死後事務委任の受任者が先に亡くなったら|民法653条と予備的な受任者の決め方
10秒でわかる この記事の要約
- 死後事務委任契約を結んでも、それで終わりではありません。
- 民法第653条第1号は、委任者又は受任者の死亡によって委任が終了すると定めています。
- つまり、受任者が先に亡くなれば、原則として契約は終わります。破産手続開始の決定や、受任者が後見開始の審判を受けた場合も同じです。
- 同年代の友人に頼んだ契約は、いちばん必要な場面で機能しないことがあります。
- 法人に頼めば必ず安心というわけでもありません。解散・廃業・担当者の交代という別の論点が出てきます。
- 本記事では、受任者が欠けたときに何が起きるのかを条文で確認し、予備的な受任者の置き方と契約前に確かめる項目を整理します。
「甥に死後事務を頼むつもりです」
「学生時代からの友人が引き受けてくれると言っています」
どちらもよくあるご相談です。
気持ちの上では、いちばん安心できる選択だと思います。
ただ、契約としては確認しておくことがあります。
死後事務委任契約が働くのは、ご本人が亡くなった後です。
その時点で受任者が元気でいるかどうかは、誰にも分かりません。
本記事では、そこが崩れたときに何が起きるのかを条文から確認します。
契約書に何を書くかは死後事務委任契約書のサンプル、費用は死後事務委任契約の費用相場にまとめました。賃貸にお住まいの方は、国土交通省・法務省のモデル契約条項を使う方法もあります(賃貸のおひとりさまの終活)。
委任は、受任者の死亡で終了する
死後事務委任契約は、民法の委任(法律行為でない事務は準委任。民法656条)として扱われます。
そこで効いてくるのが民法第653条です。
「委任は、次に掲げる事由によって終了する。」
- 一 委任者又は受任者の死亡
- 二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
- 三 受任者が後見開始の審判を受けたこと
1号に、受任者の死亡が入っています。
先に、起きたことごとの結論を並べておきます。
| 起きたこと | 契約はどうなるか | 備え |
|---|---|---|
| 受任者がご本人より先に死亡 | 原則として終了 | 第2順位の方との契約を発効させる |
| ご本人の死亡後に受任者が死亡 | 実行の途中で終了 | 死亡後も存続する第2順位契約へ引き継ぐ |
| 受任者が後見開始の審判を受けた | 原則として終了 | 第2順位の方へ交代 |
| 受任者が破産手続開始の決定を受けた | 原則として終了 | 第2順位の方へ交代。預けたお金の保全を確認 |
| 法人の担当者が死亡・退職 | 受任者欄が法人名なら通常は継続 | 引継ぎ体制を確認 |
| 受任した法人が破産 | 委任の終了が問題になる | 代替の事業者と資金の返還へ移る |
受任者が先に亡くなれば、原則としてその契約は終了します。
3号も見落とせません。
受任者が認知症などで後見開始の審判を受けた場合も、そこで終わります。
代理権についても同じです。
民法第111条第1項第2号は、代理人の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判によって代理権が消滅すると定めています。
つまり、頼んだ相手が先に欠けると、契約も代理権も残りません。
ただし、まったく何も行われないというわけではありません。
民法第654条は、委任が終了した場合において急迫の事情があるときは、受任者またはその相続人もしくは法定代理人は、委任者またはその相続人もしくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならないとしています。
急いで手当てすべきことについては、この規定が働きます。
ただし、これは損害を避けるために急いで必要となる一時的な処分に限られます。
契約で予定された死後事務を最後まで引き継ぐ権限を、受任者の相続人が当然に取得するわけではありません。
受任者の相続人が、亡くなった受任者と同じ専門性や関係機関との連絡体制を持っているとも限りません。
民法654条を、予備の受任者の代わりにしないでください。
むしろ契約では、受任者の相続人が預かり品・金銭・記録を第2順位の受任者やご本人の指定する方へ引き渡す、と定めておくべきです。
ここで、よく聞かれることがあります。
「委任者が亡くなったら終了するなら、死後事務委任は成り立たないのでは」
もっともな疑問です。
民法第653条は当事者の合意で変えられる規定と解されており、契約で委任者の死亡によっては終了しないと定めておくことで、亡くなった後も存続させる扱いが実務で定着しています。
