中国人の相続手続き|公証書の取得から日本法適用まで
①中国籍の被相続人の相続は中国法を出発点に準拠法を判断する
②中国の国際私法では動産は死亡時の常居所地法、不動産は所在地法が適用される
③日本居住の中国籍の方の日本国内財産には日本法が適用される場面が多い
④中国籍の相続案件では親族関係公証書などの公証書類の収集が重要になる
⑤中国所在の不動産や銀行口座がある場合は中国側の相続手続も別途必要になる
日本に在住する中国籍の方が亡くなった場合、相続手続はどの国の法律に従えばよいのでしょうか。
結論からいうと、中国籍の被相続人の相続は中国法が出発点ですが、財産の種類や所在地によって、日本法が適用される場面が少なくありません。
特に、中国では動産と不動産で適用法の考え方が分かれているため、日本に住んでいた中国籍の方の相続では、結果として日本法で処理する部分が多くなることがあります。
一方で、中国所在の不動産や中国の銀行口座がある場合は、中国側の手続を別途進める必要があります。
さらに、中国には日本の戸籍のように親族関係を一つの書類で確認できる仕組みがありません。
そのため、親族関係公証書、出生公証書、死亡公証書などの公証書類の取得が実務上の大きなハードルになります。
国際相続における準拠法の全体像は、国際相続があった場合の準拠法も先に確認しておくと理解しやすくなります。
目次
- 1 中国籍の被相続人の相続は、まず中国法が出発点になる
- 2 動産は常居所地法、不動産は所在地法になる
- 3 中国所在の不動産は中国法が問題になる
- 4 中国法では第1順位に父母が入る
- 5 中国には日本の戸籍のような制度がない
- 6 公証書類の取得が最大の実務上のハードルになる
- 7 中国在住の相続人は印鑑証明の代替書類が必要になる
- 8 中国に不動産がある場合は、中国側の名義変更手続が必要
- 9 中国の銀行口座の相続も手間がかかる
- 10 中国はアポスティーユに対応した
- 11 日本の相続税申告は10か月以内に進める必要がある
- 12 海外財産は日本側で別途評価し直す必要がある
- 13 海外財産は把握される前提で考えるべき
- 14 よくある質問(FAQ)
- 15 まとめ
- 16 関連記事
中国籍の被相続人の相続は、まず中国法が出発点になる
日本の国際私法では、相続は原則として被相続人の本国法によって決まります。
そのため、中国籍の被相続人であれば、まず中国法を確認することになります。
ただし、ここで終わりではありません。
中国側の国際私法では、相続について動産と不動産で別の法律を適用する考え方が採られています。
動産は常居所地法、不動産は所在地法になる
中国の国際私法では、法定相続について次のように整理されます。
| 財産の種類 | 中国側でみる適用法 |
|---|---|
| 動産 | 被相続人の死亡時の常居所地法 |
| 不動産 | 不動産の所在地法 |
そのため、日本に住んでいた中国籍の方が亡くなった場合、日本にある預貯金や株式などの動産は、日本法で処理する方向になりやすいです。
また、日本にある不動産も所在地が日本であるため、日本法が適用されます。
結果として、日本居住の中国籍の方の相続は、中国所在の不動産などを除き、日本法で処理する部分が多くなります。
中国所在の不動産は中国法が問題になる
一方で、中国にある不動産については、不動産所在地法として中国法が問題になります。
この場合、日本の遺産分割協議だけでは足りず、中国側での相続人確認、公証、翻訳、認証、名義変更などを別途進める必要があります。
日本の相続税申告上、中国不動産をどう評価するかは、海外不動産の相続税評価の方法と注意点もあわせて確認してください。
中国法では第1順位に父母が入る
中国法で相続を考えるとき、日本法との大きな違いになるのが相続人の範囲です。
| 項目 | 中国法 | 日本法 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 配偶者・子・父母 | 配偶者・子 |
| 第2順位 | 兄弟姉妹・祖父母・外祖父母 | 配偶者・直系尊属 |
| 相続分の考え方 | 同順位で均等が基本 | 配偶者と他の相続人で法定相続分が異なる |
中国法では、被相続人の父母が第1順位に入るため、両親が存命であれば、日本法より相続人が増えることがあります。
この点は、遺産分割や公証書の取得範囲にも直接影響します。
中国には日本の戸籍のような制度がない
中国には「戸口簿」がありますが、日本の戸籍のように出生・婚姻・親子関係を一元的に証明する制度ではありません。
そのため、中国籍の方の相続では、身分関係の証明を公証書類で補う必要があることが多くなります。
実務で問題になりやすい主な公証書類
・出生公証書
・結婚公証書
・親族関係公証書
・死亡公証書
これらの書類は、相続人の確定、銀行手続、不動産名義変更、中国側の公証手続などで重要になります。
公証書類の取得が最大の実務上のハードルになる
中国籍の相続案件では、相続人の範囲そのものより、必要書類をそろえることが一番大変なことが少なくありません。
親族関係公証書や出生公証書などは、中国国内の公証機関で取得するのが原則です。
在日中国大使館・総領事館で取り扱う公証業務はありますが、すべての相続関係書類を日本国内で完結できるわけではありません。
【実務上のポイント】
中国側の公証書類は、日本の戸籍のようにすぐ取れるものではありません。
取得に時間がかかるため、相続発生後はできるだけ早く着手することが重要です。
