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リバースモーゲージの契約者が亡くなったら|一括返済・自宅売却と相続人の選択

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 「親が自宅を担保にリバースモーゲージを利用していた」——。契約者(借入人)が亡くなると、リバースモーゲージは契約・約款で定めた返済期日や契約終了時期に、自宅の売却代金や相続人の資金で借入金を清算する仕組みです。相続では、自宅(不動産)と借入金(債務)の両方が関わってきます。
  • リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借り、生存中は利息のみの支払い(または利息も据え置き)で暮らし、契約者が亡くなったときに元金と利息を清算する高齢者向けの仕組みです。ただし、返済期日・清算方法・ノンリコースかどうかは商品や金融機関によって大きく異なります。とくに、一般のリバースモーゲージと住宅金融支援機構のリ・バース60は扱いが違います。
  • 相続人がまず整理するのは、①どの商品・契約か②借入人の人数と存命の連帯債務者がいるか③居住する配偶者がいるか④返済期日・清算方法⑤リコース型かノンリコース型かです。これらによって、自宅を売るのか、残すのか、相続放棄を検討するのかが変わります。
  • 本記事では、リバースモーゲージ(およびリ・バース60)の契約者が亡くなったときの確認事項、相続人の選択肢、ノンリコース型・リコース型の違いと相続放棄、手続きの流れ、債務控除など税務の注意点までを、相続手続きを専門に扱う行政書士が解説します(評価・相続税は税理士、登記は司法書士、争いは弁護士と連携します)。

まず「商品・借入人構成・返済期日・清算方法」を切り分ける

最初に確認する事項 確認する内容
商品名・金融機関 一般のリバースモーゲージか、住宅金融支援機構のリ・バース60か
借入人の人数・連帯債務者 借入人全員が亡くなったか、存命の連帯債務者がいるか
返済期日・契約終了時期 死亡日が返済期日か、死亡後に一定の清算期間があるか
居住する配偶者 処分猶予・借換えなど住み続けられる制度があるか
清算方法 自己資金返済・借換え・任意売却・競売・代物弁済のいずれか
リコース性 不足額が相続債務として残るか(リコース型)、残らないか(ノンリコース型)
残債証明 死亡日時点の元金・未払利息の額
相続放棄の要否 処分行為をする前に判断。必要なら熟慮期間の伸長も検討
相続税の申告 既に申告済みかどうか(修正申告か更正の請求かが変わる)

「自宅を担保にお金を借りていたようだが、家はどうなるのか」「残っている借金を、相続人が払わなければならないのか」——。

リバースモーゲージは、契約者が亡くなったときの清算が前提の仕組みですが、「死亡と同時に必ず自宅が売られる」わけでも、「必ず借金が消える」わけでもありません。返済期日・清算方法・不足額の扱いは商品と契約約款によって異なるため、まずは契約先の金融機関で内容を確認することが出発点です。

なお、自宅や借入金など相続財産の評価・相続税の申告は税理士、抵当権の抹消や相続登記は司法書士、自宅の売却は不動産会社、相続人間や金融機関との争いは弁護士の領域です。行政書士は、戸籍に基づく相続関係資料の整理・遺産分割関係書類の作成・金融機関への提出書類の準備を担い、これらの手続きを支援します。


リバースモーゲージとリ・バース60は別|返済期日・清算方法は契約で決まる

リバースモーゲージは、自宅(土地・建物)を担保に金融機関から融資を受け、生存中は利息のみの支払い(または利息も据え置き)で暮らし、契約者が亡くなったとき(または契約で定めた終了時)に、元金と利息を清算する仕組みです。老後の生活資金や自宅のリフォーム資金などに使われます。

「死亡=ただちに一括返済・自宅売却」ではない

借入人が亡くなった場合の返済期日・契約終了時期は、商品・契約約款によって異なります。死亡日が元金の返済期日となる契約もあれば、存命の連帯債務者がいる間は契約を継続できる契約や、相続人に一定の清算期間を設ける契約もあります。死亡が「契約期間の終了日」や約款上の清算事由と定められているために手続きが始まるのであって、法律上当然に返済期日が到来するわけではありません。まずは契約先で返済期日と清算方法を確認します。

