【小規模宅地の特例】配偶者居住権との関係を徹底解説!

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小規模宅地の特例

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

配偶者居住権が令和2年4月1日の相続開始案件から設定可能となります。
今回はこの配偶者居住権を設定した場合に小規模宅地の特例にどのように影響するのか徹底的に解説します。

配偶者居住権の詳しい説明は、配偶者居住権を徹底解説!を参照してください。
配偶者居住権の評価についての説明は、配偶者居住権の相続税評価を徹底解説!を参照してください。
小規模宅地の特例のわかりやすい説明は、小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額

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配偶者居住権を設定しても小規模宅地の特例は適用可能?

まずは、結論から言います!

配偶者居住権を設定しても小規模宅地の特例は適用可能です!

小規模宅地の特例は土地に関する特例で建物に対しては適用がありません。配偶者居住権は建物に対する権利となるため正確には配偶者居住権自体には小規模宅地の特例の適用はできませんが、配偶者居住権が設定された建物の敷地に関する権利について小規模宅地の特例の適用が可能なのです。

もう少し詳しく解説しますと配偶者居住権を設定すると建物と土地は下記の4つの権利に区分されます。

①配偶者居住権
②居住建物の所有権
③敷地利用権
④居住建物の土地等の所有権(以下「敷地所有権」)

図化すると下記の通りです。

配偶者居住権の図

①と③が配偶者が取得し、②と④は子などの配偶者以外の相続人が取得することになります。

配偶者居住権と小規模宅地の特例の適用関係をまとめると下記の通りになります。

小規模宅地の特例と配偶者居住権の適用関係

もう少し詳しく解説します。専門家以外は読み飛ばしてしまって大丈夫です!
配偶者居住権に基づき居住建物の敷地を使用する権利(上図の「敷地利用権」です。)については、民法改正により新たに創設された権利ですが、令和元年度税制改正において、小規模宅地の特例の法令である租税特別措置法第69条の4の本文には配偶者居住権に係る改正は確認できませんでした。

というのも、配偶者居住権に係る敷地利用権は、租税特別措置法第69条の4第1項における宅地等に係るカッコ書きの「土地又は土地の上に存する権利」に内包されているため特段条文の改正は必要なかったと考えられます。

敷地利用権については、配偶者が取得することが前提とされているためほとんどのケースで小規模宅地等の特例の適用が可能となるでしょう。ただ、いくつかのパターンが想定されるため詳説は後述します。

次に、居住建物の敷地の用に供される土地等(上図の「敷地所有権」です。)については、通常の土地等と同様に取得した親族が一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用が可能となります。

パターン別適用可否

配偶者居住権を設定する際に様々なケースが想定されます。
パターン別に小規模宅地の特例の適用可否を確認していきましょう。

配偶者居住権と小規模宅地の特例のサマリー

上記表は、まず、被相続人と配偶者が同居していたかどうかで大きく2つに区分し、次に、配偶者以外の親族の居住状況別に区分し、敷地利用権と敷地所有権について取得者ごとの小規模宅地の特例の適用可否を検討しています。

以下、右側の番号順にパターン別に詳細を解説します。

① 被相続人の居住用宅地等を配偶者が取得しているため、無条件で小規模宅地等の特例の適用が可能です。

② 配偶者以外に同居親族がいる場合において、その同居親族が敷地所有権を取得し、申告期限までの居住継続要件及び保有継続要件を満たしたときは、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

③ 配偶者以外に同居親族がいる場合において、その同居親族以外の別居親族が敷地所有権を取得したときは、小規模宅地等の特例の適用はできません。

④ 上記①と同様の根拠で小規模宅地等の特例の適用が可能です。

⑤ 被相続人と配偶者が二人暮しの場合において、別居親族が敷地所有権を取得したときは、小規模宅地等の特例の適用はできません。

⑥ 配偶者居住権は、配偶者が居住していた建物につき設定されるため、被相続人と配偶者が別居の場合には、被相続人の居住用宅地等が検討対象ではなく、配偶者が居住している敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用が可能かどうかを検討する必要があります。
この夫婦別居のケースにおける敷地利用権は被相続人の居住用宅地等には該当しないことから、この敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用ができるケースとしては、被相続人と配偶者が生計を一にしていることが条件となります。一方、被相続人と配偶者が生計を別にしている場合には、配偶者が取得した敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用はできません。