明文がなくても、契約の目的や内容から死亡後の存続の合意が認められる余地はあります(死後事務委任契約とはで判例を解説しています)。
それでも、相続人や関係機関との争いを避けるため、契約書に明記してください。
そして、この合意で手当てできるのは委任者側だけです。
受任者が先に欠ける場合は、別に備えておく必要があります。
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個人に頼むときの3つのリスク
個人に頼むこと自体が悪いわけではありません。
事情を分かってくれている人に頼めるのは、大きな利点です。
そのうえで、条文が挙げる3つの終了事由を、そのまま点検してください。
| 起きること | 契約への影響 | 起きやすい状況 |
|---|---|---|
| 受任者が先に亡くなる | 委任は終了(653条1号) | 同年代の友人・きょうだいに頼んだ場合 |
| 受任者が後見開始の審判を受ける | 委任は終了(653条3号) | 受任者も高齢になっていく |
| 受任者が破産手続開始の決定を受ける | 委任は終了(653条2号) | 預かり金がある場合はとくに深刻 |
長期の契約で、とくに想定しておくべきなのが1行目です。
60代で友人に頼み、20年後に必要になる。
その頃、友人も同じだけ年を取っています。
終了事由が生じたことを、契約の相手方が知らないという問題もあります。
民法第655条は、委任の終了事由は相手方に通知したとき、または相手方がこれを知っていたときでなければ対抗できないとしています。
ここでいう相手方は、あくまで委任契約の相手方です。
受任者が亡くなった場合であれば、その相続人などからご本人へ知らせる仕組みが要ります。
ご家族、銀行、施設へ当然に後継者を知らせる制度ではありません。
誰が、誰へ、いつ連絡するのか。
通知先と次の担い手は、契約で別に決めておく必要があります。
もうひとつ、受任者の側の負担も見ておいてください。
民法第644条は、受任者は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うとしています。
民法第645条は報告義務、第646条第1項は受け取った金銭その他の物を引き渡す義務を定めています。
善意で引き受けた友人が、これらの義務を負う立場になります。
なお、民法第648条第1項により、受任者は特約がなければ報酬を請求できません。
無報酬のまま重い事務だけが残る形になっていないか、頼む側が確かめてください。
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法人なら安心、とも言い切れない
では法人に頼めばよいのか。
その前に、契約書の受任者欄を見てください。
法人名で依頼したつもりでも、受任者が代表者個人の名前になっていることがあります。
| 契約書の受任者欄 | 担当者が亡くなった・辞めたとき |
|---|---|
| 行政書士法人などの法人名 | 担当者が欠けても、契約そのものは直ちには終了しない |
| 代表者などの個人名 | その個人の死亡により、民法653条1号が問題になる |
ここを取り違えると、法人に頼んだつもりが個人契約だった、ということになります。
そのうえで、法人には自然人のような死亡や後見開始がありません。
そのぶん、人的な継続性は確保しやすくなります。
ただし、別の論点が出てきます。
- 解散・廃業したらどうなるか
- 破産手続開始の決定を受けた場合はどうか(653条2号は法人にも及びます)
- 担当者が代わっても、聞いていた内容が引き継がれるか
- 預けたお金が、法人の運転資金と分けて管理されているか
このうち、解散と破産は法的な意味が違います。
解散は、その瞬間に法人格が消えることではありません。
会社法第476条は、清算をする株式会社は清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなすと定めています。
行政書士法人でも、解散と清算は裁判所の監督に属します(行政書士法第13条の19の3)。
とはいえ、長期の死後事務サービスを従前どおり受けられる保証にはなりません。
利用する側にとっては、事業が続くかどうかという実質が問題です。
一方、法人が破産手続開始の決定を受けた場合は、民法653条2号による委任の終了が正面から問題になります。
4つ目は、契約前に必ず確認してください。
分別管理がされていなければ、法人に何かあったときに預けたお金が戻らないおそれがあります。
ただし、分けて預金しているというだけでは十分とは限りません。
「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)は、預託金を運転資金と明確に区分することを求めたうえで、単なる分別預金や別法人での管理では倒産から隔離されず、十分な返還を受けられない可能性があるとしています。
