相続税の申告が必要かどうかを判断する方法と、相続税がかからないケースを解説

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相続税申告

こんにちは、相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

相続税の申告は、すべての相続で必要となるわけではありません。

相続税がかかる割合(課税割合)は、全国平均で8.3%(2017年中に亡くなった人)で、地域ごとにも異なります。ちなみに、主要地域別の課税割合は下記の通りです。

  • 東京国税局(東京都、千葉県、神奈川県、山梨県):13.2%
  • 名古屋国税局(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県):11.0%
  • 大阪国税局(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県):8.7%

10人亡くなった場合には、そのうち約1人につき相続税の申告が必要となるようなイメージです。

相続税の申告が必要になるかどうかは、まずは自分で判断しないといけません。

そこで、この記事では、「相続税を申告する必要があるかどうかを判断する方法」について解説します。参考になれば幸いです。

相続の相談を誰にすべきか等の詳しい解説は、相続の相談は誰にすべき? 相続の相談先をフローチャートで徹底解説をご参照ください。

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相続税の申告が必要か不要かを判断する方法【相続財産と基礎控除】

相続税申告が必要か不要かを判断する上で重要なポイントは、「相続財産の評価額」と「基礎控除の算定」です。

相続財産の評価は、不動産、有価証券、預金等の死亡日における時価を合算して計算します。

また、基礎控除とは、相続税の非課税枠のことです。

相続財産の評価額が、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下であれば、相続税を申告する必要はありません。

相続財産の評価額とは【各種財産の評価方法】

相続財産とは、亡くなった人が死亡日時点で所有していた換金可能な財産をいいます。

例えば、以下のような財産のことです。

  • 土地
  • 不動産:建物など
  • 上場株式
  • 有価証券:投資信託など
  • 現金
  • 預貯金
  • 自動車
  • 金地金
  • 貸付金
  • 書画骨董
  • ゴルフ会員権など

これに対し、医師資免許や弁護士資格などは亡くなった人に一身専属的に帰属し換金不能であるため相続財産には該当しません。

なお、民法上の相続財産には該当しませんが、相続税の計算でのみ加味しなければいけない財産は下記の2つです。

  • 生命保険金、死亡退職金等のみなし相続財産
  • 亡くなる前3年以内の贈与

次に主な相続財産について、相続税申告の可否を判断する上での簡単な評価方法について解説します。

①土地

土地については、「亡くなった年の路線価×地積×各種補正」で評価します。

相続税申告が必要かどうかのとりあえずの評価であるため、各種補正については割愛します。

まず、亡くなった年の路線価については、財産評価基準書で土地の所在地を特定し、前面道路の路線価を調べます。

地積については、登記簿謄本又は固定資産税の課税明細書に記載がありますので、確認してみてください。

②建物

建物については、「亡くなった年の固定資産税評価額」で評価します。

固定資産税評価額は、毎年5月頃に送られてくる固定資産税の課税明細書に記載があります。

③上場株式

上場株式については、以下の4つのうちから一番低い株価に所有株数を乗じて算出します。

  • 亡くなった日の終値
  • 亡くなった月の終値平均
  • 亡くなった月の前月の終値平均
  • 亡くなった月の前々月の終値平均

相続税申告が必要かどうかの判断のときは、上記の4つの株価を調査までせずに、証券会社から送られてくる残高報告書等に記載されている保有預かり資産の合計値を参考としても良いでしょう。

④投資信託

投資信託については、亡くなった日の基準価額×口数で評価します。

なお、上場株式同様、相続税申告が必要かどうかの判断のときは、証券会社から送られてくる残高報告書等に記載されている保有預かり資産の合計値を参考としても良いでしょう。

⑤現金

現金とは、財布・貸金庫の中の現金、タンス預金、相続開始直前の預金引出し等をいいます。

詳しくは、「相続税申告における手許現金の解説記事」を参照してください。

⑥預貯金

通帳、証書等を確認し、亡くなった日の残高を集計します。亡くなる直前で引出したものは、上記⑤の現金に含めることを忘れないようにしましょう。

⑦生命保険金

保険会社から入金された保険金を合計します。

生命保険には、別途非課税枠が用意されていて、「500万円×法定相続人の数」となります。この非課税枠を超えた金額のみを相続財産に加算してください。

なお、細かい話ですが、相続人以外の人が受け取った生命保険金には非課税枠は使えないので、そのままその保険金額を相続財産に加算します。

⑧生命保険権利

生命保険権利とは、亡くなった人が保険料を負担し、被保険者が亡くなった人以外の保険をいいます。

すなわち、今回の相続では保険事由が発生していないため保険金はおりませんが、亡くなった人が保険料を負担していたため相続財産に加算する必要があります。

相続財産に加算すべき金額は、「亡くなった日の解約返戻金額」となります。

⑨相続開始前の3年以内に贈与した財産

亡くなった時には亡くなった人の所有でない財産であっても、相続税計算上は、相続財産に含めなければならないものがあります。それが、亡くなる前3年間にした贈与財産です。

