これだけは押さえよう|遺産分割協議書が無効にならないようにする書き方
こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。
「誰が・何を・どれだけ」相続するのかを話し合い、合意した内容を書面にしたものが「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書は不動産の相続登記や様々な場面で必要になる重要な書類ですが、
書き方に不備がある場合はせっかく作成した遺産分割協議書が無効になってしまうおそれがあります。
この記事では、自分で作成した遺産分割協議書が無効になってしまわないように、最低限押さえておかなければならない「遺産分割協議書のルール」をご紹介します。
遺産分割協議書の書き方の基本的な内容は、遺産分割協議書の書き方をわかりやすく徹底解説|相続財産の種類別で紹介をご覧ください。
目次
1.遺産分割協議書の作成前に押さえるべきポイント
無効にならない遺産分割協議書を作成するために、まずは遺産分割協議書の大前提となるルールを確認しておきましょう。
相続人全員の合意が必要
遺産分割協議で一番大切なことは「相続人全員が合意すること」です。
遺産分割協議に1人でも相続人が参加していなかったり、合意しなかったりした場合には遺産分割協議は無効になります。
遺産分割協議が無効にならないためには、戸籍により相続人を特定して相続人全員が納得する遺産分割協議を行う必要があります。
相続人全員の合意がなければ変更できない
遺産分割協議は一度成立したら基本的に変更することはできません。
なぜなら、相続人全員が合意しているため協議内容が法的に有効だからです。
ただし、相続人全員で遺産分割協議の再協議を行う場合には、例外的に遺産分割協議をやり直すことが可能です。
遺産分割協議をやり直す場合は新たな財産の移転とみなされるため、贈与税または譲渡所得税が課税されることに留意する必要があります。
作成しなければならない期限は設けられていない
遺産分割協議書の作成に期限は設けられていません。
ただし、相続税申告が必要な場合は相続発生後10か月以内に申告書を提出する必要があり、遺産分割協議書の添付が必要になります。
また、相続登記や預金口座の凍結解除・払い戻しなどに遺産分割協議書が必要ですので、できるだけ早く遺産分割協議書を作成しましょう。
2.遺産分割協議書を作成する上でのポイント
続いては「遺産分割協議書を作成する上でのポイント」をご紹介します。遺産分割協議書を作成する際には次の点に気を付けましょう。
遺産分割協議書の形式は自由
遺産分割協議書には厳密なルールがあると思われがちですが、遺産分割協議書には法的に決められた形式はありません。
手書きで作成しても構いませんし、パソコンに入力して印刷しても構いません。横書きでも縦書きでも自由に作成することができます。
ただし、遺産分割協議書は客観的に見て内容の分かるものでなければならず、不備がある場合には銀行手続きや登記手続きができないことがあります。
被相続人と相続人を表示すること
遺産分割協議書には必ず「被相続人(亡くなった人)は誰か」「相続人(遺産を取得する人)は誰か」を明記しなければなりません。
被相続人を明記することで誰の財産の遺産分割なのかを特定します。被相続人の情報は氏名だけではなく「生年月日・死亡日・本籍地・最終の住所地」を記載します。
これらの情報を正しく記載していなければ相続登記などの手続きができないおそれがありますので、戸籍謄本や住民票のとおりに正しく記載しましょう。
被相続人 日本橋 一郎(昭和 30 年 12 月 12 日生まれ)
死亡日 令和 3 年 12 月 6 日
本籍地 東京都中央区日本橋○番地○
最終の住所地 東京都中央区日本橋○番地○
相続人については、相続人全員の氏名と住所を明記しなければなりません。
こちらも誤りがあると手続きができないおそれがありますので、戸籍謄本や住民票のとおりに記載しましょう。
住所 東京都中央区日本橋○番地○
生年月日 昭和 35 年 7 月 6 日
相続人甲(妻) 日本橋 花子 実印
「誰が・何を・どれくらい」取得するのかを分かりやすく
遺産分割協議書は「誰が・何を・どれくらい」取得するのかを分かりやすく記載する必要があります。
この部分が遺産分割協議書の目玉となる部分ですので、客観的に見ても分かりやすいように記載しましょう。
取得する財産によって遺産分割協議書に記載しなければならない事項が異なります。