信託銀行や信託会社を相手方とする信託契約が望ましいとも示されています。
確認するのは、口座の名義、運転資金との区分、倒産からの隔離、定期の報告、解約や倒産のときの返還方法です。
このガイドラインは、消費者庁だけのものではありません。
内閣官房、内閣府、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の連名で策定され、消費者庁のサイトに掲載されています(身元保証サービスの選び方)。
契約内容と費用の説明、預託金の管理、定期的な報告のほか、災害等が生じた場合の事業継続計画と、事業を清算することになった場合の対応方針をあらかじめ定めておくことが望ましいとされています。
なお、このガイドラインは、行政書士等を主な対象としていません。
弁護士・司法書士・行政書士等は業法に基づく規制が既に存在するため対象外とされ、そのうえで、これらの業種がガイドラインに記載された業務を行う場合には参考とすることが考えられる、と整理されています。
士業に頼む場合も、預託金の管理や報告の考え方はここを基準に確かめて構いません。
法人か個人かだけで決めず、契約書、預けたお金の保全方法、担当者の引継ぎ体制、報告の仕組みまで見て判断してください。
見るべきは、次の3点です。
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 受任者が欠けたときの取り決めがあるか | 653条で終了する場面を、契約で埋めておくため |
| 預けたお金の管理方法が書いてあるか | 受任者側に何かあっても、原資を守るため |
| 報告の頻度と、記録の残し方が書いてあるか | 生前に、動いているかどうかを確かめられるようにするため |
予備的な受任者を置いておく
受任者が欠ける場面への備えは、契約書で先に決めておきます。
この2つを分けて考えてください。
1つは、あらかじめ次の受任者を決めておく方法です。
第1順位の受任者が欠けたときには第2順位の方が引き継ぐ、という形で契約しておきます。
ただし、名前を書いておくだけでは足りません。
民法第643条は、委任は当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生ずると定めています。
つまり、第2順位の方ご本人との間でも契約が要ります。
第1受任者との契約書に氏名を書いただけでは、その方は当事者になりません。
やり方は2つです。
1つは、第2順位の方との間で、第1受任者の死亡などを条件として効力が生じる委任契約を別に結ぶ方法。
もう1つは、委任者・第1受任者・第2受任者の三者で契約する方法です。
なお、「予備的受任者」は民法上の制度名ではありません。
第1受任者が欠けたときに引き継ぐ方を指す、実務上の呼び方です。
遺言の予備的遺言のように、こちらが一方的に指定して成立する制度ではない、という点だけ押さえてください。
そして、ここからが見落とされやすいところです。
第2順位の方との契約にも、委任者の死亡によって終了しない旨を必ず入れてください。
受任者が欠ける場面は、1つではないからです。
| 第1受任者が欠ける時期 | 起きること | 必要な備え |
|---|---|---|
| ご本人の生前 | 第1受任者との契約が終了する | 第2順位契約を発効させる |
| ご本人の死亡後・死後事務の開始前 | 第1受任者が実行できない | 第2順位契約が、ご本人の死亡後も存続していること |
| 死後事務の実行中 | 葬儀・精算・解約が途中で止まる | 書類・鍵・資金・記録の即時引継ぎ |
2行目と3行目が、いちばん備えたい場面です。
ところが第2順位の契約が通常の委任契約のままだと、民法653条1号により、ご本人が亡くなった時点でその契約も終了するおそれがあります。
第1受任者との契約にだけ死亡後存続の条項を入れて安心してしまう、というのがよくある形です。
第2順位の契約には、少なくとも次を書いてください。
- 委任者の死亡によって契約を終了させないこと
- 第1受任者の死亡・破産・後見開始・辞任などを発効の条件とすること
- その条件が委任者の死亡後に生じた場合も発効すること
- 死後事務に必要な代理権の範囲
- 第1受任者またはその相続人からの書類・鍵・金銭・記録の引継ぎ
- 報酬、実費、預託金、未使用金の返還先
- 委任事務が終わった後の報告先
ここで、よく混同されるものがあります。
復受任者です。
民法第644条の2第1項は、受任者は委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができないとしています。
