贈与の成立時期はいつなのか? パターン別に徹底解説!

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名義財産・生前贈与

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

年間110万円を超える贈与を受けた人は翌年の3月15日までに贈与税の申告が必要となります。
この贈与税の申告をいつすべきかの判断で重要となるのが贈与の成立時期です。

贈与の成立時期は贈与の方法や贈与財産の種類等によって異なります。

今回は、贈与の成立時期についてわかりやすく徹底解説します。

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まずは結論から!贈与の成立時期まとめ

贈与成立の時期は贈与の方法や財産の種類に応じて下記の通りです。

(1)口頭による贈与:贈与実行時
(2)書面による贈与(原則):贈与契約書締結時
(3)書面による贈与(例外):登記時
(4)停止条件付贈与:条件成就時
(5)農地の贈与:農業委員会等の許可時

一つ一つ詳しく解説していきましょう。

(1)口頭による贈与

贈与は贈与者(あげる方)と受贈者(もらう方)の合意があって契約が成立します。
A君「この車を君にあげるよ」
B君「ありがとう。ありがたくいただくよ。」
という合意があったら成立するのです。

これを諾成契約といいます。

ただし、口頭による贈与は、贈与対象物を引き渡す前はいつでも撤回できてしまうのです。
A君「この車を君にあげるよ」
B君「ありがとう。ありがたくいただくよ。」
A君「やっぱり、あげるのやめる。」
となれば、贈与不成立なのです。

では、口頭による贈与が撤回できなるなるタイミングはいつでしょうか?
それは、履行の終わったときなのです。

A君「この車を君にあげるよ」
B君「ありがとう。ありがたくいただくよ。」
車をB君に引き渡した。
B君「本当にA君ありがとう。」

A君からB君に車を引き渡したあとは撤回できないのです。

すなわち、口頭による贈与の成立時期は贈与実行時なのです。

口頭により合意が成立した日ではないので注意しましょう。

(2)書面による贈与(原則)

10月5日に父の現金100万円を長男に贈与するという内容の贈与契約書を9月30日に贈与者の父と受贈者の長男がそれぞれ署名押印しました。

その後、実際に10月5日に父から長男に現金100万円が贈与されました。

この場合の贈与の成立時期はいつでしょうか?

正解は、9月30日です。

書面による贈与については、贈与契約書締結日が贈与成立日なのです。

理由としては、書面による贈与は、書面締結後は、贈与の撤回ができないためです。

口頭による贈与が贈与実行前は撤回ができるのに対して、書面による贈与は撤回ができないのが大きな違いですね。

(3)書面による贈与(例外)

(2)で書面による贈与は、贈与契約書締結日に契約が成立すると解説しました。

この原則的取り扱いを逆手に取って悪巧みをする納税者が過去にいました。(最高裁平成11年6月24日参照)

簡単に事件の概要を噛み砕いて解説します。

・納税者Xと父は公正証書による贈与契約書を昭和60年3月14日に作成
・贈与税の時効が成立した平成5年12月13日に贈与の時を実施
・税務署は昭和60年の贈与ではなく登記をした平成5年の贈与と認定し贈与税決定処分
・納税者と税務署で裁判に発展し、納税者の負けが確定

贈与税の時効の詳しい解説は、贈与税の時効は6年! 申告が必要な場合には速やかに期限後申告を!をご参照ください。

上記のような悪さをする納税者に対処するためにも不動産のような移転登記、登録が必要となる財産については、書面による贈与であったとしても例外的に登記又は登録のあった時に贈与が成立したものとして考えます。

ちなみに、税務署は公正証書による贈与があったことを知る由もないのです。
これに対し、登記の情報は法務局から税務署に情報が流れます。
上記の事案でも登記の情報により贈与税の課税漏れが判明したのです。

贈与税が税務署にバレるケースの解説は、贈与税の申告漏れ 税務署にばれる理由と怖いペナルティをご参照ください。

(4)停止条件付贈与

停止条件付贈与とは、一定の条件に達したら贈与するというものです。

例えば、結婚したら100万円をあげるという停止条件付贈与の場合には、この書面を作成した時点では贈与は成立しません。

実際に結婚したときに贈与が成立したものと考えます。

結婚するかどうかは将来不確実ですので不確実なことが成就したときに贈与成立したと考えるのです。

では、「私が死んだらこの土地をあげるよ」というのは停止条件付贈与になるのでしょうか?
これは死因贈与といいまして、停止条件付贈与とは異なります。
結婚と異なる死ぬことは確実なことですので条件付贈与ではなく期限付贈与と考えます。

(5)農地の贈与

農地については、当事者の契約のみで移転の効力が生じない財産となります。
農地の所有権を移転するためには、農地法の規定により農業委員会の許可が必要なためです。
また、農地を農地以外に転用(例えば宅地化)するために所有権を移転する場合には、都道府県知事等の許可が必要です。
ちなみに、市街化区域内の農地については、都道府県知事等の許可は不要で農業印会の届け出だけでOKです。

すなわち、農地については、下記のそれぞれの時に贈与が成立したものと考えます。

農地法の規定により農業委員会等の許可を受けなければならない農地:当該許可があった日
農地法の規定により農業委員会に届け出をする必要がある農地:当該届出の効力が生じた日

贈与成立時期ケーススタディー

【ケース1】
令和5年1月30日に100万円、令和5年11月30日に100万円を贈与するという内容の贈与契約書を令和4年12月10日に父と息子で署名押印した。

贈与成立日:令和4年12月10日

書面による贈与は契約締結日に贈与が成立するため令和4年の200万円の贈与として令和5年3月15日までに贈与税の申告納付が必要になります。

 

【ケース2】
父が息子に500万円をあげると口頭で約束をしていたが、贈与をする前に父が亡くなってしまった。

贈与成立日:不成立

口頭による贈与の場合には贈与実行日が贈与成立日となるため実行前に贈与者が死亡した場合には原則として贈与は不成立と考えます。
贈与者の地位を引き継いだ相続人が贈与を実行すれば贈与が成立する可能性はありますが。。。

 

【ケース3】
A君が令和5年2月28日に100万円を何も言わずにB君に渡して、令和5年3月10日に後から口頭で「この前渡した100万円は君にあげるよ」と言ってB君も「ありがとう。遠慮なくもらうよ。」と応じた。

贈与成立日:令和5年3月10日

贈与の合意があったのは令和5年3月10日であるため贈与成立日は口頭による合意日となります。

贈与の成立時期はいつなのか? パターン別に徹底解説!の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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