【小規模宅地の特例】贈与との関係について徹底的に解説します
- 生前贈与で取得した土地には小規模宅地の特例は使えない
- 相続時精算課税で取得した土地も特例適用不可(相続税の対象でも贈与は贈与)
- 生前贈与加算(7年以内)の対象となる土地も特例適用不可
- 死因贈与で取得した土地は特例適用可能(遺贈に含まれる)
- 小規模宅地の特例は「相続または遺贈」で取得した土地のみが対象
こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。
小規模宅地の特例は、贈与により取得した財産について適用できるのでしょうか?
答えは、△です。
贈与にも色々な種類があります。種類別に小規模宅地の特例の適用可否について解説していきます。
※追記:
小規模宅地等の特例について、基本的な情報をわかりやすくまとめた記事を新たに作成いたしましたので、必要に応じて参考にしていただければと思います。
>>小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額
1. 贈与税の対象となる贈与
110万円を超える贈与をした場合には、原則として贈与税の課税対象となります。現預金だけでなく土地なども贈与の対象となります。それでは、土地を贈与した場合の評価額につき小規模宅地の特例は使えるのでしょうか?
答えは、使えません。
小規模宅地の特例の正式名称は、
「租税特別措置法第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」
あくまで相続税の特例のため贈与税の評価額を特例により減額することはできないのです。
この点に関して、実務で気を付けないといけないことがあります。
すなわち、小規模宅地の特例の適用をできる財産を贈与で移転してしまうことです。
2つの事例で考えてみましょう。
① おしどり贈与の場合
居住用財産を20年以上連れ添った配偶者に贈与した場合には2,000万円まで非課税となる特例があります。これを贈与税の配偶者控除といい、通称「おしどり贈与」ともいわれます。
この特例を使って贈与をしたいというご依頼がたまにあります。そのときに、私は税理士として必ず贈与する方のすべての財産がどのくらいあるのかを確認します。
何故かと言うと、贈与する方の財産が相続税の基礎控除以下しかない場合、もしくは、将来自宅について小規模宅地の特例を適用したら相続税がゼロになるような財産しかない場合におしどり贈与で居住用財産を贈与してしまうと損してしまうからです。
おしどり贈与をすると登録免許税、不動産取得税、司法書士への報酬、税理士への報酬など結構なコストがかかります。
そもそもおしどり贈与は相続税の節税のためにやることがほとんどですので、将来相続税がかからないのにコストをかけてまで生前に贈与する必要はないと思います。
特に小規模宅地の特例の適用が可能な財産を小規模宅地の特例を使えない贈与で移転してしまうのはもったいないことなのです。
② 相続時精算課税の場合
投資用ワンルームマンションを親が買って、子に相続時精算課税制度(2,500万円まで贈与税が非課税になるが、将来相続のときに相続財産に合算される制度)を適用して贈与をする相続税の節税対策も結構行われています。
これの旨味は、そのワンルームマンションの収益が親に帰属しないで子に帰属できるので親の財産の増加を抑制できる効果があるところです。また、ワンルームマンションは相続税評価額が購入価額半分以下になることが多いため、その面でも親の財産を圧縮できます。
この対策は、相続まで長期間あるような人には効果的ですが、相続が近い将来に起こりそうな人はやるべきではないと思います。
その理由が小規模宅地の特例です。相続時精算課税による贈与では小規模宅地の特例は適用できません。相続で移転すれば投資用ワンルームマンションの敷地を50%オフで評価できるのに、小規模宅地の特例を使えない贈与で移転するのは得策ではなりません。
【令和6年改正についての補足】
令和6年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除内の贈与は相続財産に加算されませんが、基礎控除を超える部分は従来通り相続財産に加算されます。いずれにしても、相続時精算課税による贈与で取得した財産には小規模宅地の特例は適用できない点は変わりません。
相続時精算課税制度の詳しい解説は、相続時精算課税制度をわかりやすく徹底解説(令和5年改正論点更新)をご参照ください。
2. 相続税の対象となる贈与
① 生前贈与
相続時精算課税による贈与、相続開始前7年以内の贈与(令和6年1月1日以降の贈与から段階的に延長)は、生前贈与であっても相続税の課税価格に含める必要があります。
このときにその贈与財産につき小規模宅地の特例を適用できるかどうかという問題が生じますが、結論としては適用できません。
小規模宅地の特例はあくまで相続又は遺贈によって取得した財産に限られるためいくら相続税の対象となる贈与であっても贈与で移転した財産については適用ができないのです。
なお、令和6年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算の対象期間が従来の3年から最長7年に延長されました。詳しくは、生前贈与は7年が相続税の対象へ! 令和5年(2023年)税制改正速報をご参照ください。
② 死因贈与
「私が死んだらA土地を長男に贈与する。」という贈与契約を死因贈与契約といいます。それでは、この死因贈与により取得した財産については小規模宅地の特例の適用はできるのでしょうか?
