相続税の節税は二次相続で決まる! 一次相続の遺産分割と対策の重要性
- 二次相続は一次相続より相続税が高くなりやすい(配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除も縮む)
- 法定相続人が1人減るため、基礎控除は600万円・生命保険の非課税枠は500万円ダウン
- カギは一次相続の遺産分割。配偶者に集中させすぎず、一次・二次の合計税額で考える
- 一次相続で配偶者に財産を寄せすぎると、二次相続で税負担が跳ね返る点に注意
- 対策は「一次の遺産分割+生前贈与+生命保険・資産組み換え」が三本柱
父または母のどちらかが亡くなったときの相続を一次相続といいます。
続いて、残された配偶者が亡くなったときに起こる相続が二次相続です。
一次相続の相続人は「配偶者+子」ですが、二次相続では配偶者がいないため「子のみ」になります。
配偶者がいないことと相続人の数が減ることで、二次相続の相続税負担は一次相続より重くなりがちです。
相続税の節税は、実は二次相続まで見据えた一次相続の遺産分割で大きく変わります。
本記事では、二次相続で相続税が高くなる理由・シミュレーション・具体的な対策を、相続専門の税理士が図解でわかりやすく解説します。
動画で知りたい方は下記YouTubeから、テキストで確認したい方はこのままお読みください。
目次
二次相続とは?一次相続との違い
二次相続とは、最初の相続(一次相続)で財産を受け取った配偶者が、その後に亡くなったときに起こる相続をいいます。
たとえば、父が亡くなったときの相続が一次相続、その後に母が亡くなったときの相続が二次相続です。
一次相続と二次相続の大きな違いは、相続人の構成です。
一次相続では「配偶者+子」が相続人ですが、二次相続では配偶者がすでにいないため「子のみ」が相続人になります。
この相続人構成の違いが、二次相続で相続税が高くなる根本的な原因です。
具体的にイメージしてみましょう。
一次相続で配偶者が財産の大半を相続すると、その時点では配偶者の税額軽減によって相続税が大きく抑えられます。
しかし、その財産はやがて二次相続で子に引き継がれ、今度は軽減がないまま課税されます。
つまり、一次相続で配偶者に寄せた財産は、二次相続で「先送りされた税負担」として戻ってくるのです。
だからこそ、目先の一次相続の税額だけでなく、一次・二次を合わせた合計でいくら納めるかという視点が欠かせません。
二次相続で相続税が膨らむ6つの理由
二次相続で相続税が重くなるのには、次の6つの理由があります。
① 基礎控除が縮小する
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
二次相続では配偶者がいない分、法定相続人が1人減るため、基礎控除が600万円ダウンします。
基礎控除の計算は相続税の基礎控除とは?計算方法と非課税ラインで詳しく解説しています。
② 配偶者の税額軽減が使えない
配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した財産のうち1億6,000万円または法定相続分相当額までは相続税がかからない制度です。
二次相続ではその配偶者がいないため、この大きな軽減がまったく使えません。
制度の詳細は配偶者の税額軽減(配偶者控除)をご覧ください。
③ 死亡保険金の非課税枠が縮む
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
二次相続では法定相続人が1人減るため、非課税枠も500万円ダウンします。
④ 小規模宅地等の特例のハードルが上がる
自宅の土地を最大80%減額できる小規模宅地等の特例は、配偶者なら無条件で使えます。
しかし二次相続では配偶者がいないため、同居していた子や家なき子など、要件を満たす相続人がいないと適用できないことがあります。
要件は小規模宅地等の特例を確認してください。
⑤ 相続財産が増えやすい
二次相続では、もともと配偶者が持っていた固有の財産に、一次相続で配偶者が取得した財産が上乗せされます。
たとえば一次相続で配偶者が多くの財産を取得すると、その分が配偶者自身の財産となり、二次相続でまとめて子に課税されます。
そのため課税対象となる財産が大きくなりやすく、税額も増えやすくなります。
⑥ 税率の高いゾーンに達しやすい
相続税は、課税遺産総額が大きいほど税率が上がる超過累進税率です。
財産が増え、かつ相続人の数(法定相続人)が減ることで、一人あたりの取得額が大きくなり、二次相続では一段階高い税率が適用されるケースも少なくありません。
①〜⑥の要因が重なることで、二次相続の相続税は一次相続より大きくなりやすいのです。

