【家族信託の税務】自宅を信託した場合には空き家特例の適用はできません!

最終更新日:

家族信託

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

家族信託で自宅を信託した場合に相続が発生し、
その自宅を売却した場合に空き家の3,000万円控除(以下「空き家特例」)の適用はできるのでしょうか?

結論としては、家族信託をした場合には空き家特例の適用はできません。

今回は、自宅を家族信託した場合の空き家特例の適用ができない理由、どんな人に影響があるのか等について解説していきます。

なお、空き家特例の詳しい解説は、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)を徹底解説をご参照ください。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

タップで発信

0120-916-968

平日 9:00~21:00 土日 9:00~17:00

LINEで相談する

1.空き家特例は、なぜ家族信託では適用できないのか?

(1)空き家特例の対象に信託による取得が含まれていないから

なぜ適用できないかの理由としては、空き家特例の条文に家族信託が含まれていないためです。

空き家特例は、租税特別措置法第35条第3項に規定されています。
条文の一部を確認していきましょう。

租税特別措置法第35条第3項

相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第6項までにおいて同じ。)による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む。以下この項及び次項において同じ。)が、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたものに限るものとし、第39条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が1億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合(当該相続人が既に当該相続又は遺贈に係る当該被相続人居住用家屋又は当該被相続人居住用家屋の敷地等の対象譲渡についてこの項の規定の適用を受けている場合を除き、第3号に掲げる譲渡をした場合にあつては、当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、当該被相続人居住用家屋が耐震基準(地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものをいう。第1号ロにおいて同じ。)に適合することとなつた場合又は当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し若しくは除却がされ、若しくはその全部が滅失をした場合に限る。)には、第1項に規定する居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、同項の規定を適用する。

【以下省略】

家族信託により信託受益権を取得する行為は法律上、「相続」、「遺贈」、「死因贈与」には該当しませんが、相続税法第9条の2において相続等により取得したとみなして相続税の対象になります。
すなわち、法律上は相続等ではないのだけども税法上は相続等とみなして相続税の対象とするよという立て付けなのです。
ということは、各条文にて家族信託により信託受益権を取得する行為を相続等とみなす旨の規定がされていないといけないのです。

もう一度上記の租税特別措置法第35条第3項をご確認いただくと相続税法第9条の2のようなみなす規定がありません。

なお、取得費加算の特例については、下記の通り(赤字部分参照)家族信託により信託受益権を取得する行為を相続等とみなすこととなっています。

租税特別措置法第39条

相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下この条において同じ。)による財産の取得(相続税法又は第70条の5、第70条の6の9、第70条の7の3若しくは第70条の7の7の規定により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。第6項において同じ。)をした個人で当該相続又は遺贈につき同法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る同法第27条第1項又は第29条第1項の規定による申告書(これらの申告書の提出後において同法第4条第1項に規定する事由が生じたことにより取得した資産については、当該取得に係る同法第31条第2項の規定による申告書。第4項第1号において「相続税申告書」という。)の提出期限(同号において「相続税申告期限」という。)の翌日以後3年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格(同法第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により当該課税価格とみなされた金額)の計算の基礎に算入された資産の譲渡(第31条第1項に規定する譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項、第4項及び第8項において同じ。)をした場合における譲渡所得に係る所得税法第33条第3項の規定の適用については、同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする。

【以下省略】

上記の取得費加算の特例のように空き家特例の条文には「相続又は遺贈による財産の取得」の範疇に家族信託により信託受益権を取得する行為が含まれていないと解釈しなければならないため空き家特例の適用ができないというわけです。

ちなみに、相続税の特例である小規模宅地等の特例については、家族信託により信託受益権を取得する行為は相続又は遺贈による財産の取得に含まれることが規定されています。

租税特別措置法施行令第40条の2第27項

法第69条の4の規定の適用については、相続税法第9条の2第6項の規定を準用する。この場合において、相続税法施行令第1条の10第4項の規定の適用については、同項中「第26条の規定の」とあるのは「第26条並びに租税特別措置法第69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)の規定の」と、同項第3号中「第26条」とあるのは「第26条並びに租税特別措置法第69条の4」と読み替えるものとする。

通達でも下記の通りダメ押しされています。

租税特別措置法関係通達69の4-2

特例対象宅地等には、個人が相続又は遺贈により取得した信託に関する権利(相続税法第9条の2第6項ただし書に規定する信託に関する権利及び同法第9条の4第1項又は第2項の信託の受託者が、これらの規定により遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利を除く。)で、当該信託の目的となっている信託財産に属する宅地等が、当該相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下69の4-24の8までにおいて「被相続人等」という。)の措置法第69条の4第1項に規定する事業の用又は居住の用に供されていた宅地等であるものが含まれることに留意する。

(2)帰属権利者は自由に放棄できるから

受託者は信託行為の当事者であるが、帰属権利者(自宅の受益権を取得する人)は信託の当事者ではないし信託法第183条第3項によりその権利を放棄することができるというのが、「相続」、「遺贈」とは異なるため「相続」、「遺贈」とは異なる法律行為として空き家特例が認められていないこととなります。

信託法第183条第3項

信託行為の定めにより帰属権利者となった者は、受託者に対し、その権利を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、信託行為の定めにより帰属権利者となった者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。

もちろん、相続でも相続放棄はありますが相続人は相続の当事者であり、相続放棄は家庭裁判所で一定の手続きが必要になる点が信託の場合と異なります。
また、特定遺贈については家庭裁判所の手続きも不要で自由に放棄できますので空き家特例の適用は受けれない点は家族信託の場合と同様です。

上記の解説の根拠となった情報が国税庁HP 文書回答事例 信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否についてですので是非ご確認ください。

2.影響がある人は限定的?

まず家族信託をしている人自体が少ないです。
また、自宅を家族信託している人も少ないです。
したがって、この論点の影響を受ける人は相当限定的だと考えます。

念のため影響を受けるかどうかチェックリストで確認してみましょう。
下記の全てにチェックが付いた人はこの論点の影響を受けます。

□自宅に家族信託を設定している
□自宅に含み益がある(買った金額(減価償却も加味して)より高く売れる予定だ)
□自宅はマンションではない
□自宅家屋は昭和56年5月31日以前に建築された
□親が一人暮らしだ
□自宅を相続した後に売却する予定だ

いかがでしょうか?
上記に全てチェックが付かない限りは本論点の影響はないので対策も必要ありません。

もし、全てにチェックが付いた場合には、家族信託の契約内容を修正するか、空き家特例ではなくマイホームの3,000万控除の適用を受けるべく親と同居するか等を検討するべきでしょう。

【家族信託の税務】自宅を信託した場合には空き家特例の適用はできません!の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

タップで発信

0120-916-968

平日 9:00~21:00 土日 9:00~17:00

お問い合わせ

採用情報