配偶者が認知症のまま自分が先に亡くなるとどうなるか|遺産分割・成年後見・遺言
10秒でわかる この記事の要約
- 配偶者が認知症になったとき、心配されるのはご本人の生活だと思います。
- ですが、実務でより深刻になるのは、元気なほうが先に亡くなったときです。
- 認知症の診断があるだけでは、遺産分割ができなくなるわけではありません。分かれ目は、その内容と法的な効果を理解して判断できるかです。
- 判断できず、遺産分割の代理権を持つ成年後見人等もいなければ、家庭裁判所への後見・保佐・補助開始の申立てが必要になります。
- その間、遺産分割協議書を前提とする手続きは進みません。ただし預貯金の仮払いや相続人申告登記という例外があり、預金も不動産も一切動かせないわけではありません。
- 相続税の申告期限は、相続人ごとに違うことがあります。子の期限が先に来て、配偶者の期限が後になる場合があります。
- 後見人がついた場合、本人の取り分は原則として法定相続分を確保する内容が求められます。
- この記事では、遺言で分割協議を避けられる範囲と、それでも残る限界を整理します。
ご相談で、いちばん切実な場面のひとつです。
「妻が認知症になりました。私が先に逝ったら、どうなりますか」
率直に申し上げると、何もしなければ、相続手続きは長く止まりがちです。
ただし、「認知症だから何もできない」という話ではありません。
法律が見ているのは診断名ではなく、配偶者ご本人が遺産分割の内容と法的な効果を理解して判断できるかです。
本記事では、何が起きるのかを条文で確認したうえで、元気なほうが今からできることを整理します。
遺産分割に基づく手続きの、どこが止まるのか
自分が亡くなり、相続人が「認知症の配偶者」と「子」だとします。
遺言がなければ、財産の分け方は遺産分割協議で決めます。
協議は、相続人それぞれが内容を理解して同意することで成立します。
ここで見るのは、認知症という診断名ではありません。
配偶者ご本人が、遺産分割の内容と法的な効果を理解して判断できるかどうかです。
理解して判断できるのであれば、ご本人が協議に参加できる場合があります。
また、すでに遺産分割の代理権を持つ成年後見人等がいるなら、新たな選任を待つ必要はありません。その方が協議に加わります。
問題になるのは、判断できず、かつ代理権を持つ後見人等もいない場合です。
この場合は、家庭裁判所に後見・保佐・補助開始等の審判を申し立て、代理権のある人を決めてから協議を進めます。
本記事は、この「相続開始の時点で後見人等がいない」場合を前提に書いています。
民法第838条第2号は、後見開始の審判があったときに後見が開始すると定めています。
申立てができる人は、民法第7条に列挙されています。
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。
ここで注意していただきたいのは、その配偶者はもう亡くなっているという点です。
実際に動くのは、子などの親族になります。
親族が申し立てられない事情があるときは、市町村長が申し立てる仕組みもあります。
高齢の方については老人福祉法第32条が根拠です。
市町村長は、65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときに、民法第7条などの審判を請求することができるとされています。
その間、何が止まるのか。
| 手続き | 後見人等が決まるまでの扱い |
|---|---|
| 預貯金の解約・払戻し | 遺産分割協議書を使う通常の手続きは進まない。ただし民法909条の2の仮払いは使える |
| 不動産の名義変更 | 遺産分割による登記は進まない。法定相続分による登記や相続人申告登記は別途検討できる |
| 株式・投資信託の移管 | 遺産分割を前提とする手続きは進まない(証券会社ごとに取扱いを確認) |
| 相続税の申告 | 期限が来る相続人がいる。ただし期限は相続人ごとに違うことがある |
「預金も不動産も一切動かせない」という意味ではありません。
民法第909条の2は、各共同相続人が遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の3分の1に自分の相続分を乗じた額について、単独で権利を行使できると定めています(金融機関ごとに法務省令で定める上限があります)。
葬儀費用や当面の生活費は、これで手当てできることがあります(預貯金の仮払い制度)。
不動産も同じです。
不動産登記法第76条の3は、相続が開始した旨と自分が相続人である旨を登記官に申し出ることができるとし、期間内に申し出れば相続登記の申請義務を履行したものとみなすとしています(相続人申告登記)。
財産の最終的な分け方は決まりませんが、登記義務や当面の支払いには対応できます。
そして、相続税です。
ここは誤解が多いところなので、項を分けて説明します。
相続税の申告期限は、相続人ごとに違うことがある
申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月が原則です。
