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相続人が刑務所・拘置所にいる場合の遺産分割|連絡・署名押印・奥書証明の進め方

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 相続人の中に刑務所・拘置所に収容されている人がいても、その人は法律上の相続人のままです。服役を理由に相続権を失うことはなく、その人を除いた遺産分割協議は無効になります。
  • 収容中の相続人は所在がはっきりしているため、行方不明者のための不在者財産管理人は使えません。基本の進め方は、手紙や面会で連絡を取り、郵送での書面のやり取りで協議を進めることです。
  • 実務上の最大のハードルは署名・押印です。収容中は印鑑登録証明書の取得が難しいことが多く、その場合は拇印と刑事施設長等の証明(奥書証明)を利用できることがありますが、これは在監者の登記委任状の先例に由来するもので、遺産分割協議書や金融機関の書類に当然使えるわけではなく、提出先ごとの個別確認が必要です。
  • 本記事では、連絡の取り方から、郵送協議の進め方、奥書証明の実務、本人が相続放棄を選ぶ場合の手続きまで、相続を専門に扱う行政書士が順を追って解説します。

「弟が服役中に父が亡くなった。遺産分割はどう進めればいいのか」「本人に連絡を取っていいものかどうかも分からない」——。相続人の収容という事情は誰にも相談しにくく、手続きが止まってしまいがちです。

しかし、放置しても問題は解決しません。遺産分割協議は相続人全員の参加が大原則であり、収容中の相続人を除外して作った協議書は無効です。一方で、収容中であっても郵送でのやり取りを中心に、遺産分割を完結させることは十分可能です。刑事施設では手紙(信書)のやり取りが制度上認められており、書類の往復で協議を進める道筋が確立しています。

本記事では、相続人が刑務所・拘置所にいる場合の遺産分割を、前提の整理・早めに動くべき理由・連絡の取り方・郵送協議の進め方・署名押印(奥書証明)の実務・相続放棄を選ぶ場合・よくあるトラブルの7つの見出しで解説します。

なお、収容中の相続人との間に紛争性がある場合の交渉・調停は弁護士、相続放棄の申述書など裁判所提出書類の作成は司法書士・弁護士、相続税の申告は税理士の領域です。行政書士は、戸籍収集・財産資料の整理・(争いのない)遺産分割協議書の作成・金融機関手続きを担い、各専門家と連携します。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、こうしたご事情のある相続手続きにも、プライバシーに配慮しながら全国オンラインで対応しています。


前提の整理——服役中でも相続人であることに変わりはない

まず、誤解されやすい前提を整理します。

服役しても相続権は失われない

刑務所に収容されていても、相続人としての地位・権利には影響しません。「服役中だから相続させなくてよい」ということはなく、本人の同意なく協議から除外することはできません。もっとも、本人が内容を理解して合意すれば、法定相続分と異なる分割や、取得額をゼロとする分割も可能です。例外的に相続権を失うのは、被相続人などを故意に死亡させて刑に処せられた場合などの相続欠格(民法891条)に当たるケースです(FAQで解説します)。

収容先が分かれば、本人と直接協議するのが原則

収容先が判明し、本人と手紙や面会で意思確認ができる場合は、不在者財産管理人を選任せず、本人と直接遺産分割協議を進めるのが原則です。不在者財産管理人(民法25条)の対象になるかは、所在の判明・不明だけで一律に決まるものではなく、従来の住所・居所を離れた事情や本人による財産管理の可否、選任の必要性などを踏まえて家庭裁判所が判断しますが、収容中で本人と連絡が取れる場合は、通常その必要性は認められにくいと考えられます。所在不明・音信不通のケースとの切り分けは、相続人と連絡が取れない場合の記事で整理しています。