「受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」
つまり、契約であらかじめ許諾しておかないと、受任者の判断だけで他の人に任せることはできません。
民法第644条の2第2項は、代理権を付与する委任で受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は委任者に対して、その権限の範囲内において受任者と同一の権利を有し、義務を負うとしています。
ただし、復受任の許諾条項は、第1受任者が自分で復受任者を選べる状態を前提にしています。
復受任は、受任者が自分の事務の全部または一部を第三者に担当させる仕組みです。
許諾する条項を入れておけば受任者は選任できますが、第1受任者が復受任者を選任する前に亡くなれば、その許諾条項だけから後継者が生まれるわけではありません。
復受任は事務の分担や一時的な代替のための制度であって、受任者が亡くなった後の後継者を自動的に確保する制度ではありません。
違いを並べておきます。
| 項目 | 予備の受任者 | 復受任者 |
|---|---|---|
| 法律上の名称 | 実務上の呼び方 | 民法644条の2 |
| 誰と契約するか | 委任者ご本人 | 第1受任者が選任する |
| 本人の承諾 | 契約当事者として必要 | 委任者の許諾またはやむを得ない事由が必要 |
| 主な目的 | 第1受任者が欠けた後の後継 | 事務の分担・代替 |
| 第1受任者の死亡後 | 条件付契約により発効させる | 許諾条項だけでは後継者を確保できない |
| 委任者の死亡後に使うには | 死亡後存続の特約が必要 | もとの受任関係と代理権に依存する |
後継者の備えは、委任者の死亡後も存続する、第2順位の方ご本人との条件付契約です。
そして、忘れられやすいのが連絡の設計です。
受任者が亡くなったことを、誰がご本人に知らせるのか。
ご本人が亡くなったことを、誰が受任者に知らせるのか。
後者は死後事務委任の入口そのものです。
見守りの取り決めや、緊急連絡先の共有をあわせて決めておいてください(おひとりさまの終活契約)。
契約書だけあって、誰も気づかないというのがいちばん困ります。
任意後見とセットのときは、もう一段の確認がいる
おひとりさまの契約は、任意後見と死後事務委任を同じ相手に頼むことがあります。
まとめられるのは利点ですが、欠けたときの影響も一度に来ます。
ここでも、発効の前か後かで話が変わります。
任意後見監督人が選任される前は、相手方はまだ任意後見受任者で、任意後見人としての代理権はありません。
その段階で受任者が亡くなれば、任意後見契約は終了します。
ご本人に判断能力が残っていれば、新たに契約を結び直すことになります。
監督人が選任された後に任意後見人が亡くなった場合は、財産管理や身上保護に関する法律行為の代理ができなくなります。
このとき、家庭裁判所が同じ任意後見契約に別の任意後見人を補充するわけではありません。
任意後見人は、ご本人が契約で選んだ相手だからです。
予備を用意するなら、死後事務委任契約とは別に、任意後見契約についても公正証書と後見登記を前提にした設計が要ります。
死後事務の予備と、任意後見の予備は、自動的に兼用できません。
契約の方式も、発効の条件も、登記の要否も違うからです。
予備の契約がなく、ご本人が新たな任意後見契約を結べる判断能力も失っていれば、法定後見の利用を検討することになります。
同じ人が死後事務も引き受けていれば、亡くなった後の段取りも同時に止まります。
生前と死後で担い手を分けるか、それぞれに予備を置くかを決めてください。
任意後見と法定後見の関係は任意後見と法定後見の違いにまとめました。
もうひとつ、遺言執行者との役割分担です。
死後事務委任で扱うのは、葬送、行政手続、契約の解約、遺品の整理といった事務です。
財産を誰に渡すかを決めるのは遺言です。
遺言執行者が指定または選任されている場合に、その権限の範囲で遺言の内容を実現します。
遺言があっても、遺言執行者が置かれていないことはあります。
また、遺言執行者は相続財産全体の清算人ではありません。
整理すると、次のとおりです。
| 担い手 | 主な役割 |
|---|---|
| 死後事務受任者 | 葬送、行政への届出、契約の解約、遺品の整理など。契約と確保された原資の範囲で行う |
| 遺言執行者 | 遺言の内容の実現 |
| 相続人 | 相続財産・債務の承継と相続手続 |
| 相続財産清算人 | 相続人がいない場合の財産管理・債権者対応・清算 |
| 税理士 | 相続税の申告 |
| 司法書士 | 登記、家庭裁判所へ提出する書類の作成など |
| 弁護士 | 紛争・交渉・裁判手続の代理 |