ところが、起算日が動く場合があります。
相続税基本通達27-4は、「相続の開始があったことを知った日」について、相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等は法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日とし、相続開始の時に法定代理人がないときは後見人の選任された日としています。
つまり、判断能力のある子の期限が先に来て、配偶者の期限は後見人が決まってから10か月、という形になり得ます。
「認知症だから期限が延びる」わけではありません。
相続開始の事実を知ることができるかどうかで判断されるため、認知症の程度によっては動かないこともあります。
この判定と申告は税理士の業務です。早い段階で相談してください(関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続人に認知症の方がいる場合の相続税申告の留意点」)。
期限が先に来る相続人がいて分割が間に合わない場合は、未分割で申告することになります。
国税庁は、未分割の申告では原則として配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できないとしたうえで、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて申告し、その期間内に分割できた場合には、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで適用を受けられるとしています。
この一手を打っておかないと、特例が使えないまま確定します。
なお、判断能力の程度によっては、後見ではなく保佐(民法11条)や補助(同15条)になります。
保佐人・補助人が本人に代わって遺産分割を行うには、遺産分割についての代理権が付与されている必要があります。
認知症の診断があれば必ず後見になる、というものではありません。
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後見人がついた後も、自由には決められない
後見人が決まれば手続きは動き出します。
ただし、思ったとおりの分け方にはなりません。
民法第859条第1項は、後見人は被後見人の財産を管理し、財産に関する法律行為について被後見人を代表すると定めています。
そして民法第858条は、成年後見人は本人の意思を尊重し、心身の状態と生活の状況に配慮しなければならないとしています。
後見人は、本人の財産を守る立場にあります。
そのため、本人の取り分を法定相続分より減らす内容の分割には、通常応じられません。
「母さんはもう施設だから、家は自分が継ぐ」という話は、そのままには通らないのです。
ただし、法定相続分を下回る分割が一律に禁じられているわけではありません。
本人の生活保障、遺産の構成、これまでの扶養の状況などに合理的な事情があり、家庭裁判所へ説明できる内容であれば、検討の余地はあります。
家族側の都合だけでは、通常、理由として足りないということです。
もうひとつ、見落とされやすい問題があります。
後見人になった子が、その相続の共同相続人でもある場合です。
同じ遺産分割協議に、本人と子の双方が加わることになります。
民法第860条は、利益相反行為について民法第826条を後見人に準用しています(後見監督人がある場合を除きます)。
裁判所も、監督人が選任されている場合は特別代理人等の選任は必要なく、監督人が本人を代理すると案内しています。
監督人がいなければ、家庭裁判所に特別代理人(保佐なら臨時保佐人、補助なら臨時補助人)を選んでもらいます。
保佐・補助については、遺産分割の代理権が付与されている場合の話です。
手続きが、さらに一段増えます。
そして、いちばん重い点はここです。
後見は、相続手続きが終わっても続きます。
原則として、本人が亡くなるか、判断能力が回復して開始の審判が取り消されるまで続きます(民法第10条・第14条・第18条)。
家族の希望だけで途中でやめることはできません。
報酬については、後見人等が家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行い、家庭裁判所が可否と金額を決めます。
専門職だから自動的に一定額が発生する、という仕組みではありません。
親族が後見人になった場合でも報酬が認められることがあります。
それでも、相続のためだけに一時的に使える制度ではないという点は変わりません。
3類型の違いは任意後見と法定後見の違いにまとめました。
なお、後見開始の審判の申立書と、その添付書類の作成は、家庭裁判所に提出する書類の作成にあたります。
この部分は行政書士の業務ではありません。司法書士または弁護士に依頼してください。
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有効な遺言で、遺産分割協議を避けられる範囲を広げる