一般のリバースモーゲージと「リ・バース60」は扱いが違う

住宅金融支援機構が提携金融機関を通じて提供するリ・バース60は、資金使途が住宅関連に限られ、ノンリコース型が用意され、連帯債務者や居住配偶者の扱いにも独自のルールがあります。民間の一般的なリバースモーゲージとは異なるため、まずどちらの商品かを確認してください。

観点 一般のリバースモーゲージ リ・バース60(住宅金融支援機構)
資金使途 商品により幅がある(生活資金・リフォーム等) 住宅の建設・購入・リフォーム・借換えなど住宅関連資金に限定
利息の支払い 商品による(利息据置型もある) 原則として毎月利息を支払う
ノンリコース 扱う金融機関は多くない ノンリコース型が用意されている
連帯債務者の一方が死亡 商品による 残る連帯債務者が返済を継続できる場合がある
非債務の居住配偶者 商品による 一定期間の処分留保がある場合(延滞損害金は死亡日以後発生)

相続では「自宅」と「借入金」をセットで見る

リバースモーゲージがある相続では、プラスの財産である自宅(不動産)と、マイナスの財産である借入金(債務)の両方が関わります。ただし、自宅を取得する相続人と、銀行に対して債務を負う人は、遺産分割協議だけで自由に一致させられるわけではありません。この点は後の見出しで詳しく説明します。自宅と借入金を含む相続財産全体の調べ方は相続財産の調べ方の記事もご覧ください。


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借入人の人数・連帯債務者・居住配偶者を確認する

契約者が亡くなったとき、誰が返済を続けられるのか・住み続けられるのかは、借入人の構成によって変わります。「借入人が1人で亡くなった」ケースと、「連帯債務者がいる」「配偶者が住んでいる」ケースを分けて確認します。

契約の状態 死亡後の一般的な確認事項
借入人が1人で、その人が死亡 契約上の返済期日・清算期限を確認する
連帯債務者の一方が死亡 残る連帯債務者が返済を継続できる場合がある
借入人全員が死亡 一括返済・任意売却などの清算へ進む
借入人でない配偶者が居住 一定期間の処分猶予・借換え制度がある商品もある
ノンリコース型 担保売却後の不足額を相続人に請求されない
リコース型 不足額が相続債務として残る

連帯債務者の一方が亡くなった場合

夫婦などが連帯債務者になっている契約では、一方が亡くなっても、残る連帯債務者が返済(利息の支払い)を継続できる場合があります。この場合は、ただちに自宅を売却・清算するのではなく、契約をどう継続するかを金融機関と確認します。

契約者死亡後も配偶者は住み続けられるか

居住する配偶者がいる場合の扱いは、次の3類型で異なります。

  • 連帯債務者である配偶者:契約を継続できる可能性があります。
  • 連帯債務者でない配偶者:商品によっては、死亡後の一定期間、物件の処分を留保できる制度があります。リ・バース60では、一定の要件を満たす連帯債務者でない配偶者が居住継続を希望する場合、契約者の死亡日から最長3年間、物件処分を留保できます(ただし、その期間も死亡日以後の延滞損害金は発生します)。
  • 配偶者による借換え:配偶者自身が新たにリバースモーゲージ等を契約して借り換える方法もありますが、年齢・収入・担保について新たな審査が必要です。

「配偶者がそのまま住み続けられるか」は感情面でも重要な論点です。対応制度は商品によって大きく異なるため、契約の種類と約款を確認したうえで、住み続ける選択肢があるかを金融機関に確認してください。


自宅を担保にした借入の相続を、契約内容の確認と相続書類の準備・段取りから、グループの税務・不動産・登記と連携して支えます。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、リバースモーゲージ・リ・バース60を含む相続手続きについて、戸籍に基づく相続関係資料の整理・遺産分割関係書類の作成・金融機関へ提出する書類の準備・手続き全体の段取りを、相続人からの委任と各金融機関の取扱いに応じて支援します。初回相談では、契約書・商品名(一般型かリ・バース60か)・死亡日時点の残債証明・登記識別情報通知(または登記済証)・返済期日/リコース型かノンリコース型か・連帯債務者や居住配偶者の有無・自宅を売却するか維持するかの希望・相続放棄の期限を整理します。売却査定は不動産会社、相続税評価・債務控除は税理士法人、相続登記・抵当権抹消は司法書士、相続放棄や争いは弁護士と連携します(全国オンライン相談・郵送に対応)。初回相談無料。

