生活費・教育費の贈与に贈与税はかかる?非課税の要件と10事例を税理士が解説

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相続税申告

名義財産・生前贈与

贈与税が非課税となる生活費と教育費 事例別にわかりやすく解説
10秒でわかる この記事の要約

  • 親や祖父母からの生活費・教育費の援助は、「その都度」「通常必要と認められる範囲」であれば贈与税は非課税(相続税法21条の3第1項2号)
  • 金額の上限はないが、生活費の名目でも使わずに預貯金・株式・不動産の購入にあてた分や、数年分をまとめて渡した分は課税
  • 「通常必要と認められる範囲」は不確定概念で、被扶養者の需要・扶養者の資力など社会通念で判断する
  • 教育資金の一括贈与(1,500万円)の特例は令和8年3月31日で終了(廃止)。結婚・子育て資金の一括贈与は令和9年3月31日まで延長
  • 今後の教育費援助は「その都度の都度贈与」が基本になる

「親が子の生活費を援助した」「祖父母が孫の学費を出した」——こうした生活費・教育費の援助に贈与税はかかるのか、と心配される方は少なくありません。
結論からいうと、扶養義務者(親・祖父母など)からの生活費・教育費の贈与は、その都度・通常必要な範囲であれば贈与税は非課税です。

本記事では、相続専門の税理士が、非課税になる要件と課税される注意点、具体的な10事例、そして令和8年3月で終了した教育資金一括贈与の特例まで、図解でわかりやすく解説します。

生活費・教育費の贈与が贈与税非課税になる判定フロー。扶養義務者間か・生活費や教育費に充てるためか・その都度通常必要な範囲か、の3要件を満たせば非課税

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生活費・教育費の贈与は原則として贈与税が非課税

親から子、祖父母から孫などへの贈与のうち、生活費または教育費に充てるための贈与で通常必要と認められるものは、贈与税が非課税となります。

相続税法第21条の3第1項第2号
扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの(は贈与税の課税価格に算入しない)

ポイントは次の3つです。

第一に、贈与する人と受け取る人が「扶養義務者」の関係にあること。扶養義務者とは、配偶者、直系血族(親子・祖父母と孫など)・兄弟姉妹、家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族、生計を一にする三親等内の親族をいいます(相続税法1条の2、民法877条)。

第二に、その贈与が生活費または教育費に充てるためのものであること。生活費とは通常の日常生活に必要な費用、教育費とは学費・教材費・文具費などをいいます。

第三に、「その都度」必要な分を、「通常必要と認められる範囲」で渡すこと。必要なときに必要な額を直接これらに充てることが求められます。

「通常必要と認められる範囲」とは

悩ましいのが「通常必要と認められる範囲」の解釈です。
相続税法基本通達では、「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲」までとされています。

「通常必要と認められる」「社会通念上適当」というワードは、税務の世界では明確な基準のない「不確定概念」と呼ばれます。
つまり、金額の上限が決まっているわけではなく、ケースに応じて個別に判断するということです。

逆にいえば、生活費・教育費の名目でも、使わずに預貯金として貯めたり、株式・不動産・高額品の購入にあてたりした分は「通常必要」とはいえず、贈与税の課税対象になります。
以下、具体的な事例でケースごとに確認していきましょう(一部に私見を含みます。実際の課税判断は税理士にご確認ください)。

【事例別】贈与税が非課税になる・ならないケース

事例1 夫婦間の生活費

夫(会社員)が妻(専業主婦)へ毎月10万円の生活費を振り込み、妻はその10万円を生活費として使い切っている。
贈与税非課税。典型的な扶養義務者間での生活費相当の資金移動のため非課税です。

事例2 一人暮らしの子(大学生)への生活費の送金

父が、都内で一人暮らしをする大学生の長男へ、家賃8万円と生活費10万円を毎月振り込み、長男は生活費として使い切っている。
贈与税非課税。典型的な扶養義務者間での生活費相当の資金移動です。

事例3 高齢の母への生活費の送金

長男(50歳・年収1,000万円)が、北海道で一人暮らしをし年金だけでは生活が厳しい母(80歳)へ、毎月10万円を振り込み、母は使い切っている。
贈与税非課税。子から親への扶養も扶養義務者間の生活費にあたり非課税です。

事例4 障害のある50代の子への生活費の送金

父が、長年精神障害があり無職・財産もない同居の長男(50歳)へ、生活費10万円を毎月振り込み、長男は使い切っている。
贈与税非課税。成人でも実際に生計を立てられる資力がないため、生活費としての資金移動は非課税です。

