名義預金の最新裁決事例(令和3年~令和4年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!

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名義財産・生前贈与

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは
相続専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

名義預金の評価や計算方法は法律や通達に記載されていません。
過去の裁判例や裁決事例を参考に計算するしかないのです。

今回は、令和3年1月から令和4年12月までの2年間における国税不服審判所の裁決事例のうち名義預金について納税者と国税当局の間で争いになったものをまとめたいと思います。

名義預金についての詳しい説明は、名義預金は相続税の対象です! 判断基準と税務調査で指摘されないため対策を参照してください。
平成25年~平成27年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(平成25年~平成27年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!を参照してください。
平成28年~令和2年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(平成28年~令和2年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!を参照してください。

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令和3年1月20日 関東信越国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

子供名義

裁決事例要旨

請求人は、請求人名義の定期貯金(本件貯金)の原資は請求人名義の保険契約(本件保険契約)に係る解約金であり、その保険料も請求人名義の普通貯金口座から引き落とされていることからすれば、本件貯金の原資は請求人が出えんしたから、本件貯金は請求人に帰属する旨主張する。しかしながら、①本件保険契約の保険料は請求人の亡父(本件被相続人)が負担していたこと、②本件貯金の口座を開設し、本件貯金の証書及び届出印を管理していたのは請求人の母でもある本件被相続人の妻(本件配偶者)であったこと、及び③本件貯金の管理運用は本件配偶者が本件被相続人の包括的同意の下で行っていたことなどに照らせば、本件貯金は本件被相続人の相続財産と認められる。

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

子供名義の定期貯金があってその貯金の原資は保険金の解約返戻金であった。
保険の契約内容自体は不明だが税務署は保険料の負担者は被相続人と認定した。
保険契約者が子供であった場合には解約返戻金を受け取った時点で保険料負担者から保険契約者に贈与が成立しているため子供名義の定期貯金を子供の固有財産と攻める余地はなかったのだろうか?
そもそも保険契約者が被相続人や被相続人の配偶者であったのかもしれない。
仮に解約返戻金相当の贈与が成立していたとしても被相続人やその配偶者が定期貯金の管理をしていたら名義預金と認定される可能性もあるという事例。

令和3年5月12日 熊本国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

被相続人名義(逆名義預金論点)

裁決事例要旨

原処分庁は、請求人Aが請求人らの父(本件被相続人)の相続財産ではなく、請求人Aの固有の財産であると主張する歯科医院(本件医院)の屋号付き請求人A名義の預金口座(本件預金口座)から出金され、本件被相続人名義の預金口座に入金された金員(本件金員)について、本件医院の事業主と認められる請求人らの母の相続に係る相続税の修正申告において相続財産とされていたものであり、また、同母の死亡後に本件被相続人名義の預金口座に入金されたものであるから、本件金員は本件被相続人の相続財産である旨主張する。しかしながら、預貯金等の帰属については、単に名義により判断するのではなく、その原資となった金員の出捐者、その管理・運用の状況、贈与の事実の有無等を総合的に勘案して判断するのが相当であるところ、本件医院の歯科医師として診療を行っていた請求人Aは、平成22年以降、請求人らの母に代わって保険医療機関(本件医院)の開設者となり、それに合わせて診療報酬の受入口座として本件預金口座を開設したと認められるから、本件預金口座に入金された金員は、本件医院の業務から生じた収入を原資とするものであり、本件預金口座の通帳及び届出印の管理を請求人Aが行っていたことに加え、請求人らの母の年齢や病状をも併せ考えれば、本件預金口座及び当該口座から引き出された本件金員は請求人Aに帰属すると認めるのが相当であるから、本件金員は、本件被相続人の相続財産とは認められない。

結論

納税者の勝ち

相続専門税理士角田の所感

相続開始時に被相続人名義の預金口座に相続人の固有財産である預金口座からの資金移動があった事例である。
税務署は当該預金口座は被相続人名義だし、被相続人の配偶者の相続税申告で財産計上された預金が原資であるとして相続財産であると認定した。
これに対し、国税不服審判所は当該被相続人名義の預金口座の原資は相続人が事業主である歯科医院の診療報酬であると認定。
被相続人名義の預金であっても実態で判断し、その原資等が被相続人でない場合には毅然とした態度で相続財産から除かなければならない。
逆名義預金事例で納税者が勝った稀有な事例である。

令和3年9月17日 金沢国税不服審判所 公開裁決事例

誰の名義?

