土壌汚染地の相続税評価を徹底解説

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土地評価

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは
相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

元々工場の敷地であったなどの理由で対象地に有害物質が存在してる場合があります。
このような土壌汚染地が相続税の対象となる場合には一定の減額が可能となります。
今回は、土壌汚染地の相続税評価について徹底的に解説します。

似たような論点は、地下埋設物がある土地の相続税評価埋蔵文化財包蔵地の相続税評価を参照してください。

また、土地評価の基本を知りたい人は、相続税の土地評価 申告で使えるすべての方法をわかりやすく徹底解説を参照してください。

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土壌汚染地とは

土壌汚染地とは、特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認められる土地をいいます。
土壌汚染の可能性があるなどの潜在的な段階では、土壌汚染地として評価することはできません。

なお、下記の場合には、特定有害物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないことが明らかであるため、いずれの場合も「土壌汚染地」に該当します。

■土壌汚染対策法に規定する要措置区域の指定がされている場合
■土壌汚染対策法法に規定する形質変更時要届出区域の指定がされている場合

要措置区域や形質変更時要届出区域の指定は各都道府県のHP等で確認することができます。

例えば、東京都の場合には、下記HPで土壌汚染地の具体的な場所まで特定できます。
東京都環境局 土壌汚染対策法に基づく台帳情報公開システム

最後に「特定有害物質」とは、下記に掲げる物質であり、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものをいいます。(土壌汚染対策法第2条)

一 カドミウム及びその化合物
二 六価クロム化合物
三 クロロエチレン(別名塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)
四 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―一・三・五―トリアジン(別名シマジン又はCAT)
五 シアン化合物
六 N・N―ジエチルチオカルバミン酸S―四―クロロベンジル(別名チオベンカルブ又はベンチオカーブ)
七 四塩化炭素
八 一・二―ジクロロエタン
九 一・一―ジクロロエチレン(別名塩化ビニリデン)
十 一・二―ジクロロエチレン
十一 一・三―ジクロロプロペン(別名D―D)
十二 ジクロロメタン(別名塩化メチレン)
十三 水銀及びその化合物
十四 セレン及びその化合物
十五 テトラクロロエチレン
十六 テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム又はチラム)
十七 一・一・一―トリクロロエタン
十八 一・一・二―トリクロロエタン
十九 トリクロロエチレン
二十 鉛及びその化合物
二十一 砒ひ素及びその化合物
二十二 ふっ素及びその化合物
二十三 ベンゼン
二十四 ほう素及びその化合物
二十五 ポリ塩化ビフェニル(別名PCB)
二十六 有機りん化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)

土壌汚染地に該当するかどうかの調査方法

土壌汚染地に該当するかどうかは役所調査や地歴調査にて調査します。
実務上は、工場、クリーニング店、ガソリンスタンドの敷地や元々そのような施設の敷地であった土地については土壌汚染地に該当するかどうか調査すべきでしょう。

役所調査

都道府県のHP等で土壌汚染区域の確認が可能です。
要措置区域や形質変更時要届出区域を確認しましょう。

東京都の要措置区域や形質変更時要届出区域の指定状況を知りたければ下記HPで確認できます。
東京都環境局 要措置区域等の指定状況

また、より詳細の所在地を知りたければ、前述しましたが、東京都の場合には下記検索システムにて検索が可能です。
東京都環境局 土壌汚染対策法に基づく台帳情報公開システム

地歴調査

閉鎖登記簿にてその土地の歴代の所有者を確認します。
その所有者の名前に●●化学工業㈱などだった場合には土壌汚染地を疑うべきでしょう。
また、その土地上の建物の閉鎖登記簿の建物種別が「工場」とかになっていた場合にも注意が必要です。
他には過去の住宅地図や航空写真でクリーニング店、ガソリンスタンド、工場等でなかったかどうかを確認しましょう。

土壌汚染地の相続税評価

土壌汚染地の相続税評価は下記算式により計算します。

土壌汚染地の評価額 = 汚染がないものとした場合の評価額 - 浄化・改善費用に相当する金額 - 使用収益制限による減価に相当する金額 - 心理的要因による減価に相当する金額

