生計を一にする親族とは? 小規模宅地の特例で必ず確認しておこう!

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小規模宅地の特例

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

小規模宅地の特例は亡くなった人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、最大80%OFFできる大きな特例です。
この特例は亡くなった人だけでなく、亡くなった人と生計を一にしていた親族が「住んでいた土地」、「事業をしていた土地」にも適用できるのです。

したがって、亡くなった人と生計を一にしていたか否かにより相続税の負担が大きく変わってくることもあるのです。
実際に私が経験した事例だと生計を一にしていると判断して相続税が1,000万円以上節約できたケースもありました。

なお、小規模宅地の特例の詳しい解説は、小規模宅地等の特例をわかりやすく完全解説! 土地の金額が最大80%減額!をご参照ください。

今回は、小規模宅地の特例を最大限活用する上で必要不可欠な「生計を一にする親族」について解説します。「生計一親族」や「同一生計親族」などとも表現されるこのキーワードは意外に奥が深いです。
サザエさん一家を例に解説するので税金が詳しくない人でも理解しやすいと思います!

動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!

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1. 生計を一にするとは「同じ財布で暮らしている」こと

生計とは、暮らしを立ててゆくための方法や手段のことです。
この生計を同じにしている、すなわち、生計を一にしていることとは「同じ財布で生活している」ということになります。

同じ財布で暮らしているかどうかの一番の判定基準は、「同居」か「別居」かです!

原則 例外
同居 生計一 二世帯住宅のように明らかに財布を分けている場合は生計別
別居 生計別 仕送りで生計を立てている別居の子(大学生等)は生計一

実務でよく問題となるのが下段の別居のケースです。
老人ホームに入居した母親の財布の管理を別居の長男がしていたケースなのは最たるものです。
母親の年金収入や過去の蓄財で老人ホームの利用料等を負担できずに長男が自身の収入等から負担していた場合には別居でも生計一と認められる可能性はあります。
ただ、相続税がかかるくらい財産がある母親が自身の利用料等を負担できないほどの状況であることは相当レアケースです。
以上のことから被相続人の財布の管理をしていたとしても別居だった場合には生計一と認められるケースは相当少ないでしょう。

もう少し色々なケースを具体的にサザエさん一家で確認していきましょう!

2. サザエさん一家で「生計一」「生計別」を確認しましょう

(1)同居の場合

① 波平とカツオ

波平は商社マン(山川商事)ですので高給取りで自分の給料だけで独立して生計を維持する収入があります。
それに比べカツオは小学生ですので収入はなく、独立して生活を営むことはできません。
このような場合には、波平とカツオは同一生計親族となります。

すなわち、同居親族で独立して生計を維持する収入がある人とない人がいる場合にはその二人は生計が一の関係となるのです。
生計一親族論点の一番の基本型ですね。

② 波平とマスオ

波平は上記の通り、独立して生計を維持する収入があります。マスオもサラリーマンですので独立して生計を維持する収入はあります。ちなみに、マスオも実は商社マン(海山商事)の高給取りです。
上記1の通達では、同居親族であっても「明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合」は生計が別と記載されています。

では、明らかに独立した生活とは具体的にはどのように考えるのでしょうか。

実務上では、下記項目を総合的に勘案して判断します。

● 資産や収入を独自に管理、処分している
● 食費を別に管理し、食事は別でとっている
● 水道光熱費は各々支払っている
● 建物の所有者と居住している人が別の場合には家賃で精算している
● 家事上の支出に関して債権債務を明確に区分している
● 住民票の世帯が別になっている
● その他対外的に世帯別にしていることが明らかにされている

税務上で難しい論点は、だいたい「総合的に勘案」というキーワードが出てきます。こちらについても例外なく実務上いつも悩まされます。

さて、波平とマスオはどう考えれば良いでしょうか?