03-6280-5188

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00


死亡後の選択肢|自己資金返済・借換え・任意売却・競売・代物弁済

借入人全員が亡くなり清算に進む場合、相続人などが取り得る選択肢は「売るか・残すか」の2つだけではありません。商品によっては、次のように複数の方法があります。

清算・承継の選択肢 条件・注意点
相続人等が自己資金で返済 完済後に抵当権を抹消する(登記は司法書士)
相続人等が借換え 年齢・収入・担保などについて新たな審査が必要
相続人・不動産取得者が任意売却 金融機関と抵当権の抹消条件を事前に協議する
債権者による競売 任意売却が成立しない場合など
代物弁済 対応する商品・条件に限る。売却超過額を受け取れない場合や課税に注意
連帯債務者が返済を継続 連帯債務契約で、残る債務者に返済能力がある場合
居住配偶者に処分猶予 対応する商品で、配偶者が住み続けられる場合

「推定相続人の同意」=処分権限ではない

リバースモーゲージでは、契約時に将来の相続人(推定相続人)が説明・カウンセリングを受けている商品があります。しかし、契約時に説明を受けた推定相続人が、死亡後に自宅を処分する権限を当然に持つわけではありません。実際に売却・返済を進める際は、遺言・遺産分割・登記の状況から、現在の所有者・受遺者・遺言執行者・(相続人不存在なら)相続財産清算人など、その時点で処分権限を持つ人を確認します。

「相続人全員の同意で売却」も一律ではない

遺産が未分割で自宅が共同相続人の共有になっている場合は、原則として共同相続人全員の関与が必要です。一方、遺言や遺産分割協議によって一人が自宅の所有権を取得していれば、その所有者が売主になります。

自宅の取得者と、銀行に対する債務者は別に整理する

相続人の間で「長男が自宅も借入金も全部引き継ぐ」と協議しても、その協議だけで、ほかの相続人が銀行に対する債務を免れられるとは限りません。自宅を取得する相続人に債務を集中させたい場合は、完済・借換え・免責的債務引受などについて、金融機関の承諾を得る必要があります。遺産分割協議書の作り方・依頼は遺産分割協議書の作成の記事もご覧ください。


ノンリコース型でも、清算までの利息・諸費用・税務は別に確認する

自宅を売却しても残債を返しきれない(オーバーローン)ときに、相続人が不足分を負担するかどうかは、契約がノンリコース型かリコース型かで変わります。

ノンリコースかどうかは商品による

リ・バース60ではノンリコース型が用意されていますが、民間の一般的なリバースモーゲージのすべてがノンリコース型というわけではありません(ノンリコース型を扱う金融機関は多くありません)。ノンリコース型なら、自宅の売却代金を超える部分の返済義務は相続人に及びません。一方、リコース型では、売却代金で足りない部分を相続人が返済する義務を負い、相続財産全体が債務超過になることもあります。まず契約の型を確認してください。

「持ち出しゼロ」ではない——性質の違う費用・税を分けて確認する

ノンリコース型で不足額の返済義務がない場合でも、性質の違う費用・税が別に関わります。とくに利息・延滞損害金は、通常は借入残高に加算され、売却代金などから回収されるもので、仲介手数料や残置物撤去費用のように相続人が持ち出しで負担する費用とは性質が異なります。「ノンリコースだから何も負担がない」と考えるのも、「延滞損害金を相続人が必ず持ち出しで払う」と考えるのも、どちらも正確ではありません。

分類 内容
清算までに残債を増やすもの 利息・延滞損害金(通常は借入残高に加算され、売却代金等から回収される)
売却代金等から支出する費用 仲介手数料・抵当権抹消費用・残置物撤去費用
相続人・取得者に別途生じ得る税 固定資産税・譲渡所得税
債務免除に伴い生じ得る税 債務免除益に係る一時所得

リコース型で残債が大きく、ほかにプラスの財産も乏しい場合は、次の見出しの相続放棄も選択肢になります。ただし、ノンリコース型であってもリバースモーゲージ以外の借金がある可能性があるため、「ノンリコースだから相続放棄は不要」と早合点しないでください。


相続放棄を検討するなら、先にしてはいけないこと

リコース型で自宅を売っても残債が残り、ほかにプラスの財産も少ない(債務超過)場合は、相続放棄が選択肢になります。

起算日は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(民法915条1項)。財産・債務の調査が終わらず判断できないときは、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることもできます。