ここまでの流れは、遺産分割協議をする前提で起きるものです。
裏を返せば、協議をしなくてよい状態にしておけば、多くは避けられます。
それが遺言です。
各財産の帰属と、書き漏らした財産の行き先まで定めておけば、遺言の対象となる財産について、相続人が集まって話し合う必要がなくなります。
後見人の選任を待たずに、預金の解約や名義変更へ進める場面が増えます。
ただし、書き漏らした財産が出てくれば、その分は結局、遺産分割協議です。
残りの財産の行き先を1行入れておくかどうかで、結果が変わります。
もうひとつ、遺言で消えない論点があります。
配偶者の取得分を遺留分より少なくした場合、後見人等は本人の利益を守る立場から遺留分侵害額請求を検討することになります(民法第1046条)。
つまり、遺言があれば後見人が一切不要になるわけではありません。
正確には、遺産分割協議のためだけに後見人等を選任する必要性を減らせる、ということです。
実務では、次の2つをセットにします。
| やること | 効き方 |
|---|---|
| 公正証書遺言にする | 方式の不備による無効のリスクを大きく下げ、作成時の状況を証拠として残しやすい |
| 遺言執行者を指定する | 相続人の協力を求めずに進められる手続きが増え、窓口を一本化できる |
遺言執行者については遺言執行業務の流れ|就任から完了までの実務スケジュールをご覧ください。
ただし、税務の申告や登記申請の代理まで遺言執行者が担えるわけではありません。
そして、ここが大事なところです。
遺言を書いても、後見が不要になるわけではありません。
遺言が解決するのは、亡くなった人の財産をどう分けるかという場面だけです。
配偶者ご本人の預金を動かす、施設と契約する、自宅を売る。
こうした本人の財産や契約に関する行為は、遺言では代われません。
相続の場面で後見人が要るかどうかと、本人の生活のために後見人が要るかどうかは、別の話です。
遺言は、相続手続きを止めないための備えだと考えてください。
誰に、どう遺すか
遺言を書くと決めたら、次は中身です。
この類型では、配分の考え方が普通の家庭とは変わります。
配偶者へ遺した財産は、配偶者ご本人のために管理されます。
生活費、施設費、医療費、介護費、住居費に使うお金です。
後見人等が管理する場合、お子さんの都合で自由に使うことはできません。
ただし、本人のために必要な支出までできなくなるわけではありません。
「凍結される」という言い方をされることがありますが、正確ではありません。
配偶者の年金収入、いまの預貯金、施設費、医療費、想定される期間を並べて、本人に必要な分を先に確保してください。
そのうえで、お子さんへ遺す分を決めます。
一方で、配偶者の取り分を極端に減らせば、遺留分の問題が出てきます。
配分をどうするかは、遺留分と相続税の両方を見て決める話になります。
税理士・弁護士と一緒に検討してください。
そのうえで、実務でお伝えしていることが3つあります。
- 配偶者の生活費・施設費が、どこから出るのかを先に決めておく
- 自宅を誰が引き継ぐかを書いておく(共有にしない)
- 配偶者が自分より先に亡くなった場合の行き先も書いておく
2つ目の共有は、目的がないなら避けてください。
共有者である配偶者に判断能力がなければ、売却も賃貸も、本人の有効な意思表示か、成年後見人等の関与が要ります。
しかも、それが配偶者の居住用不動産にあたる場合は、民法第859条の3により、後見人が売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定などをするには家庭裁判所の許可が必要です。
施設に入っていても、以前住んでいた自宅や戻る可能性のある家は、居住用不動産にあたり得ます。
共有が禁じられているわけではありませんが、処分に時間と手続きが積み上がります。
なお、自宅がすでに夫婦の共有になっている場合、遺言で行き先を決められるのは自分の持分だけです。
3つ目も忘れないでください。
民法第994条第1項は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺贈の効力を生じないと定めています。
民法第995条により、その分は原則として相続人に帰属します。
配偶者へ遺すつもりだった財産が、そこへ行かないことがあるということです。
次に誰へ渡すかまで書いておく予備的遺言を入れてください(予備的遺言とは|受遺者・相続人が先に亡くなった場合に備える書き方)。
認知症のご家庭では、どちらが先になるか本当に読めません。
なお、相続税には障害のある相続人のための税額控除があります。
適用できるかどうかは個別の判断になるため、税理士に確認してください。
契約の内容を理解できない状態では、任意後見を新たに選べない
「本人にも何か契約させておけないか」と聞かれることがあります。
ここでも、認知症という診断名では決まりません。
任意後見がそれです。
