無効にならない遺言書の作り方をわかりやすく解説!!
遺言書は、財産の分け方などについて法的な効力を持つ書類です。
特に、自筆証書遺言については、自分一人で手軽に作成することができ、費用もかかりません。
しかし、自分一人で作成できるということは、誤った方法で遺言書を作成してしまい、遺言書が「無効」になってしまうケースもあります。
ここでは、想いの詰まった遺言書が無効にならない作り方についてご紹介します。
遺言の全体像を詳しく知りたい人は、遺言を書いて争族回避! 遺言書の作成方法、効力等をわかりやすく徹底解説!をご参照ください。
目次
遺言書が無効になる主な原因
自筆証書遺言が無効になる一般的なケースには、次の4つがあげられます。
①遺言書の偽造
自筆証書遺言とは、遺言者が手書きで行うことで有効になる遺言書です。もし、遺言者として署名のある人以外の人が遺言書を書いていた場合、その遺言書自体が無効になってしまいます。
「日付部分だけを違う人が記入した」「署名だけ本人が行った」といった場合であっても無効です。
また、遺言者とは別の人が文字を書き換えたり、追加したりした場合については、その部分について無効になります。
遺言書の偽造が疑われる場合
「この遺言書は本人が書いたものではない」と疑われる場合は「遺言無効確認訴訟」により偽造を主張します。
遺言無効確認訴訟では、筆跡鑑定や遺言書の内容に不自然なところがないかなどによって偽造かどうか判断されることになります。
ただし、自筆証書遺言は遺言書が自由に作成できるという性質上、遺言書の偽造を証明することの難易度は高いと言われています。
②意思能力がない状態で作成した遺言書
遺言書が有効になる条件には「遺言者に意思能力があること」があります。意思能力がない状態で遺言書を作成した場合、無効になる可能性があります。
遺言書を作成する人は高齢である場合が多く、遺言書作成時に重度の認知症が発症していたと疑われるケースでは、遺言書が無効であると判断されるケースも多くあります。
ただし、遺言能力があるかどうかは医学的判断ではなく、法律的判断になるため、一概に認知症が発症していたから無効になるわけではありません。
③遺言書を作成した日付が違う
自筆証書遺言には作成した日付を記載しなければ無効になります。
遺言書が複数あり、内容が抵触している場合には日付が新しい遺言書の内容が有効になるため、遺言書の日付は必ず必要です。
遺言書に日付がある場合であっても、遺言書を作成した日と日付を記載した日が離れており、同一の機会ではないと認められる場合には無効になる可能性があります。
④他人に手を添えてもらい作成した場合
高齢などの理由で筆圧がない場合や、手が震えてしまう場合など、自分一人で遺言書を書けないというケースであっても、他人に手を添えてもらったら書けることもあると思います。
この場合については「自筆で書いたのかどうか」が問題となり、無効になってしまうケースもあります。
無効にならない遺言書の作り方
遺言書が無効にならないためには、次の点に気を付けて遺言書を作成しましょう。
自筆遺言書は正しく書こう
自筆証書遺言には「形式的な要件」があり、これを満たさなければ法的効力を持たなくなってしまいます。
【自筆証書遺言の形式的な要件】
②署名があること
③日付が特定できること
④押印があること
自筆証書遺言の書き方については「【その遺言書は有効?】遺言書の書き方を文例付きでわかりやすく解説!」で詳しく紹介していますのでご覧ください。
氏名の後ろに生年月日を記載する
遺言書の偽造を防止するために「氏名の後ろに生年月日を記載する」方法があります。
自筆証書遺言には生年月日を記載しなければならないという要件はありませんが、生年月日を記載した方が遺言書に書かれている人を厳密に特定することができるようになります。
特に、相続人ではない人へ財産を遺贈する場合などは、その人の本籍・住所・生年月日を記載することで確実性が高まります。
加筆・訂正時の手順が間違っていないか確認しよう
自筆証書遺言には、加筆する場合と訂正する場合のルールがあります。