例えば、土地であれば「所在・地番・地目・地積」を登記簿謄本のとおりに記載しなければ登記手続きができない場合もありますので注意して記載しましょう。
甲は、以下の遺産を取得する
(1)土地
所 在 東京都中央区日本橋
地 番 ○○番○○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○平方メートル
また、どのような方法で遺産分割を行うかについても記載します。
一般的な分割方法である現物分割の他に換価分割・代償分割・共有分割があります。それぞれの分割方法についてはこちらで詳しく紹介しています。
共有分割をわかりやすく徹底解説
代償分割をわかりやすく徹底解説
換価分割をわかりやすく徹底解説
作成した日付を記載する
遺産分割協議書には、必ず作成した日付を記載しなければなりません。
記載する日付は遺産分割協議を行った日、もしくは遺産分割協議書に最後に署名を行う相続人が署名した日付を記載しましょう。
3.遺産分割協議書作成後にチェックするポイント
遺産分割協議書の作成が終わったら次のポイントに不備がないかよく確認しましょう。
押印が実印であるかどうかの確認
遺産分割協議書には、末尾に相続人全員の署名押印が必要です。押印は印鑑登録を行った「実印」で行いましょう。
民法上では遺産分割協議書の押印は実印である必要はありませんが、銀行での手続きや相続登記手続き、
相続税申告を行う際には「実印が押印された遺産分割協議書と印鑑登録証明書」をセットで提出しなければなりません。遺産分割協議書には必ず実印で押印しましょう。
複数ページある場合は契印の確認
相続財産が多く、遺産分割協議書が複数ページに渡る場合は「契印」しているかどうか確認しましょう。
契印とは、ページとページの間に相続人全員が押印することでページの追加やページの抜き取りなどの不正を防止する方法です。
契印がなければ遺産分割協議書が無効になるわけではありませんが、後々のトラブルを回避するために契印を行った方がいいでしょう。
なお、遺産分割協議書は実印を使用するため、契印も実印で行います。遺産分割協議書が1枚に収まっている場合は必要ありません。
相続人全員分の遺産分割協議書を作成しているかの確認
遺産分割協議は相続人全員で行われるものです。
相続人全員が平等であるという意味でも、全員分の遺産分割協議書を作成し、相続人それぞれが保管することが原則です。
相続人全員分の遺産分割協議書を作成しているか確認しましょう。
4.どんな場面で遺産分割協議書が必要になるのか把握しておこう
遺産分割協議が終わると、様々な場面で遺産分割協議書の写しと印鑑登録証明書の提出が必要になります。
事前にどの手続きに遺産分割協議書の写しと印鑑登録証明書が必要になるのかを確認しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。
・相続税申告⇒所轄の税務署に提出
・預金の名義変更、解約払戻⇒銀行などの金融機関に提出
・不動産の名義変更⇒不動産を管轄する法務局に提出
・車両の名義変更⇒陸運局に提出
・上場株式の名義変更または売却⇒証券会社に提出
5.不動産の相続登記義務化により遺産分割協議書がさらに重要に
法改正に伴い、不動産の相続登記の申請義務化が令和6年(2024年)4月1日より施行されます。
相続登記に申請義務化が始まると、遺産分割協議後3年以内に相続登記を行わなければなりません。相続登記を行ってない場合は10万円以内の過料が科されてしまいます。
相続登記に必要になる遺産分割協議書は、不動産の相続登記義務化によりさらに重要になってきます。
しっかりと遺産分割協議書のポイントを押さえて、相続登記手続きがスムーズに進むように準備してはいかがでしょうか。
税理士法人トゥモローズでは、遺産分割協議書の書き方を紹介しております。
書き方については遺産分割協議書の書き方をわかりやすく徹底解説|相続財産の種類別で紹介をご覧ください。
相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください
相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。
また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。
初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。
タップで発信
0120-916-968
平日 9:00~21:00 土日 9:00~17:00