「受刑者」か「未決拘禁者」かで連絡の可否が変わる

実務では、施設名(刑務所・拘置所)よりも、本人が刑が確定した受刑者か、判決前の未決拘禁者かで取扱いが分かれます。

項目 受刑者(刑が確定) 未決拘禁者(判決前)
手紙の受領 原則、回数制限なし 原則、回数制限なし
手紙の発信 優遇区分等により回数制限 1日1通以上で施設が設定
内容検査 あり あり
面会 親族・相続等の重大な用務がある者等 原則可能だが刑事手続上の制限あり
主な制限 懲罰・規律や処遇上の制限 接見等禁止・罪証隠滅防止等
遺産分割 本人の合意が必要 本人の合意が必要

施設ごとに受付方法・差入れ可能物・面会回数などが異なるため、事前に収容先へ確認してください。

未決拘禁者に裁判所の決定(接見等禁止)が付いている場合は、協議のやり取り自体が当面難しいため、制限が解けるのを待つか、本人の刑事弁護人に相談して進め方を確認します。

本人の心情にも配慮を

収容中の相続人にとって、親の死亡を手紙で知ること自体が大きな出来事です。事務的な書類だけを送りつけると態度を硬化させることもあるため、訃報と経緯を丁寧に伝えることが、結果的に手続きを円滑にします。


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早めに動くべき理由——収容中でも期限は止まらない

「出所してから話せばいい」と考える方もいますが、相続の期限は収容中も進行します。

相続放棄の熟慮期間(3か月)は進行する

被相続人に借金がある場合、収容中の相続人にも自分が相続人になったことを知った時から3か月の熟慮期間が進行します(民法915条)。訃報を知らせないまま放置すると、本人が相続放棄の機会を検討できないまま、判断の時間が失われていきます。借金がある相続では、できるだけ早く本人に知らせることが本人の利益にもなります。

相続登記の3年義務・相続税の10か月

不動産があれば相続登記の申請義務(自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を相続により取得したことを知った日から3年以内・不動産登記法76条の2)が、相続税の申告が必要なら申告期限(自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)が、それぞれ進行します。刑期が長い場合、「出所を待つ」という選択は現実的でないことがほとんどです。

郵送のやり取りは時間がかかる前提で

刑事施設との手紙のやり取りは、施設側の検査などを経るため、通常の郵便より時間がかかります。また、受刑者が発信できる手紙の通数には制限があり(優遇区分により異なります)、未決拘禁者は別の基準になるため、返信がすぐに来ないこともあります。往復には通常郵便より時間がかかることが多いので、複数回のやり取りと施設への確認期間を見込み、期限から逆算して早めに着手することが重要です。

協議がまとまらないまま申告期限が来そうなとき

相続税の申告が必要な案件で、期限までに分割がまとまらない場合は、未分割のまま申告して後から特例を取り戻す方法(未分割申告)があります。未分割の財産について後から配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用するには、原則として期限内申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておく必要があります。この判断・手続きは税理士の領域のため、期限が近い場合は早めに税理士へ相談してください(記事末尾で紹介する税理士法人トゥモローズの解説が参考になります)。


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東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、相続人が刑務所・拘置所に収容されている相続について、戸籍収集・財産資料の整理・遺産分割協議書の作成・提出先との事前確認を秘密厳守で、全国オンラインで対応します(紛争対応は弁護士、裁判所提出書類は司法書士、相続税は税理士と連携)。初回相談無料。

03-6280-5188

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00


連絡の取り方——手紙・面会、施設が分からない場合

手紙(信書)が基本ルート

刑事施設に収容されている人との手紙のやり取りは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律により制度として認められています(内容の検査があります)。宛先は「〒(施設の郵便番号)○○刑務所 ○○○○(本人氏名)様」とします。最初の手紙(第1便)には、被相続人が亡くなった事実と日付・自分の立場・遺産分割の協議が必要なこと・連絡してほしい旨を、感情的にならず簡潔に書きます。刑事施設では信書の内容が検査されることがあり、プライバシーにも配慮が必要なため、財産の明細は第1便には書かず、本人と連絡がついてから財産目録を送る二段階方式が安全です。返信用の切手・封筒を同封できるかは施設のルールによるため、事前に施設に確認するとスムーズです。