汚染がないものとした場合の評価額は通常の土地の相続税評価額となりますので、相続税の土地評価 これだけ読めば大丈夫! 評価方法をわかりやすく解説をご参照ください。

以下では減額項目3つについて簡単に解説していきます。

①浄化・改善費用に相当する金額

浄化・改善費用は、土壌汚染の除去措置又は封じ込め等の措置に係る費用(所有者等の負担に属さないものを除く。)をいいます。
実額を控除するのではなく相続税評価額が公示価格の80%とされていることから浄化・改善費用も実額の80%相当額となります。
実際に浄化・改善費用を算出するには、土壌汚染対策法第13条に規定している指定調査機関の見積もった費用により計算することとなるでしょう。

指定調査機関については、環境省HPにて検索が可能です。

一つの調査機関ではなく複数の調査機関の見積もり費用の平均値とすべきです。

なお、評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用状況を踏まえ、浄化・改善費用が生ずる蓋然性が低いと認められる土地については、浄化・改善費用に相当する金額はないものとして取り扱います。
浄化・改善費用が生ずる蓋然性が低いと認められる土地とは、現状の利用が評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用と合致している土地や評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用を実現するに当たって浄化・改善費用を支出する必要のない土地のことです。

②使用収益制限による減価に相当する金額

使用収益制限による減価とは、土壌汚染の除去以外の措置(封じ込め等の措置)を実施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる減価をいいます。
ちなみに、除去措置ができた場合には除去措置後の土地については使用収益制限は生じないこととなるので当該減価はできません。

実際には、この使用収益制限については、取引の実例がほとんどない中で一定の減価割合を定めることができないことから、各案件ごと個別に判断していくしかありません。

なお、封じ込め等の措置により評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用が実現するような場合には、原則として、使用収益制限による減価は生じませんので注意が必要です。

③心理的要因による減価に相当する金額

心理的要因による減価とは、土壌汚染の存在(あるいは過去に存在した)に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価をいいます。
実際には、その減価の割合等が公表されたことはなく、一般に数値化することも困難であり、取引の実例もほとんどないことから、各案件ごと個別に判断していくしかありませんが、実務上は基本的には当該減価は考慮しません。

その他の留意点

①浄化・改善費用の額が確定している場合の取扱い

相続開始日において、下記のいずれかの場合には、その浄化・改善費用の額を土地の評価額から控除するのではなく債務控除の対象とします。

■都道府県知事から汚染の除去等の命令が出され、それに要する費用の額が確定している場合
■浄化・改善の措置中の土地で既に浄化・改善費用の額が確定している場合

すなわち、土地の評価については、土壌汚染地でない通常の土地として評価して、浄化・改善費用の額を債務としてマイナスします。
債務控除の詳しい解説は、【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

②汚染の除去等の措置の費用を汚染原因者に求償できる場合の取扱い

要措置区域内の土地の所有者等は、当該土地においてその汚染の除去等の措置を講じた場合において、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染が当該土地の所有者等以外の者の行為によるものであるときは、その行為をした者(汚染原因者)に対し、その汚染の除去等の措置に要した費用を請求することができることとされています。

被相続人が土壌汚染地の汚染の除去等の措置を行い、汚染原因者にその除去等の措置に要した費用を請求している場合には、その土地は浄化・改善措置後の土地として評価し、他方、その求償権は相続財産として計上することになります。

求償権は貸付金に準じて評価します。
貸付金評価の詳しい解説は、同族会社への貸付金の相続税評価をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

実務上の取り扱い

上記にて土壌汚染地の評価方法を解説しましたが、実務上、「浄化・改善費用に相当する金額」、「使用収益制限による減価に相当する金額」、「心理的要因による減価に相当する金額」を算出するのは至難の業です。
まず、「使用収益制限による減価に相当する金額」、「心理的要因による減価に相当する金額」の2つについては明確な基準が存在せず、具体的な数値を出すのは不可能に近いでしょう。
次に、「浄化・改善費用に相当する金額」については、土壌汚染調査会社に見積もりを依頼すれば算定は可能ですが、ボーリング調査、有害物質の測定等の調査費用は数百万円以上かかることがほとんどです。
そうすると土壌汚染地の相続税評価を算出するためのコストが相続税節税効果を上回ってしまうこともあり得るでしょう。
このような事情から実務上は費用対効果を考慮しながら慎重に評価を進めていく必要があります。

【参考】国税庁情報

一度国税庁HPから削除されてしまった情報が令和6年6月に再掲載されましたので下記をご参照ください。
国税庁HP 土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)

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