⑦ 上記⑥の状況において、敷地所有権を誰が取得したとしても小規模宅地等の特例の適用はできません。

⑧ 上記⑥と同様の根拠で、被相続人と配偶者が生計を一にしていれば、配偶者が取得した敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用が可能です。なお、被相続人と配偶者が生計別の場合において、配偶者と同居している親族が被相続人と生計を一にしているときは、敷地利用権について小規模宅地等の特例の適用が可能でしょうか。ちなみに、配偶者居住権の関係のない通常の宅地等の場合において、被相続人の生計一親族の居住用宅地等を配偶者が取得したときは、小規模宅地等の特例の適用が可能です。これに対し、配偶者居住権に伴う敷地利用権について、被相続人の生計一親族が居住していた敷地利用権につき、小規模宅地等の特例の適用が可能かどうかの国税庁の情報等は現時点では存在しませんが、敷地利用権と敷地所有権で別の権利であるため私見ではその適用が難しいのではないかと考えます。

⑨ 配偶者と被相続人の生計一親族が同居している場合において、当該生計一親族が敷地所有権を取得し、申告期限までの居住継続要件及び保有継続要件を満たしたときは、小規模宅地等の特例の適用が可能です。

⑩ 配偶者と被相続人の生計一親族が同居している場合において、当該生計一親族以外の生計別親族が敷地所有権を取得したときは、小規模宅地等の特例の適用はできません。

⑪ 上記⑥と同様の根拠で、被相続人と配偶者が生計を一にしていれば、配偶者が取得した敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用が可能です。これに対し、被相続人と配偶者が生計を別にしている場合には、配偶者が取得した敷地利用権につき小規模宅地等の特例の適用はできません。

⑫ 配偶者と被相続人の生計別親族が同居している場合には、敷地所有権を誰が取得したとしても小規模宅地等の特例の適用はできません。

【補足】(専門家以外は読み飛ばしてしまってOKです)
※1 賃貸併用住宅については、居住部分に対応する敷地利用権のみが特定居住用宅地等の適用対象となります。というのも、配偶者居住権成立時に居住建物の一部が賃貸されていた場合にはその賃借人に対して配偶者は配偶者居住権による使用収益権限を対抗することはできないのです。したがって、賃貸人は建物の所有権を取得した者になることから、賃貸部分については敷地所有権を取得した者が貸付事業用宅地等の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用が可能となるでしょう。
※2 家なき子(措置法69の4③二ロ)は、被相続人に配偶者がいないことを前提とした規定であるため配偶者居住権と同時に適用が検討されることはありません。
※3 被相続人が老人ホームに入居していた場合においても、要介護認定等の要件を満たせば敷地利用権及び敷地所有権について小規模宅地等の特例の適用が可能です。なお、配偶者自身が老人ホーム等に入居していた場合には、配偶者居住権の成立要件である「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた」ことを満たさないこととなると考えられるため、そもそも配偶者居住権が成立せずに、配偶者居住権に係る小規模宅地等の特例の検討には至らないでしょう。

二次相続を踏まえたパターン別有利判定

小規模宅地の特例の適用可否と配偶者居住権の設定可否により一次相続及び二次相続の相続税の総額が決まります。
どんな場合にも配偶者居住権を設定したほうが有利になるとは限らないのです。
小規模宅地の特例の適用可否によっては配偶者居住権を設定しないほうが相続税を抑えられる可能性もあります。
以下に想定できるパターンを列挙します。

パターン①

■一次相続
 配偶者居住権を設定する
  配偶者が取得したの敷地利用権:小規模宅地の特例適用可
  子が取得した所有権:小規模宅地の特例適用可
■二次相続
 配偶者居住権は消滅し、所有権は子にすでに移っているため小規模宅地の特例の対象宅地はなし