「処分行為」はNG/「保存行為・一時的な居住」は直ちにNGとは限らない

相続放棄を検討している間、次のような相続財産の処分にあたる行為をすると、単純承認(相続を受け入れたとみなされること)と評価されて、放棄できなくなるおそれがあります(民法921条)。

  • 自宅の売買契約の締結
  • 代物弁済への合意
  • 相続財産(預貯金など)からの任意返済
  • 価値のある家財の売却・持ち帰り

一方、従前からの一時的な居住の継続、鍵の保管、雨漏りやパネル落下などを防ぐための保存行為まで、直ちに単純承認となるわけではありません。むしろ、相続財産を現に占有している相続放棄者には、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、一定の保存義務が残る場合があります(民法940条)。「住んでいるだけで相続放棄ができなくなる」わけではなく、居住・家財の処分・債務の返済を行う前に、具体的な行為ごとに弁護士へ確認することが大切です。

相続放棄を検討中の行為 原則的な注意
契約内容・残債の照会 通常可能
金融機関への死亡連絡 通常可能
雨漏り防止・施錠などの保存行為 直ちに単純承認とは限らない
従前からの一時的な居住 個別判断。直ちに処分とは限らない
自宅の売買契約 単純承認となる危険が高い
代物弁済 単純承認となる危険が高い
相続預金からの任意返済 単純承認となる危険がある
価値のある家財の売却・持ち帰り 単純承認となる危険がある

相続放棄を検討する場合は、まず金融機関への死亡連絡と、残債・契約条件の照会にとどめるのが安全です。相続放棄の期限・注意点は相続放棄は3か月以内の記事で詳しく解説しています。なお、被相続人にリバースモーゲージ以外の保証債務・連帯保証がある場合は保証債務の相続の記事もあわせてご確認ください。


手続きの流れ・必要書類と、相続人がいない場合

まず契約先の金融機関へ連絡する

手続きの窓口は、契約先の金融機関(銀行・住宅金融支援機構の提携先など)です。契約者が亡くなったことを伝え、現在の残債・契約の型(ノンリコースかリコースか)・返済期日・清算方法・清算期限を確認します。そのうえで、自己資金返済・借換え・任意売却などの方針を検討します。

おおまかな流れは次のとおりです。

  • 金融機関へ死亡を連絡し、残債・返済期日・契約条件を確認する
  • 商品・借入人構成・居住配偶者の有無から、清算方法を検討する
  • 現在の所有者・処分権限者を確認し、相続手続きの書類を準備する
  • 相続登記・抵当権抹消は司法書士、売却は不動産会社が担う
  • 清算(売却代金や返済金で借入金を精算)

必要書類は「方針・遺産分割の状況」で変わる

必要書類は、自己資金返済か売却か、遺言・遺産分割の有無、相続人数、金融機関の運用によって異なります。一般に、被相続人の出生から死亡までの連続戸籍(または法定相続情報一覧図)、相続人の戸籍、遺産分割協議書、印鑑登録証明書などを準備します。自宅の登記手続きでは、権利証にあたる登記識別情報通知(または従来の登記済証)も確認します。戸籍の集め方は相続の戸籍収集の記事もご覧ください。

相続人がいない場合

相続人がいない(または全員が相続放棄した)場合は、家庭裁判所が利害関係人または検察官の申立てにより相続財産清算人を選任し、清算人が自宅の売却・清算を進める取扱いになることがあります。債権者である金融機関は利害関係人として申立てができる場合がありますが、必ず金融機関が申し立てるわけではなく、申立てには予納金を求められることもあります。行政書士は、戸籍に基づく相続関係資料の整理と、金融機関へ提出する書類の準備を担い、この段取りを支援します(残債の確定・清算・売却の実行は金融機関・不動産会社、登記は司法書士が行います)。


税務(債務控除・不動産評価・売却時)と、専門家の役割分担

債務控除は「対象になり得る」——残高証明の全額とは限らない

相続税では、リバースモーゲージの借入金のうち、被相続人が亡くなった時点で現に存在し、確実と認められる元金・未払利息などが、債務控除の対象になり得ます。ただし、金融機関の残高証明額が、そのまま全額の債務控除額になるとは限りません。次の点を確認して判断します。