任意後見契約に関する法律第3条は、任意後見契約は公正証書によってしなければならないと定めています。
公正証書を作るには、本人が契約の意味を理解して意思表示できることが前提です。
配偶者ご本人が、契約の内容、任意後見人へ与える代理権、効力が生じる条件を理解し、自分で契約する意思を示せるかどうかで判断します。
その理解と判断ができない状態であれば、任意後見を新たに結ぶことはできません。
その場合に使えるのは、必要な支援の内容に応じた法定後見(後見・保佐・補助)です。
遺言も同じです。
民法第963条は、遺言者は遺言をする時においてその能力を有しなければならないとしています。
ただし、認知症の診断が出たことと、遺言ができないことは同じではありません。
問題になるのは診断名ではなく、遺言をする時点で内容を理解して判断できるかどうかです(遺言能力が問題になるケース)。
程度によっては、まだ間に合う場合もあります。
判断に迷うなら、早い段階で公証人と主治医に相談してください。
後になるほど選択肢は減ります。
なお、後見の申立てをする人がいない場合の道も、押さえておいてください。
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官のほか、知的障害や精神障害のある方については、市町村長が福祉を図るため特に必要があると認めるときに申立てをすることができます(知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。
身寄りが少ないご家庭では、この道を知っておくだけでも違います。
自分自身の備えも、同時に進める
最後に、いちばん見落とされる点です。
元気なほうが、先に判断能力を失うこともあります。
そうなると、遺言も書けません(民法963条)。
夫婦とも判断能力を失えば、子が両方について後見を申し立てることになります。
夫婦それぞれ別の事件になるため、費用も手間も増えます。
では、何から手をつけるか。
ここは家庭によって答えが変わります。順番を固定しないでください。
| いまの状況 | 先にやること |
|---|---|
| 遺言を書く自分の判断能力に不安がある | 自分の遺言。判断能力を失うと作れない(民法963条) |
| 配偶者の預金・施設契約・自宅の処分が、すでに止まっている | 配偶者の後見・保佐・補助。生活が先に困る |
| 夫婦とも直ちに支障はない | 遺言・任意後見・財産管理委任・金融機関の代理人届出を並行 |
| 自宅や有価証券が多く、相続税がかかりそう | 遺言と同時に、配分と納税資金を設計する |
「まず自分の遺言」が正解になる家庭は多いですが、いつもそうとは限りません。
配偶者の生活がすでに止まっているなら、そちらが先です。
逆に、配偶者の後見をどうするかで悩んでいるうちに、自分の遺言を作らないまま時間が過ぎるご家庭も、実際にあります。
自分の備えは任意後見契約とは?認知症に備える終活の重要契約、財産管理委任契約とは|任せられる範囲の決め方と、金融機関で通らないことがある理由にまとめました。
私見ですが、この類型でいちばん大事なのは、順番を間違えないことです。
配偶者のことを先に何とかしたくなりますが、止まって困るのは、あなたが亡くなった後の手続きです。
遺言を1通書いておけば、その部分は止まりません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 軽度の認知症でも、遺産分割協議に参加できませんか?
A. 程度によります。判断できるかどうかは、診断名ではなく、その協議の内容を理解して同意できる状態にあるかで見られます。日常会話ができても、財産の分け方を理解して判断するのが難しいこともあります。判断が微妙なまま協議書に署名してもらうと、後から無効を主張される余地が残ります。金融機関や法務局の窓口で止まることもあるため、主治医の意見も踏まえて、後見の要否を早めに検討してください。
Q2. 後見人をつけずに、子だけで分割協議を済ませることはできませんか?
A. できません。相続人全員が参加していない遺産分割協議は無効です。ここでいう「参加」には、判断能力のある本人が加わる場合と、代理権を持つ成年後見人等が加わる場合の両方が含まれます。本人に代わって子が署名する形も、代理権がなければ効力がありません。仮に金融機関の手続きが通ってしまっても、後から他の相続人や本人の後見人に無効を主張されるおそれが残ります。遺言があれば協議そのものが不要になるため、まずは遺言を作るほうが現実的です。
Q3. 私が遺言を書けば、妻に後見人をつけなくて済みますか?
A. 相続手続きの場面については、後見人の選任を待たずに進められることが増えます。ただし、奥さまご本人の預金を動かす、施設と契約する、自宅を売るといった行為は、遺言では代われません。ご本人の生活のために後見が必要かどうかは、相続とは別に判断してください。両方をひとつの制度で片づけようとすると、どちらも中途半端になります。
Q4. 認知症の妻は、相続税の障害者控除を使えますか?
