相続不動産の売却査定方法が分かる!正しい査定依頼の仕方

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相続不動産

「相続した不動産の価値を的確に把握し、円満な遺産分割を叶えたい」

このように考える相続人の方は多いと思います。

不動産は一物四価と言われ、1つの不動産に以下4つの異なる価格が存在します。

【四つの異なる価格】

・公示価格(一般的な土地取引の指標となる価格)
・相続税路線価(公示価格の80%を目安とした価格)
・固定資産税評価額(公示価格の70%を目安とした価格)
・時価(実際に取引される価格)

どの価格を基に遺産分割を行うべきか、悩みますよね。

結論から申しますと【時価】を基に遺産分割を行うべきです。

なぜなら時価、いわゆる実際の取引価格こそが、不動産の本来の価値であり、相続の公平性を保つうえでは一番重要な価格になるからです。

本コンテンツでは、適正な時価を把握するための査定方法を解説しております。また、相続不動産ならではの注意点等も詳しく記載しておりますので、相続不動産の売却査定をお考えの方は、是非お役立てください。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

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1.相続不動産の売却査定依頼先

相続不動産の売却査定を依頼する場合の、主な2つの依頼先とお勧め依頼方法について解説します。

1-1.一括査定サイトの利用

一度の査定依頼で複数社から査定額を提示してもらえるサイトです。

手続きは簡単で、査定をしたい不動産情報やお客様情報を入力するだけで手続き可能です。

代表的な一括査定サイトは以下の通りです。

サイト名 同時査定依頼数 対応エリア 特徴
イエウール 6社 全国 地方にも精通
すまいステップ 4社 全国 優良企業を厳選
すまいValue 6社 全国 大手仲介会社が中心

効率的に査定価格を把握できる一方で、各社から一斉に営業連絡がくることの煩わしさはあります。また、直接連絡を避けるために電話番号を記載しない・詳細住所を記載しない等の対応をすると、確りとした対応をしてもらえないこともありますので注意が必要です。

1-2.不動産会社に個別依頼

査定を依頼する不動産会社をご自身で選定し、各社に直接査定依頼をする方法です。無料であることが一般的です。上記の一括査定サイトよりも、依頼先数の分だけ情報を伝えなければならないといった手間は掛かりますが、ご自身のお好みで対応会社を選べる点はメリットであると思います。

1-3.私がお薦めしたい依頼方法

(1)2つの依頼方法の内、お薦めは「不動産会社に個別依頼」することです。

なぜなら一括査定サイトに比べ、適正な時価の把握がしやすいからです。 実務的なお話をすると、「一括査定サイト」については、根拠のない高値査定が横行しており、正確な相場価格の把握が困難であるケースがあります。実際の査定を行う現場の不動産会社営業社員にとって、一括査定サイトからの依頼を受けた場合、必ず他不動産会社と競合していることが分かりますので、各社は「正確な査定価格の提示」ではなく、「とにかく競合他社に打ち勝って、売却の依頼を受けること」をメインに考え営業してしまいがちです。中には、一括査定サイトは競合他社に勝てないのでわざわざ時間を割かないといったスタンスの営業マンもいるのが事実です。

不動産会社に個別依頼することにより、より適正な時価に近い査定価格の提示が受けられることに期待できるようになります。
 

(2)最もお薦めなのは「系統の異なる不動産会社3社に個別依頼」をすることです。

具体的には、以下3系統の中から選定頂くのがお薦めです。

① 対象不動産のエリアで営業している大手不動産仲介会社
② 銀行系不動産仲介会社
③ 税理士系不動産仲介会社

 
①    対象不動産のエリアで営業している大手不動産仲介会社
→情報量がダントツ。エリアの動向や市況関係等の参考知識が聞ける。
(例)野村不動産ソリューションズ、東急リバブル、三井のリハウス等   
 

②    銀行系不動産仲介会社
→他仲介会社にない独自の顧客網がある。タイミング良ければ高値追及に期待。

(例)みずほ不動産販売、三井住友トラスト不動産、三菱UFJ不動産販売等 
 

③    税理士系不動産仲介会社
→相続不動産売却と関連性の高い税金。税金面の論点は必ず押さえましょう。
(例)トゥモローズ、チェスター、ベンチャーサポート等

同じ系統の会社複数社に聞いても、新鮮な情報収集にはあまり期待できませんので、上記から1社ずつ選定して頂ければそれで充分です。

相続不動産の適正な時価を把握し、売却時に必要な情報を効果的に収集するためにも、前述の3系統の中から1社ずつ個別依頼をすることを検討して頂くと宜しいかと存じます。

2.相続不動産の売却査定流れ

査定時の主なステップ5つ

ステップ1.必要情報の用意

基本的には不動産を特定できる情報さえあれば十分です。住居表示や地番をお伝え出来るようにしておきましょう。但し、収益物件の査定を依頼される場合は、現在の賃料収入・稼働状況(入室数/全戸数)は追加で伝えられるよう準備しておきましょう。

