死亡後の税金、保険料、給付金等の入出金は相続税の対象となる?
相続税申告の際に亡くなった後の年金、高額療養費、葬祭費、保険料還付金などの入金は相続財産に計上しないといけないのか、これに対し所得税、住民税、固定資産税、介護保険料などの支払は債務控除の対象になるのか、結構迷うと思います。これらの入出金は、相続税法では非課税となっていなくても各法律で「公租公課は課さない」と規定されていたり、過去の判例により相続税の課税対象とならなかったりします。
今回は、これらの公的な入出金について項目ごとにまとめます。
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目次
- 1 1. 相続開始後の入金
- 1.1 ① 未支給年金
- 1.2 ② 高額療養費
- 1.3 ③ 葬祭費・埋葬料・埋葬費
- 1.4 ④ 所得税等の還付金
- 1.5 ⑤ 還付加算金
- 1.6 ⑥ 準確定申告に係る所得税の還付加算金等
- 1.7 ⑦ 国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料等の過誤納還付金
- 1.8 ⑧ 国民年金、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金等の死亡一時金(遺族一時金)
- 1.9 ⑨ 企業年金、企業年金基金、退職年金等の遺族一時金
- 1.10 ⑩ 配当期待権、未収配当金、未収分配金
- 1.11 ⑪ 未収給与、賞与
- 1.12 ⑫ 年金生活者支援給付金
- 1.13 ⑬ 重度心身障害者医療費助成金
- 1.14 ⑭ 新型コロナ対策 一律10万円 特別定額給付金
- 1.15 ⑮ 臨時福祉給付金
- 2 2.相続開始後の出金
1. 相続開始後の入金
① 未支給年金
相続財産に該当しない
【解説】
未支給年金とは、被相続人の死亡後に遺族に支払われた被相続人がもらうべきであった公的年金のことです。
この未支給年金にも様々な種類があります。
なお、結論としてはどの種類に該当しようが相続税の対象にはなりません。
①狭義の未支給年金
狭義の未支給年金とは、年金受給者が死亡した場合に死亡月やその翌月に受け取ることができた公的年金をいいます。
例えば、年金受給者が9月20日に死亡した場合にその者が受け取れる最後の年金は8月15日支給のものですが、8月15日支給の年金は6月分と7月分となります。
ということは、8月分と9月分が支給されないまま支給日前に亡くなったことになります。
この本来ならば死亡後の10月15日に受け取れるべき8月分と9月分が狭義の未支給年金となります。
狭義の未支給年金は遺族の一時所得に該当します。
②被相続人が請求していなかった公的年金
公的年金を受け取る権利のある人が生前に受け取っていなかった場合に、遺族が遡及して被相続人の年金を請求することがあります。
例えば、給与等の収入があった関係で年金を受け取れる年齢になったにも関わらずもらっていなかったようなケースです。
この場合には遺族が遡及して年金を請求することになりますが、死亡後に数百万円単位で未支給年金が遺族に支給されることもあります。
この未支給年金も相続財産は構成せずに遺族の一時所得となります。
②年金記録の訂正により支給を受けた公的年金
年金記録の訂正により年金の額が増加して遺族に未支給年金が支払われるケースもあります。
この未支給年金についても相続税の対象にはなりません。
支給の根拠がどの法令になるかによって下記の課税関係となります。
■国民年金法等の各公的年金の法令を根拠に支給されるもの(原則として訂正期間が5年以内のもの):遺族の一時所得
■年金時効特例法に基づき支給されるもの(5年を超えて遡って支給されるもの):非課税
年金と相続税の関係を詳しく知りたい人は、年金と相続税について徹底解説!をご参照ください。
② 高額療養費
相続財産に該当
【解説】
医療費の自己負担額が高額になった場合において、自己負担限度額を超えたときに支給されるものになりますが、この入金が死亡後にあったときは相続財産として計上することとなります。
③ 葬祭費・埋葬料・埋葬費
相続財産に該当しない
【解説】
国民健康保険の場合には、葬祭費、健康保険の場合には、埋葬料、埋葬費といった名目で死亡後に5万円などが支給されます。
葬祭費・埋葬料・埋葬費は葬儀、埋葬を行った人に支給されるものであり、被相続人の遺産には該当しません。すなわち、葬儀、埋葬を行った人の固有財産となり、遺産分割の対象にもなりません。
また、これらの支給は国民健康保険法第68条、健康保険法第62条において、それぞれ「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。」と規定されていますのですべての税金が非課税となります。
④ 所得税等の還付金
相続財産に該当
【解説】
被相続人に係る所得税や住民税の還付金で死亡後に入金されたものは相続財産に該当します。
⑤ 還付加算金
相続財産に該当
【解説】
被相続人が申告等手続きをした後に亡くなった場合において、その手続きに基づき還付加算金を取得したときは、その死亡日までの期間にかかる金額は相続財産に該当します。
⑥ 準確定申告に係る所得税の還付加算金等
相続財産に該当しない
【解説】
被相続人の準確定申告に係る所得税の還付加算金は、確定申告書の提出により原始的に取得するものであることから相続人の固有財産となります。
したがって、相続税の対象とはならずに相続人の所得税(雑所得)の対象となります。
⑦ 国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料等の過誤納還付金
相続財産に該当
【解説】
死亡後に生前に納付した各種保険料の過誤納金が還付されることがありますが、こちらの還付金はただの返金となりますので相続税の課税対象となります。
⑧ 国民年金、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金等の死亡一時金(遺族一時金)
相続財産に該当しない
【解説】