税率と税額の計算は相続税の税率は何%?早見表と計算を参考にしてください。
数字で見る 二次相続シミュレーション
二次相続を意識して一次相続の分割を決めると、一次・二次を通じた相続税の合計がどう変わるかを具体例で見てみましょう。
(1)一次相続の財産のほうが大きいケース
① 二次相続まで財産の増減がなかった場合

② 二次相続までに相続対策で財産を1億円減らせた場合

一次相続の財産のほうが大きいケースでは、配偶者がある程度取得して一次相続の税額を抑えつつ、二次相続までに生前贈与や資産の組み換えで財産を圧縮すると、一次・二次の合計税額を大きく減らせます。
対策の有無で二次相続の負担が変わる点が、このケースのポイントです。
(2)二次相続の財産のほうが大きいケース
① 二次相続まで財産の増減がなかった場合

② 二次相続までに相続対策で財産を1億円減らせた場合

もともと配偶者(二次相続の被相続人)の固有財産が大きいケースでは、一次相続で配偶者にさらに財産を集中させると、二次相続がいっそう重くなります。
このケースでは、配偶者の取得割合を抑えるほど一次・二次の合計税額が軽くなりやすい傾向があります。
(3)配偶者の税額軽減を使わないほうが有利なケース
① 二次相続が直後に発生し、配偶者の税額軽減を適用した場合

② 二次相続が直後に発生し、配偶者の税額軽減を適用しなかった場合

一次相続で配偶者が相続税を納めた場合は、その分だけ二次相続に引き継がれる財産が減り、納めた相続税の一定額は二次相続で相次相続控除の対象にもなります。
(配偶者の税額軽減によって配偶者が一次相続の相続税を納めていない通常のケースでは、相次相続控除は使えません。)
そのため、財産が非常に大きいケースでは、あえて一次相続で配偶者の税額軽減をフルに使わないほうが、一次・二次の合計では有利になることがあります。
③ 二次相続までに相続対策で財産を5億円減らせた場合

財産が非常に大きいケースでは、配偶者の税額軽減をどこまで使うかと、二次相続までにどれだけ財産を圧縮できるかの両方が、一次・二次の合計税額を大きく左右します。
こうしたケースほど、事前のシミュレーションによる試算が欠かせません。
二次相続を踏まえた一次相続の遺産分割の結論
シミュレーションを踏まえると、一次相続の遺産分割は次の考え方で決めるのがおすすめです。
■ 二次相続までの年数が短いと見込まれるとき … 一次・二次の合計税額が最小になる取得割合をシミュレーションで求める
■ 相続税だけでなく、長年連れ添った配偶者の生活や意向も最大限に尊重する
なお、自宅を誰が相続するかも二次相続を大きく左右します。
判断のポイントは自宅の相続は誰がすべき?一次相続と二次相続で決まる最適な選択をご覧ください。
二次相続対策の具体策
二次相続の負担を抑えるには、一次相続の段階から手を打つことが重要です。
主な対策は次のとおりです。