面会

親族は面会を申し込めますが、本人の処遇状況・面会回数・面会の必要性・施設の運用などにより認められない場合もあります(回数・時間・予約方法は施設ごとに異なります)。分割案の説明など、文章では伝えにくい内容は面会で直接話す方が誤解を防げます。遠方の場合は、手紙を基本に、重要な節目だけ面会する組み合わせが現実的です。

どの施設にいるか分からない場合

疎遠で、収容されていること自体は聞いているがどの施設か分からない、というケースがあります。刑事施設は、プライバシー保護の観点から、問い合わせても在所の有無を答えないのが原則です。本人からの過去の手紙の消印・差出人欄、共通の親族への聞き取りが実務的な手がかりです。それでも分からない場合は弁護士に相談します。受任事件との関連性・必要性が認められれば弁護士会照会等の手段を検討できることがありますが、照会すれば必ず収容先が判明するわけではありません。

戸籍の附票では施設は分からないことが多い

収容されても住民票を施設に移すとは限らず、戸籍の附票・住民票は従前の住所のままのことが多くあります。附票調査で出てきた住所に手紙を送っても届かない場合に、収容の可能性も含めて所在を検討する、という順序になります。


遺産分割協議の進め方——郵送での書面協議が基本

収容中の相続人との遺産分割協議は、全員が一堂に会する必要はなく、書面の持ち回り(郵送)で成立させることができます

ステップ1:本人と連絡がついたら財産の全体像を開示して意向を確認する

第1便で連絡がつき本人と意思疎通ができたら、いきなり協議書を送るのではなく、まず財産目録(判明している財産の一覧)と分割案を送り、本人の意向を確認します。収容中の相続人は自分で財産を調べる手段がないため、情報を隠さず開示することが信頼の前提になります。「取り分を放棄してほしい」という趣旨の依頼をする場合も、財産の全体像を示したうえで本人の自由な判断に委ねる姿勢が重要です。

ステップ2:合意内容を協議書にまとめて郵送する

意向が確認できたら、遺産分割協議書を作成して郵送し、署名・押印を受けます。書類の往復は、書留など記録の残る郵便で行いましょう。

協議証明書方式(1人1通ずつ)が便利

相続人全員が1通の協議書に順番に署名する方式だと、原本が施設との間を何度も往復することになります。実務では、同じ内容の書面を相続人の人数分作り、各自が自分の分に署名・押印する「遺産分割協議証明書」方式を使うと、往復が1回で済み、紛失リスクも減らせます。この方式の書き方は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「遺産分割協議証明書の書き方を徹底解説!」で詳しく解説されています。

代理人を立てる場合

ここで、①書類を届けるだけの使者、②本人が決定した合意内容を実行する事務代理、③分割条件を交渉・決定する代理は、それぞれ意味が異なります。本人が「手続きは家族に任せたい」という場合、委任状で代理人を立てること自体は可能ですが、共同相続人が本人を代理して自分自身との間で遺産分割をする場合は、自己契約・双方代理(民法108条)の問題があるため、一般的な委任状だけで進めてはいけません。代理を使うなら、代理権の範囲を具体的にし、本人の事前許諾の内容を明確にします。分割条件の交渉代理は弁護士の領域です。原則として、本人自身の署名・押印で進めるのが最も安全です。


署名・押印の実務——印鑑登録証明書が取れないときの選択肢

収容中の相続人の関係で最も相談が多いのが、実印と印鑑登録証明書の問題です。

なぜ問題になるのか

遺産分割協議書には、通常、各相続人の実印の押印と印鑑登録証明書が求められます。しかし収容中の本人は市区町村の窓口に行けず、そもそも印鑑登録をしていないことも多いため、通常の方法では印鑑登録証明書を用意できないことがあります。

