月15日 | 令和4年2月9日 | 令和4年12月9日 |
長女 次女 |
令和4年1月15日 | 令和4年11月15日 | 令和4年2月9日 | 令和4年11月15日 |
長女と次女の申告期限は、原則通り、父の死亡後10ヶ月となるのですが、母の申告期限は父の死亡後10ヶ月ではなく、母の死亡後10ヶ月となるのです。
⑦相続人が廃除された場合
被相続人が父で、相続人が長男一人だったとします。
この長男に対して父が遺言で廃除の旨を記載し、この廃除が家庭裁判所により決定した場合に、次の順位の父の弟が新たに相続人となったとします。
その場合、この弟の相続税の申告期限は、被相続人の死亡日から10ヶ月ではなく、その弟が廃除の裁判の確定を知った日の翌日から10ヶ月となります。
⑧遺留分侵害額請求をした場合
例えば、「相続人Aにすべての財産を相続させる」という遺言があったとします。
その遺言書に基づき相続人Aが申告期限までに相続税申告を済ませた後に、別の相続人Bから遺留分侵害額の請求があった場合を考えます。
相続人Bの申告期限は、あくまで被相続人の死亡日から10ヶ月以内ですので、具体例のケースだと期限後申告となります。
ただし、期限後申告であっても延滞税や無申告加算税はかかりません。
ちなみに、遺留分が確定した後に相続人Aは、確定後4ヶ月以内に更正の請求が可能となります。
そうすると税務署は相続人Bに対して決定をしてくるのでその決定前に相続税の期限後申告をすべきでしょう。
遺留分侵害額請求がされている場合の相続税申告の詳しい説明は、遺留分侵害額請求がされている場合の相続税申告をパターン別に徹底解説を参照してください。
⑨還付を受けるための申告書の提出期限
所得税の確定申告は還付申告となるケースが多いですが、相続税申告においても還付申告という概念があります。相続時精算課税制度により贈与税として税金を前払いしているケースです。
相続時精算課税制度の詳細は、相続時精算課税制度をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
相続時精算課税制度による贈与税申告により納めた贈与税の一部又は全部が相続税申告をすることにより戻ってくるケースです。
この場合の相続税の申告期限は、死亡日から10ヶ月ではなく、死亡日の翌日から5年までとなります。
相続税専門の税理士から最後に伝えたいこと
相続税の申告期限である10ヶ月は、実際に体験してみると、思っていた以上にあっという間であったというお客様のご意見をよく聞きます。
長いようで短い10ヶ月、まずは相続手続きの全体像を把握し、相続税申告が必要であれば、早い段階で相続専門の税理士に依頼することが適切な相続税申告を行うために必要でしょう。
申告期限の3ヶ月前までには税理士に依頼すること
ただし、この記事をご覧になっている方の中には、「既に相続税の申告期限までギリギリ」という方もいるかもしれません。
過去に私たちにご相談に来られたお客様で、「申告期限まで1週間しかない」という方がいました。トゥモローズは相続税専門であるため、1週間という短い期限であっても、お客様が不利にならない申告を実施することはできます。
しかし、やはり現実問題として通常のスケジュールのお客様と比較すると、通常の評価手順を経ることができない部分も多々発生してしまいます。その場合には概算申告となってしまうことも有りえます。
また、報酬面でも特急料金として通常よりも多額の税理士報酬がかかることとなり、お客様にとってはデメリットが多くなります。
相続税申告を適切に進めるためには、遅くとも申告期限の3ヶ月前までには税理士に依頼するように心がけましょう。
まとめ
相続税の申告期限と納付期限、期限内申告に必要な準備について解説しました。
相続の手続きは申告だけでなく、相続財産の分割などのその他の手続きもあり、考えることが非常に多いです。「気づいたら期限を過ぎてしまった」という事態を避けるために、よく調べて申告手続きに臨みましょう。
相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください
相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。
また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。
初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。
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