【小規模宅地の特例】更正の請求ができるパターンとできないパターン

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小規模宅地の特例

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相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

小規模宅地の特例には租税特別措置法第69条の4第7項において申告要件(申告書で適用する旨を記載する要件)が定められているため、基本的には更正の請求時には適用ができません。ただし、パターンによっては更正の請求でも適用できる可能性があります。

小規模宅地等の特例についての詳しい解説は、小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額をご参照ください。

更正の請求の詳しい解説は、【更正の請求とは?】制度の趣旨・改正の経緯をわかりやすく解説をご参照ください。

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1.未分割申告後、適正に手続きしている場合

【概要】
当初申告において遺産分割が確定していなかったため未分割申告とした場合において、遺産分割確定後4ヶ月以内に更正の請求をしたときは、その更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は認められますか?

【回答】
小規模宅地の特例の適用は可能です。

【解説】
当初申告において申告期限後3年以内の分割見込書(以下、「分割見込書」)を添付し、かつ、申告期限から3年以内に分割が固まらない場合には遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書(以下、「承認申請書」)を提出しその承認を得た場合に限り小規模宅地の特例の適用が可能です。すなわち、適正に手続きをしている場合にのみ例外的に更正の請求でも特例の適用が出来るということです。

2.分割確定から4ヶ月以内に更正の請求をしなかった場合

【概要】
当初申告において未分割申告をして、その4年後に遺産分割が確定したため更正の請求をしましたが、遺産分割確定から6ヶ月経過していました。この場合において、その更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は可能ですか?承認申請書の手続きは適正にしています。

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
分割確定日から4ヶ月以内に更正の請求をした場合のみ例外的に小規模宅地の特例の適用を認めていますので、その期限を徒過した場合には適用はできません。
なお、配偶者の税額軽減については、この4ヶ月という期限を徒過したとしても相続税の申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能となります。
なぜ、似たような特例なのに小規模宅地の特例はダメで、配偶者の税額軽減は認められるかというと、小規模宅地の特例の適用は措置法69の4⑦で原則として期限内申告、期限後申告、修正申告に限定されているためです。
配偶者の税額軽減にはこのような限定はされていない(相続税法19の2③参照)ため、4ヶ月を過ぎた更正の請求であっても適用が可能となるのです。
こちらの相続税法基本通達32-2が根拠となります。

どこかの国税OB税理士が配偶者の税額軽減と同様に小規模宅地の特例も5年以内なら分割確定後4ヶ月を経過しても更正の請求ができる趣旨のことを研修会で説明していましたが、下記公表裁決事例が出てからはそのようなことも言わなくなったようです。
国税不服審判所 令和3年6月22日裁決

3.承認申請書の提出を忘れた場合

【概要】
未分割申告をした後3年を経過しても遺産分割が固まらないような場合には、その3年経過後2ヶ月以内に承認申請書を税務署に提出し、その承認を受けなければならないらしいですが、その承認申請書の提出を忘れてしまいました。なんとかなりませんでしょうか。

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
承認申請書の提出に関しては、宥恕規定(税務署長がやむを得ない事情があると認められる場合には緩く考えてもらえる規定)が設けられていないため、提出を失念した場合にはどうあがいても小規模宅地の特例の適用はできません。

4.遺贈により取得した土地について小規模宅地の特例をしなかった場合

【概要】
父が「長男に自宅の土地と建物を相続させる」旨のみの遺言を残して死亡しました。父は自宅以外に貸駐車場も所有していましたが、こちらについては、長女と長男で遺産分割が確定していないため未分割として申告しています。また、自宅については、当初申告で小規模宅地の特例の適用をせずに、全ての遺産分割が固まった後の更正の請求時に貸駐車場と合わせて小規模宅地の特例の適用をしようと考えていたからです。この場合において、遺産分割確定した後の更正の請求時に自宅について小規模宅地の特例の適用が可能ですか?

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
何度も解説しているように小規模宅地の特例には申告要件が存在します。当初申告において自宅については長男が相続することが決まっていて未分割財産には該当しないため当初申告の時に小規模宅地の特例の適用をしなければ機を逸してしまうことになります。なお、当初申告で未分割財産とした貸駐車場については更正の請求時に小規模宅地の特例の適用は可能です。

5.遺留分侵害額請求に伴う更正の請求の場合

【概要】
被相続人である父は、すべての土地を長男に、その他の財産を次男に相続させる旨の遺言を残して死亡しました。その遺言に基づいて長男及び次男は相続税申告書を期限内に提出しています。土地評価合計が5億円、その他の財産評価合計が5,000万円程度です。
長男が相続した土地には、A土地(特定居住用宅地)とB土地(貸付事業用宅地)が存在し、共に小規模宅地の特例の要件を満たしています。長男は当初申告においてA土地につき小規模宅地の特例を適用しています。
この場合において、次男が遺留分侵害額請求をし、金銭の代物弁済としてB土地を取得したときは、次男はB土地につき小規模宅地の特例の適用は可能でしょうか?

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
遺留分侵害額請求があった場合には、遺留分権利者は原則として遺留分侵害額につき金銭で交付を受けることとなります。
ただし、受遺者との話し合いで金銭以外で遺留分侵害額の交付を受けることも実務上は想定されます。
その場合には、その交付を受けた財産は代物弁済による受けた財産となり、今回の相続とは別取引となり原始的に取得したこととなるため小規模宅地等の特例はできません。
詳細は、国税庁HP 質疑応答事例 遺留分侵害額の請求に伴い取得した宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否(令和元年7月1日以後に開始した相続)をご参照下さい。
また、遺留分の詳しい説明は、下記コラムをご参照下さい。
遺留分 わかりやすく徹底解説!
遺留分侵害額請求がされている場合の相続税申告をパターン別に徹底解説

6.選択替えをする場合 その1

【概要】
当初申告においてA宅地について小規模宅地の特例を適用していましたが、申告期限後にB宅地の方が有利であることに気付きました。更正の請求は可能ですか?

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
当初申告に計算誤りはありませんので、国税通則法第23条(更正の請求)の要件は満たしません。
したがって、更正の請求は認められません。

7.選択替えをする場合 その2

【概要】
当初申告においてC宅地について小規模宅地の特例を適用していましたが、申告期限後にC宅地は特例の要件を満たさないことが判明しました。
C宅地の替わりにD宅地を適用した場合に相続税が減少することとなりました。
この場合に更正の請求は可能ですか?

【回答】
小規模宅地の特例の適用はできません。

【解説】
小規模宅地の特例は、上記1に掲げる更正の請求(相続税法32条による更正の請求が認められるケース)以外の更正の請求は認められていません。
措置法69の4⑦で当初申告、期限後申告、修正申告に限定されているためです。
したがって、当初申告で計算誤りがあって国税通則法の更正の請求が認められるような状況であったとしても小規模宅地の特例の適用はできないため結果的に更正の請求ができないのです。
ただし、措置法69の4⑧にて宥恕規定が設けられているため税務署長がやむを得ない事情があると認めてくれた場合には更正の請求ができるかもしれません。

【小規模宅地の特例】更正の請求ができるパターンとできないパターンの写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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