国民年金法第25条に、「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することはできない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りではない。」とされています。したがって、被相続人の遺族が支給を受けた「死亡一時金」については、相続税は課税されません。相続税だけでなく所得税も課税されません。
また、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金等の下記法律に基づき支給される死亡一時金(遺族一時金)についても相続税、所得税等の税金は課税されません。
■ 国民年金法
■ 厚生年金保険法
■ 恩給法
■ 旧船員保険法
■ 国家公務員共済組合法
■ 地方公務員等共済組合法
■ 私立学校教職員共済法
■ 旧農林漁業団体職員共済組合法
⑨ 企業年金、企業年金基金、退職年金等の遺族一時金
相続財産に該当
【解説】
上記⑨に掲げる国民年金等一定の法律に基づく遺族一時金はすべての租税が非課税と解説しましたが、それらに該当しない下記に掲げる企業年金等の遺族一時金は本来の遺産ではありませんが、みなし相続財産として相続税の対象となります。
■ 確定給付企業年金に係る規約に基づいて支給される遺族一時金
■ 特定退職金共済団体が行う退職金共済に関する制度に基づいて支給される遺族一時金
■ 適格退職年金契約に基づいて支給を受ける遺族一時金
死亡時期により取り扱いが異なるため下記を参照してください。
① 在職中等年金受給前に死亡
相続税法第3条1項2号のみなし相続財産に該当し、死亡退職金非課税枠(500万円✕法定相続人の数)の適用あり
② 年金受給開始後に死亡
相続税法第3条1項6号のみなし相続財産に該当し、死亡退職金非課税枠(500万円✕法定相続人の数)の適用なし
⑩ 配当期待権、未収配当金、未収分配金
相続財産に該当
【解説】
配当期待権とは、配当金交付の基準日(3月決算法人なら毎年3月31日等)の翌日から配当金の交付の効力発生日(株主総会決議日)までに死亡した場合のまだもらっていない配当金のことです。
未収配当金とは、配当金の交付の効力発生日(株主総会決議日)から配当金支払日までに死亡した場合のまだもらっていない配当金のことです。
未収配当金の相続税評価についての詳しい解説は、未収配当金、配当期待権、未収分配金の相続税評価を徹底解説をご参照ください。
⑪ 未収給与、賞与
相続財産に該当
【解説】
死亡後3年以内に支給の確定した給与や賞与は相続財産に該当します。
なお、死亡後3年経過後に確定した給与や賞与は相続人の一時所得として所得税の対象となります。
詳しくは、死亡後に支給された給与、賞与の相続税、所得税の取り扱いをご参照ください。
⑫ 年金生活者支援給付金
相続財産に該当しない
【解説】
年金生活者支援給付金とは、公的年金等の収入やその他の収入が一定金額以下の年金受給者の生活を支援するために年金に上乗せして支給される給付金です。
下記のすべての要件を満たしている方が給付の対象となります。
① 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
② 同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
③ 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が881,200円以下である。
なお、障害基礎年金受給者や遺族基礎年金受給者も年金生活者支援給付金の給付を受けることができますが、給付要件が上記とは異なるため詳しくは、厚生労働省HPをご参照ください。
年金生活者支援給付金は、年金生活者支援給付金の支給に関する法律第33条(公課の禁止)により、すべての税金が非課税となっています。
したがって、死亡後に遺族が受け取った年金生活者支援給付金にも相続税はかかりません。
⑬ 重度心身障害者医療費助成金
相続財産に該当
【解説】
重度心身障害者医療費助成制度は、障害がある方とその家族の経済的負担を軽減するため、医療機関を受診した場合の医療費の一部を都道府県や市で助成する制度です。相続開始後に被相続人に係る当該助成金が振り込まれた場合にはその助成金は相続財産を構成します。
⑭ 新型コロナ対策 一律10万円 特別定額給付金
ケースにより異なる
【解説】
基準日(令和2年4月27日)に存命していたのか、申請日がいつなのか、世帯主、世帯員、単身者なのか、など状況により相続財産を構成するかどうか変わってきます。
詳しくは、全国民へ一律10万円 特別定額給付金(新型コロナウイルス対策)の相続税の取り扱いを参照して下さい。
⑮ 臨時福祉給付金
相続財産に該当
【解説】
消費税が8%に増税されたことにより一定の要件を満たす人に交付されることとなった臨時福祉給付金ですが、生前に請求し、死亡後に入金された場合には相続税の対象となります。ちなみに、所得税については、租税特別措置法第41条の8第1項にて非課税とされています。
2.相続開始後の出金
① 所得税
債務控除の対象
【解説】
死亡後に納付する被相続人に係る所得税については債務控除が可能です。死亡後に手続きをする準確定申告に係る所得税についても債務控除が可能となります。
② 住民税
債務控除の対象
【解説】
住民税の納付が残っていた場合には死亡後に納付する住民税は債務控除の対象となります。なお、所得税と異なり住民税は死亡した年度についてはかかりません。住民税は年末に生存している人にしか課税されないためです。
③ 固定資産税
債務控除の対象
【解説】
固定資産税も死亡後に納付する部分については債務控除の対象となります。なお、共有不動産の固定資産税についてはその持分に応じて債務控除の対象とします。
④ 介護保険料、後期高齢者医療保険料等
債務控除の対象
【解説】
死亡後に各種保険料を納付した場合には債務控除の対象となります。もちろん、その後その保険料が還付された場合にはその還付金は相続財産に計上する必要があります。
その他の債務控除については、【相続税申告】債務控除一覧:注意点を含めて解説!をご参照ください。
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