国際相続の生前対策|相続人の負担を軽くする7つの方法
・海外財産は相続発生後の手続きが複雑で1~2年かかることも
・生前対策7つ:財産目録作成、遺言書、Joint Tenancy、信託、納税資金、税務情報整理、専門家選定
・海外不動産はJoint TenancyやTODDでプロベート回避が可能
・国外財産調書の提出と記録保管が税務調査対策の基本
・遺言書は「現地で有効な形式」で作成することが重要
「海外に財産があるのですが、相続が起きたら大変と聞きました。今のうちにできることはありますか?」
その通りです。海外財産の相続手続きは、国内財産の何倍も時間と費用がかかります。
プロベート手続きで1~2年、弁護士費用で数百万円というケースも珍しくありません。
しかし、生前に対策しておけば、これらの負担を大幅に軽減できます。
今回は、海外財産がある方が今すぐやるべき生前対策について、7つのポイントに整理して解説します。
目次
なぜ国際相続は生前対策が重要なのか
相続発生後では間に合わないこと
海外財産の相続には、以下のような困難が伴います。
・プロベート(裁判所手続き)に1~2年
・現地弁護士費用で数十万~数百万円
・書類の翻訳・認証に手間と費用
・現地への渡航が必要になることも
・相続税申告期限10か月に間に合わない可能性
相続発生後にこれらの問題に直面しても、打てる手は限られています。生前の対策が不可欠です。
特に対策が必要なケース
以下に該当する方は、早急に生前対策を検討すべきです。
・海外に不動産を所有している
・海外の銀行口座に多額の預金がある
・海外の証券口座で投資を行っている
・暗号資産(仮想通貨)を大量に保有している
・複数の国に財産が分散している
対策1:海外財産の目録を作成する
すべての財産を一覧にする
まず、海外に保有しているすべての財産をリストアップしましょう。
・財産の種類(不動産、預金、有価証券等)
・所在国
・金融機関名・口座番号
・おおよその金額(評価額)
・所有形態(単独、共有、Joint Tenancy等)
・関連書類の保管場所
アクセス情報の記録
銀行口座やネット証券のログイン情報も記録しておきます。
特にオンラインのみで管理している資産は、パスワードがわからないとアクセスできません。
デジタル資産の管理については「ネット口座、仮想通貨などのデジタル遺品と相続税」も参考にしてください。
定期的な更新
財産目録は最低でも年1回は見直し、更新しましょう。
相続発生時に古い情報しかないと、財産の把握に時間がかかります。
対策2:海外財産に対応した遺言書を作成する
遺言書がある場合のメリット
遺言書があれば、多くの国でプロベート手続きが簡略化・迅速化されます。
・遺言執行者をそのまま遺産管理人に選任できる
・相続人間の協議が不要
・異議申立ての可能性が低くなる
・裁判所の審理期間が短縮される
現地法に対応した遺言書
海外財産については、その国で有効な形式の遺言書を作成することが重要です。
方法は2つあります。
方法1:各国別に遺言書を作成
アメリカの財産用、イギリスの財産用など、国ごとに遺言書を作成します。
方法2:方式準拠法(ハーグ条約)を踏まえて“方式上有効”な遺言書を作成
『遺言の方式の準拠法に関する法律』により、行為地法・国籍法・住所地法などのいずれかに適合する方式で遺言を作成します。
英文遺言書については「国際相続で有効な英文遺言書の作成方法と注意点」をご参照ください。
日本の遺言書との整合性
日本の財産について日本語の遺言書、海外財産について英語の遺言書を作成する場合、内容に矛盾がないようにする必要があります。
両方の遺言書を同時に作成し、相互に参照する条項を入れておくのがベストです。
対策3:プロベート回避策を講じる
Joint Tenancy(合有不動産権)
アメリカやイギリスの不動産について、Joint Tenancy with Right of Survivorshipの形態で所有しておくと、プロベートを回避できます。
所有者の一人が亡くなると、その持分は自動的に生存者に移転します。
詳しくは「ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点」をご覧ください。
TODD(Transfer on Death Deed)
アメリカの一部の州では、TODD(死亡時移転証書)を登記しておくことで、プロベートなしで不動産を移転できます。
生前は所有者がすべての権利を保持し、いつでも撤回可能です。
リビングトラスト
リビングトラスト(生前信託)を設定し、海外財産を信託財産に移転しておく方法もあります。
リビングトラストについては「リビングトラストとは?相続税の取扱いと日本の税務上の注意点」をご参照ください。
対策4:納税資金を確保する
海外財産が凍結される問題
相続が発生すると、海外の銀行口座は凍結・引出制限されることがあります。
