海外の生命保険は相続税の対象?非課税枠の適用や申告方法を徹底解説

- 海外の保険会社から受け取る死亡保険金も日本の相続税の対象となる
- 平成19年度税制改正により、海外生命保険も国内生命保険と同じ「みなし相続財産」として課税される
- 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も適用される
- 外貨建ての場合、相続開始日のTTBで日本円に換算して申告
- CRS(共通報告基準)により、海外保険の情報は日本の税務署に共有される
「父が海外の保険会社の生命保険に加入していました。相続税はどうなりますか?」
グローバル化が進む中、海外の保険会社の生命保険に加入している方が増えています。
特に香港やシンガポールの保険は、運用利回りの高さや商品設計の柔軟性から人気があります。
しかし、いざ相続が発生すると、「海外の保険は日本の保険と扱いが違うのでは?」と不安に思われる方が少なくありません。
結論からお伝えすると、海外の生命保険も日本の生命保険と同じ取扱いです。
この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、海外の生命保険と相続税の関係を徹底解説します。
目次
海外の生命保険は相続税の対象か
結論:国内の生命保険と同じ「みなし相続財産」
海外の保険会社から受け取る死亡保険金は、日本の保険会社から受け取る死亡保険金と全く同じ「みなし相続財産」(相続税法第3条第1項第1号)として相続税の課税対象となります。
その根拠は、相続税法施行令第1条の2第1項第1号にあります。
同条項では、相続税法第3条に規定する「生命保険契約」の範囲として、以下の契約が含まれると定めています。
相続税法施行令第1条の2第1項第1号(要旨)
保険業法第2条第3項に規定する生命保険会社と締結した保険契約又は同条第6項に規定する外国保険業者若しくは同条第18項に規定する少額短期保険業者と締結したこれに類する保険契約
つまり、日本の生命保険会社であろうと外国保険業者であろうと、相続税法上は同じ「生命保険契約」に該当し、同じルールが適用されるのです。
この点は国税庁の相続税法基本通達3-4でも明確にされています。
非課税枠(500万円×法定相続人の数)も適用される
「みなし相続財産」に該当するということは、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も海外の保険金に適用されるということです。
これは相続税対策を考える上で非常に重要なポイントです。
・海外保険の死亡保険金:5,000万円(USD建てをTTBで換算後)
・法定相続人:3人(配偶者、子2人)
・非課税枠:500万円×3人=1,500万円
・課税対象:5,000万円−1,500万円=3,500万円
なお、日本の生命保険と海外の生命保険の両方から死亡保険金を受け取った場合は、合算した保険金総額に対して非課税枠が適用されます。
日本の生命保険の非課税枠については、生命保険金にかかる相続税 非課税枠と注意点を完全解説をご参照ください。
申告書の記載方法
海外の生命保険金も国内の保険金と同じく、相続税申告書の第9表(生命保険金などの明細書)に記載します。
「保険会社等の名称」の欄には、海外保険会社の名称を記載し、「所在地」には海外の住所を記載してください。
かつては取扱いが異なっていた(平成19年改正前)
旧制度では一時所得として課税されていた
実は、平成19年(2007年)の税制改正前は、日本の保険業法の適用を受けない外国保険業者と締結した保険契約は、相続税法上の「生命保険契約」に含まれていませんでした。
そのため、海外の保険金は「みなし相続財産」ではなく、受取人の一時所得として所得税・住民税の課税対象となっていました。
旧制度で節税が可能だった理由
一時所得の計算では、払い込んだ保険料が必要経費として控除され、さらに特別控除50万円の適用があり、その1/2が課税対象となります。
最高税率が適用される富裕層にとって、相続税として課税されるよりも一時所得として課税された方が有利なケースがあったため、海外の保険会社を利用した節税スキームが一時期広まりました。
平成19年度税制改正の趣旨
同じ生命保険契約であるにもかかわらず、国内と海外で課税関係が異なる合理的な理由はなく、課税の公平性の確保の観点から、平成19年度税制改正で外国保険業者との契約も相続税法上の「生命保険契約」に含められました。
この改正は平成19年4月1日以後に取得する保険金について適用されます。
したがって、改正前に加入した契約であっても、保険金を受け取るのが平成19年4月1日以後であれば、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
海外生命保険の相続税評価
評価額の計算
海外の生命保険金の評価方法も、国内の生命保険金と同じです。
死亡保険金の場合は、保険金受取人が受け取った保険金の額が課税対象です。
