海外資産がある場合の遺産分割の進め方と注意点【税理士が解説】

最終更新日:

国際相続

10秒でわかる この記事の要約

  • 海外資産も日本の遺産分割協議の対象となる
  • 海外不動産は所在地国の法律が適用される場合がある(不動産所在地法主義)
  • 遺産分割協議書は日本語で作成し、必要に応じて英訳を添付
  • プロベートが必要な国では、遺産分割前に裁判所の許可が必要
  • 外貨建て資産は相続開始日のレートで評価する

「海外に不動産や預金があるのですが、遺産分割はどうすればいいですか?」

海外資産がある相続では、日本国内の財産とは異なる注意点があります。

準拠法の問題、プロベートとの関係、外貨建て資産の評価など、考慮すべき点が多岐にわたります。

この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、海外資産がある場合の遺産分割の進め方を解説します。

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海外資産も遺産分割の対象

原則:日本法が適用される

海外にある財産も、原則として日本の遺産分割協議の対象となります。

日本の国際私法(法の適用に関する通則法)では、相続は被相続人の本国法によると定められています(通則法第36条)。

被相続人が日本人であれば、相続人の国籍や財産の所在地にかかわらず日本法が適用されます。

つまり、海外にある預金、不動産、株式なども、日本の遺産分割協議で分割方法を決めることができます。

準拠法については、国際相続があった場合の準拠法で詳しく解説しています。

例外:不動産所在地法主義

ただし、不動産については例外があります。

多くの国では「不動産の相続は所在地国の法律による」という考え方(不動産所在地法主義)を採用しています。

不動産相続の準拠法
アメリカ 不動産所在地の州法
イギリス 不動産所在地法
フランス 不動産所在地法
ドイツ 被相続人の本国法(日本法)
香港 不動産所在地法

例えば、日本人がアメリカに不動産を所有していた場合、その不動産の相続については、アメリカ(具体的には不動産所在地の州)の法律が適用される可能性があります。

海外資産の種類と注意点

海外預金・証券

遺産分割のポイント
・遺産分割協議書に基づいて名義変更・解約が可能
・ただし、プロベートが必要な国では先にプロベートを完了させる必要あり
・金融機関によって必要書類が異なるため、事前に確認が必要

評価のポイント
・相続開始日の残高で評価
・外貨建てはTTB(対顧客直物電信買相場)で換算

外貨建て財産の評価については、【相続税申告】外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。

海外不動産

遺産分割のポイント
・所在地国の法律が適用される場合がある(不動産所在地法主義)
・現地での登記手続き(名義変更)が必要
・現地の弁護士・司法書士への依頼が一般的
・プロベートが必要な国も多い

評価のポイント
・日本の相続税では、現地の売買実例価額等を参考に評価
・路線価方式は使えない
・現地の鑑定評価を取得することも

海外不動産の評価については、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。

海外の株式・投資信託

遺産分割のポイント
・証券会社の手続きに従って名義変更
・上場株式は比較的手続きがスムーズ
・非上場株式は複雑になることが多い

評価のポイント
・上場株式は相続開始日の終値等で評価
・非上場株式は現地の財務諸表等を取り寄せて評価

海外の生命保険

遺産分割のポイント
・受取人が指定されている場合、原則として受取人固有の財産
・遺産分割の対象外となる場合が多い

税務上の注意点
・日本の生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人)は適用されない
・「本来の相続財産」として課税される

遺産分割協議書の作成

言語と形式

遺産分割協議書は日本語で作成するのが一般的です。

海外の機関に提出する場合は、英訳を添付します。

遺産分割協議書の形式
・日本語で作成
・相続人全員の署名・押印(または署名+サイン証明)
・必要に応じて英訳を添付
・海外提出用にはアポスティーユを取得

海外資産の記載方法

海外資産は、特定できるように詳細に記載します。

財産の種類 記載例
海外預金 ○○銀行(所在国:アメリカ合衆国カリフォルニア州)
口座番号:○○○○
残高:USD○○○.○○
海外不動産 所在地:(現地の住所を詳細に記載)
登記情報:(登記番号等)
面積:○○㎡
海外株式 ○○証券(所在国:シンガポール)
口座番号:○○○○
銘柄:ABC社 普通株式 ○○株

遺産分割協議書の書き方については、遺産分割協議書の書き方 注意点も含めてわかりやすく徹底解説!をご参照ください。

プロベートとの関係

アメリカ、イギリス、香港、シンガポールなどでは、遺産分割の前にプロベート(裁判所の許可)が必要です。

プロベートと遺産分割の関係

プロベートが必要な国での流れ
①日本の相続人で遺産分割協議を行う

②プロベートの申請

③裁判所から遺産管理人の任命

④遺産管理人による財産の管理・債務の清算

⑤日本の遺産分割協議に基づいて各相続人へ分配

日本での遺産分割協議とプロベートは、並行して進めることが多いです。

ただし、プロベートが完了するまでは、実際に財産を移転することはできません。

プロベート完了前の遺産分割協議

プロベートが完了していなくても、日本の遺産分割協議を行うことは可能です。

・相続人間で分割方法を合意しておく
・プロベート完了後に、合意内容に従って分配
・遺産分割協議書に「プロベート完了後に分配する」旨を記載することも

海外資産の遺産分割に関するQ&A

Q1:海外不動産を相続人の1人が単独で取得することは可能ですか?

A:可能です。

遺産分割協議で合意し、現地での名義変更手続きを行います。

ただし、国によっては外国人の不動産所有に制限がある場合もありますので、事前に確認してください。

Q2:海外預金を日本に送金してから分割した方がいいですか?

A:どちらでも構いません。

送金前に分割協議を確定させ、各相続人の取得分を明確にしておくことが重要です。

送金後に分割する場合は、送金にかかる手数料や為替差損益の負担についても協議で決めておきましょう。

Q3:遺産分割協議書にアポスティーユは必要ですか?

A:海外の機関に提出する場合は必要になることがあります。

日本での相続手続きのみであれば不要です。

海外の銀行や登記所に提出する場合は、公証人認証+アポスティーユが必要になることが一般的です。

Q4:海外資産の評価額が確定しない場合はどうすればいいですか?

A:概算で分割協議を行い、確定後に精算する方法もあります。

「確定後に差額を精算する」旨を遺産分割協議書に記載しておくことで対応できます。

Q5:相続人の1人が海外居住の場合、遺産分割協議はどうすればいいですか?

A:書面やオンラインでの協議が可能です。

全員が一堂に会する必要はありません。

海外居住の相続人は、サイン証明を添付します。

まとめ

この記事のポイント

  • 海外資産も原則として日本の遺産分割協議の対象
  • 海外不動産は所在地国の法律が適用される場合あり
  • プロベートが必要な国では裁判所の許可が先に必要
  • 遺産分割協議書は日本語で作成、海外提出用には英訳・アポスティーユ
  • 外貨建て資産は相続開始日のレートで評価

海外資産がある遺産分割は、国内財産のみの場合と比べて時間と手間がかかります。

早めに専門家に相談し、計画的に進めることが重要です。

当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、海外資産がある相続の実績も豊富です。

「海外に財産があるが、遺産分割の進め方が分からない」
「プロベートと遺産分割の関係を整理したい」

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回面談は無料です。

海外資産がある場合の遺産分割の進め方と注意点【税理士が解説】の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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