パターン②

■一次相続
 配偶者居住権を設定しない
  配偶者が取得したの所有権:小規模宅地の特例適用可
■二次相続
 子が取得した所有権: 小規模宅地の特例適用可

パターン③

■一次相続
 配偶者居住権を設定する
  配偶者が取得したの敷地利用権:小規模宅地の特例適用可
  子が取得した所有権:小規模宅地の特例適用不可
■二次相続
 配偶者居住権は消滅し、所有権は子にすでに移っているため小規模宅地の特例の対象宅地はなし

パターン④

■一次相続
 配偶者居住権を設定しない
  配偶者が取得したの所有権:小規模宅地の特例適用可
■二次相続
 子が取得した所有権: 小規模宅地の特例適用不可

パターン⑤

■一次相続
 配偶者居住権を設定しない
  子が取得した所有権:小規模宅地の特例適用不可
■二次相続
 所有権は子にすでに移っているため小規模宅地の特例の対象宅地はなし

パターン①は他のどのパターンと比べても必ず有利になるでしょう。
それ以外のパターンは相続税を試算してみないとどのパターンが最有利になるかわかりません。(ちなみに、パターン②とパターン④ではパターン②の方が必ず有利となります。)
また、一次相続のときに二次相続の小規模宅地の特例の適用可否まで判定できないことが多いので確定的な判断はできないのが悩ましいところです。

限度面積の調整

敷地利用権と敷地所有権の両方に小規模宅地等の特例の適用が可能である場合の限度面積計算については、令和元年度税制改正において下記施行令が新設されました。(条文なので読み飛ばしても問題ないです。)

【租税特別措置法施行令第40条の2第6項】

法第六十九条の四第一項の規定の適用を受けるものとしてその全部又は一部の選択をしようとする特例対象宅地等が配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される宅地等又は当該宅地等を配偶者居住権に基づき使用する権利の全部又は一部である場合には、当該特例対象宅地等の面積は、当該面積に、それぞれ当該敷地の用に供される宅地等の価額又は当該権利の価額がこれらの価額の合計額のうちに占める割合を乗じて得た面積であるものとみなして、同項の規定を適用する。

すなわち、対象地の面積を敷地利用権と敷地所有権の相続税評価額により按分し、各権利の適用面積を算出するということになります。
配偶者居住権が設定された場合の小規模宅地の特例の限度面積

(出典:財務省令和元年度税制改正の解説)

同じ土地の上に存する権利である借地権等は上記敷地利用権のように対象地に借地権割合等を乗じて適用面積を計算することはないので計算方法の違いに注意が必要です。

具体例

配偶者居住権が設定された場合の小規模宅地の特例について確認してきましたが、具体的な数字で最後に実際の計算を確認していきましょう。

【具体例】
被相続人 父
相続人 母、長男
遺産分割状況
 自宅建物につき母が配偶者居住権を取得し、長男が所有権を取得
自宅の居住状況
 父、母、長男で同居、相続開始後も申告期限まで母、長男で居住
自宅土地の評価額
 敷地利用権の相続税評価額(母取得)  2,990万円
 敷地所有権の相続税評価額(長男取得) 7,010万円
地積 500㎡

【小規模宅地の特例適用金額】

1.面積按分
①敷地利用権(母取得)
500㎡×2,990万円/1億円=149.5㎡

②敷地所有権(長男取得)
500㎡×7,010万円/1億円=350.5㎡

2.有利判定
①敷地利用権を優先して適用した場合の特例適用額
2,990万円×80%(敷地利用権)+7,010万円×(330㎡-149.5㎡)/350.5㎡×80%(敷地所有権)=5,280万円

②敷地所有権を優先して適用した場合の特例適用額
7,010万円×330㎡/350.5㎡×80%(敷地所有権)=5,280万円

③判定
どちらを優先して適用したとしても特例適用額は同額となりますが、敷地利用権については、配偶者の税額軽減の適用があるため、長男取得分である敷地所有権を優先して適用した方が最終的な相続税額を抑制できることとなります。

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