プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較【税理士解説】

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国際相続

プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較【税理士解説】
10秒でわかる この記事の要約

  • プロベートとは、故人の遺産を管理・分配する権限を裁判所から付与される手続きのこと
  • 英米法圏(アメリカ、イギリス、香港、シンガポール等)で必要になることが多い制度
  • 費用は国・遺産額により異なり、50万円〜300万円以上かかることも
  • 期間は最短6ヶ月、複雑なケースでは2年以上かかる場合もある
  • 日本の相続税申告期限(10ヶ月)との調整が最大の課題

「海外に財産があるのですが、プロベートという手続きが必要と言われました。何のことですか?」

当事務所では、国際相続のご相談でこの質問を頻繁にいただきます。

プロベートは、日本にはない制度のため、多くの方が戸惑われます。

しかし、アメリカ、イギリス、香港、シンガポールなど英米法圏に財産がある場合、プロベートを避けて通ることはできません。

この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、プロベート制度の基本から国別の費用・期間の比較まで徹底解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

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プロベートとは何か

まず、プロベートの基本的な概念を理解しましょう。

プロベートの定義

プロベート(Probate)とは、故人の遺産を管理・分配する法的権限を裁判所から正式に付与してもらう手続きです。

英米法(コモンロー)を採用する国や地域では、この手続きを経なければ遺産の処分ができません。

つまり、プロベート等の権限が整うまで、口座解約や不動産売却などが“進められないことが多い”です(例外の有無は国・州・金融機関で確認が必要です)。

日本の相続制度との根本的な違い

日本の相続制度とプロベート制度は、根本的な考え方が異なります。

日本では、被相続人が亡くなった瞬間に相続人が当然に財産を承継します。

これを「包括承継主義」と呼びます。

裁判所の許可は不要で、遺産分割協議書があれば銀行口座の解約や不動産の名義変更が可能です。

一方、プロベート制度がある国では、「管理清算主義」という考え方を採用しています。

裁判所が正式に「遺産管理人」を任命し、その管理人が遺産を管理・清算した後に、残った財産を相続人に分配します。

項目 日本(包括承継主義) プロベート制度の国(管理清算主義)
相続の開始 死亡と同時に権利承継 裁判所の許可が必要
遺産管理者 相続人が直接管理 裁判所が任命した管理人が管理
裁判所の関与 原則不要(紛争時のみ) 必須
債務の清算 相続人が個別に対応 管理人が一括して清算
手続き期間 数週間〜数ヶ月 6ヶ月〜2年以上

この制度の違いについては、国際相続があった場合の準拠法で詳しく解説しています。

プロベートが必要な国・地域

プロベート制度は、主に英米法(コモンロー)を採用する以下の国・地域で必要です。

プロベートが必要な主な国・地域
・アメリカ(全50州)
・イギリス(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)
・カナダ(全州)
・オーストラリア(全州)
・ニュージーランド
・香港
・シンガポール
・マレーシア
・インド
・フィリピン
・南アフリカ

注意:同じ国でも州や地域によって手続きが異なります。特にアメリカは州ごとに法律が異なるため、財産所在地の州法を確認する必要があります。

プロベートの種類

プロベートには、遺言書の有無によって2つの種類があります。

それぞれ手続きの流れや必要書類が異なりますので、正確に理解しておきましょう。

Grant of Probate(遺言検認状)

有効な遺言書がある場合に申請するプロベートです。

遺言書で指定された遺言執行者(Executor)が遺産管理人となります。

遺言執行者は、遺言書の内容に従って遺産を管理・分配する義務を負います。

Grant of Probateの特徴
・遺言書の内容が尊重される
・遺言執行者が事前に決まっているため、手続きがスムーズ
・遺産の分配方法が明確
・相続人間のトラブルが起きにくい

Letters of Administration(遺産管理状)

遺言書がない場合、または遺言書で遺言執行者が指定されていない場合に申請するプロベートです。

裁判所が相続人の中から遺産管理人(Administrator)を選任します。

通常、配偶者や子など最も近い親族が選任されます。

Letters of Administrationの特徴
・裁判所が遺産管理人を選任
・法定相続分に従って遺産が分配される
・手続きがやや複雑になる傾向
・相続人間の合意形成が必要な場合も
種類 遺言書 遺産管理人 分配方法
Grant of Probate あり 遺言で指定されたExecutor 遺言書の内容に従う
Letters of Administration なし 裁判所が選任するAdministrator 法定相続分に従う