家族名義

裁決事例要旨


【論点①】
請求人は、請求人の亡夫(被相続人)が、平成13年から毎年一定の金額を被相続人の子(長男)に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、長男名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、被相続人は、当該入金の都度、贈与する旨を長男に通知し、長男はこれを受諾しているから、書面による贈与が包括的に成立し、その後、平成24年までの各年においてその受諾、履行も終えていた旨主張する。しかしながら、本件贈与証には長男の署名押印がなく、被相続人に係る相続税の調査時まで長男は本件贈与証の存在を認識していなかったことからすると、本件贈与証の存在のみをもって、毎年の本件預金口座への入金に係る贈与が成立していたと認めることはできない。また、毎年電話で被相続人から贈与の申込みがあり、受贈の意思を示していた旨の請求人の主張に沿った長男の陳述については、被相続人が本件預金口座を開設し、その後も引き続き本件預金口座の通帳等を管理するとともに、長男に本件預金口座及び本件贈与証の存在を知らせず、平成24年をもって長男に何ら連絡することなく入金を停止し、本件預金口座を長男に自由に使用させる状況に置かなかったことなどからすれば、不自然かつ不合理であり、他にこれら陳述の内容を直接裏付ける客観的資料もないから、信用することはできない。そうすると、長男が被相続人から本件預金口座に係る財産を贈与された時期は、被相続人が本件預金口座から預金残高全額を払い出し、本件預金口座の通帳等とともに長男に手渡した平成27年であると認められる。

【論点②】
原処分庁は、請求人の亡夫(被相続人)が、毎年一定の金額を当時未成年であった被相続人の嫡出でない子(長女)に贈与する旨を記した贈与証(本件贈与証)を作成した上で、長女の母を介し、長女名義の普通預金口座(本件預金口座)に平成13年から平成24年までの間、毎年入金していたことについて、長女の母は、本件贈与証の具体的内容を理解しておらず、被相続人の指示に従い本件預金口座に入金していたにすぎず、当該入金が長女へ贈与されたものとは認識していないから、被相続人から長女への贈与は成立しておらず、本件預金口座に係る預金は被相続人の相続財産に含まれる旨主張する。しかしながら、本件贈与証の内容は、その理解が特別困難なものとはいえない上、長女の母は、本件贈与証を預かるとともに、被相続人の依頼により本件預金口座へ毎年入金し、本件預金口座の通帳等を口座開設当時から管理していたことからすれば、平成13年当時、長女の唯一の親権者であった長女の母は、長女の法定代理人として、本件贈与証による贈与の申込みを受諾し、その履行として本件預金口座へ毎年入金していたと認めるのが相当であり、また、本件預金口座には、利息を除き、毎年の入金以外に入金はないから、本件預金口座に係る預金は、平成13年の口座開設当初から長女に帰属するものであって、相続財産には含まれない。

結論

一部納税者の勝ち

相続専門税理士角田の所感

納税者が負けた論点①は、被相続人は贈与証なるものを作成していてそれに基づき長男名義の口座に毎年入金していたが、贈与証書に長男の署名押印がなく、長男自身がその口座を自由に使える状態ではなかったため贈与の成立が否認された事例である。
これに対し納税者が勝った論点②は、愛人の子に毎年贈与をしていてその贈与先の口座は愛人(すなわち受贈者の親)が管理していたため贈与が成立したと認定された事例である。
いずれも贈与証とうい書面を作成していたが、論点①は引き続き被相続人が口座を管理し、論点②は受贈者の親が管理していた点が結果を左右した原因だろう。
なお、贈与証よりは贈与契約書で受贈者の署名押印があったほうが良いだろう。もちろん贈与後の口座の管理は受贈者(受贈者が未成年の場合には受贈者の親)自身がすべきであることは言うまでもない。

令和3年10月1日 名古屋国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

子供名義

裁決事例要旨

請求人は、亡父(被相続人)の相続に係る相続税の申告において相続財産に含めて申告していた請求人名義の預貯金等(本件預貯金等)は、いずれも請求人が出えん・管理していたものであるから、請求人固有の財産であると主張する。しかしながら、①本件預貯金等の原資の出えん者や、出入金の行為者を特定することができず、②本件預貯金等の通帳及び証書は、被相続人やその配偶者名義の預貯金の通帳及び証書と一緒に金庫に保管されており、請求人は当該金庫から自由に持ち出すことなどができない状態であったことに加え、③請求人は、本件預貯金等以外の請求人名義の預貯金の通帳を、明確に区別して保管していたことからすれば、請求人が、本件預貯金等の原資を出えんし、管理していたとは認められないため、本件預貯金等が請求人固有の財産であるとはいえない。

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

多分当初申告で名義預金として納税者(子)名義の預金を含めて申告した後に更正の請求等でその名義預金を除いて申請した事例であろう。
更正の請求事案では立証責任が納税者に分配されるためその後の戦いは相当厳しいものになる。
本件でも納税者が固有財産であることを立証しきれずに負けた事例である。

