貸付用不動産・不動産小口化商品は令和8年中に贈与すべきか?!

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相続税申告

名義財産・生前贈与

10秒でわかる この記事の要約

  • 令和8年度税制改正で、貸付用不動産と不動産小口化商品の評価方法が大きく変わる
  • 貸付用不動産は「5年以内に取得したもの」が対象、不動産小口化商品は「取得時期に関係なく」時価評価へ
  • 令和9年1月1日以後の相続・贈与から新評価方法が適用される
  • 令和8年中に贈与すれば、現行の路線価評価・固定資産税評価が適用可能
  • ただし、贈与が必ずしも有利とは限らないため、シミュレーション必須

令和8年度税制改正大綱が、相続税対策の大きな転換点となりそうです。

この改正は、賃貸不動産を使った「アパマン節税」「タワマン節税」に大きな影響を与えます。

本記事では、「令和8年中に贈与すべきかどうか」という疑問に、税理士の立場から実務的な視点で回答します。

なお、今回の改正の全体像については「【令和8年度税制改正・相続税】賃貸不動産節税に規制!5年ルールの衝撃」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

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改正後の評価方法

まずは、令和8年度税制改正で示された新しい評価方法の概要を確認しましょう。

現行の評価方法

現行制度では、貸付用不動産は財産評価基本通達に基づき評価されています。

土地は路線価評価(時価の約8割)、建物は固定資産税評価額(時価の約5〜7割)で評価されます。

さらに、賃貸している場合は土地が貸家建付地評価で約2割減、建物が貸家評価で3割減となります。

小規模宅地等の特例が適用できれば、土地は上記評価額からさらに50%の減額が可能です。

この仕組みを利用して、現金を賃貸不動産に組み替えることで相続税評価額を大幅に圧縮する「アパマン節税」「タワマン節税」が広く行われてきました。

不動産小口化商品についても同様に、路線価評価をベースとした評価が可能であったため、購入価額の1割程度で評価できるケースも存在し、相続税対策として非常に人気がありました。

改正後の評価方法

令和8年度税制改正大綱では、この評価方法に大きなメスが入ります。

貸付用不動産:課税時期前5年以内に取得したものは「取得価額×80%」で評価

不動産小口化商品:取得時期に関係なく、事業者が示す適正価格(時価)で評価

つまり、路線価評価による「時価と相続税評価額の差」を利用した節税効果が大幅に縮小されます。

適用開始時期

令和9年1月1日以後に相続または贈与により取得する財産から適用されます。

言い換えれば、令和8年12月31日までに贈与すれば、現行の評価方法が適用できるということです。

貸付用不動産

ここからは、アパートやマンションなどの貸付用不動産について、改正後の評価方法が適用される場合とされない場合を整理します。

(1)改正後の評価方法が適用されない不動産

以下の貸付用不動産は、改正後も従来どおりの路線価評価・固定資産税評価が適用されます。

■5年超前に取得した貸付用不動産

課税時期(相続発生日または贈与日)から5年超前に購入・新築した不動産は、改正の対象外です。

路線価評価・固定資産税評価額による従前の通達評価が適用されます。

■改正通達発遣日の5年前から所有している土地に建築した建物

「改正を通達に定める日(改正通達発遣日)」の5年前から所有している土地の上に、同日までに着工した建物については対象外となります。

これは、すでに計画を進めていた方への救済措置と考えられます。

■令和8年12月31日までに贈与した不動産

改正の施行日は令和9年1月1日です。

令和8年中に贈与を完了すれば、現行の評価方法が適用されます。

以下に具体例を示します。

ケース 土地取得 建物新築 課税時期 適用される評価
A 令和2年 令和3年 令和10年 従前の通達評価(5年超経過)
B 令和6年 令和6年 令和8年(贈与) 従前の通達評価(施行前の贈与)
C 平成20年 令和8年 令和9年 土地:従前評価/建物:要確認※

※ケースCの建物については、「改正通達発遣日」までに着工していれば従前評価、着工が間に合わなければ新評価となります。

(2)改正後の評価方法が適用される不動産

以下の貸付用不動産は、新しい評価方法(取得価額×80%)が適用されます。

■令和9年1月1日以後に相続・贈与により取得した不動産
かつ
■被相続人・贈与者が課税時期前5年以内に対価を伴う取引で購入または新築したもの

具体例を見てみましょう。

ケース 不動産取得 課税時期 5年経過の判定 適用される評価
D 令和6年4月 令和10年3月 5年以内 取得価額×80%
E 令和6年4月 令和12年5月 5年超 従前の通達評価
F 令和8年10月 令和9年6月(贈与) 5年以内 取得価額×80%

