カナダの相続税はない?みなし譲渡課税の仕組みと対策

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国際相続

10秒でわかるこの記事のポイント

①カナダには相続税・贈与税はありませんが、死亡時のみなし譲渡課税があります

②死亡直前に財産を時価で売却したものとみなされ、含み益に所得税がかかります

③RRSP・RRIFは死亡時に原則として全額が所得計上されます

④配偶者や一定の受益者への承継では、課税の繰延べが認められる場合があります

⑤日本居住者が相続する場合は、日本の相続税との二重課税と外国税額控除の可否が大きな論点です

「カナダには相続税がないと聞いたが、本当に無税で相続できるのか?」

「日本に住む相続人がカナダ財産を相続したら、日本とカナダの両方で課税されるのか?」

こうした疑問は、国際相続では非常に多いです。

結論からいうと、カナダには日本のような相続税はありませんが、死亡時に「みなし譲渡課税」が行われるため、無税で相続できるわけではありません。

しかも、日本居住の相続人がカナダ財産を取得する場合は、日本で相続税が課税される可能性が高く、二重課税の論点が生じます。

国際相続における日本の相続税の課税範囲は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!で先に全体像を押さえておくと理解しやすくなります。

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カナダには相続税がないが、死亡時のみなし譲渡課税がある

カナダでは、1971年に相続税・贈与税は廃止されました。

その代わり、死亡時には、被相続人が死亡直前に財産を時価(Fair Market Value)で譲渡したものとみなされ、含み益に所得税が課されます。
これが、いわゆるみなし譲渡(Deemed Disposition)です。

日本の感覚だと「相続税の代わりの税」と見えますが、法的にはカナダの所得税です。
この違いが、日本の相続税との関係で非常に重要になります。

みなし譲渡とは何か

カナダの死亡時課税では、被相続人は死亡直前に、保有している資産を時価で処分したものとみなされます。
そのため、取得価額より時価が高ければ、死亡時点の含み益がキャピタルゲインとして課税されます。

つまり、相続人が売却していなくても、被相続人の死亡だけでカナダ側の課税が起きるということです。

【実務上のポイント】
カナダでは「相続税がない」とだけ説明すると誤解されます。
実際には、死亡を契機に被相続人側に所得税が発生し得ます。

キャピタルゲインの算入率は、現時点では原則50%

元の説明で誤解しやすいのが、キャピタルゲインの課税率です。

一時期、個人の年間25万CAD超のキャピタルゲインについて、算入率を66.67%へ引き上げる案が示されていました。
しかし、CRAは2025年1月31日の政府発表を受けて、2026年1月1日より前のキャピタルゲインには現行の1/2算入率を適用すると案内しています。

さらに、CRAの案内では、その後この増税案は取りやめになった旨も示されています。

したがって、現時点で読者向けに説明するなら、キャピタルゲインの算入率は原則50%として書くのが安全です。

RRSP・RRIFは死亡時に大きな税負担になりやすい

カナダ相続で特に注意が必要なのが、RRSP(登録退職貯蓄プラン)とRRIF(登録退職所得基金)です。

これらは、死亡時に原則として残高が死亡年の所得に算入されます。
不動産や上場株式のように「含み益だけ」に課税されるのではなく、残高全体が所得課税の対象になり得るため、インパクトが大きくなりがちです。

そのため、カナダ財産の中でもRRSP・RRIFは、相続発生時の税コストを先に試算しておくべき資産といえます。

配偶者や一定の受益者への承継は、課税繰延べが使えることがある

もっとも、死亡時に常に即時課税されるわけではありません。

カナダでは、配偶者またはコモンロー・パートナーへの承継や、一定の条件を満たす信託への移転について、課税の繰延べが認められる場合があります。

RRSP・RRIFについても、配偶者等が適格受益者であれば、ロールオーバーにより課税を繰り延べられる場合があります。

そのため、「誰が受け取るか」によって死亡時の税額が大きく変わります。

Principal Residence Exemptionで自宅の含み益が免除されることがある

カナダで主たる居住用不動産として扱われる不動産については、Principal Residence Exemptionによりキャピタルゲインが免除される場合があります。

ここで注意したいのは、みなし譲渡そのものが起きないわけではないという点です。
正確には、みなし譲渡でゲインが計算され、そのうえでPrincipal Residence Exemptionにより全部または一部が免除される、という整理です。

自宅とセカンドハウス、コテージなどを複数保有している場合は、どの物件をPrincipal Residenceとして指定するかが重要になります。

農業・漁業資産や事業資産は特例の確認が必要

農業資産、漁業資産、一定の事業用資産については、承継時の特例や生涯キャピタルゲイン控除(LCGE)が問題になります。

ただし、この分野は改正や要件判定が細かく、金額も見直されることがあります。
固定額を前提に判断するのではなく、死亡年の最新額・適用要件を確認するのが安全です。

Final ReturnとT3 Returnは別物

カナダ相続の申告実務では、まずFinal Returnが重要です。
これは被相続人本人の最終申告で、死亡日までの所得や死亡時のみなし譲渡による所得を申告します。

一方、死亡後に遺産自体に所得が生じる場合は、遺産についてT3 Trust Returnが必要になることがあります。

死亡後の遺産は、カナダでは信託として扱われるためです。

申告 内容 主な期限
Final Return 被相続人の死亡日までの所得・みなし譲渡所得 1月1日〜10月31日死亡なら翌年4月30日、11月1日〜12月31日死亡なら死亡から6か月
T3 Return 死亡後の遺産に生じた所得 信託の課税年度末から90日以内