私が直接波平とマスオにヒアリングすることは出来ないので確定的なことは言えませんが、アニメを見る限りでは、共に食事をとっていて、水道光熱費とか区別してないだろうし、旅行などに行った場合の精算とかもしてなさそうなので波平とマスオは生計一と考えて良いのではないでしょうか。(私見です。)

(2)別居の場合

① 波平とノリスケ

ノリスケは出版社に勤めるエリートサラリーマンです。サザエさんの男性陣はエリートが多いですね。ノリスケは、波平の甥にあたります。

余談ですが、私はサザエさんのキャラクターの中でこのノリスケが一番好きです。あの高田純次バリの適当さ、そしてなぜか周りの人を笑顔にしてしまう根明な性格、一緒に仕事をしたいとは思いませんが、友人としては付き合いたいです。

さて、本題ですが、別居している親族で互いに独立して生計を維持する収入がある場合には原則として生計別と考えます。
すなわち、波平とノリスケは生計一親族ではありません。

上記で原則としてと記載したのは、下記のような場合には別居で互いに生計維持するための収入があったとしても生計一と認められる可能性があるためです。
別居する親族が独自の職業を有しないで、その収入や資産の管理を別居親族に委ねていた場合には、それらの者は生計一親族と考えます。

例えば、ノリスケが働いていなく、不動産収入の不労所得が年500万円くらいあったとします。その賃貸不動産の収入の管理や生活費の管理をタエコさんではなく別居の波平がすべてやっていたケースです。このような場合には波平とノリスケは生計一親族に該当する可能性があります。
しかしこんなノリスケみたいな人、なかなかいないですけど。。。

② 伊佐坂先生と甚六

サザエさん一家の隣に住む伊佐坂先生(小説家)とその息子の甚六です。
甚六はアニメで同居の浪人生という設定ですが、数年、時を経過させて、勝手に大阪の大学生ということで解説させてください。

伊佐坂先生は、毎月15万円を大阪の甚六に仕送りをしています。甚六はアルバイトで月5万円程度稼ぎがありますが、それだけでは生活はできません。
このような場合には、別居していてもお互いに独立して生活を維持するに足りる収入があるとはいえませんので、伊佐坂先生と甚六は生計一親族ということができます。
このパターンも生計一論点ではよくあるパターンです。

3. 最後に通達を確認しておきましょう

生計一の定義について、相続税関連の法令や通達に規定されているわけではなく所得税の通達を借用しています。

それが下記に引用している「所得税基本通達2-47」です。

所得税基本通達2-47(生計を一にするの意義)

法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。

(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

 イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合

 ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合

(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

ただし、所得税の所得控除等における「生計を一にする」と相続税の小規模宅地等の特例における「生計を一にする」ではワードは同じでも立法趣旨が異なります。
この立法趣旨の異なりにより所得税では生計を一にするとジャッジされるであろう事例が相続税の小規模宅地等の特例では生計を別にするとジャッジされた直近の高裁判決が存在します。

令和3年9月8日東京高等裁判所判決 判決要旨一部

控訴人(納税者)の主張
「租税特別措置法69条の4第1項は、本件特例の要件を「被相続人の親族」が「当該被相続人と生計を一にしていた」場合と規定し、明文上、所得税法56条の「生計を一」概念をそのまま用いていることから、同条と同様、かなり幅広く財布(生計)を一つにしている状態を対象にしているものと考えるのが相当であり、本件特例の趣旨のほか、同居していないケースにおいて「生計を一にしていた」との要件(生計一要件)で射程範囲を限定している趣旨、さらには、租税法律主義(特に文理解釈)の観点から検討すると、生計(暮らしを立てていく方法、手段)について、独自の収入があり、これを独自の判断で処理しているか否かという観点で判断されるべきである」

高裁の判断
「本件特例が適用されるか否かを判断するためにその要件を検討するに当たっては、所得税法56条と同様に解することは相当ではなく、あくまでも本件特例の趣旨(担税力の減少への配慮)に従って解釈すべきであるから、控訴人の主張は、採用することができない。」
とし納税者の主張を棄却

以上の通り、所得税と相続税で趣旨の違いがありますので上記通達をそのまま小規模宅地等の特例の生計を一にするの概念に当てはめることは適当ではありません。
所得税では、「生計を一にする」という概念を広く捉えれば納税者不利に作用するケース(所得税法第56条等)もありますが、相続税(小規模宅地等の特例)では、「生計を一にする」という概念を広く解釈すると納税者有利に作用します。
本件は、別居であり、かつ、生活費の仕送り等をしている事実がなかったため生計を別にすると判断されてしましました。

実務上も別居の場合に生計一かどうかで判断が迷うことが多いです。
別居の場合には、生活費等の仕送りがあって、かつ、その仕送りがないと別居の親族の生活ができないような場合でないと生計一親族とは認められないでしょう。

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