方法1:印鑑登録・証明書取得を郵送等で行えないか確認する

住民票のある市区町村によっては、代理人による印鑑登録(本人への照会書の郵送による意思確認)や、印鑑登録証(カード)を預かった親族による証明書の代理取得ができる場合があります。ただし、印鑑登録証明書を取得できることと、本人が実印を押せることは別です。家族が印鑑登録証を保管していても、家族が本人に代わって協議書へ署名・押印することはできず、本人による署名・押印が必要です。実印を刑事施設へ差し入れられるか、施設内で押印できるかは施設ごとに扱いが異なり、差入れが認められない場合もあるため、刑事施設へ事前に確認してください(家族による無断押印は絶対にしてはいけません)。印鑑登録がそもそも無い場合の対処は、相続人が印鑑登録していない・印鑑証明書を取得できない場合の記事もご確認ください。

方法2:奥書証明を利用できるか、提出先へ個別確認する

印鑑登録証明書がどうしても用意できない場合、拇印と刑事施設長等の証明(奥書証明)を利用できることがあります。ただし、根拠として引用される昭和39年2月27日民事甲第423号の登記先例は、在監者が登記義務者となる場合の委任状に関するもので、遺産分割協議書や金融機関所定書類に当然に利用できるわけではありません。また、刑事施設が証明に対応するかも施設ごとに確認が必要で、法務局で利用できても金融機関で認められるとは限りません。奥書証明を一般的な標準手続きとして当てにせず、書類を作る前に刑事施設・司法書士・管轄法務局・金融機関へ確認し、奥書の文言・証明者・書類形式を確定してから本人へ送るのが安全です。この事前確認・段取りの整理は行政書士が支援できますが、奥書証明が有効かどうかの最終判断は提出先(法務局・金融機関)や司法書士・弁護士によります。


本人が相続放棄・限定承認を選ぶ場合

財産より借金が多い場合や、本人が「関わりたくない」と考えている場合は、家庭裁判所への相続放棄が選択肢になります。

相続放棄は収容中でも郵送で申述できる——ただし裁判所照会に注意

相続放棄申述書は家庭裁判所へ郵送提出できますが、押印の要否・方法、本人確認、裁判所から送られる照会書への回答方法は、管轄の家庭裁判所と刑事施設へ事前に確認してください。印鑑登録証明書は通常の標準添付書類ではありませんが、各家庭裁判所が個別の案内や捨印などの運用を設けている場合があります。手続きの役割分担は次のとおりです。

  • 親族は戸籍の収集・書類の準備を支援できる
  • 申述の意思決定と申述書への署名等は本人が行う
  • 家庭裁判所から追加の書面照会や事情確認を受けることがあり、照会書を刑事施設内で本人が受領・回答できるかを確認する
  • 裁判所から呼出しがあった場合の対応も事前に確認する
  • 3か月以内に判断できない場合は熟慮期間の伸長を検討する

期限は「知った時から3か月」

熟慮期間は、本人が自分のために相続が開始したことを知った時から3か月です。手紙を発送した日が当然に起算日になるわけではなく、本人が被相続人の死亡と自分が相続人になったことを知った時から進みます。借金の可能性がある相続では、訃報とあわせて財産・負債の状況も伝え、放棄を検討する時間を確保してあげることが大切です。起算日を確認できるよう、手紙の送付記録や本人からの返信を保存しておきましょう。期間内に判断できない場合は、家庭裁判所への期間伸長の申立ても可能です。

借金と財産のどちらが多いか不明なら限定承認も

財産と借金のどちらが多いか分からない場合の限定承認は、相続放棄と違い、相続人全員が共同で・3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があり、収容中の相続人だけで単独に選ぶことはできません。手続きも複雑で、みなし譲渡所得課税が生じる場合もあります。可否と詳細は、限定承認の記事を確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士と検討してください。

書類作成は司法書士・弁護士の領域

相続放棄申述書などの裁判所提出書類の作成は司法書士・弁護士の領域です。行政書士は、前提となる戸籍収集や財産・負債の資料整理を担って連携します。放棄後の注意点(管理義務など)は、相続放棄と管理義務の記事をご覧ください。