両方を置くなら、どちらが何をするかを契約書と遺言の双方に書いておいてください(遺言執行業務の流れ)。
重なると、権限の根拠や役割の確認に時間がかかり、金融機関の手続きが遅れます。
お金の扱いも、3つに分けて考えてください。
- 亡くなった時点で既にあった未払医療費・施設費など
- 相続税の計算上、債務とは別枠で控除される一定の葬式費用
- 亡くなった後に初めて行う死後事務の報酬・実費
控除できる債務は、原則として死亡の時に現に存在し、確実と認められるものです。
死後事務の報酬や、契約の解約・遺品整理にかかる費用がすべて債務控除できるわけではありません(関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説」)。
判定と申告は税理士の業務になります。
なお、遺言執行者や相続財産清算人の選任を家庭裁判所へ申し立てる書類の作成は、行政書士の業務ではありません。
司法書士または弁護士に依頼してください。
契約前に確かめる12項目
ここまでを、確認できる形にまとめます。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 委任者の死亡で終了しない旨があるか | 民法653条を契約で外す条項 |
| 第2順位の方ご本人との契約になっているか | 氏名を書いてあるだけになっていないか |
| 第2順位の契約も、委任者の死亡で終了しないか | 委任者の死亡後に条件が成就しても発効するか |
| 発効の条件 | 死亡、破産、後見開始、辞任、長期入院、連絡不能など |
| 条件が生じたことの確かめ方 | 戸籍、登記事項証明書、診断書、通知書など |
| 引継ぎの取り決め | 契約書、鍵、端末、ID、連絡先、預かり金の渡し方 |
| 復受任を認める条項があるか | 民法644条の2第1項の許諾。事務の分担用で、後継者の備えとは別 |
| 預けたお金の管理方法 | 金額、保管先、運転資金との区分、倒産時の保全 |
| 報告の頻度と記録 | 民法645条の報告を具体化しているか。本人死亡後の報告先も |
| 報酬と実費 | 民法648条1項・649条・650条。立替の上限と精算方法 |
| 解約・辞任と返金 | 民法651条。予告期間、引継ぎ義務、精算 |
| 法人の場合の継続体制 | 受任者欄、担当者の交代、解散・破産時の対応、代替事業者 |
1つ目から3つ目までが入っていない契約書は、作り直しを検討してください。
1つ目が無ければ死後に働かず、2つ目が無ければ受任者が欠けた時点で止まります。
3つ目が無ければ、ご本人が亡くなった後に第1受任者が欠けたとき、せっかくの予備が使えません。
すでに契約している方も、一度読み返してみてください。
何年も前に結んだ契約は、前提が変わっていることがあります。
受任者の年齢、住んでいる場所、連絡先。
どれかが変わっていれば、それだけで動きにくくなります。
私見ですが、この類型でいちばん効くのは年に一度、読み返すことです。
契約を結んだ時点で安心してしまい、その後を見ていないご家庭が実際にあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. すでに結んだ死後事務委任契約を、あとから変えられますか?
A. 当事者が合意すれば変更できます。予備の受任者を追加する、復受任を認める条項を入れる、報告の頻度を決めるといった修正が典型です。ただし、変更内容を理解して意思表示できる状態であることが前提になります。また、第1受任者がすでに亡くなっている場合、その方との契約を変更することはできません。第2順位の方ご本人と新しく契約を結び直してください。公正証書で作っている場合は、改めて公証役場で作り直すか、変更契約を公正証書にする方法があります。
Q2. 受任者が先に亡くなったことに気づかないまま自分が亡くなったら、どうなりますか?
A. 受任者の相続人が、受任者の地位を当然に引き継ぐわけではありません。受任者の相続人は、民法654条による急迫時の応急処分や、預かり品・金銭・記録の返還を行うことはありますが、契約上の死後事務を最後まで実行する受任者になるわけではありません。ご本人に相続人がいれば相続人として必要な手続きを行うことはありますが、死後事務委任契約上の義務を引き継いだからではありません。相続人のあることが明らかでないときは、利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所が相続財産清算人を選任します(民法952条1項)。自動的に選ばれる制度ではありません。第2順位の受任者と事前に契約しておくのが、いちばん確実です。
Q3. 受任者を複数人にしておけば安心ですか?
