香港に相続税(遺産税)はない|プロベートと日本の相続税申告の注意点

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国際相続

香港の相続プロベート完全ガイド【税理士が実務経験をもとに徹底解説】
10秒でわかる この記事の要約

  • 香港の相続は原則としてプロベート(Grant等)が必要。ただし一定の少額遺産は、簡易手続きで対応できる場合がある
  • プロベートを取得しないと銀行口座の解約も不動産の名義変更もできない
  • 日本の相続税申告期限(10ヶ月)との兼ね合いで、財産評価や納税資金確保に支障が出るケースが多発
  • 香港には相続税がないが、日本に住所がある相続人などは香港の財産も日本の相続税の課税対象に含まれる(申告・納税が必要かは基礎控除や特例を踏まえて判断)
  • 弁護士費用・裁判所費用で最低50万円〜、複雑なケースでは200万円超になることも

「父が香港に銀行口座を持っていたのですが、相続手続きはどうすればいいですか?」

当事務所では、このようなご相談を数多くいただきます。

香港は日本人にとって身近な金融センターであり、香港の銀行口座や不動産を保有している方は少なくありません。

しかし、いざ相続が発生すると「プロベート」という聞き慣れない手続きが必要になり、多くの方が戸惑います。

この記事では、年間300件以上の相続税申告を手がける相続専門税理士が、香港のプロベート制度について実務経験をもとに徹底解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

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香港のプロベート制度とは

プロベート(Probate)とは、故人の遺産を管理・分配する権限を裁判所から正式に付与してもらう手続きです。

香港では、一定額以上の遺産がある場合、このプロベートを経なければ相続手続きを進めることができません。

プロベートが必要な理由

香港の法制度はイギリス法(コモンロー)に基づいています。

コモンロー圏では、相続において「遺産管理人(Personal Representative)」が裁判所から正式に任命されて初めて、遺産の管理・処分が可能になります。

日本のように、相続開始と同時に相続人が当然に財産を承継する仕組みとは根本的に異なります。

この点については、国際相続があった場合の準拠法で詳しく解説しています。

プロベートの種類

香港のプロベートには、大きく分けて2種類あります。

種類 英語名 適用場面
遺言検認状 Grant of Probate 有効な遺言書がある場合
遺産管理状 Letters of Administration 遺言書がない場合

遺言書がある場合は「Grant of Probate」、遺言書がない場合は「Letters of Administration」を申請します。

なお、有効な遺言があっても、遺言執行者が指定されていない、または執行できない・引き受けない場合は、「Letters of Administration (with Will annexed)」となります。

実務上、日本人の方が香港に資産を持っているケースでは、香港で遺言書を作成していないことが少なくありません。ただし、日本など香港以外で作成された遺言がある場合は、その有無と香港での有効性を確認したうえで、どの申請になるかを判断します。

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プロベートが必要になる財産と金額基準

香港でプロベートが必要になるのは、以下のような財産です。

プロベートが必要な財産

・銀行口座(普通預金、定期預金、外貨預金など)
・証券口座(株式、債券、投資信託など)
・不動産(住宅、商業用不動産など)
・保険金(受取人指定がない場合)
・その他の金融資産

少額遺産の簡易手続き(HKD 150,000以下)

香港司法機構は、現金・故人の単独名義の銀行預金・強制積立年金(MPF)からなるHKD 150,000(約300万円)以下の遺産について、遺産管理官(Official Administrator)が通常、簡易に管理すると案内しています。

金額だけで利用できると決まるわけではなく、対象となる財産の種類や申請者の資格の確認が必要です。手数料もかかり、遺産の総額に応じて最初のHKD 1,000は5%、次のHKD 4,000は2.5%、残額は1%とされています。

なお、香港にある財産がすべて金銭で合計HKD 50,000以下などの条件を満たす場合は、民政事務総署の確認通知(Confirmation Notice)という別の制度があります。確認通知は裁判所のグラントそのものではなく、これで払い戻すかどうかは銀行の裁量とされています。

不動産や証券が含まれる場合は、金額にかかわらず正式なプロベートが必要です。

実務上の注意点:為替レートの変動により、当初は簡易手続きの範囲内と思っていても、実際の手続き時点では正式プロベートが必要になるケースがあります。余裕を持った判断が重要です。