ケースFのように、令和8年に購入した不動産を令和9年以降に贈与すると、新評価方法が適用されてしまいます。

購入直後に贈与を検討している場合は、令和8年中に購入と贈与の両方を完了させることが重要です。

なお、「対価を伴う取引」とは、購入だけでなく交換や買換えも含まれると想定されます。
一方、贈与で取得した不動産は「対価を伴わない取引」です。
そのため、改正通達の対象外になると考えられます。

(3)令和8年中に贈与すべき人

では、どのような人が令和8年中の贈与を検討すべきでしょうか。

結論を申し上げると、令和9年1月1日から起算して5年以内に取得した貸付用不動産を保有している人は令和8年中の贈与を検討すべきです。

ただし、贈与が必ずしも有利とは限りません。

贈与税と相続税の税率差、小規模宅地等の特例の適用可否、不動産取得税・登録免許税の負担など、総合的に判断する必要があります。

比較項目 暦年贈与 精算課税贈与 相続
税率 高い 低い 低い
小規模宅地特例 × ×
不動産取得税 課税 課税 非課税
登録免許税 2% 2% 0.4%

必ず税理士にシミュレーションを依頼し、贈与と相続のどちらが有利かを検証してください。

暦年課税と相続時精算課税の詳しい解説は「暦年贈与と精算課税はどちらが有利? フローチャートで解説!」をご覧ください。

不動産小口化商品

次に、不動産小口化商品(任意組合型など)について解説します。

不動産小口化商品は、貸付用不動産とは異なる取り扱いとなるため、特に注意が必要です。

(1)改正後の評価方法が適用されない不動産

不動産小口化商品については、取得時期に関係なく新しい評価方法が適用されます。

したがって、「5年超前に取得したから対象外」というルールは不動産小口化商品には当てはまりません。

【改正後も従前評価が適用される唯一のケース】

■令和8年12月31日までに贈与した不動産小口化商品

→ 改正の施行日前であれば、従前の路線価評価が適用されます

→ これが唯一、現行評価を維持できる方法です

つまり、不動産小口化商品を保有している方にとって、令和8年中の贈与は非常に重要な選択肢となります。

(2)改正後の評価方法が適用される不動産

令和9年1月1日以後に相続または贈与により取得した不動産小口化商品は、取得時期に関係なく新評価方法が適用されます。

新評価方法では、以下の価格を参酌して評価額を算定します。

【不動産小口化商品の新評価方法】

・出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格

・事業者等が把握している適正な売買実例価額

・定期報告書等に記載された不動産の価格

※上記の価額がない場合には、貸付用不動産に準じて評価

なお、上記四角枠の最後の※に記載したように一部の不動産小口化商品を販売している業者からは、「改正後であっても貸付用不動産と同じ評価方法が使える」という解釈が示されています。
つまり、不動産小口化商品であっても、取得から5年を超えていれば路線価評価・固定資産税評価が適用でき、5年以内の取得でも「取得価額×80%」で評価できるという見解です。
しかし、私はこの解釈には懐疑的です。
税制改正大綱では、わざわざ「不動産小口化商品」と「貸付用不動産」を別々に記載しています。
もし同じ評価方法を適用するつもりなら、あえて区別して書く必要はありません。
改正通達が発遣されていない現段階で断定はできませんが、不動産小口化商品に貸付用不動産と同じ評価方法が認められる可能性は低いと考えています。

つまり、ほぼ時価100%評価になると考えてよいでしょう。

これまで不動産小口化商品は、購入価額の1割程度で評価できるケースもあり、相続税対策として非常に人気がありました。

しかし、改正後はその節税効果が消滅します。

以下の表で、改正前後の評価額の違いを確認してみましょう。

項目 改正前 改正後
購入価額 1億円 1億円
相続税評価額 約1,000万円 約1億円
評価減割合 約90% 0%

改正の影響は極めて大きいことがわかります。

(3)令和8年中に贈与すべき人

不動産小口化商品については、貸付用不動産と異なり取得時期に関わらず令和9年以降は時価評価が強制される可能性が高いため令和8年中の贈与を検討すべきです。

なお、令和8年中の贈与であっても、「総則6項」(※後述のQ5参照)により時価評価と認定される可能性があるため注意が必要です。

よくある質問(Q&A)

令和8年中の贈与について、よくある疑問にお答えします。

Q1:贈与契約書の日付が令和8年12月31日であれば大丈夫ですか?