事例5 怠惰な生活を送る50代の子への生活費の送金

父が、ギャンブルが趣味で定職に就かない長男(50歳)へ、生活費等20万円を毎月振り込み、長男は生活費とギャンブルに使い切っている。
グレーゾーン。扶養義務には、配偶者間や親と未成年の子のように同レベルの生活を支える「生活保持義務」と、余裕がある場合に助ける「生活扶助義務」があります。成熟した子への生活扶助義務は、①病気や修学などで子が要支援状態にあり、②親に生活の余裕があるときに生じるとされます。本事例は子の怠惰により資力がない点で判断が難しく、実際に生活費として使われた部分は扶養義務者間の生活費として非課税となる余地がありますが、ギャンブルなど遊興費に使われた部分は通常必要な生活費とは認められにくく、課税対象になる可能性が高いと考えられます。

事例6 大学生の子の教育費の送金

父が長男の大学の学費50万円を負担した。
贈与税非課税。大学の学費の負担は社会通念上適当と認められる範囲のため非課税です。

事例7 大学生の孫の教育費の送金

祖父が、年収1,000万円・財産5,000万円ある長男の子(孫)の大学の学費50万円を負担した。
贈与税非課税。本来は親である長男が負担すべきところですが、一代飛び越えて祖父母が教育費を負担しても贈与税は課税されないと考えられます。

事例8 相当の資力のある長男家族への生活費の送金

父が、年収1,000万円・財産5,000万円ある長男家族(長男・妻・小学生)の生活費として毎月30万円を振り込み、使い切っている。
グレーゾーン。事例7の孫の教育費は非課税なのに、と疑問に思うかもしれません。相続税法・通達上、生活費と教育費で子の資力による扱いの違いは明記されていませんが、実務上は次のように整理できます(私見)。
教育費の場合、被扶養者は原則として学生であり、自身に資力がないのが通常です。これに対し生活費の場合、被扶養者は学生とは限らず、成人した子であれば自身に資力があるケースもあります
そのため、生活費のほうが「被扶養者の資力」を問われやすくなります。
実際、国税庁の生活費・教育費に関するQ&AのQ5-1(下図)でも、非課税となる生活費は「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲」とされ、子が自らの資力で家賃等を負担し得ない事情を勘案するとされています(国税庁Q&A(PDF))。

国税庁Q&AのQ5-1。非課税となる生活費は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断するとされている

本事例のように資力のある長男への生活費は、社会通念上適当な生活費に該当しないと認定される可能性があります。

事例9 大学生の子への高額な自動車購入費用の送金

父が、一人暮らしの大学生の長男へ「生活に必要な車代」として800万円を振り込み、長男はその車を購入した。
贈与税課税。生活に必要な車だとしても800万円は高額で、より安価で生活に使える車もあるため、通常必要な範囲を超えると認定されます。

事例10 内縁の妻への生活費の送金

内縁の妻へ毎月30万円の生活費を振り込み、妻は使い切っている。
グレーゾーン。相続税法21条の3の「配偶者」は法律婚の配偶者を指すため、内縁の配偶者はこの非課税規定に当然には含まれません。もっとも、令和6年12月12日の東京高裁判決では、内縁関係にある相手からの金員は婚姻費用分担義務の履行として支払われたもので、そもそも贈与により取得した財産とはいえないとして、贈与税の決定処分が取り消されました。つまり、相続税法21条の3の非課税に当然該当するというより、「そもそも贈与に当たるか(贈与該当性)」が中心の論点です。財産の移転に至る経緯・金額・頻度・双方の資力・使途などを総合的に勘案して判定します。

教育資金・結婚子育て資金の「一括贈与」特例との違い【2026年最新】

生活費・教育費の「都度贈与」とよく混同されるのが、まとまった額を一括で渡せる「一括贈与」の特例です。
ただし、教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)の特例は令和8年3月31日で終了し、令和8年4月1日以後は新規にこの特例を受けることはできません

一括贈与特例の2026年最新状況の比較表。教育資金の一括贈与は令和8年3月31日で終了、結婚・子育て資金の一括贈与は令和9年3月31日まで延長、生活費・教育費の都度贈与は期限なしで恒久的に非課税

ただし、令和8年3月31日までに適用を受けた信託受益権・金銭等については、引き続きこの特例が適用されます(教育資金の一括贈与の特例)。

一方、結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円まで非課税)の特例は、令和9年3月31日まで2年延長されており、まだ利用できます。