  • 契約上、死亡日時点で確定していた債務額
  • 連帯債務者がいる場合の、被相続人の負担部分
  • ノンリコース型で、担保売却後に免除される部分
  • 相続人ごとの実際の負担額
  • 死亡後に発生した利息・延滞損害金の扱い
  • 申告時点で売却・債務免除が完了しているか

控除できるのは、その債務を実際に負担する相続人・包括受遺者などです。債務控除の考え方は関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説」で解説されています。

3つの「価額」を混同しない

リバースモーゲージの相続では、次の3つの価額が出てきます。目的が違うため、混同しないよう整理します。

価額の種類 使われる目的
金融機関の担保評価額 融資・担保の判断(融資限度額の算定など)
不動産会社の想定売却価格・手取り額 売却で残債を返せるか・手元にいくら残るかの判断
相続税評価額(路線価等) 相続税の課税価格の計算

自宅を売る前に「小規模宅地等の特例」への影響を確認する

自宅の敷地は、要件を満たせば小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)で評価を大きく下げられることがあります。ただし、配偶者には保有を続ける要件がない一方、同居親族や一定の別居親族(いわゆる家なき子)が取得する場合は、相続税の申告期限まで保有・居住を続けることが要件になることがあります。そのため、金融機関の清算期限だけで売却時期を決めて申告期限前に売ってしまうと、評価減を受けられなくなるおそれがあります。売買契約の前に、金融機関・不動産会社・税理士を同時に動かして、売却時期の影響を確認してください。

自宅を売却したときの譲渡所得——特例は「併用不可」に注意

相続した自宅を売却した場合、売却益には譲渡所得が生じることがあります。一定の要件を満たせば、被相続人の居住用家屋(空き家)の3,000万円特別控除相続財産を譲渡した場合の取得費加算を使える場合がありますが、同一の売却について、この2つの特例を併用することはできません。また、空き家特例は、昭和56年5月31日以前に建築された一定の家屋で、区分所有建物でないこと、相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったことなどが要件です。そのため、配偶者などが自宅に同居していたケースでは、原則として空き家特例の対象になりません。どの特例が有利かは、取得費加算などと比較して税理士が判断します(相続税の申告期限は、自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です)。既に相続税を申告したあとで残債や自宅が判明した場合は、財産・債務を計上し直した結果、税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求を検討します。

役割分担(清算・売却は担当が分かれる)

  • 残債・返済条件・抵当権の抹消条件の確認:金融機関
  • 任意売却の仲介・査定:不動産会社
  • 売買契約の締結:現在の所有者・処分権限者
  • 担保不動産の競売:債権者の申立てに基づき裁判所
  • 相続登記・抵当権の抹消:司法書士
  • 相続税評価・債務控除・譲渡所得・各種特例の申告:税理士
  • 相続放棄・相続人間や金融機関との争い:弁護士
  • 戸籍収集・相続関係資料の整理・遺産分割関係書類や提出資料の準備:行政書士

行政書士は書類準備と照会の面から支援し、売却や返済の完了・資金の回収を保証するものではありません。財産全体の調べ方は相続財産の調べ方の記事もご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. リバースモーゲージの家は、契約者が亡くなったら必ず売られるのですか?

A. 必ず売却されるとは限りません。返済期日や清算方法は商品・契約約款によって異なります。死亡日が元金の返済期日となる契約もあれば、存命の連帯債務者がいる間は契約を継続できる契約、相続人に一定の清算期間を設ける契約もあります。相続人などが自己資金で返済する、借換える、任意売却するといった選択肢があり、いずれを取れるかは契約次第です。まずは契約先の金融機関で、残債・契約の型・返済期日・清算方法・期限を確認してください。とくに一般のリバースモーゲージと住宅金融支援機構のリ・バース60は扱いが違うため、どちらの商品かを最初に確かめることが大切です。

Q2. 自宅を売っても借入金が残ったら、相続人が払うのですか?