プロベートが完了するまで引き出しができないため、その間の相続税納税資金を別途確保しておく必要があります。
納税資金の準備方法
・日本国内に十分な流動資産を確保
・生命保険の活用(保険金は比較的早く支払われる)
・延納・物納の要件を確認
・相続人間での立替え合意
生命保険を活用した対策については「【生前対策には生命保険が効果的】生命保険で節税する方法」をご覧ください。
対策5:税務関係の情報を整理する
国外財産調書の提出
毎年12月31日時点で5,000万円超の国外財産を保有している場合、国外財産調書の提出義務があります。
これを適切に提出しておくと、万が一の申告漏れ時にも加算税が軽減されます。
詳しくは「国外財産調書制度を徹底解説!提出義務から書き方まで完全ガイド」をご覧ください。
取得費の記録保管
海外不動産や有価証券について、取得時の契約書・領収書を保管しておきましょう。
相続後に売却する際、取得費が不明だと概算取得費(売却価額の5%)しか使えず、税負担が大きくなります。
過去の贈与の記録
過去に海外で子供に贈与を行った場合、その記録を残しておきます。
相続税申告時に生前贈与加算の対象となる可能性があるためです。
対策6:専門家を選定しておく
日本の税理士
国際相続に詳しい税理士を、生前のうちに選定しておくことをお勧めします。
相続発生後に慌てて探すより、事前に相談しておく方がスムーズです。
「国際相続に強い税理士・弁護士の選び方【失敗しない5つのポイント】」も参考にしてください。
現地の弁護士・会計士
海外財産がある国の弁護士や会計士についても、可能であれば生前にコンタクトを取っておくと安心です。
少なくとも、どの事務所に依頼するか目星をつけておきましょう。
対策7:家族への情報共有
財産情報の共有
海外財産の存在を家族に伝えておくことは、最も重要な対策の一つです。
相続人が財産の存在を知らなければ、その財産は申告漏れとなり、後日税務調査で指摘されます。
CRS(共通報告基準)により、海外の金融口座情報は税務署に把握されています。「CRS(共通報告基準)と相続|海外資産は税務署に把握される?」もご覧ください。
アクセス方法の共有
銀行口座のログイン情報、金庫の暗証番号、パスワードなど、財産にアクセスするための情報を信頼できる家族に共有しておきます。
エンディングノートや貸金庫を活用する方法もあります。
よくある質問
Q1. 生前対策を始めるのに最適なタイミングはいつですか?
「今」がベストタイミングです。健康状態や判断能力に問題がない今のうちに対策を講じておくことが重要です。認知症などで判断能力が低下すると、遺言書の作成や信託の設定ができなくなります。
Q2. 海外財産の目録は、どこに保管すべきですか?
複数の場所に保管することをお勧めします。自宅の金庫、銀行の貸金庫、信頼できる家族への共有など、万が一の場合に確実にアクセスできるようにしておきましょう。デジタルで作成し、クラウドに保存しておくのも一つの方法です。
Q3. 遺言書は日本語で作成しても海外で有効ですか?
国によって異なります。アメリカやイギリスなど英語圏では、日本語の遺言書も有効と認められる場合がありますが、翻訳や認証が必要となり、手続きが複雑になります。可能であれば、現地語(英語等)での遺言書も併せて作成しておくことをお勧めします。
Q4. Joint Tenancyにすると贈与税がかかりますか?
単独名義からJoint Tenancyに変更する場合、持分の移転が発生するため、日本の贈与税の課税対象となる可能性があります。ただし、贈与税の配偶者控除(2,000万円)が使える場合もあります。事前に税務上の影響を確認してから実行することをお勧めします。
Q5. 生前に海外財産を売却してしまうのも一つの方法ですか?
はい、有効な選択肢の一つです。海外財産を生前に売却し、日本に資金を移しておけば、相続手続きは格段に簡単になります。ただし、売却時に譲渡所得税がかかるため、相続税との比較検討が必要です。
まとめ:今日から始める国際相続対策
海外財産の相続は、対策の有無で大きな差が出ます。
1. 海外財産の目録を作成する
2. 海外財産に対応した遺言書を作成する
3. プロベート回避策(Joint Tenancy、TODD、信託)を講じる
4. 納税資金を確保する
5. 税務関係の情報(国外財産調書、取得費)を整理する
6. 専門家(税理士、現地弁護士)を選定しておく
7. 家族に財産情報とアクセス方法を共有する
これらの対策は、今日から始められるものばかりです。
当事務所では、国際相続の生前対策についてもご相談を承っております。
海外財産をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
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