答えは、できます!
条文で確認していきましょう。
租税特別措置法第69条の4の出だしは、下記のように記載されています。
「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、~」
死因贈与なんて一言も書いてありません。
ちなみに、相続税法第1条の3(相続税の納税義務者)では、ちゃんと( )書きで死因贈与が含まれています。
「相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で~」
これだけ読むと小規模宅地の特例は死因贈与が含まれないじゃないかと思うかもしれませんが、
租税特別措置法の相続税関連の最初の特例である第69条の2(在外財産等についての相続税の課税価格の計算の特例)を確認してみるとその答えがわかります。
「相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第70条の8の2までにおいて同じ。)により取得した財産のうちに~」
ちゃんと( )書きで死因贈与を含めていて、以下第70条の8の2まで同じと規定してあります。すなわち、小規模宅地の特例も含まれているのです。
以上をまとめると、小規模宅地の特例は、生前贈与については適用できないが死因贈与については適用が可能ということです。
よくある質問
Q. 負担付死因贈与で土地を取得した場合、小規模宅地の特例は適用できますか?
A. 適用できます。負担付死因贈与も死因贈与の一種であり、租税特別措置法上「遺贈」に含まれるため、他の要件を満たせば小規模宅地の特例の適用が可能です。ただし、負担部分については債務控除の対象となる点に注意が必要です。
Q. 死因贈与契約を公正証書で作成していない場合でも特例は適用できますか?
A. 適用できます。死因贈与契約は公正証書でなくても有効に成立します。ただし、相続人間で争いになった場合の証拠力の観点から、公正証書で作成しておくことをお勧めします。なお、死因贈与による所有権移転登記には、原則として相続人全員の協力が必要となる点にも注意してください。
Q. 相続時精算課税で土地を贈与後、贈与者が亡くなる前に受贈者が先に死亡した場合はどうなりますか?
A. 受贈者の相続人が、受贈者の相続時精算課税に係る納税義務を承継します。その後、当初の贈与者が亡くなった際には、受贈者の相続人が相続時精算課税の適用を受けた土地について相続税の申告を行う必要があります。この場合も、贈与により取得した財産であるため小規模宅地の特例の適用はできません。
Q. 遺言で死因贈与の意思表示をした場合と、遺贈の場合で小規模宅地の特例の適用に違いはありますか?
A. 小規模宅地の特例の適用上は違いはありません。どちらも「遺贈」として扱われるため、他の要件を満たせば特例の適用が可能です。ただし、民法上は死因贈与は契約、遺贈は単独行為という違いがあり、撤回の可否や方式などに差異があります。
Q. 使用貸借で親の土地上に子が建物を建てている場合、親が亡くなったときに小規模宅地の特例は使えますか?
A. 使用貸借の場合は贈与ではなく相続により土地を取得することになるため、要件を満たせば小規模宅地の特例の適用が可能です。ただし、特定居住用宅地等として80%減額を受けるには同居要件等を満たす必要があり、生計一親族の居住用として要件を満たすかどうかの判定が必要です。貸付事業用宅地等(50%減額)に該当する可能性もあります。
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