プロベート手続きの流れと必要書類

プロベート手続きは、以下の流れで進みます。

手続きの全体フロー

STEP1:香港の弁護士(Solicitor)への依頼
↓
STEP2:必要書類の収集・準備
↓
STEP3:香港高等法院への申請
↓
STEP4:裁判所による審査
↓
STEP5:プロベート発行
↓
STEP6:各金融機関での相続手続き

必要書類一覧

日本から準備が必要な書類は以下の通りです。

書類 備考
被相続人の死亡証明書 日本の死亡届記載事項証明書または除籍謄本
被相続人の出生から死亡までの戸籍 相続人確定のため
相続人全員の戸籍謄本 相続人の身分証明
相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書への押印用
遺産分割協議書 英訳が必要
香港の財産に関する資料 銀行の残高証明書、不動産登記簿など

重要:日本の書類には英訳が必要です。公証人による認証(Notarization)やアポスティーユをどこまで求められるかは、書類の種類と提出先(遺産登記処・銀行)によって異なるため、準備の前に確認してください。香港司法機構は、外国の公文書について、認証は翻訳ではなく原本に対して行い、認証の後に翻訳すると案内しています。この手続きだけで2〜3週間かかることがあります。

戸籍謄本の取得方法については、相続手続きに必要な戸籍の取り方は?必要な戸籍の範囲や取得する手順を解説!をご参照ください。

プロベートの費用と期間

費用の目安

プロベートにかかる費用は、遺産の内容や複雑さによって大きく異なります。

費用項目 目安金額
香港弁護士費用 HKD 30,000〜150,000(約60万〜300万円)
裁判所手数料 HKD 265〜1,000程度
書類認証・翻訳費用 10万〜30万円
日本での公証・アポスティーユ 5万〜10万円

シンプルなケースでも最低50万円程度、複雑なケースでは200万円を超えることがあります。

所要期間の目安

ケース 期間
シンプルなケース(銀行口座のみ) 6ヶ月〜9ヶ月
標準的なケース 9ヶ月〜1年
複雑なケース(不動産あり、相続人多数) 1年〜2年以上

日本の相続税申告との関係

香港のプロベートで最も注意すべき点は、日本の相続税申告期限(10ヶ月)との兼ね合いです。

申告期限に間に合わない問題

プロベートの完了には通常6ヶ月〜1年以上かかります。

もっとも、日本の相続税で評価するのは相続開始日(死亡日)時点の財産です。プロベートの完了を待たなくても、銀行が発行する死亡日時点の残高証明書などがあれば評価できます。

問題になるのは、口座の特定や残高証明書の取得に時間がかかり、申告期限までに正確な金額を確認できない場合です。

このような場合でも、申告期限の延長は認められません。

相続税の申告期限については、相続税の申告期限はいつまで!?期限までに終わらせる秘訣と期限を超えた場合のペナルティをご参照ください。

実務上の対応方法

①概算評価での申告
プロベート完了前でも、銀行の残高証明書や直近の取引明細などから概算で財産評価を行い、申告期限内に申告します。

②修正申告・更正の請求
死亡日時点の残高や評価に誤りがあったと分かった時点で、修正申告または更正の請求を行います。
受け取った金額が概算と違っても、その差が死亡日より後の利息・手数料・為替の変動によるものであれば、相続税の評価額は変わりません。

納税資金の確保問題

プロベートが完了するまで、香港の銀行口座からお金を引き出すことができません。

そのため、日本の相続税の納税資金を香港の預金から充当しようと考えていた場合、資金ショートが発生する可能性があります。

対策:延納や物納の検討、日本国内の財産からの納税資金確保、金融機関からの借入など、早めに納税資金計画を立てることが重要です。

延納・物納については、手続きを簡単理解!相続税の延納を専門家がわかりやすく解説!および相続税の物納をわかりやすく理解できる相続税の専門家による解説をご参照ください。

外貨建て財産の評価

香港ドル建ての財産は、相続開始日(被相続人の死亡日)のTTB(対顧客直物電信買相場)で日本円に換算します。

外貨建て財産の評価については、【相続税申告】外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説で詳しく解説しています。

