海外の証券口座の相続手続きを完全解説|株式・投資信託の名義変更と評価方法

- 多くの海外証券口座は、死亡の通知後に売買・出金が制限されます。解除・移管方法は国の制度/口座形態(TOD・ジョイント・信託名義など)/証券会社のルールで変わる
- 米国の証券口座はプロベートまたはTOD(Transfer on Death)登録等により移管される
- 上場株式は日本と同様に課税時期の終値・月平均の4つのうち最も低い価額で評価可能
- 売却時には譲渡所得税も発生するため、取得費の把握が重要
「父がアメリカの証券会社に口座を持っていましたが、どうすればよいですか?」
当事務所では国際相続のご相談の中で、海外の証券口座に関するお問い合わせが増えています。
海外銀行口座の解約については海外銀行口座の相続解約で失敗しない!5つの落とし穴と対策【税理士解説】で触れていますが、証券口座は銀行口座とは異なる特有の論点が多数あります。
この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、海外証券口座の相続手続き・評価方法・税務上の注意点を徹底解説します。
海外証券口座の相続で最初にすべきこと
海外の証券口座を保有する方が亡くなった場合、まず口座の存在と内容を正確に把握することが最優先です。
口座の特定と残高確認
海外証券口座の存在は、以下の方法で確認できます。
・被相続人のメール(取引報告書・ステートメントの受信履歴)
・国外財産調書の控え
・確定申告書の外国税額控除の記載
・パスポートや渡航履歴からの推定
・海外送金の履歴(銀行取引明細)
国外財産調書制度を徹底解説でも説明していますが、5,000万円超の国外財産がある方は調書を提出しているはずですので、その控えが重要な手がかりとなります。
口座凍結への対応
口座保有者の死亡が証券会社に通知されると、口座は直ちに凍結されます。
凍結後は、売買注文の執行、配当金の引き出し、資金の送金が一切できなくなります。
凍結を解除するには、現地の法的手続き(多くの場合プロベート)を完了させる必要があります。
国別の証券口座相続手続き
証券口座の相続手続きは、口座が開設された国の法律に従います。
アメリカの場合
米国の主要証券会社(Charles Schwab、Fidelity、Interactive Brokers等)の口座相続には、原則としてプロベートが必要です。
プロベートについては、プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較【税理士解説】をご参照ください。
ただし、以下の場合はプロベートを経ずに移管が可能です。
| 口座の種類 | プロベートの要否 | 移管方法 |
| 個人口座(Individual) | 必要 | 裁判所発行のLetters Testamentary提示 |
| TOD登録付き口座 | 不要 | 死亡証明書+受取人の本人確認+証券会社所定の請求書類等の提出で受取人へ移管 |
| ジョイント口座(JTWROS) | 不要 | 死亡証明書のみで生存者へ移管 |
| リビングトラスト名義口座 | 不要 | トラスト文書に基づき後継受託者が管理 |
TOD(Transfer on Death)は、日本にはない制度で、口座保有者の死亡時に指定した受取人へ自動的に口座資産が移転する仕組みです。
ジョイントアカウント(共同名義口座) 相続税、贈与税はどうなる?で解説したジョイント口座と同様、プロベート回避策として広く利用されています。
イギリスの場合
英国の証券口座もGrant of Probateの取得が必要です。
口座残高が少額(多くの証券会社で5万ポンド以下)の場合は、簡略化された手続きで移管できることがあります。
香港・シンガポールの場合
両地域とも英米法圏のため、プロベートが必要です。
ただし、証券口座がCDP(シンガポール)やCCASS(香港)を通じた信託保管となっている場合、手続きの流れが異なります。
相続税評価の方法
海外証券口座内の資産は、種類ごとに評価方法が異なります。
上場株式の評価
海外の上場株式の評価方法は、日本の上場株式と基本的に同じです。
課税時期(被相続人の死亡日)の終値と、死亡月・前月・前々月の各月平均終値の4つのうち、最も低い価額で評価します。
上場株式の相続税評価の詳しい解説は、上場株式の相続税評価と注意点を徹底解説!をご参照ください。