A. 認知症という診断だけで当然に使えるわけではありません。一方、相続開始の時点で成年被後見人である方については、東京国税局の文書回答(平成26年3月14日)で、相続税法上の障害者控除における特別障害者に該当するとの照会者の見解が認められています。それ以外の場合は、障害者手帳や自治体の認定など、個別の事情で判断されます。なお、控除を受けるには本人が相続や遺贈で財産を取得することも要件です。配偶者にまったく財産を取得させない遺言にすると、控除の使い方に影響します。適用の可否は税理士にご確認ください。
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まとめ
配偶者が認知症でも、それだけで遺産分割ができなくなるわけではありません。
分かれ目は、ご本人が遺産分割の内容と法的な効果を理解して判断できるかどうかです。
判断できず、代理権を持つ成年後見人等もいなければ、家庭裁判所への申立てが必要になります。
その間も、預金と不動産が完全に止まるわけではありません。
民法909条の2の仮払いと、相続人申告登記という別の道があります。
相続税の申告期限は相続人ごとに違うことがあります。子の期限が先に来て、配偶者の期限が後になる場合があります。
後見人がついた後は、本人の取り分は原則として法定相続分を確保する内容が求められます。
後見人になった子がその相続の共同相続人でもある場合は、監督人がいなければ特別代理人等の選任が要ります(民法860条)。
各財産と残りの財産の行き先まで書いた遺言があれば、遺言の対象となる財産について協議が要らなくなります。
ただし、配偶者ご本人の生活費、施設契約、自宅の管理、遺留分、相続税は別に設計してください。
遺言1通ですべてが片づくわけではありません。
そして、配偶者ご本人が契約の内容を理解できない状態であれば、任意後見という選択肢はもう選べません。
打てる手が残っているのは、元気なほうです。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、認知症のご家族がいる方の公正証書遺言、任意後見契約、財産管理委任契約の設計を一体でお手伝いしています。
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根拠法令・公的資料
- 民法第7条(後見開始の審判の請求権者。本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官)
- 民法第11条(保佐開始の審判)・第15条(補助開始の審判。本人以外の者の請求によるときは本人の同意を要する)
- 民法第838条第2号(後見は、後見開始の審判があったときに開始する)
- 民法第858条(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
- 民法第859条第1項(後見人は被後見人の財産を管理し、財産に関する法律行為について被後見人を代表する)
- 民法第860条(利益相反行為について第826条を後見人に準用。ただし後見監督人がある場合を除く)
- 民法第963条(遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない)
- 民法第994条第1項(遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じない)・第995条(その場合、受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属する)
- 民法第10条・第14条・第18条(後見・保佐・補助開始の審判の取消し)※原則として本人の死亡か、判断能力の回復による審判の取消しまで続く
- 民法第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可。売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分には家庭裁判所の許可を要する)
- 民法第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使。相続開始の時の債権額の3分の1に相続分を乗じた額について単独で権利を行使できる。債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする)
- 民法第1046条(遺留分侵害額の請求)
- 不動産登記法第76条の3(相続人である旨の申出等。期間内に申し出た者は所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす=相続人申告登記)
- 任意後見契約に関する法律第3条(任意後見契約は公正証書によってしなければならない)※契約であるため、契約の内容を理解して意思表示できないと締結できない
- 老人福祉法第32条(市町村長は、65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第7条等に規定する審判の請求をすることができる)
- 知的障害者福祉法第28条・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第51条の11の2(市町村長による後見・保佐・補助開始等の審判の請求)
- 相続税基本通達27-4(7)(相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等は、法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日。相続開始の時に法定代理人がないときは、後見人の選任された日)※当法人確認日 2026年8月23日
- 国税庁タックスアンサーNo.4208(相続財産が分割されていないときの申告)※未分割では原則として配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を適用できない。「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、期間内に分割した場合は分割の日の翌日から4か月以内の更正の請求で適用を受けられる。当法人確認日 2026年8月23日
- ※民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)は令和8年6月24日公布。成年後見に関する部分は公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行されるため、本記事の執筆時点では未施行。現行制度を前提に記載しています。当法人確認日 2026年8月23日
- ※相続税の計算・特例の適用は税理士、家庭裁判所へ提出する後見開始の審判の申立書等は司法書士・弁護士、登記申請の代理は司法書士の業務です
