相続人に認知症患者がいる場合の相続税申告の留意点

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

相続人の中に認知症患者がいる場合には、遺産分割、スケジュール、障害者控除の適用など注意しないといけない論点がいくつもあります。
またその認知症の人が成年被後見人なのか、被保佐人なのか、被補助人なのかによっても取り扱いが異なります。

今回は相続人の中に認知症患者がいる場合の相続税申告の留意点をわかりやすくまとめたいと思います。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

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ひとことで認知症患者といっても

認知症にも軽度なものから重度なものまでその症状は様々です。
軽度な認知症であれば意思能力があると判断され遺産分割が有効となる可能性もあります。

重度の認知症の場合には、単独で法律行為ができませんので家庭裁判所の許可を得て代理人を立てる必要があります。家庭裁判所に認められた代理人を成年後見人といい、代理人を立てられた認知症の人を成年被後見人といいます。
成年被後見人とは、民法8条により、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と定められています。
正確には、上記のような常況にあり、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人が成年被後見人となります。

成年被後見人は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外は一人でできません。行為が制限されていることから民法上「制限行為能力者」といわれています。

成年被後見人となった場合には様々な行為が制限されるため成年後見人(法定代理人)が必要となります。

なお、法定後見制度には、後見以外に保佐や補助という区分も存在します。
それぞれの区分ごとに制度の概要をまとめます。

区分 後見 保佐 補助
対象者 判断能力を欠く 判断能力が
著しく不十分
判断能力が不十分
代理人の同意が
必要な行為
同意権なし
(追認権はあり)
民法13条の行為 家庭裁判所で定める
代理人により取消が
可能な行為
日常生活に関する
行為以外の行為
民法13条の行為 家庭裁判所で定める
代理権の範囲 財産に関する全ての行為 家庭裁判所で定める 家庭裁判所で定める
医師の診断 原則必要 原則必要 原則不要

認知症の人がいる場合の相続税申告の留意点

相続人の中に認知症患者がいる場合にはその症状によって遺産分割の流れが大きく変わります。
下記の3パターンが想定されます。

①相続発生前から成年被後見人だった場合
②重度の認知症で意思能力がないため遺産分割のため成年後見人を立てた場合
③軽度の認知症で意思能力がある場合

それぞれのパターンごとに留意点を解説していきます。

①相続発生前から成年被後見人だった場合

遺産分割

成年後見人が相続人の場合には利益相反になるためその成年後見人を代理人として遺産分割協議に参加することはできません。
では、どうすれば良いのでしょうか?
成年後見人とは別の「特別代理人」を立てる必要があります。
裁判所が選任する特別代理人に一時的に成年被後見人を代理する権限を与えるのです。

家庭裁判所に特別代理人選任の申立をする場合の必要書類は下記の通りです。

□特別代理人選任の申立書
□被後見人、後見人、特別代理人候補者の住民票
□遺産分割協議書案、遺産目録等
□申立手数料の収入印紙800円
□予納切手

特別代理人選任手続きに添付する遺産分割協議書案では成年被後見人の取得割合を法定相続分未満とすることは原則としてできません。
したがって、仮に成年被後見人が法定相続分以下の取得割合の方が二次相続の相続税を考慮すると相続税の節税になったとしても任意に被後見人の取得割合を決められないのです。

障害者控除

相続人が成年被後見人の場合には相続税の障害者控除の適用が可能です。

成年被後見人は特別障害者に該当し、85歳に達するまでの年数✕20万円を相続税額から控除することができます。
もちろん、その成年被後見人が85歳を超えていたら障害者控除を適用することはできません。

成年被後見人について障害者控除が適用できる根拠は、国税庁HP 文書回答事例 成年被後見人の相続税における障害者控除の適用についてをご参照ください。

また、相続税の障害者控除について詳しく知りたい人は、相続税の障害者控除をわかりやすく徹底解説!をご参照ください。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月となります。

成年被後見人は弁識能力を欠いていることから相続の開始のあったことを知ることができません。
そうなるといつまでたっても相続税の申告期限が来ないこととなってしまいます。

実務上は、成年被後見人の後見人や特別代理人が相続開始を知った日から10ヶ月以内が相続税の申告期限となります。

上記の根拠は、国税庁HP 相続税法基本通達27-4(7)に記載されています。

また、相続税の申告期限について詳しく知りたい人は、相続税の申告期限と納付期限はいつか? スケジュールをわかりやすく徹底解説をご参照ください。

②重度の認知症で意思能力がないため遺産分割のため成年後見人を立てた場合

重度の認知症の場合で遺産分割協議をする意思能力がないと認められる場合には成年後見人を立てて認知症患者の代わりにその成年後見人が遺産分割協議をすることになります。
産分割、障害者控除、相続税の申告期限等の論点は上記①と同様です。

③軽度の認知症で意思能力があると判断された場合

認知症と判断されたからといってすべてのケースで法定後見人が必要となるわけではなりません。
軽度の認知症の場合で遺産分割時の状態で意思能力が認められればその本人が遺産分割協議をすることが可能です。

後々問題にならないように遺産分割時の医師の診断書等、意思能力に問題がなかったことを根拠付ける資料を用意しておいたほうが良いでしょう。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

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