数次相続が発生した遺産分割協議書の書き方をわかりやすく徹底解説

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相続手続き

こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなってしまった場合、遺された相続人は二人分の遺産分割が必要です。
相次いで相続が発生することを「数次相続」と言い、数次相続の遺産分割協議書は通常の遺産分割協議書と書き方が異なります。

ここでは、数次相続の遺産分割協議書の書き方と注意点をわかりやすく紹介します。

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数次相続の遺産分割とは

家族が亡くなった後、遺産分割協議が終わらないうちに相続人の誰かが亡くなり、新たな相続が発生した状況を数次相続と言います。

例えば、父が亡くなり、遺産分割協議が終わらないうちに長男が亡くなった場合などが数次相続に該当します。
数次相続が発生した場合、最初の相続を一次相続、次の相続を二次相続と言い、一次相続と二次相続の遺産分割協議を並行して行う必要があります。
数次相続の遺産分割協議は通常と異なり、一次相続の遺産分割協議に二次相続の相続人が参加することが特徴です。

一次相続で父が亡くなり、二次相続で長男が亡くなった場合、一次相続の相続人である長男は亡くなっているため遺産分割協議に参加できません。
しかし、長男の相続人としての地位は長男の配偶者や子などに引き継がれるため、父の遺産分割協議に長男の配偶者や子などが参加することになるのです。

数次相続の具体例

上記の場合、父の遺産分割協議は母と次男、長男の相続人である長男の配偶者と子の4人で行うことになります。

数次相続が発生した場合の二次相続の相続税申告では、相続税額をマイナスできる制度「相次相続控除」があります。
相次相続控除の詳しい説明は「相次相続控除をわかりやすく徹底解説」をご参照ください。

数次相続の遺産分割協議書の作成方法は2種類

数次相続が発生した場合の遺産分割協議書の作成方法は2種類あります。

1つ目は「一次相続と二次相続をまとめた遺産分割協議書を作成する方法」です。
この方法では、1つの遺産分割協議書の作成で済むため手間はかかりませんが、ケースによっては混乱してしまうデメリットがあります。

2つ目は「被相続人ごとに別々の遺産分割協議書を作成する方法」です。
相続ごとに遺産分割協議書を作成しますので、二次相続が発生した場合は一次相続と二次相続の2つの遺産分割協議書の作成が必要になります。

どちらの方法で遺産分割協議書を作成しても問題ありませんが、数次相続の状況によって使い分ける方がいいでしょう。
例えば、両親の相続が相次いで発生した場合については、一次相続と二次相続の相続人が同じになり、混乱することはありません。
この場合は、1つにまとめた遺産分割協議書を作成する方がいいでしょう。
一方、父が亡くなった後に長男が亡くなったケースなど、一次相続と二次相続の相続人が異なる場合は、1つにまとめると混乱してしまう可能性がありますので被相続人ごとの別々の遺産分割協議書を作成した方がいいでしょう。

数次相続を1つの遺産分割協議書にする場合の書き方

数次相続の遺産分割協議書の書き方は、通常の遺産分割協議書の書き方とは異なります。
ここでは「一次相続と二次相続をまとめた遺産分割協議書を作成する方法」を中心に紹介しますが、基本的な考え方は同じです。

なお、通常の遺産分割協議書の書き方については「遺産分割協議書の書き方をわかりやすく徹底解説|相続財産の種類別で紹介」を参照ください。

二次相続の被相続人の情報を記載する

遺産分割協議書には冒頭に亡くなった被相続人の情報を記載します。
数次相続では、被相続人の情報の下に二次相続の被相続人の情報も記載する必要があります。二次相続の被相続人は「相続人兼被相続人」と記載します。

 

遺産分割協議書

 

被相続人 日本橋 一郎(昭和30年12月12日生まれ)
死亡日  令和3年12月6日
本籍地  東京都中央区日本橋○番地○
最終の住所地 東京都中央区日本橋○番地○

 

相続人兼被相続人 日本橋 花子(昭和年31月1日生まれ)
死亡日  令和4年5月6日
本籍地  東京都中央区日本橋○番地○
最終の住所地 東京都中央区日本橋○番地○

 

数次相続の経緯を記載する

二次相続の被相続人の情報を記載したら、その下に一次相続の被相続人が亡くなった後に二次相続が発生していること、各被相続人が亡くなった日を記載します。

 