ステップ2.机上査定の依頼

各社に査定の依頼をします。各社HPに問い合わせフォームがありますので、そこから査定依頼をします。どこの会社に依頼するかは前述の3系統の中から選ぶようにするのがお薦めです。また、多くのHPでは、各営業社員の紹介文や実績が記載されておりますので、それを見て任せたいと思える営業社員を指名しましょう。出来れば、お客様アンケート数が多く高評価であることや、多くの表彰実績があるといった視点で選ぶと良いでしょう。 

ステップ3.机上査定報告の受領

一般的には、査定依頼後早ければ即日、遅くとも2-3営業日には報告があるはずです。事前連絡もなく、それ以上時間が掛かる場合は、担当者が失念しているか、後回しにされている可能性があります。催促するか、他会社に依頼し直しても良いでしょう。

ステップ4.訪問査定の依頼

机上査定報告を受けた際、次は訪問査定を依頼しましょう。机上査定に比べると、精度は高まりますので、適正な時価の把握をするためにも、訪問査定は依頼するべきです。 

ステップ5.訪問査定の報告受領

実際に現地を確認してもらい、改めて査定価格を提示頂きます。訪問査定後2-3営業日もあれば報告があるはずです。各社の査定価格・根拠をしっかり確認し、適正な時価を把握しましょう。

3.相続した不動産種別ごとに適した査定方法 

本3章では、実際に不動産会社がどのように査定を行っているか、また不動産種別ごとにどのような査定方法が適しているかを解説します。本内容を把握頂くことで、各不動産会社が正しく査定を行っているかを見極めることも出来るようになりますので、是非ご参考にしてみてください。 

3-1.物件種別ごとに適した査定方法 一覧

物件種別 適した査定方法
住宅地(土地・戸建) 取引事例比較法
区分マンション 取引事例比較法
商業地(土地・戸建) 収益還元法
収益不動産(アパート・マンション等) 収益還元法

3-2.住宅地(土地・戸建)・区分マンションは取引事例比較法

取引事例比較法とは、同エリアにおいて類似物件の過去取引実績を基に査定価格を算出する方法です。住宅地(土地・戸建)・区分マンションの場合はほとんどがこの取引事例比較法により査定価格を算出します。なお、不動産業界では「REINS(レインズ)」と言われる情報サイトがあり、そこに過去取引実績が掲載されております。一般的には、各営業社員はこのレインズを見て、査定をしております。つまり、査定を行う際のデータ基はどこの会社も基本的には同じものであるため、査定価格に大きな差額が生じること自体考えにくいことなのです。

なお、レインズ自体は一般の方は見ることが出来ませんが、レインズの成約情報の一部を確認出来る「レインズ・マーケット・インフォメーション」や、国交省による「土地総合情報システム」では実際の取引価格が掲載されており、参考になります。

レインズ・マーケット・インフォメーション
土地総合情報システム

3-3.商業地(土地・戸建)・収益不動産(アパート・マンション等)は収益還元法

収益還元法とは、現在(または想定)の家賃収入(年収)を想定利回りで割り戻して価格を算出致します。例えば年間家賃収入が500万円・想定利回り5%の場合、査定価格は500万円÷0.05=1億円となります。一般的には現在空室がある場合でも、満室時想定により査定価格を算出します。想定利回りは、類似の収益不動産の成約時利回りを基に算出致します。

商業地(土地・戸建)に存する収益不動産等の建設用地に適している物件の査定時にも、収益還元法を用います。なぜなら、最も不動産のポテンシャルを活かせるからです。この場合、どの程度の規模の収益不動産が建設出来るか・建設コスト・想定収益等を考慮し、査定価格を算出します。

ご自身の不動産に適した用途を見極め、それを踏まえた的確な査定を行うことが大切です。

3-4.原価法

基本的には建物に用いられる査定方法です。同規模の建物を新築した場合の価格を算出し、築年数や耐用年数を基に減価修正を加え、建物の残存価値を把握する方法です。簡単に言えば、建物の現存価値です。実務においては参考程度に留めることが多いです。

4.相続不動産査定における注意点    

査定依頼時の主な注意点を挙げます。後日のトラブル防止や、出来る限り適正な時価を査定してもらうためにお役に立ちます。是非参考にしてみてください。 

4-1.秘密厳守の徹底

査定依頼時、「情報は御社内のみに限り、外部に漏れないようにして下さい」と伝えましょう不動産会社の中には、お客様の許可なく査定依頼の段階から、買主探索活動をするようなこともあります。ご自身の知らないところで、情報が拡散されることによる希少性の低下、売却を検討していることを知られたくない人に知られてしまう危険性等のリスクがあります。情報の取り扱いは慎重にするよう念を押しましょう。