香港には相続税がない?日本での課税関係

香港の税制

香港では2006年に遺産税(Estate Duty)が廃止されました。

そのため、香港では相続税・遺産税は課税されません。

日本での課税

日本の相続税の課税範囲は、被相続人・相続人の“住所”や“過去の居住状況”などで決まります。条件によっては香港の財産(国外財産)も課税対象になります。

相続税の納税義務については、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!で詳しく解説しています。

また、香港の財産は「国外財産」として、国外財産調書の提出対象となる可能性があります。

詳しくは、国外財産調書制度を徹底解説!提出義務から書き方まで完全ガイドをご参照ください。

プロベートでよくあるトラブル5選

当事務所で実際に経験した、香港プロベートに関するトラブル事例をご紹介します。

トラブル①:口座の存在が分からない

被相続人が香港のどの銀行に口座を持っていたか分からないケースです。

香港には日本のような「預金照会制度」がないため、心当たりのある銀行に個別に問い合わせる必要があります。

トラブル②:相続人間で意見が対立

遺産管理人を誰にするかで相続人間の意見が対立し、プロベート申請自体が進まないケースです。

香港の裁判所は、通常、最も持分の大きい相続人を遺産管理人に任命する傾向があります。

トラブル③:書類の不備で差し戻し

日本の戸籍謄本の英訳が不正確、認証手続きの漏れなどにより、裁判所から書類の差し戻しを受けるケースです。

差し戻しのたびに数週間〜数ヶ月のロスが発生します。

トラブル④:不動産の権利関係が複雑

香港の不動産が共有名義になっていたり、担保が設定されていたりすると、手続きが大幅に複雑化します。

トラブル⑤:相続税の申告期限に間に合わない

プロベートの遅延により、日本の相続税申告に必要な情報が揃わないケースです。

概算での申告を余儀なくされ、後日の修正申告が必要になります。

香港プロベートに関するQ&A

Q1:プロベートは自分で申請できますか?

A:法律上は可能ですが、実務上は非常に困難です。

香港高等法院での手続きは英語で行われ、香港法に関する専門知識が必要です。

日本から手続きを進める場合、香港の弁護士(Solicitor)への依頼が事実上必須となります。

Q2:日本で作成した遺言書は香港でも有効ですか?

A:形式要件を満たしていれば有効です。

ただし、日本語の遺言書は英訳と認証が必要になるため、手続きが煩雑になります。

香港に財産がある場合は、香港法に基づく英文遺言書を別途作成しておくことをお勧めします。

Q3:プロベート完了前に香港の財産を処分できますか?

A:原則としてできません。

プロベートが発行されて初めて、遺産管理人は財産を処分する権限を得ます。

例外的に、葬儀費用など緊急の支出については、銀行が個別に対応してくれる場合があります。

Q4:相続人の一人が香港に住んでいる場合、手続きは楽になりますか?

A:書類のやり取りや現地対応の面では楽になります。

ただし、プロベート自体の手続きは変わりません。

香港居住の相続人を遺産管理人に選任すると、手続きがスムーズに進むことが多いです。

Q5:香港の銀行口座の残高が少額でも、プロベートは必要ですか?

A:HKD 150,000以下であれば、簡易手続きで対応できます。

ただし、銀行によっては独自の基準を設けている場合があり、事前に各銀行に確認することをお勧めします。

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まとめ:香港のプロベートは早めの準備が鍵

香港のプロベート手続きについて解説しました。

この記事のポイント

  • 香港の相続ではプロベート(遺産管理状)の取得が必須
  • 手続き完了まで通常6ヶ月〜1年以上かかる
  • 日本の相続税申告期限(10ヶ月)との兼ね合いに要注意
  • 費用は最低50万円〜、複雑なケースでは200万円超
  • 香港には相続税はないが、日本で相続税の申告・納税が必要

香港に財産をお持ちの方の相続は、日本国内だけの相続と比べて格段に複雑になります。

相続が発生してから慌てるのではなく、生前の段階で財産の整理や遺言書の作成を検討しておくことが重要です。

当事務所では年間300件以上の相続税申告を行っており、国際相続の実績も豊富です。

「香港に財産があるが、どうすればいいか分からない」
「プロベートと日本の相続税申告を並行して進めたい」

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回面談は無料です。





香港に相続税(遺産税)はない|プロベートと日本の相続税申告の注意点の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は300件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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