加筆したい場合
加筆したい場合は、加筆したい箇所に吹き出しなどの挿入記号を記入し、加筆する文字を記入します。そして、加筆した行の余白に加えた文字数を記入し署名します。続いて、加筆した箇所の近くに押印を行います。
訂正したい場合
訂正したい場合は、訂正箇所に二重線を引き、上部に正しい文字を記入します。そして、訂正箇所の近くに削除や加えた文字数を記入し署名します。続いて、訂正した箇所の近くに押印を行います。
付記を行う
加筆する場合も訂正する場合も遺言書の最下部の余白に「付記」を行います。付記には、どこにどんな加筆、訂正を行ったかを記入し、署名します。
遺言書の内容は明確にしましょう
遺言書の内容は誰が見ても同じ解釈ができるよう、明確にしておきましょう。遺言書の内容が明確ではない場合、遺言者の真意を解釈して、遺言書の意味を探求することになります。
しかし、「死人に口なし」と言うように亡くなった人の本当の真意を知ることはできず、場合によっては無効になってしまうこともあります。
遺言書の内容が適切か確認しましょう
遺言は遺言者の意思表示を行う法的行為になるため、社会的な妥当性に反すると公序良俗違反(民法90条)により無効になってしまいます。
遺言による公序良俗違反の代表例は「不倫相手への遺贈」です。
遺贈の目的が不倫関係を維持するためなのか、不倫相手の生活保全を目的としたものなのか、遺贈が相続人の生活基盤を脅かさないのかなどが考慮され、公序良俗違反かどうか判断されることになります。
公正証書遺言にする
間違いなく有効な遺言書を作成したいのであれば「公正証書遺言」で行いましょう。
公正証書遺言では、法律の専門家である公証人が遺言書を作成しますので、無効になる可能性は極めて低くなります。
公正証書遺言については「公正証書遺言の効果と作成方法をわかりやすく解説!!」をご覧ください。
元気なうちから遺言書を作成する
自筆証書遺言は、元気なうちに作成するようにしましょう。「相続のことを考えるのはまだ早い」と思われる方もいらっしゃいますが、もし不慮の事故にあってしまったり、認知症が発症してしまったりすると、ご自身の意思を伝えられないままになってしまいます。
自筆証書遺言は何度でも書き直しができますので、元気なうちからベースとなる遺言書を作成することをおすすめします。
遺言書を無効にするには?
ここまでは遺言書が無効になる場合を紹介しましたが「相続人が遺言書を無効にする」ことも可能です。
遺言書を無効にするためには次のような方法があります。
遺産分割協議に切り替える
相続人全員の同意があれば、遺言書ではなく遺産分割協議を行うことが可能です。
ただし、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の同意も必要になります。
遺言書に相続人以外の受遺者がいる場合は、相続人全員が同意していても遺産分割協議は認められません。
遺産分割協議を行いたい場合は、受遺者に「遺贈の破棄」を行ってもらう必要があります。
また、遺言書に「遺産分割の禁止」が明記されている場合は、相続人全員の同意があっても遺産分割協議が行えません。遺産分割の禁止は最長5年間の効力が認められています。
遺言書がある場合の遺産分割協議については「遺言書があっても遺産分割協議は可能|間違えやすいポイントを解説」をご覧ください。
遺言無効確認訴訟を行う
遺言内容に納得できず、また相続人全員の同意が得られずに遺産分割協議ができない場合は「遺言無効確認訴訟」という選択肢があります。
遺言無効確認訴訟とは、遺言が無効であると裁判所に判断してもらう手続きです。
訴訟では「遺言能力がなかった」「自筆証書遺言が自筆で作成されていない」など、遺言書が法的に無効であることを証明しなければならないため、確実な証拠が必要になります。
確実な証拠がなければ無効にすることは難しいため、難易度の高い手続きと言えるでしょう。
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