4-2.査定価格に影響を及ぼすもの

以下に該当するようなことがあった場合、査定価格に影響を及ぼすので、もし把握しているものがあれば、査定依頼時になるべく伝えるようにしましょう。

・告知事項がある場合、その内容(室内で人が死亡している等)
・下水道管の敷設状況(他人の敷地を経由している等)
・建物施工会社と現況の間取り
・過去の修繕やリフォーム履歴の有無と内容
・隣地や隣接住戸とのトラブル有無と内容

 

5.相続不動産ならではの売却時留意点 

相続不動産の売却時は通常の不動産売却時と異なる留意点があります。実際の手取り額に大きな影響を及ぼす論点もありますので、ご注意ください。

5-1.小規模宅地の特例を適用する場合

不動産の引き渡し時期に注意しましょう。

ケースによって、相続税の申告期限までの保有や居住が適用条件になっている場合があります。これはあくまでも不動産の引渡し時期を起点に考えますので、例えば相続税申告期限前の売買契約締結→申告期限後の引渡しであれば、時期に関する特例の適用条件はクリアとなります。 

小規模宅地等の特例の詳しい解説は、小規模宅地等の特例をわかりやすく解説! 相続した土地にかかる相続税を最大80%減額をご参照ください。

5-2.空家の特例控除を適用する場合

適用要件が細かく設定されていますので、できる限り専門家に相談しましょう。

相続した不動産の建物が昭和56年5月31日以前に建築されたものであり、耐震工事実施後または更地にして引渡す場合、売却時の譲渡益を相続人1人あたり最大3,000万円控除出来る特例です。

主な論点だけでも以下のものがあります。

・相続後、譲渡するまでに未利用であること
・譲渡価格が1億円以下であること
・区分所有建物ではないこと
・相続開始後3年経過後の年末までに譲渡すること等

不動産会社の営業社員には詳しくない者もおりますので、税理士等の専門家に相談すると良いでしょう。

空き家特例の詳しい解説は、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)を徹底解説をご参照ください。

5-3.相続税取得費加算を適用する場合

相続した不動産に対して相続税を支払っている場合、相続税申告期限から3年以内に譲渡することで、譲渡税を軽減できる場合があります。なお、上記の空家の特例控除とは重複利用が出来ませんので、注意ください。

取得費加算の特例の詳しい解説は、相続税の取得費加算の特例をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

5-4.相続登記完了前に売買契約を締結する場合

遺産分割協議を行う場合、協議後、遺産分割協議書があれば売買契約の締結は可能です。また、法定相続の場合には、相続人を特定できる資料を一式揃えることで、売買契約の締結は可能です。いずれも売買契約締結後、お引渡までの間に相続登記の完了が必須になります。

5-5.売却時経費を知り、実際の手取り額を知ることで遺産分割協議をスムーズにします

遺産分割協議をスムーズに進めるためには、売却時諸経費を確認し、具体的な手残り額を把握することも大切です。

主な経費は以下の通りです。

・仲介手数料
・相続登記費用
・印紙代金
・建物解体費用
・室内残置物撤去費用
・確定測量費用
・譲渡所得税

査定の段階から、各見積りを取得することは可能です。但し、譲渡所得税については、税理士法の観点から不動産会社の営業社員が容易に答えて良いものではないため、個別具体的な税務相談は税理士に相談する必要があります。

その他不動産売却にかかる詳しい費用の解説は、【不動産の譲渡費用一覧】これって該当する?しない?をご参照ください。

5-6.代償分割を選択する場合

遺産分割の方法として代償分割を選択し、相続不動産を売却した資金で代償金を支払う場合等、あらかじめ具体的に金額設定をしなければならない場合には注意が必要です。なぜなら、不動産会社の出す査定価格とは、お車の買取価格等とは異なり、あくまでも成約「想定」価格です。訪問査定を経て、精度の高い査定価格を言えど、必ずしも査定価格で成約するとは限りません。そのような場合には、査定価格だけでなく、買取専門の不動産会社から買取金額を提示してもらうと良いでしょう。こちらは査定を依頼する各仲介会社にその旨お伝え頂ければ、買取金額の調査も無料で行ってもらえます。

代償分割の詳しい解説は、代償分割をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

6.まとめ

 相続不動産の適正な時価を把握するための査定方法や、相続不動産ならではの留意点等について解説致しました。遺産分割において、不動産を適切に処理できるか否かは重要な論点になります。本記事が、円満な遺産分割を叶えるための一助になれば幸いです。

相続不動産の売却査定方法が分かる!正しい査定依頼の仕方の写真

この記事の執筆者:宮尾 香輔

宅地建物取引士
相続不動産専門の株式会社トゥモローズの取締役
ベンチャー企業、大手仲介会社、信託銀行を経て株式会社トゥモローズの立ち上げに参画。
物件種別問わず幅広い取り扱い経験があるほか、業界の内情にも精通しています。

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