被相続人が保険料の全額を負担していた場合は保険金全額が、一部のみ負担していた場合はその負担割合に応じた部分が「みなし相続財産」となります。
外貨建ての場合の換算
外貨建ての保険金は、相続開始日(被相続人の死亡日)のTTB(対顧客直物電信買相場)で日本円に換算します。
・保険金額:USD 500,000
・相続開始日のTTB:1ドル=150円
・評価額:500,000 × 150 = 75,000,000円(7,500万円)
TTBは、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などのホームページで過去の為替レートを確認できます。
外貨建て財産の評価については、【相続税申告】外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。
解約返戻金がある場合(生命保険契約に関する権利)
被相続人が保険契約者(保険料負担者)で、被保険者が別の人(例えば配偶者)の場合、被相続人の死亡では保険金の支払い事由が発生しません。
この場合、保険契約は「生命保険契約に関する権利」として相続財産に含まれ、相続開始日時点の解約返戻金相当額で評価します。
未払い保険料の取扱い
相続開始時点で未払いの保険料がある場合、その金額を債務として控除できます。
海外生命保険の受取手続き
必要書類
海外の保険会社に保険金を請求する際、以下の書類が必要になることが一般的です。
| 書類 | 備考 |
| 死亡証明書(Death Certificate) | 英訳・認証(アポスティーユ)が必要な場合あり |
| 保険証券(Policy Document) | 原本が必要な場合あり |
| 受取人の身分証明書 | パスポートコピー等 |
| 保険金請求書(Claim Form) | 保険会社所定の様式 |
| 戸籍謄本 | 受取人であることの証明(英訳・認証が必要) |
アポスティーユの取得については、相続で使う宣誓供述書の基礎と作成手順でも関連する手続きを解説していますので参考にしてください。
手続きの流れ
↓
STEP2:必要書類の案内を受ける
↓
STEP3:書類を準備・提出(英訳・認証が必要な場合あり)
↓
STEP4:保険会社による審査(数週間〜数ヶ月)
↓
STEP5:保険金の支払い(海外送金)
注意点:日本の申告期限との関係
海外の保険金受取手続きには、国内の手続きと比べて時間がかかることが少なくありません。
書類の英訳・認証、国際郵送のタイムラグ、保険会社の審査期間などを考慮すると、保険金の受取りまでに数ヶ月以上かかることもあります。
日本の相続税申告期限(10ヶ月)までに保険金が確定しない場合でも、保険証券の金額などをもとに概算で申告し、後日更正の請求または修正申告を行う必要があります。
相続が発生したら、速やかに海外の保険会社へ連絡し、保険金請求の手続きを開始することが重要です。
海外生命保険の申告漏れリスク
CRSによる情報共有
CRS(共通報告基準:Common Reporting Standard)により、海外の金融機関の口座情報は日本の税務署に自動的に共有されます。
海外の保険契約も、解約返戻金がある貯蓄性の高い保険はCRSの報告対象となる場合があります。
現在、CRSには100以上の国・地域が参加しており、香港、シンガポール、スイスなど主要な金融センターはほぼ網羅されています。
「海外だからバレない」という考えは通用しません。
CRSについては、海外に財産がある人必見!相続で発生する5つのリスクとデメリットでも詳しく解説しています。
国外財産調書の提出義務
12月31日時点で5,000万円超の国外財産を保有している場合、国外財産調書の提出が必要です。
海外の生命保険も、解約返戻金相当額で判定に含まれます。
詳しくは、国外財産調書制度を徹底解説!提出義務から書き方まで完全ガイドをご参照ください。
申告漏れのペナルティ
海外財産の申告漏れが発覚した場合、以下のペナルティが課されます。
| ペナルティ | 税率 |
| 過少申告加算税 | 10〜15% |
| 無申告加算税 | 15〜30% |
| 重加算税(隠蔽・仮装の場合) | 35〜50% |
| 延滞税 | 年2.4%〜8.7%程度 |
さらに、国外財産調書の不提出・虚偽記載の場合は、加算税が5%加重されます。
相続税のペナルティについては、相続税のペナルティ 加算税、延滞税の税率と計算方法をご参照ください。
海外生命保険と外国税額控除
外国で課税された場合
保険金の支払い時に外国で税金が源泉徴収された場合、外国税額控除の適用を受けられる可能性があります。
ただし、多くの国では死亡保険金に対する源泉徴収は行われません。
外国税額控除については、相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
海外生命保険に関するQ&A
Q1:海外の保険金には非課税枠が適用されないと聞きましたが、本当ですか?