A:不動産の贈与は「引渡し」が完了していることが重要です。

登記の申請まで完了していることが望ましいです。

年末ギリギリの贈与は、登記申請が翌年にずれ込むリスクがあります。

余裕を持って令和8年11月末までには手続きを完了させましょう。

不動産小口化商品の場合は、事業者への届出や名義変更手続きが必要となりますので、こちらも早めの対応が必要です。

Q2:借入金がある不動産を贈与すると、負担付贈与になりますか?

A:借入金も一緒に引き継ぐ場合は負担付贈与となります。

負担付贈与の場合、不動産は路線価評価ではなく時価評価となってしまいます。

借入金は親が返済し、不動産だけを贈与する方法を検討しましょう。

Q3:暦年贈与と相続時精算課税、どちらで贈与すべきですか?

A:ケースバイケースです。必ずシミュレーションを行ってください。

暦年贈与と精算課税贈与のどちらが有利かは、贈与物件の相続税評価額だけでは判断できません。
贈与者の財産規模、余命、家族構成、贈与者・受贈者の収入状況、贈与物件の収益性等を総合的に勘案して判定することとなります。

暦年贈与と精算課税贈与の有利判定についての詳しい解説は、暦年贈与と精算課税はどちらが有利? フローチャートで解説!をご参照ください。

Q4:令和8年中に贈与すれば、絶対に得になりますか?

A:いいえ、必ずしも得になるとは限りません。

贈与には以下のデメリットがあります。

・贈与税の負担(暦年贈与の場合)

・不動産取得税の負担(相続なら非課税)

・登録免許税が相続の5倍(2% vs 0.4%)

・小規模宅地等の特例が使えない

これらのデメリットを上回る節税効果があるかどうか、必ず試算してください。

Q5:総則6項で否認されるリスクはありますか?

A:改正前の令和8年中の贈与であっても、総則6項による否認リスクはゼロではありません。

特に、相続直前の駆け込み贈与で、明らかに租税回避目的と認められる場合は否認される可能性があります。

贈与には合理的な理由(事業承継、収入確保など)を持たせることが重要です。

Q6:貸家建付地評価や小規模宅地等の特例は適用できますか?

A:現時点では明確な回答は困難です。

大綱には、貸家建付地評価や貸家評価の適用可否について明確な記載がありません。

法人の株価評価における3年以内取得不動産では時価評価後に貸家建付地評価等が適用可能であることを踏まえると、適用できる可能性は高いと考えます。

ただし、オーナーチェンジ物件など、すでに賃貸中の状態で購入した不動産については、購入価額に貸家建付地等の評価減が織り込まれているため、追加での評価減は困難と思われます。

小規模宅地等の特例については、大綱に措置法改正の記載がなかったため、現行通り適用可能と予想しています。

詳細は今後発遣される通達を確認する必要があります。

まとめ

令和8年度税制改正により、貸付用不動産と不動産小口化商品の評価方法が大きく変わります。

【この記事のポイント】

■貸付用不動産(アパート・マンション等)

・5年以内に取得したものは「取得価額×80%」で評価

・5年超前に取得したものは従前の路線価評価

・令和8年中の贈与なら現行評価が適用可能

■不動産小口化商品

・取得時期に関係なく時価評価へ

・節税効果はほぼ消滅

・令和8年中の贈与が最後のチャンス

■令和8年中に贈与すべきか?

・必ずしも贈与が有利とは限らない

・贈与税、流通税、小規模宅地特例の可否を総合判断

・税理士によるシミュレーション必須

令和8年中の贈与を検討される方は、できるだけ早く相続専門の税理士にご相談ください。

年末に向けて駆け込み需要が集中し、手続きが間に合わなくなるリスクがあります。

当事務所では、貸付用不動産・不動産小口化商品の贈与シミュレーションを承っております。

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