この4つの価額を現地通貨で算出した上で、TTB(対顧客電信買相場)で円換算します。
為替換算については外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。
投資信託(ミューチュアルファンド)の評価
海外の投資信託は、課税時期のNAV(純資産価額)に基づいて評価します。
上場ETFであれば上場株式と同様の評価方法が適用されます。
非上場の投資信託は、課税時期の基準価額(1口当たり純資産価額)×口数で評価します。
投資信託の相続税評価の詳しい解説は、投資信託の相続税評価方法と控除できる源泉徴収税額を徹底解説!をご参照ください。
債券の評価
外貨建て債券は、課税時期の現地市場価格(気配値)をTTBで円換算します。
既経過利息がある場合は、源泉徴収税相当額を控除した上で評価額に加算します。
債券の相続税評価の詳しい解説は、公社債の「3つの相続税評価方法」を徹底解説!をご参照ください。
税務上の注意点
外国税額控除の活用
米国では、非居住外国人の米国内所在資産に対して遺産税(Estate Tax)が課されます。
米国の遺産税は非居住外国人に対して米国内所在資産を課税対象とし、Form706-NAの提出要否は原則$60,000の閾値で判定されます(一定の調整項目あり)。
ただし、条約適用で負担が変わる場合があるため個別確認が必要です。
つまり、米国の証券口座で米国株を保有している場合、日本の相続税と米国の遺産税の二重課税が発生する可能性があります。
この場合、相続税の外国税額控除により、二重課税を調整することができます。
Form 706-NAの提出
米国内所在資産が6万ドルを超える場合には原則としてForm 706-NA(非居住外国人用遺産税申告書)の提出が必要です。
これを提出しないと、証券会社が口座資産の移管に応じないケースもあります。
売却時の譲渡所得
相続した海外株式を売却する場合、日本で譲渡所得税が課されます。
取得費は原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。
売却が申告期限後3年以内なら、取得費加算の特例で相続税の一部を取得費に上乗せできる場合があります。
被相続人の取得価額が不明な場合、売却金額の5%を概算取得費として計算することになり、多額の譲渡所得が発生するリスクがあります。
よくある質問
Q1:海外証券口座の存在を知らなかった場合はどうなりますか?
A:後から発見された場合は修正申告が必要です。
CRS(共通報告基準)により、各国の金融機関は口座情報を自動的に交換しており、税務署は海外資産の存在を把握している可能性があります。
意図的な申告漏れは重加算税の対象となりますので、早期の自主的な修正申告をお勧めします。
Q2:証券口座内の配当金や利息はどう扱いますか?
A:死亡日以前に基準日があって死亡後に入金されたの未収配当は相続財産に含めます。
死亡後に入金された配当は、相続人の所得(配当所得)として確定申告が必要です。
未収配当については、未収配当金、配当期待権、未収分配金の相続税評価を徹底解説をご参照ください。
Q3:海外証券口座を解約せずに名義変更できますか?
A:証券会社の規約と相続人の居住地によります。
多くの米国証券会社は、日本居住者の新規口座開設を受け付けていません。
そのため、相続を機に口座を解約し、日本の証券会社へ資産を移管するケースが一般的です。
まとめ:海外証券口座の相続は専門家への早期相談を
海外証券口座の相続について解説しました。
- 海外証券口座は死亡と同時に凍結され、現地の法的手続きが必要
- TOD登録やジョイント口座ならプロベート不要で移管可能
- 上場株式は4つの価額のうち最低額×TTBで評価
- 米国株は遺産税との二重課税リスクがあり外国税額控除を活用
- 売却時は取得費の把握が譲渡所得の計算で重要
海外に証券口座をお持ちの方が亡くなった場合、銀行口座以上に手続きが複雑になります。
当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、海外証券口座を含む国際相続の実績も豊富です。
「海外の証券口座にある株式をどう評価すればよいか分からない」
「米国の遺産税申告と日本の相続税申告を並行して進めたい」
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