A. 欠けたときの備えにはなりますが、誰がどの事務を行うのかを決めておかないと現場で混乱します。全員の同意が必要なのか、単独で動けるのか、順位をつけるのかを契約書に書いてください。金融機関や役所の窓口では、誰の権限で来たのかを書面で確認されます。人数を増やすことより、権限の範囲を明確にすることのほうが効きます。
Q4. 受任者に報酬を払わない約束でも問題ありませんか?
A. 民法648条1項により、受任者は特約がなければ報酬を請求できないため、無報酬の合意自体は可能です。ただし、無報酬の合意と、受任者が立て替えた実費の精算は別の話です。民法649条は必要な費用の前払請求、650条は支出した必要費用等の償還請求を定めています。交通費、戸籍等の取得費用、葬儀社への立替金を誰がどの資金から負担するのかを決めてください。また、民法651条により受任者はいつでも委任を解除できます。突然辞任される場合に備え、辞任の予告期間、引継ぎ義務、第2順位の方への通知も契約に入れておいてください。
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まとめ
死後事務委任契約は、結んだだけでは足りません。
民法第653条は、委任者又は受任者の死亡、破産手続開始の決定、受任者が後見開始の審判を受けたことを終了事由としています。
受任者が先に欠ければ、原則としてその契約は終わります。
同年代の友人やきょうだいに頼んだ契約は、いちばん必要な場面で機能しないことがあります。
法人に頼めば死亡という終了事由はありませんが、解散、破産、担当者の交代、預けたお金の管理という別の論点が出てきます。
法人か個人かではなく、契約書に何が書いてあるかで判断してください。
備えの中心は、委任者の死亡後も存続する、第2順位の方ご本人との条件付契約です。
民法第643条により、委任は相手方が承諾して初めて効力を生じます。
第1受任者との契約書に氏名を書くだけでは足りません。
そして、第2順位の契約にも死亡後存続の特約が要ります。
ご本人が亡くなった後に第1受任者が欠ける、といういちばん備えたい場面で使えなくなるからです。
復受任は、これとは別の制度です。
受任者が生きている間に事務を分担させる仕組みで、受任者が亡くなった後の後継者を確保するものではありません。
そして、受任者が欠けたことに気づける連絡の取り決めを添えてください。
契約書だけあって誰も気づかない、というのがいちばん困ります。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、おひとりさまの死後事務委任契約・任意後見契約・遺言の設計をお手伝いしています。
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死後事務の報酬や実費は、亡くなった後に発生するものが多く、相続税の債務控除の扱いが問題になります。控除できるのは死亡時に現に存在し確実と認められる債務です。判定と申告は税理士の業務です。
根拠法令・公的資料
- 民法第653条(委任の終了事由。一 委任者又は受任者の死亡/二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと/三 受任者が後見開始の審判を受けたこと)
- 民法第644条の2第1項(受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない)・第2項(代理権を付与する委任において受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は委任者に対して、その権限の範囲内において受任者と同一の権利を有し、義務を負う)
- 民法第643条(委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる)
- 民法第654条(委任の終了後の処分。委任が終了した場合において急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない)
- 民法第644条(受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う)
- 民法第645条(受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない)
- 民法第646条第1項(受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない)
- 民法第648条第1項(受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない)
- 民法第649条(委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない)
- 民法第650条第1項(受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる)
- 民法第651条第1項(委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる)
- 民法第952条第1項(相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない)
- 会社法第476条(清算をする株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす)
- 行政書士法第13条の19の3(行政書士法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する)
- 民法第655条(委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない)
- 民法第656条(この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する=準委任)
- 民法第111条第1項第2号(代理権は、代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたことによって消滅する)
- ※民法第653条は当事者の合意で変えられる規定と解されており、契約で「委任者の死亡によって終了しない」と定めるのが実務の扱いです
- ※相続税の債務控除・申告は税理士、家庭裁判所へ提出する遺言執行者・相続財産清算人の選任申立書等の作成は司法書士・弁護士の業務です