教育資金の一括贈与が終了したことで、今後の教育費の援助は、本記事で解説した「その都度の都度贈与」が基本になります。
都度贈与には、教育資金一括贈与のような1,500万円の定額上限はありません。
ただし、非課税になるのは、あくまでその都度必要で、社会通念上通常必要と認められる範囲に限られる点に注意してください。
あわせて、暦年贈与や相続時精算課税(暦年贈与と相続時精算課税の違い)など、ほかの非課税・節税の方法(贈与税がかからない方法5選)も検討するとよいでしょう。

生活費・教育費の贈与で間違えやすいポイント

贈与税の課税を避けるために、次の点を確認しておきましょう。

チェックリスト

  • □ 贈与する人と受け取る人は扶養義務者の関係にあるか
  • □ 生活費・教育費に「その都度」「直接」充てているか(数年分の一括はNG)
  • □ 受け取った生活費・教育費を使い切っているか(預貯金・投資に回していないか)
  • □ 金額が社会通念上適当な範囲か(高額な車・不動産などは要注意)
  • □ 教育資金の一括贈与は終了済み(令和8年3月末)と理解しているか
根拠となる法令・通達
■ 相続税法21条の3第1項2号:扶養義務者相互間の生活費・教育費で通常必要と認められるものは非課税
■ 相続税法基本通達21の3-3〜21の3-7:生活費・教育費の意義、必要な都度直接充てる要件、預貯金等にあてた場合の取扱い
■ 租税特別措置法70条の2の2:教育資金の一括贈与の非課税(令和8年3月31日で終了。令和8年4月1日以後は新規適用不可)/70条の2の3:結婚・子育て資金の一括贈与(令和9年3月31日まで)
国税庁タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」

よくある質問

Q1.毎月決まった額を仕送りすると、定期贈与として課税されますか?
A.生活費・教育費に充てるための援助を、その都度・通常必要な範囲で行っている限り、毎月定額でも非課税です。
定期贈与(毎年一定額を贈与する約束)が問題になるのは、生活費・教育費以外のまとまった財産を分割贈与する場合などです。

Q2.数年分の生活費・教育費をまとめて渡すと非課税になりませんか?
A.非課税にならない可能性が高いです。
非課税の要件は「その都度」必要な分を渡すことなので、数年分を一括で渡すと、使い切れずに預貯金として残る部分が課税対象になります。

Q3.もらった生活費が余って貯金や投資に回った場合はどうなりますか?
A.使わずに残して預貯金にした分や、株式・不動産・高額品の購入にあてた分は、生活費として「通常必要」とはいえず、贈与税の課税対象になります。
とくに、余った生活費を子や孫の名義の口座にそのまま貯めていくと、名義預金として相続税の対象と認定されるリスクもあるため注意が必要です。

Q4.親が子の結婚式や出産の費用を負担した場合、贈与税はかかりますか?
A.親が子の結婚式や出産にかかる費用を負担しても、その内容や金額が社会通念上相当と認められる範囲であれば、贈与税の課税対象にならないとされています。
高額すぎる場合や、現金をまとめて渡して使途が不明な場合は注意が必要です。

Q5.仕送りや教育費の援助に金額の上限はありますか?
A.金額そのものの上限は法律で定められていません。
ただし「通常必要と認められる範囲」を超える高額な援助は課税されるため、実質的にはその範囲が上限になります。

Q6.非課税となる生活費・教育費の贈与でも、贈与税の申告は必要ですか?
A.非課税となる生活費・教育費の贈与については、贈与税の申告は不要です。
ただし、援助した事実や使途を説明できるよう、振込の記録などを残しておくと安心です(相続税の申告要否)。

まとめ

扶養義務者(親・祖父母など)からの生活費・教育費の援助は、その都度・通常必要と認められる範囲であれば、金額の上限なく贈与税が非課税です(相続税法21条の3第1項2号)。
一方、使わずに貯めた分や数年分の一括贈与、高額すぎる援助は課税対象になります。

また、教育資金の一括贈与の特例は令和8年3月31日で終了したため、今後の教育費援助は都度贈与が基本になります。
生前贈与は、都度贈与・暦年贈与・相続時精算課税などを組み合わせて計画的に行うことが大切です(生前贈与の活用ガイド生前贈与加算は7年へ)。
一方で、数年分の一括送金、使い残しの預貯金化、投資・不動産・高額品への流用、資力のある子への生活費援助は、贈与税や名義預金の問題になり得ます。
東京・新宿・横浜の税理士法人トゥモローズでは、生活費・教育費の都度贈与、暦年贈与、相続時精算課税、生前贈与加算、名義預金リスクまで含めて、生前贈与と相続税申告を一体で確認します。





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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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