「放棄してほしい」と頼む場合の注意

他の相続人の側から収容中の本人に放棄を働きかける場合、財産を隠して「借金しかない」と誤信させるような伝え方をすると、後から放棄の効力を争われる原因になります。財産の全体像を開示したうえで本人に判断してもらう——この原則は、放棄をお願いする場面でも変わりません。


よくあるトラブルと対処

トラブル1:手紙に返事がくれない・協議を拒否される

収容中の相続人が協議に応じない場合も、対応は通常の「協議に応じない相続人」と同じで、最終的には家庭裁判所の遺産分割調停・審判で解決します。収容中の当事者がいる調停の進め方(書面照会など)は裁判所が調整します。調停の申立て・代理は弁護士(裁判所提出書類の作成は司法書士も可)の領域です。

トラブル2:接見等禁止で連絡自体ができない(未決の場合)

拘置所の未決の方に接見等禁止(刑事訴訟法81条など)が付いていると、親族でも面会・信書ができないことがあります。この場合は無理に接触しようとせず、本人の刑事弁護人に、遺産分割に関する連絡をどのような適法な方法で行えるかを確認してください。刑事弁護人に、禁止されている書類の受渡しや接見等禁止の迂回を依頼してはいけません。制限が解けるのを待つ選択も含めて進め方を検討します。相続税の申告期限が迫る場合は、未分割申告の検討を税理士と進めます。

トラブル3:本人の実印・通帳類の管理を巡る争い

収容前に本人の実印や通帳を預かっていた家族が、本人の意思確認なく手続きを進めてしまうケースがあります。たとえ家族でも、本人の署名・押印を代わりに行うことは私文書偽造等に当たり得る絶対にしてはいけない行為です。必ず本人とのやり取りの記録(手紙・面会)を残しながら進めてください。

トラブル4:他の相続人に事情を知られたくない

収容の事実を他の相続人や親族に知られたくない、という相談も少なくありません。遺産分割協議書には、本人を特定するため住民票上の住所等を記載するのが一般的です。収容先の記載が必要か、住民票上の住所だけで足りるかは、司法書士・金融機関等へ確認してください。また、奥書証明などを利用する場合は、提出先には収容の事実が伝わる可能性があるため、どの範囲まで知られ得るかを整理したうえで進め方を選びます。守秘義務のある専門家に間に入ってもらうことで、親族間で事情を広げずに手続きを進めやすくなります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 被相続人を死亡させた罪で服役している相続人は、相続欠格になりますか?

A. 犯罪名や故意の内容によって異なります。故意に被相続人、または相続について先順位・同順位にある人を死亡させ、もしくは死亡させようとして刑に処せられた場合は、相続欠格(民法891条1号)となり、当然に相続権を失います(殺人既遂だけでなく殺人未遂も含みます)。代襲相続が起こるかは欠格者の立場によります。欠格者が被相続人の子である場合は、その子(被相続人の孫)などが代襲相続人となることがあり(民法887条2項・3項)、欠格者が被相続人の兄弟姉妹である場合は、その子である甥・姪が代襲相続人となることがあります(民法889条2項)。欠格者に子がいれば常に代襲が起こるわけではなく、配偶者や直系尊属が欠格となった場合はその子が地位を代襲するわけではありません。一方、過失致死や、死亡させる故意が認められない傷害致死などは、当然には相続欠格に該当しません。判断が分かれるため、弁護士に確認してください。

Q2. 収容中の本人に代わって、その妻や子が遺産を受け取ることはできますか?

A. 相続財産の支払先は、本人名義の口座(収容前から持っている口座)を原則とします。第三者名義の口座への振込みを希望する場合は、本人の明確な委任、金融機関の承認、受領後の区分管理の方法を事前に確認してください。家族名義口座へ振り込めることを前提に協議書や払戻書類を作成してはいけません。相続分は収容中の本人固有の権利で、家族でも当然に代理・受領できるわけではなく、本人財産としての区分管理や使い込みの疑義を避ける必要があります。本人の口座が凍結・解約されている場合の受け皿も、金融機関と事前に相談してください。

Q3. 刑務所にいる相続人に、協議書の書類や返信用の切手を送っても大丈夫ですか?