第一に、一次相続の遺産分割を最適化することです。
配偶者に財産を集中させすぎず、一次・二次の合計税額が最小になる取得割合にします。
第二に、生前贈与です。
暦年贈与や相続時精算課税を使い、二次相続までに配偶者の財産を計画的に移します。
ただし、相続開始前の一定期間の贈与は相続財産に加算されるため、早めの実行が有効です。
第三に、生命保険の活用です。
二次相続でも「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を使えるよう、契約内容や受取人を見直します。
第四に、小規模宅地等の特例を使える状態をつくっておくことです。
同居の子や家なき子など、二次相続でも特例を満たせる相続人を確保しておきます。
第五に、現金を不動産に換えるなどの資産の組み換えで、評価額を下げて課税ベースを圧縮することです。
第六に、養子縁組で法定相続人を増やすことです。
孫などと養子縁組をすると、二次相続でも基礎控除や生命保険の非課税枠が広がり、税率も下がりやすくなります。
ただし、基礎控除などの計算に算入できる養子の数には制限があり、孫を養子にすると相続税が2割加算される点には注意が必要です。
これらをまとめて知りたい方は相続税の節税対策10選も参考になります。
これらの対策は、一次相続の段階や、二次相続が起こる前の元気なうちに着手するほど効果が高くなります。
相続が起きてからでは打てる手が限られるため、一次相続の遺産分割を決めるタイミングで、二次相続まで見据えた設計をしておくことが大切です。
よくある質問
Q1.一次相続で配偶者が自宅を相続しないと小規模宅地の特例が使えませんが、配偶者の取得割合はゼロにしたいです。良い方法は?
A.代償分割を活用しましょう。
配偶者に自宅を相続してもらい、その代償として配偶者から子へ代償金を支払うことで、配偶者が実質的に取得する財産をゼロに近づけられます。
Q2.一次相続の遺産分割が決まる前に二次相続が発生しました。子だけで配偶者の取得割合を自由に決められますか?
A.子が複数いる場合は決められます。
二次相続シミュレーションを精緻に行い、相続税が最も少なくなるように一次相続の分割割合を決めましょう。
一次相続の申告期限までに分割が固まらない場合は、未分割申告も選択肢です。
なお、子が1人の場合は自由に決められず、原則として配偶者の法定相続分2分の1が取得割合になります。
Q3.配偶者居住権は二次相続対策になりますか?
A.二次相続では配偶者居住権が消滅し、課税されずに自宅を子へ移せるため、節税になる場合があります。
ただし設定によりかえって不利になることもあるため、慎重な検討が必要です。
詳しくは配偶者居住権の解説と配偶者居住権の節税とリスクをご覧ください。
Q4.二次相続では子どもどうしの遺産分割でもめやすいと聞きました。なぜですか?
A.一次相続では配偶者が調整役になりますが、二次相続では配偶者がいないため、子どもだけで分けることになります。
一次相続で配偶者に寄せた財産を二次相続でまとめて分けるため金額も大きくなりがちで、誰がどの財産を相続するかで意見が割れやすくなります。
一次相続の段階で、二次相続の分割方針や納税資金まで話し合っておくことが争いの予防になります。
Q5.小規模宅地等の特例と二次相続を両方有利にするにはどうすればよいですか?
A.一次相続では配偶者が自宅を取得すれば特例を使えますが、二次相続では同居の子などが必要です。
配偶者居住権とあわせた12パターンの有利判定は小規模宅地の特例と配偶者居住権の関係|二次相続有利判定で詳しく解説しています。
まとめ
二次相続では、基礎控除の縮小・配偶者の税額軽減の不適用・税率アップが重なり、一次相続より相続税が増えやすいのが特徴です。
だからこそ、一次相続の段階から「配偶者に集中させすぎない遺産分割」「生前贈与」「生命保険・資産の組み換え」で布石を打つことが重要です。
一次・二次の合計税額を最小にする分割は、シミュレーションなしには判断が難しいため、相続に強い税理士のサポートが効果的です。
払い過ぎを防ぐ観点では、すでに納め過ぎている場合に相続税の還付(更正の請求)を使える可能性もあります。
東京・新宿・横浜の税理士法人トゥモローズでは、二次相続まで見据えた一次相続の遺産分割と申告に対応しています。
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