土地建物を売ったときの税金(譲渡所得)の計算方法を徹底解説
みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。
土地建物(不動産)を売却したときに、利益が出た場合には、その利益に対して所得税、住民税がかかります。
また、サラリーマンなどの厚生年金等加入者以外の自営業者、年金生活者などは売った年の翌年の健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料などの社会保険料にも影響します。
今回は、土地や建物を売ったときの税金の計算方法について徹底解説します。
目次
1. 譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算式は下記の通りです。
各計算要素について詳しく解説していきます。
(1)収入金額
収入金額とは、不動産を売却したことにより借主から受け取った金額のことです。
売却代金だけでなくそれに付随する金銭や金銭以外で受け取った経済的利益も収入金額に該当する可能性もあります。
以下に具体的な項目ごとに収入金額に含めるべきか否かを解説していきます。
① 固定資産税精算金
収入金額に含める
【解説】
固定資産税は1月1日の所有者に1年分が賦課されます。年中に不動産を売却したとしても市区町村は固定資産税の精算をしてくれません。
したがって、売主と買主の間で精算することとなります。
具体的には、売主が支払った1年分の固定資産税のうち譲渡日から年末までの買主が負担すべき期間にかかる固定資産税を買主から売主へ支払います。
この支払を受けた固定資産税相当は譲渡収入に含める必要があるのです。
② 管理費精算金
収入金額に含めない
【解説】
マンションを売却した場合に、売主が負担した管理費を精算することがあります。
この管理費の精算金は、譲渡収入に含める必要はありません。
③ 修繕積立金精算金
収入金額に含めない
【解説】
マンションを売却した場合に、売主が負担した修繕積立金を精算することがあります。
この修繕積立金の精算金は、管理費の精算金同様に譲渡収入に含める必要はありません。
④ 債務免除益(代物弁済)
収入金額に含める
【解説】
売主が買主に1,000万円を借りていたとします。
売主から時価1,500万円の土地を買主に売却して、借入金1,000万円を免除してもらうとともに500万円の現金を受け取りました。
この場合の収入金額は、実際に受け取った500万円だけでしょうか?
違います。免除してもらった1,000万円も収入金額に含める必要があります。これを代物弁済といいます。お金でなく物で返済するため代物弁済です。
したがって、、実際に受け取った現金500万円と債務免除益1,000万円の合計1,500万円が譲渡所得計算上の収入金額となります。
(2)取得費
取得費とは、売却した不動産を取得するために支払った費用のことです。
取得費には、購入代金、建築代金、購入手数料、改良費、設備費などが含まれます。
また、相続税の一部が取得費に加算されることもあります。
取得費の詳しい解説は、下記コラムをご参照下さい。
取得費(譲渡所得)をわかりやすく徹底解説!
譲渡所得の取得費 本当に市街地価格指数で大丈夫?!
相続税の取得費加算の特例をわかりやすく徹底解説
(3)譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売るために直接かかった費用をいいます。
仲介手数料、印紙税、立退き料、建物取壊し費用などが譲渡費用に該当します。
譲渡費用の詳しい解説は、【不動産の譲渡費用一覧】これって該当する?しない?をご参照下さい。
(4)特別控除額
特別控除額とは、一定の不動産を譲渡した場合に取得費や譲渡費用以外に実際には支払っていない特別にマイナスできる特例制度のことです。
主な特例制度と特別控除額は下記の通りです。特例制度名をクリックするとその制度の詳しい解説のページにリンクしています。
特例制度 | 特別控除額 |
居住用財産(マイホーム)の特別控除 | 3,000万円 |
相続した空き家を売ったときの特別控除 | 3,000万円 |
収用等の特別控除 | 5,000万円 |
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの特別控除 | 1,000万円 |
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除 | 100万円 |
2. 税額の計算方法
譲渡所得の計算ができたら次は税額の計算です。
所得税と住民税は、1年間の収入から経費を差し引いた利益に一定の割合を乗じて計算します。
収入には、給料、配当、不動産賃料、事業収入等のあらゆるものが該当します。
もちろん、不動産の売却収入も収入に該当します。
ただし、不動産の売却収入は、他の収入とは区分して個別に計算します。
これを「分離課税」といいます。
これに対し、給料、配当、不動産賃料、事業収入等は、すべて合算して計算します。これを総合課税といいます。
不動産を譲渡したときの分離課税の税率は、その保有期間に応じて下記の通りとなります。
■長期譲渡所得
20%(所得税15%、住民税5%)
■短期譲渡所得
39%(所得税30%、住民税9%)
長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点において、5年を超えて保有していた場合に適用されます。
短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日時点において、5年以下の保有期間だった場合に適用されます。
なお、長期譲渡所得のうち、所有期間が10年を超える居住用不動産を譲渡した場合には、下記の税率が適用されます。
14%(所得税10%、住民税4%)
■譲渡所得が6,000万円を超える部分
20%(所得税15%、住民税5%)
3. その他の譲渡所得の論点
(1)収入の計上時期
譲渡所得をいつの年度で申告すべきか悩むことがあります。
例えば、令和3年12月に売買契約を締結して、令和4年1月に引き渡し(残金決済)があったとします。
この譲渡所得の申告は、令和3年の確定申告(令和4年3月15日までの提出)なのか、令和4年の確定申告(令和5年3月15日までの提出)なのか、1年も異なります。
原則は、引渡し日(残金決済日)の収入として確定申告をします。
例外的に、契約日の収入として申告することも認められています。
すなわち、納税者が有利に選択できるのです。
(2)法定相続分の登記後の換価分割
遺産分割協議に基づかない法定相続分による所有権保存登記がされることが実務上たまにあります。
とりあえず、第三者に対抗するために登記だけしておこうという場合や取得割合は決まっていないが売却することだけは決まっている場合などにこのような手法が取られます。
この場合において、その法定相続分と違う割合で収入金額を分配したときは、所得税の確定申告はどうなるのか?、贈与税はかかるのか?というところが気になります。
結論としては、所得税の申告時点までに換価割合の分割協議が済んでいるならばその換価割合に応じて所得税の確定申告をします。
すなわち、登記上の割合と異なる割合で分割協議が済んだ場合にはその分割協議の割合で収入金額を各人に分配するのです。
この場合、登記簿だけ見ると贈与税が課税されるかと思われるかもしれませんが、贈与税の課税もありませんので安心して下さい。
(3)土地と建物を一括譲渡した場合
譲渡所得の計算はその財産の種類ごとに計算します。
例えば、土地と建物を一括譲渡した場合には、土地と建物ごとに区分して計算します。
したがって、土地と建物を一括譲渡した場合には、収入金額を土地と建物に分配する必要があるのです。
売買契約書に土地と建物が区分されていればその区分に従って収入金額を認識します。
区分されていないときは、固定資産税評価額等の時価の比によって按分します。
詳しい解説は、土地と建物を一括取得した場合の取得費の按分と同じロジックとなりますので、取得費(譲渡所得)をわかりやすく徹底解説!をご参照下さい。
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