A. 手紙(信書)として送ること自体は可能ですが、同封できる物品(切手・現金・書類の分量など)のルールは施設ごとに決まっており、規定外のものは本人に渡らず差し戻されることがあります。書類のやり取りを始める前に、収容先の施設に電話で「遺産分割の書類を郵送したい」と伝え、同封可能なもの・宛名の書き方・本人が発信できる頻度を確認しておくとスムーズです。重要書類は書留など記録の残る方法で送りましょう。

Q4. 本人が「遺産はいらない」と言っています。協議書に書くだけでよいですか?

A. 2つの方法があり、効果が違います。①遺産分割協議で取得分をゼロとする方法(いわゆる「事実上の相続放棄」)は手続きは簡単ですが、相続人の地位は残り、被相続人の借金の支払義務も原則として残ります。②家庭裁判所での相続放棄は、初めから相続人でなかったことになり、借金も引き継ぎません。負債がないと思われる場合でも、後から債務が判明するリスクがあるため、「手続きが簡単だから」という理由だけで①を選ばず、負債がある・不明なら②を検討してください。②を選ぶ場合は3か月の期限内に司法書士・弁護士と連携して進めます。


相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。

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まとめ

相続人が刑務所・拘置所にいても、その人を除いた遺産分割協議は無効です。収容先が分かり本人と連絡が取れる場合は、不在者財産管理人を選任せず、手紙・面会で連絡を取り、郵送での書面協議で進めるのが基本です(受刑者か未決拘禁者かで連絡の可否が変わります)。協議書は1人1通ずつ署名する協議証明書方式にすると、施設との郵送往復を最小限にできます。

署名・押印は、まず印鑑登録・証明書取得を郵送や代理で行えないかを市区町村に確認します(ただし証明書を取れることと本人が実印を押せることは別で、家族による無断押印は禁止です)。印鑑登録証明書を用意できないときは拇印+刑事施設長等の奥書証明を利用できることがありますが、根拠の先例(昭和39年民事甲423号)は在監者の登記委任状に関するもので、遺産分割協議書や金融機関書類に当然使えるわけではなく、刑事施設・司法書士・法務局・金融機関への個別確認が必須です。標準手続きとして当てにしないでください。また、相続放棄の熟慮期間3か月・相続登記3年・相続税10か月の期限は収容中も進行します。

奥書証明を利用した登記手続きは司法書士、代理権・相続欠格・接見等禁止・相続人間の交渉などの法的問題は弁護士、相続放棄など裁判所提出書類は司法書士・弁護士、相続税は税理士の領域です。行政書士は、相続人間に争いがない範囲で、戸籍収集・財産資料の整理・遺産分割協議書(協議証明書)の作成・金融機関への事務的な必要書類確認を支援し、プライバシーに配慮しながら各専門家と連携して進めます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続人が刑務所・拘置所に収容されている相続手続きについて、戸籍収集・財産資料の整理・遺産分割協議書(協議証明書方式)の作成・金融機関や提出先との事前確認を、全国オンラインで対応しています。ご家庭の事情に関わるご相談のため、秘密厳守で対応します。紛争対応は弁護士、裁判所提出書類は司法書士、相続税の申告は税理士法人トゥモローズと連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法887条2項・3項・889条2項(代襲相続の範囲)・891条(相続人の欠格事由)
  • 民法907条(遺産の分割の協議又は審判)・915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)・938条(相続放棄の申述)
  • 民法108条(自己契約及び双方代理等)
  • 民法25条(不在者の財産の管理)
  • 刑事訴訟法80条・81条(未決拘禁者の接見・信書、接見等禁止)
  • 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(面会・信書の発受)
  • 不動産登記法76条の2(相続登記の申請義務)
  • 登記先例 昭和39年2月27日民事甲第423号(在監者の委任状における拇印と刑務所長等の奥書証明)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。