ただし、すべての贈与が対象になるわけではなく、亡くなった人から「相続又は遺贈により財産を取得した人」に対する贈与のみです。

相続人に対する贈与ではないので気を付けてください。相続人でなくても生命保険金を受け取った人や遺言で財産を取得した人に対する贈与も含まれます。これに対し、相続人であっても財産を一切取得しなければ、その人に対する贈与は相続財産に加算する必要はないのです。

最後に、亡くなる前3年間とは、亡くなった日の3年前の応答日です。

例えば、2019年12月3日に亡くなったとしたら、2016年12月3日以降の贈与が対象となります。
詳しくは、「相続開始前3年以内の贈与加算の解説記事」を参照してください。

⑩名義財産

最後に忘れてはいけないのが、名義財産といわれるのものです。

名義財産とは、亡くなった人の名義ではないけども亡くなった人がお金を出して、管理をしていた財産をいいます。

具体的には、名義預金、名義株、名義保険などが有名ですが、この判定は非常に難しいので、思い当たる節がある場合には税理士に相談しましょう。詳細を知りたい場合には、「名義財産や生前贈与に関する記事の一覧」を読んでみてください。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除とは、いわゆる相続税の非課税枠のことです。

相続財産の評価の合計が、下記の算式以下のときは、相続税の申告が不要となります。

基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となります。

この算式でのポイントは、「法定相続人の数」をどのようにカウントするかです。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて、民法上の相続人を特定します。その民法上の相続人の数が法定相続人の数と基本的には一致します。養子がある場合や相続放棄をした場合など特殊な場合には調整が必要になります。

関連記事:相続税の基礎控除 相続税はいくらまでなら無税なのか 

相続税の申告は必要だが、税金はかからない場合がある

相続財産の評価額を合計し、その金額が基礎控除を超えていた場合には、相続税の申告が必要となります。

しかし、「相続財産の評価額合計が基礎控除を超えていても、相続税がゼロとなるケース」も多いのです。

それは、配偶者控除(配偶者の相続税額軽減)小規模宅地の特例を適用するケースです。

なお、配偶者控除と小規模宅地の特例を適用するには、相続税の申告をすることが要件になっています。

配偶者控除を適用する場合

配偶者控除とは、「亡くなった人の配偶者が遺産を相続した場合には、1億6000万円までは相続税がかからない」という特例です。

例えば、1億円の財産を持っている人が亡くなった場合に、その相続人が配偶者と子供一人だったとします。

基礎控除は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)ですので、相続税の申告は必要です。

そこで、遺産分割により1億円のすべてを配偶者が取得することになったとします。

その場合には、1億6,000万円以下ですので、この相続案件の相続税はゼロとなります。何度もいいますが、配偶者控除の適用を受けるためには申告が必要となりますので、納税がゼロであっても相続税の申告は必要となります。

■関連記事:
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相続税の税額控除をわかりやすく解説。相続人の税額から一定額を差し引く制度

小規模宅地の特例を適用する場合

小規模宅地の特例とは、「亡くなった人が住んでいた土地について、配偶者や同居の子供等が相続した場合には、その土地の評価が80%減できる」という、とても減額率の高い特例です。

仮に1億円の土地であったとしても特例の要件を満たせば2,000万円で評価ができるため、基礎控除以下となって相続税がゼロとなるケースが多々あります。

実務をやっていると配偶者控除で納税がゼロになるパターンより、小規模宅地の特例の適用により納税がゼロになる人のほうが断然多いです。

この小規模宅地の特例は、減額率が高いだけあって、その要件も厳格で複雑ですので適用にあたっては税理士に確認するようにしましょう。

小規模宅地の特例については、様々なパターンがあるため、当サイトでも複数記事にわたって解説しています。

>>小規模宅地の特例の知識一覧

相続税申告は税理士へ早めに相談するのがおすすめ

相続財産が預金等の金融資産のみの場合には、基礎控除を超えるかどうかを迷うケースは少ないと思います。

ただし、不動産がある場合、名義財産がある場合など、専門家でないと適切な評価ができないような財産がある場合には、早めに相続専門の税理士に相談することをおすすめします。

「多分うちは大丈夫だろう」と思っている相続人は少なくありません。ちゃんと相続税の申告義務の検討をしないで、時間が過ぎてしまうと突然税務署から電話があって、「相続税の税務調査をします」といわれることも有り得る話です。

その場合には、適切に期限内に申告していた場合に比べ、特例が使えなくなったり、無申告加算税や重加算税がかかったりと、想定外の出費になってしまいます。

そのため、「自分は大丈夫だろう」と高をくくらずに、相続税申告が必要かどうかの確認は必ず実施しましょう。

関連記事:【現役税理士による】相続税に強く、信頼できる税理士の選び方解説

関連記事:相続税申告の税理士報酬の相場 実際に税理士が調査しました!

相続税の申告が必要かどうかを判断する方法と、相続税がかからないケースを解説の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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