また、死亡後36か月以内の遺産は、要件を満たせばGRE(Graduated Rate Estate)として累進税率の適用が受けられます。
36か月を超えると扱いが変わるため、長期化する遺産管理では注意が必要です。

相続全体の日本側スケジュールは、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説もあわせて確認してください。

Clearance Certificateを取らずに分配すると、遺産管理人が責任を負う

カナダ実務で非常に重要なのが、CRAのClearance Certificateです。

遺産管理人がこれを取得せずに遺産を分配すると、未納税額について遺産管理人が個人的責任を負うリスクがあります。

CRAの案内では、申請受領後45日以内に受領通知が送られ、必要書類がそろっていれば審査は通常120日以内が目安です。
したがって、Final Returnの提出後は、分配前提で動くのではなく、Clearance Certificateまで見据えて計画した方が安全です。

日本居住者がカナダ財産を相続すると、日本では相続税が問題になる

相続人が日本居住者で、日本の相続税の納税義務が無制限になるケースでは、カナダ財産も日本の相続税の課税対象になります。

つまり、典型的には次の二重構造が生じます。

課税の二重構造

① カナダ:被相続人の死亡時に、みなし譲渡により所得税が発生

② 日本:相続人に対して、相続税が課税される

このため、被相続人がカナダ居住、相続人が日本居住という案件では、カナダ側の所得税と日本側の相続税をセットで見る必要があります。

日本側の課税範囲や10年ルールは、海外移住で相続税ゼロ?10年ルールの要件を徹底解説も参照してください。

日本の相続税の外国税額控除は、原則として難しい論点

ここは読者が最も誤解しやすいポイントです。

日本の相続税法20条の2は、国外財産について外国で課された「相続税に相当する税」を対象に外国税額控除を認めています。

しかし、カナダの死亡時課税は、あくまで被相続人に対する所得税です。
そのため、日本の相続税の外国税額控除にそのまま乗るとは言いにくく、原則として控除は難しい論点です。

実際、NTAの研究資料でも、カナダのみなし譲渡課税は外国税額控除の対象とならない例として論じられています。

【実務上のポイント】
「カナダで税金を払っているのだから、日本の相続税から当然に引ける」と考えるのは危険です。
カナダの税は所得税、日本の税は相続税であり、税目が一致しません。

外国税額控除の基本は、相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説で整理しています。

なお、当該カナダのみなし譲渡課税は債務控除ができる可能性はあるのではないかと考えます。
債務控除の詳しい解説は、【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

カナダ不動産・預金の日本側評価にも注意が必要

日本の相続税申告では、カナダ財産を日本円に換算して評価する必要があります。

外貨建て預金は、死亡日の残高を原則としてTTBで邦貨換算します。
海外不動産は、現地鑑定評価や売買実例などを踏まえて時価を算定する必要があり、日本の路線価方式は使えません。

海外不動産の日本側評価方法は、海外不動産の相続税評価の方法と注意点も確認しておくと実務で役立ちます。

海外財産はCRS等で把握される前提で考えるべき

海外の金融口座情報は、CRS(共通報告基準)により各国税務当局間で共有される仕組みがあります。

そのため、カナダ財産の申告漏れは、以前より把握されやすくなっています。
「海外資産だから日本では分からない」という前提は危険です。

CRSの基本は、CRS(共通報告基準)と相続で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q. カナダに相続税がないなら、カナダ財産は無税で相続できますか?

A. いいえ。
カナダでは相続税はありませんが、死亡時のみなし譲渡により、被相続人側に所得税が発生することがあります。
さらに、日本居住の相続人には日本の相続税が課税される場合があります。

Q. RRSPやRRIFは死亡時にどうなりますか?

A. 原則として、死亡時に全額が所得として扱われます。
ただし、配偶者や一定の適格受益者への承継では、課税繰延べが認められる場合があります。

Q. カナダで払った税金は、日本の相続税から控除できますか?

A. 簡単ではありません。
カナダの死亡時課税は所得税であり、日本の相続税法上の外国税額控除は「相続税に相当する税」を前提とするため、原則として難しい論点です。

Q. 遺産分配前に何を最優先で確認すべきですか?

A. カナダ側ではFinal Return、必要に応じたT3 Return、そしてClearance Certificateです。
これを飛ばして分配すると、遺産管理人が責任を負うリスクがあります。

まとめ

まとめ

カナダには相続税はありませんが、死亡時のみなし譲渡により、被相続人側に所得税が発生します。

特にRRSP・RRIFは死亡時の税負担が重くなりやすく、配偶者承継などの課税繰延べの可否が重要です。

また、日本居住者が相続する場合は、日本の相続税も別途問題となります。

カナダの所得税と日本の相続税は税目が異なるため、日本の相続税の外国税額控除は原則として難しい論点です。

カナダ側・日本側の両方を同時に見ながら、早期に専門家へ相談することをおすすめします。

税理士法人トゥモローズでは、国際相続に強い税理士が、カナダを含む海外財産の相続税申告、課税範囲の判定、評価、必要書類の整理まで一貫してサポートしています。

「カナダの税理士と日本の税理士の説明が食い違っている」
「RRSP・不動産・海外預金をどう申告すべきか分からない」
「日本の相続税で外国税額控除が使えるか確認したい」
という場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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