A:誤りです。平成19年度の税制改正以降、海外の保険金にも非課税枠は適用されます。
平成19年(2007年)の改正前は、外国保険業者との契約は相続税法上の「生命保険契約」に含まれず、一時所得として所得税の対象でした。
しかし、相続税法施行令第1条の2第1項第1号の改正により、外国保険業者との契約も「生命保険契約」に含まれることが明確化されています。
したがって、現行法では国内・海外を問わず、死亡保険金は同じ「みなし相続財産」として扱われ、非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されます。
Q2:海外の保険金を日本に送金しなければ申告不要ですか?
A:送金の有無にかかわらず申告が必要です。
相続税は「取得した財産」に対して課税されます。
保険金が海外の口座に振り込まれた時点で「取得」したことになり、日本への送金は関係ありません。
Q3:保険金の受取人が海外居住の場合はどうなりますか?
A:受取人の住所と国籍により納税義務が異なります。
受取人が日本国籍を持ち、過去10年以内に日本に住所があった場合などは、海外居住でも日本の相続税の対象となります。
納税義務の判定については、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!をご参照ください。
Q4:海外の保険契約の存在をどうやって調べればいいですか?
A:以下の方法で調査します。
・銀行口座の入出金履歴(保険料の引き落とし、海外送金)の確認
・クレジットカードの明細確認
・心当たりのある保険会社への個別照会
・保険代理店やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)への確認
・国外財産調書の控えの確認
Q5:海外の保険を解約して日本の保険に入り直した方がいいですか?
A:相続税の取扱いは同じですので、税務面だけの理由で入り直す必要はありません。
かつて(平成19年改正前)は海外保険の方が税務上有利でしたが、現在はその差はなくなっています。
保険の見直しを検討する場合は、運用利回り、為替リスク、解約返戻金、健康状態などを総合的に判断する必要があります。
保険の見直しは保険の専門家にご相談ください。
まとめ:海外生命保険は国内と同じ取扱い、ただし手続き面は要注意
海外の生命保険と相続税について解説しました。
- 海外の生命保険金も国内と同じ「みなし相続財産」として課税される(相法施行令1の2①一)
- 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用される
- 平成19年改正前は一時所得扱いだったが、現行法では国内外同一の取扱い
- 外貨建ての場合、相続開始日のTTBで換算
- CRSにより海外保険の情報は日本の税務署に共有されるため、申告漏れに注意
海外の生命保険は、税務上の取扱いは国内の保険と同じですが、保険金の受取手続きや書類の準備に時間がかかるという実務面の課題があります。
相続が発生したら、速やかに海外の保険会社へ連絡し、手続きを開始してください。
当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、海外財産がある相続の実績も豊富です。
「海外の保険があるが、相続税の申告方法が分からない」
「保険金の受取手続きと相続税申告の期限が心配」
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