国別のプロベート費用・期間比較

プロベートの費用と期間は、国・遺産額・複雑さによって大きく異なります。

当事務所の実務経験に基づく目安をご紹介します。

アメリカのプロベート

アメリカのプロベートは、州ごとに法律が異なるため、最も複雑です。

項目 目安
弁護士費用 遺産額の2〜5%(州による)
裁判所費用 $200〜$500程度
総費用 50万〜300万円以上
期間 6ヶ月〜2年

カリフォルニア州やニューヨーク州は手続きが複雑で、費用も高額になる傾向があります。

一方、テキサス州やフロリダ州は比較的簡易な手続きが可能です。

遺産額が少額(州により$50,000〜$150,000以下)の場合、Small Estate Affidavit(少額遺産宣誓書)という簡易手続きが利用できる州もあります。

詳しい解説は、アメリカの相続手続きと遺産税【税理士が完全ガイド】をご参照ください。

イギリスのプロベート

項目 目安
弁護士費用(Solicitor) £2,000〜£10,000
裁判所費用 £300(遺産額£5,000超の場合)
総費用 50万〜200万円
期間 6ヶ月〜1年

イギリスでは遺産額が£5,000以下の場合、プロベートが不要なケースもあります。

また、オンライン申請システムが整備されており、比較的手続きがスムーズです。

詳しい解説は、イギリスの相続とプロベート制度を徹底解説【税理士解説】をご参照ください。

香港のプロベート

項目 目安
弁護士費用 HKD 30,000〜150,000
裁判所費用 HKD 265〜1,000程度
総費用 50万〜200万円
期間 6ヶ月〜1年

香港では遺産額がHKD 150,000(約300万円)以下の場合、簡易手続き(Summary Administration)が利用できます。

詳しい解説は、香港の相続プロベート完全ガイド【税理士が徹底解説】をご参照ください。

シンガポールのプロベート

項目 目安
弁護士費用 SGD 3,000〜15,000
裁判所費用 SGD 200〜500程度
総費用 30万〜150万円
期間 6ヶ月〜1年

シンガポールでは遺産額がSGD 50,000(約550万円)以下の場合、Public Trustee(公的受託者)による簡易手続きが利用できます。

詳しい解説は、シンガポールの相続手続き完全マニュアル【税理士が実務ポイントを解説】をご参照ください。

国別比較まとめ

総費用目安 期間目安 簡易手続き基準
アメリカ 50万〜300万円以上 6ヶ月〜2年 州により$50,000〜$150,000以下
イギリス 50万〜200万円 6ヶ月〜1年 £5,000以下
香港 50万〜200万円 6ヶ月〜1年 HKD 150,000以下
シンガポール 30万〜150万円 6ヶ月〜1年 SGD 50,000以下
オーストラリア 50万〜200万円 6ヶ月〜1年 州により異なる
カナダ 50万〜200万円 6ヶ月〜1年 州により異なる

プロベート手続きの流れ

国によって細部は異なりますが、基本的な流れは共通しています。

手続きの全体像

STEP1:現地弁護士への依頼・相談

STEP2:必要書類の収集・準備(日本の書類は英訳・認証が必要)

STEP3:裁判所への申請書類提出

STEP4:裁判所による審査・公告期間

STEP5:Grant of Probate / Letters of Administration の発行

STEP6:遺産の管理・債務清算

STEP7:相続人への遺産分配

STEP8:裁判所への最終報告・手続き完了

日本から準備が必要な書類

書類 用途 備考
死亡証明書 死亡の証明 死亡届記載事項証明書または除籍謄本
戸籍謄本一式 相続人の確定 出生〜死亡、相続人全員分
遺言書(ある場合) 遺言の内容確認 原本が必要
相続人の身分証明書 本人確認 パスポートコピー等
委任状 弁護士への委任 認証が必要

重要:日本の書類はすべて英訳し、公証人認証およびアポスティーユ(または領事認証)が必要です。

アポスティーユについての詳しい解説は、相続でアポスティーユが必要な場合の取得方法を完全解説【税理士監修】をご参照ください。

日本の相続税申告との関係

プロベートで最も注意すべきは、日本の相続税申告期限(相続開始から10ヶ月)との兼ね合いです。

申告期限に間に合わない問題

プロベートには最短でも6ヶ月、通常は1年以上かかります。

つまり、日本の相続税申告期限までにプロベートが完了せず、正確な財産額が確定しないケースがほとんどです。

当事務所の経験では、プロベートが申告期限内に完了したケースは極めてまれです。

実務上の対応

①概算評価での申告
プロベート完了前でも、残高証明書や直近の取引明細から概算で財産評価を行い、申告期限内に申告します。
外貨建て財産は相続開始日のTTB(対顧客直物電信買相場)で日本円に換算します。