令和3年12月25日 札幌国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

弟名義

裁決事例要旨

請求人は、原処分庁が請求人の姉(本件被相続人)に帰属する相続財産であるとした請求人等名義の預金等(本件各預金等)及び相続開始前3年以内に本件被相続人から贈与により取得した財産であるとした金員(本件金員)は、請求人が、請求人の収入、請求人の兄姉からの仕送り及び請求人の母の恩給を運用して貯めたものであるから、請求人に帰属する財産である旨主張する。しかしながら、預金等の帰属については、単に名義人が誰であるという形式的事実のみにより判断するのではなく、その原資となった金員の出捐者、その管理及び運用の状況、贈与の事実の有無等を総合的に勘案して判断するのが相当であるところ、本件各預金等及び本件金員の原資の出捐者は本件被相続人であり、請求人は本件被相続人から本件被相続人の財産の管理運用を任されていたと認められ、本件各預金等又はその原資について、本件被相続人から請求人に対する贈与がされた事実も認められないことから、本件各預金等は本件被相続人に帰属する相続財産に該当し、また、本件金員は相続開始前3年以内に本件被相続人から贈与により取得した財産に該当する。

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

納税者(弟)名義の預金が被相続人(姉)の財産になるかどうかが争われた事例。
当該口座の出捐者は被相続人であり、管理者は納税者であった。
管理者が名義人であったとしてもその管理を被相続人から任されていたと認定されることも多い。
本事例もそのように認定された。
名義預金ではその原資が被相続人であったかどうかが最重要な要素ということを再認識できた事例である。

令和4年2月15日 名古屋国税不服審判所 公開裁決事例

誰の名義?

配偶者名義、子供名義

裁決事例要旨

原処分庁は、相続税の申告書(本件申告書)に計上されていない現金(本件現金)、被相続人の配偶者(本件配偶者)名義及び次男名義の預貯金(本件預貯金)は、出えん者や被相続人及び本件配偶者の収入比率などからその帰属を判断すると、いずれも被相続人に帰属する財産であると認められる旨主張する。しかしながら、①本件現金の出金元である本件申告書に計上された預貯金口座で管理運用されていた預貯金の原資が特定できないことや、本件配偶者も収入を得ていたと認められることなどからすると、本件現金には被相続人及び本件配偶者が得た収入が混在している可能性を否定できない中、審判所においても、被相続人及び本件配偶者の収入比率により本件現金を合理的にあん分することもできないことからすると、本件申告書に計上された預貯金及び現金の額を超えて、本件現金が被相続人に帰属する相続財産として存在していたと断定することはできない。また、②本件預貯金についても、本件現金と同様、それらの原資を特定することができず、本件配偶者が管理運用していたことからすると、被相続人が得た収入が混在している可能性は否定できない中、被相続人及び本件配偶者の収入比率により合理的にあん分することができないから、本件申告書に計上された預貯金及び現金の額を超えて、本件預貯金が被相続人に帰属する相続財産として存在していたと断定することはできない。

結論

納税者の勝ち

相続専門税理士角田の所感

本公表裁決事例については、名義預金の最新裁決事例【令和4年2月15日裁決】 相続専門税理士の解説付きにまとめた。

令和4年9月20日 大阪国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

被相続人名義(逆名義預金論点)

裁決事例要旨

請求人は、請求人の母(本件被相続人)名義の普通預金口座(本件普通預金口座)の預金について、その預金の原資は、請求人が代表取締役を務める会社の株式のうち本件被相続人名義の株式(本件株式)からの配当金及び本件株式の売却代金などであるところ、本件株式は請求人に帰属し、請求人が本件普通預金口座の開設及び管理を行っていることから、本件普通預金口座は請求人に帰属し、本件被相続人の相続財産を構成しないとして、相続税法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項に規定する相続により取得した財産ではない旨主張する。しかしながら、本件普通預金口座は、本件株式の配当金及び同株式の売却代金などが入金されるのみで、主として当該配当金の受取口座として開設されたものであるところ、その原資の元となった本件株式は本件被相続人に帰属するものである上、本件普通預金口座の開設を請求人が行っているものの、本件被相続人に帰属する配当金の受取口座として請求人により本件被相続人名義で管理が行われていたものであることを踏まえると、本件普通預金口座は、その名義のとおり本件被相続人に帰属し、同項に規定する相続により取得した財産に該当する。

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

本件は被相続人である母名義の預金口座に納税者(子)の経営する会社の株式にかかる配当や売却代金が入金されていた。
納税者からしてみれば名義株からの配当や売却収入だからいくら被相続人名義の口座に振り込まれていたとしてもそれは自分の財産だと主張した。
税務署は名義株でなく被相続人の実質的な財産と認定。
逆名義預金論点で納税者の主張が認められるのはレアケースであろう。

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