被相続人 日本橋 一郎は令和3年12月6日に逝去し、その相続人である妻 日本橋 花子は令和4年5月6日に逝去した。よって、被相続人 日本橋 一郎及び相続人兼被相続人 日本橋 花子の遺産については、被相続人の長男 日本橋 二郎(以下「甲」という。)、被相続人の次男 日本橋 三郎(以下「乙」という。)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。

 

相続人の肩書を記載する

遺産分割協議書の末尾には相続人全員の署名と実印での押印を行います。
数次相続では、二次相続の相続人の肩書が「相続人兼〇〇の相続人」になりますので注意しましょう。

 

令和4年〇月〇日
 
住所 東京都中央区日本橋○番地○
生年月日 昭和55年5月31日
相続人兼日本橋花子の相続人(長男) 日本橋 二郎 実印
 
住所 東京都中央区日本橋○番地○
生年月日 昭和60年7月18日
相続人兼日本橋花子の相続人(次男) 日本橋 三郎 実印

 

中間省略登記で登録免許税を節約する方法

相続財産に土地や建物などの不動産がある場合、不動産の名義を相続人に変更する相続登記が必要になり、相続登記には登録免許税が課税されます。
数次相続が発生すると、原則的にはそれぞれの相続について相続登記が必要です。
しかし、相続人の状況によっては相続登記が一度だけで済む「中間省略登記」ができ、登録免許税が節約できる可能性があることを知っておきましょう。

中間省略登記ができるケース①一次相続の相続人が1人の場合

一次相続の相続人が1人だけであった場合、中間省略登記が可能です。具体例を見ていきましょう。

中間省略登記の具体例

既に父が他界しており、母の一次相続が発生した場合で相続人が長男1人だけのケースです。
長男が亡くなり、数次相続が発生することになりますが、このケースでは一度の相続登記で不動産を長男の相続人の名義にすることが可能です。

中間省略登記ができるケース②不動産を単独相続する場合

一次相続の相続人が複数いたとしても、遺産分割協議や相続放棄、遺言などによって不動産が単独相続になった場合は中間省略登記が可能です。
不動産の単独相続が要求されるのは一次相続(中間の相続)のみですので、最終的に共有持ち分による登記でも問題ありません。

数次相続Q&A

Q.数次相続と代襲相続の違いは?

Answer
数次相続と代襲相続の違いは、相続人が亡くなったタイミングです。
被相続人が亡くなる前に相続人が亡くなった場合は、相続人の子などが相続人の地位を引き継ぎます。このことを代襲相続と言います。
被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなると、相続人の相続人が地位を引き継ぎます。
これが数次相続になりますので、勘違いしないように注意しましょう。

 

Q.数次相続で配偶者に対する相続税額の軽減は利用できる?

Answer
数次相続でも配偶者に対する相続税額の軽減を利用することは可能です。
配偶者に対する相続税額の軽減は、配偶者が相続した遺産について軽減される制度です。
しかし、両親が相次いで亡くなった場合、配偶者に対する相続税額の軽減を利用するタイミングがありません。
例えば、父が亡くなり、その後、母が遺産分割協議前に亡くなった場合、母は父の遺産を相続していません。
母が遺産を相続していなければ、配偶者に対する相続税額の軽減の要件を満たしていないことになります。
このケースは母が遺産分割協議後に亡くなった場合と比べると不利になってしまいます。
そこで、課税の公平性の面から一次相続の相続人(配偶者を除く)と二次相続の相続人(配偶者の相続人)が遺産分割協議によって配偶者の相続財産を明確にした場合は、その財産を配偶者が相続したものとして、配偶者に対する相続税額の軽減を適用する取り扱いになっています。(相基通19の2-5)
また、数次相続が発生した場合の小規模宅地等の特例についても同様の問題が発生します。こちらも課税の公平性の面から、一次相続の相続人と二次相続の相続人が遺産分割協議によって対象となる土地を二次相続の被相続人が取得したものとして確定させた場合は、小規模宅地等の特例が利用できます。(措通69の4-25)

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この記事の執筆者:大塚 英司

東京税理士会新宿支部所属
登録番号:117702

埼玉県所沢市出身、東日本税理士法人、EY 税理士法人を経て、税理士法人トゥモローズ代表社員就任。相続に関する案件は、最新情報を駆使しながらクライアント目線を貫き徹底的な最適化を実現します。

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