A. 残額を相続人が負担するかどうかは、契約が「リコース型」か「ノンリコース型」かで変わります。リコース型では、売却してもなお残った借入金を相続人が引き受けます。ノンリコース型では、担保の売却代金を超える部分の返済義務は相続人に及びません。ただし、ノンリコース型かどうかは商品によって異なり、民間の一般的なリバースモーゲージのすべてがノンリコース型というわけではありません。また、ノンリコース型でも、売却の仲介手数料、抵当権抹消・相続登記の費用、残置物の撤去費用、死亡日以後の固定資産税・延滞損害金、譲渡所得税などは別に発生します。契約書と金融機関で型と費用の負担を必ず確認してください。

Q3. 親がリバースモーゲージを利用していたか分からないときは、どう調べますか?

A. 契約書や金融機関からの通知の控えを探すのが基本ですが、見つからなくても次の手がかりで確認できます。第一に、自宅の登記事項証明書を取り寄せ、金融機関の抵当権が設定されていないかを見ます。第二に、預金通帳に利息の引落しや金融機関からの定期的な入金がないかを確認します。第三に、金融機関やカード会社からの郵便物・メールを点検します。心当たりの金融機関があれば、相続人であることを示す戸籍などを添えて、残高や契約の有無を照会します。自宅が担保に入っているかどうかは登記から分かるため、まず登記事項証明書を確認するのが近道です。

Q4. 手続きには期限がありますか。急いだほうがよいですか?

A. いくつかの期限が重なるため、早めの着手をおすすめします。契約で定めた清算期限を過ぎると延滞損害金がかさみます。借入が自宅の価値を上回りそうで相続をやめる方向で考えるなら、自分が相続人になったと知った日から3か月がひとつの目安です。相続税の申告が必要なら10か月以内、自宅を相続した場合の相続登記は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその自宅の所有権を取得したことを知った日から3年以内が義務です。まずは契約先の金融機関へ死亡を連絡し、残債と清算の期限を確認したうえで、財産・債務の全体像を早めに把握しておくと、その後の判断がスムーズになります。


相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。

相続手続き、まるごとおまかせ。行政書士法人トゥモローズの相続手続きサポート

まとめ

自宅を担保にしたリバースモーゲージは、契約者が亡くなると、商品・約款で定めた返済期日や契約終了時期に、自宅の売却代金や相続人の資金で借入金を清算します。「死亡と同時に必ず自宅が売られる」わけでも、法律上当然に返済期日が到来するわけでもなく、一般のリバースモーゲージと住宅金融支援機構のリ・バース60でも扱いが異なります

まず商品・借入人の人数・存命の連帯債務者・居住配偶者・返済期日・清算方法・リコース性を確認します。清算の選択肢は、自己資金返済・借換え・任意売却・競売・代物弁済・連帯債務者による継続などがあり、自宅の取得者と銀行に対する債務者は別に整理し、債務を集中させるには金融機関の承諾が必要です。

不足額が残るリコース型で債務超過なら相続放棄も選択肢ですが、自己のために相続の開始を知った時から3か月以内で、放棄を検討するなら売却・代物弁済・任意返済などの処分行為は先に行いません。税務では債務控除は死亡日時点の確実な債務に限られ、担保評価額・売却手取り額・相続税評価額を区別し、評価・特例・申告は税理士、登記は司法書士、売却は不動産会社が担います。行政書士は戸籍収集・相続関係資料の整理・書類準備の面から、リバースモーゲージがある相続を支えます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、リバースモーゲージ・リ・バース60を含む相続手続きについて、戸籍に基づく相続関係資料の整理・遺産分割関係書類の作成・金融機関へ提出する資料の準備を、相続人からの委任と各金融機関の取扱いに応じて支援します。相続税評価・債務控除・譲渡所得の申告は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法896条(相続の一般的効力。自宅・借入金の承継)・898条(共同相続の共有)・939条(相続放棄の効力)
  • 民法915条1項(相続放棄の熟慮期間。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月/伸長は同項ただし書)
  • 民法921条(法定単純承認。相続財産の処分等)・940条(相続放棄者の保存義務)・952条(相続財産清算人の選任)
  • 相続税法13条(債務控除。負担する者が控除)・14条(確実と認められる債務)・22条(財産の評価)
  • 戸籍法(相続関係を証明する戸籍・除籍等の交付)
  • 参考:住宅金融支援機構リ・バース60および各金融機関のリバースモーゲージ(ノンリコース型・リコース型)の契約条件、国税庁の債務控除・小規模宅地等の特例・居住用財産の譲渡の特例(空き家特例・取得費加算)の解説

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。