中国在住の相続人は印鑑証明の代替書類が必要になる
中国では、日本のような印鑑登録証明書の実務がそのまま使えるわけではありません。
そのため、日本の相続手続では、署名認証や声明書、公証書などで対応する場面があります。
さらに、中国語書類には日本語訳が必要になります。
翻訳・公証・認証の流れは、相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説も参考になります。
中国に不動産がある場合は、中国側の名義変更手続が必要
被相続人が中国に不動産を持っていた場合は、中国側で不動産登記の名義変更手続を進める必要があります。
一般に、日本の遺産分割協議書をそのまま持っていって終わるわけではありません。
中国語訳、公証、認証などを経て、現地の不動産登記機関へ提出する流れになります。
また、中国不動産については、準拠法の問題だけでなく、中国側の登記実務にも対応しなければなりません。
中国の銀行口座の相続も手間がかかる
被相続人が中国の銀行口座を持っていた場合、銀行側の相続手続も別途必要です。
銀行では、死亡証明書、相続関係を証明する書類、公証書類、相続人の身分証明書などを求められることがあります。
銀行口座は死亡の事実が把握されると凍結されることが多く、解除には時間がかかります。
そのため、中国国内の預金や証券口座がある場合は、相続税申告の準備と並行して、現地金融機関の手続も早めに始める必要があります。
中国はアポスティーユに対応した
中国は、外国公文書の認証を不要とする条約に加入し、2023年11月から日本との間でもアポスティーユが使えるようになりました。
これにより、日本の公文書を中国で使う場合、中国の公文書を日本で使う場合の一部で、従来の領事認証より手続が簡素化されています。
もっとも、すべての書類が一律にアポスティーユだけで足りるわけではありません。
私文書や相続実務特有の書類では、なお個別確認が必要です。
相続でアポスティーユが必要な場合の取得方法を完全解説【税理士監修】
日本の相続税申告は10か月以内に進める必要がある
中国側の公証や認証に時間がかかっても、日本の相続税申告期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月です。
したがって、中国側の書類待ちを理由に日本の申告期限が自動的に延びるわけではありません。
中国側の資料取得を待ちながら、日本側では財産評価や税額計算を先行させる必要があります。
国際相続全体のスケジュールは、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説も確認してください。
海外財産は日本側で別途評価し直す必要がある
中国不動産や中国預金を日本で相続税申告する場合、日本の評価ルールに従って日本円換算し直す必要があります。
外貨建て財産の邦貨換算
外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で円換算するのが原則です。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。
中国不動産の評価
中国不動産は、日本の路線価方式では評価できません。
現地の不動産鑑定評価や売買実例などをもとに時価を算定する必要があります。
詳しくは、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。
海外財産は把握される前提で考えるべき
海外の金融口座情報は、国際的な情報交換制度により、日本の税務当局に共有される仕組みがあります。
そのため、中国財産の申告漏れは見つかりやすくなっています。
「海外だから分からない」という前提で進めるのは危険です。
詳しくは、CRS(共通報告基準)と相続をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本居住の中国籍の人が亡くなった場合、日本法と中国法のどちらが適用されるか?
A. 出発点は中国法ですが、動産は死亡時の常居所地法、不動産は所在地法となるため、日本に住んでいた方の日本国内財産には日本法が適用される場面が多くなります。
Q. 中国の公証書はどこで取るのか?
A. 相続実務で使う親族関係公証書や出生公証書などは、中国国内の公証機関で取得するのが原則です。
日本国内で完結できるとは限らないため、早めの確認が必要です。
Q. 中国の両親も相続人になるのか?
A. 中国法が適用される場面では、配偶者・子に加えて父母が第1順位に入ります。
そのため、日本法より相続人が増えることがあります。
Q. 日本の相続税申告は中国側の書類がそろうまで待てるのか?
A. 自動的には待てません。
日本の申告期限は原則10か月なので、中国側の公証取得と並行して日本側の申告準備を進める必要があります。
まとめ
まとめ
中国籍の相続案件では、準拠法の判定と公証書類の取得が最大の実務論点になる。
動産は死亡時の常居所地法、不動産は所在地法となるため、日本居住者の相続では日本法で処理する部分も多い。
一方で、中国所在の不動産や銀行口座は中国側手続が必要であり、公証・翻訳・認証に時間がかかる。
中国法が適用される場合は、父母が第1順位に入る点にも注意が必要である。
日本の相続税申告期限を見据え、早期着手と日中両側の同時進行が不可欠である。
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