②修正申告・更正の請求
プロベート完了後、正確な金額が判明した時点で修正申告または更正の請求を行います。
過大に申告していた場合は更正の請求で還付を受け、過少だった場合は修正申告を行います。

相続税の申告期限については、相続税の申告期限はいつまで!?期限までに終わらせる秘訣と期限を超えた場合のペナルティをご参照ください。

納税資金の問題

プロベートが完了するまで、海外の財産を換金できません。

日本の相続税の納税資金を海外財産から充当する予定だった場合、資金ショートのリスクがあります。

このような場合、延納制度の活用を検討する必要があります。

延納については、手続きを簡単理解!相続税の延納を専門家がわかりやすく解説!をご参照ください。

プロベートを回避・簡略化する方法

プロベートの負担を軽減するため、生前に以下の対策を検討できます。

①ジョイントアカウント(共同名義口座)

アメリカなどでは、口座を共同名義にしておくと、一方が死亡しても他方がそのまま口座を承継できます(Right of Survivorship)。

プロベートを経ずに財産を移転できるため、広く活用されています。

ただし、日本の相続税・贈与税の観点から注意が必要です。

詳しくは、ジョイントアカウント(共同名義口座) 相続税、贈与税はどうなる?をご参照ください。

②リビングトラスト(生前信託)

アメリカでは、生前に信託を設定し財産を移転しておくことで、プロベートを回避できます。

信託財産は、被相続人の死亡後も信託の受託者が管理し、受益者に分配されます。

③TOD/POD指定

TOD(Transfer on Death)やPOD(Payable on Death)は、死亡時に自動的に指定した人に財産が移転する制度です。

銀行口座や証券口座で利用できる場合があります。

④少額財産の整理

使っていない海外口座は、生前に解約・整理しておくことをお勧めします。

残高が少額でも、プロベートの手間は同じです。

⑤現地法に基づく遺言書の作成

海外に財産がある場合、その国の法律に基づく遺言書を作成しておくと、手続きがスムーズになります。

遺言執行者を指定しておくことで、Letters of Administrationではなく、より迅速なGrant of Probateを利用できます。

プロベートに関するQ&A

Q1:プロベートは自分で申請できますか?

A:法律上は可能ですが、実務上は現地の弁護士への依頼が必須です。

手続きは現地語(英語等)で行われ、法律の専門知識が必要です。

日本から手続きを進める場合、弁護士なしでは事実上不可能です。

費用を節約しようとして自分で手続きを進め、かえって時間がかかったり、ミスが発生したりするケースを当事務所でも見てきました。

Q2:日本の遺言書は海外でも有効ですか?

A:形式要件を満たしていれば有効ですが、英訳と認証が必要です。

スムーズな手続きのためには、海外財産については現地法に基づく英文遺言書を別途作成しておくことをお勧めします。

日本用の遺言書と海外用の遺言書を別々に作成し、それぞれの対象財産を明確に分けておくのがベストプラクティスです。

Q3:プロベート中に遺産から生活費を引き出せますか?

A:原則として引き出せません。

プロベートが発行されるまで、遺産管理人には財産を処分する権限がありません。

ただし、葬儀費用など緊急の支出については、裁判所の許可を得て例外的に認められる場合があります。

Q4:相続人が複数いる場合、全員が手続きに関与する必要がありますか?

A:遺産管理人は1名(または数名)が選任されます。

全員が手続きに関与する必要はありませんが、遺産管理人の選任や遺産分配について相続人間の合意は必要です。

相続人間で意見が対立すると、プロベートが長期化する原因になります。

Q5:プロベート費用は遺産から支払えますか?

A:はい、遺産から支払うのが一般的です。

プロベート費用、弁護士費用、債務の清算などは、遺産から優先的に支払われます。

残った財産が相続人に分配されます。

まとめ:プロベートは早めの準備と専門家への相談を

プロベート制度について解説しました。

この記事のポイント

  • プロベートとは、遺産管理の権限を裁判所から付与される手続き
  • 英米法圏(米・英・香港・シンガポール等)で必須の制度
  • 費用は50万〜300万円以上、期間は6ヶ月〜2年
  • 日本の相続税申告期限(10ヶ月)との調整が最大の課題
  • 生前の対策(遺言書作成、ジョイントアカウント、口座整理等)で負担を軽減可能

海外に財産がある方の相続は、プロベートの存在により国内相続の何倍も複雑になります。

相続が発生してから慌てるのではなく、生前の段階で財産の整理や遺言書の作成を検討しておくことが重要です。

当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、国際相続の実績も豊富です。

「海外に財産があるが、プロベートのことがよく分からない」
「日本の相続税申告とプロベートを並行して進めたい」
「生前にプロベート対策をしておきたい」

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回面談は無料です。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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