遺言書の検認手続きの流れと検認後の流れをわかりやすく解説!
亡くなった方の自筆で書かれた遺言書を発見した場合、すぐに開封して読んではいけません。
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きを終えてから開封しなければならない決まりになっており、検認手続きを終えずに遺言書を開封してしまうと過料に処されてしまうこともあります。
ここでは、相続人がしなければならない「家庭裁判所での遺言書の検認手続きの流れと検認後の流れ」について解説します。
なお、自筆証書遺言については「【自筆の遺言でも大丈夫?】自筆証書遺言のメリットとデメリットを解説!」をご覧ください。
遺言の全体像を詳しく知りたい人は、遺言を書いて争族回避! 遺言書の作成方法、効力等をわかりやすく徹底解説!をご参照ください。
目次
なぜ遺言書には検認が必要?
遺言書の検認手続きとは、家庭裁判所で相続人立ち会いのもと、裁判官が封がされた遺言書を開封する手続きのことを言い、この検認手続きには2つの重要な役割があります。
1つ目は「相続人に遺言の存在と内容を知らせる役割」があります。
遺言書が発見され、家庭裁判所へ検認の申し立てが行われると、家庭裁判所は申立人と相続人全員に検認期日の通知を行うため、相続人全員が遺言書の存在を知ることができます。
2つ目は「遺言書の状態を確認する役割」です。
検認手続きでは、遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名などの確認を行い遺言書の偽造・変造を防止する役割があります。
検認手続きを行わないとどうなる?
「家族のことだから検認手続きなんて必要ない」と思われる方もいらっしゃいますが、検認手続きは必ず行ってください。
なぜなら、検認手続きを行わなければ遺言書による不動産の相続登記や銀行口座の相続手続きが行えないからです。
遺言書による相続手続きを行う場合には、検認後に発行される「検認調書または検認済証明書」の提出が必要になるため、必ず検認手続きを行いましょう。
検認手続きは民法のルールですので、検認手続きを行わずに遺言書を開封すると「5万円以下の過料」に処せられることになります。(民法1005条)
自筆証書遺言には検認手続きが必要
検認手続きは全ての遺言書に必要になるのではなく、遺言書情報証明書のない自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合に検認手続きが必要です。
遺言書情報証明書のない自筆証書遺言とは、自筆証書遺言のうち自筆証書遺言の保管制度を利用していない遺言書のことを言います。
つまり、自筆証書遺言であっても自筆証書遺言の保管制度を利用している場合には検認手続きは必要ありません。
自筆証書遺言の保管制度については「自筆証書遺言の保管制度をわかりやすく徹底解説」で詳しく紹介しています。
検認手続きに必要な書類と検認手続きの流れ
「初めての検認手続きで何から始めていいのか分からない」と不安を感じられている方もいらっしゃると思います。
検認手続きは、次の4つのステップで進めていくことをお勧めします。
Step1.確認
検認手続きに向けて初めに行うことは「現状を確認する」ことです。
誰が法定相続人になるのかを「生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本」を取得して確認しましょう。
戸籍謄本は被相続人の本籍地の市役所などで取得することができます。
戸籍謄本は他の相続手続きでも必要になりますので多めに取得しておくといいでしょう。
法定相続人になれる人については「相続が発生したら誰が「相続人」なの?意外と知らない法定相続人の範囲と相続分」をご覧ください。
また、事前に申し立てを行う家庭裁判所を調べておきましょう。申し立てを行う家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
家庭裁判所の管轄は「裁判所のホームページ」で確認することができます。
Step2.準備
確認が終わったら、次は検認手続きの申し立てに必要な書類を準備します。
・遺言書
・申立書(遺言書の検認申立書、当事者目録)
(こちらよりダウンロードできます)
・遺言者が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・返信用の郵便切手(金額は家庭裁判所に異なる)
申立書は記載例を参考に記載しましょう。申立人は遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人になります。
申立書には800円の収入印紙を貼って申し込みを行わなければなりませんので、忘れないように注意しましょう。
Step3.申立
準備ができたら管轄の家庭裁判所へ必要な書類を持参、または郵送して申立てを行います。
申立てを行うと戸籍謄本は返却されませんので、事前にコピーを取っておくといいでしょう。
申し立て終了後、相続人全員に検認期日の通知書が送られてきます。
検認期日の通知書には、検認日と通知書と本人確認書類を持参して裁判所にお越しいただきたい旨が記載されています。
Step4.検認
検認では、申立人は必ず出席しなければなりませんが、他の相続人については欠席することも認められています。
ただし、検認手続きは相続人にとって初めて遺言書の内容を知る機会になりますので、出席した方がいいでしょう。
検認手続きが始まると、裁判官が遺言書を開封し、遺言書が作成された日付、署名、筆跡、遺言書の内容を確認し、検認手続きが終了します。
検印手続き終了後は、検認済証明書の申立て(1通当たり150円の収入印紙が必要です)を行い、遺言書に検認済証明書が添付されて返却され、検印手続きは終了します。
検認済証明書は、あくまでも遺言書が存在しているという証であり、遺言書の有効性を証明するものではありませんので注意しましょう。
検認手続き後の流れ
検認手続き後は、通常の相続手続きを行います。遺言書に全ての相続財産について記載がある場合には記載通りに銀行口座の解約や不動産の相続登記を行います。
遺言書に記載されていない相続財産がある場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するのかを話し合います。
遺産分割協議書の作成方法については「遺産分割協議証明書の書き方を徹底解説!」をご覧ください。
遺言におかしな点がある場合
遺言書の筆跡が本人のものではない場合や遺言書の作成日には既に認知症になっていた場合など、遺言書が有効ではないと判断される場合には「遺言無効確認の訴え」を起こすことができます。
遺言無効確認の訴えでは、遺言書が無効であると判断される証拠(本人が執筆した書類や認知症に関する医師の診断書など)が必要です。
訴えにより遺言書が無効になった場合には、相続人全員による遺産分割協議で相続手続きを行うことになります。
検認手続きはできるだけ早く行いましょう
検認手続きは申立てから検認まで数週間かかります。
検認手続きに期限はありませんが、検認手続きが終わらなければ他の相続手続きに支障をきたしてしまうおそれがあります。
特に3か月の期限が設けられている相続放棄や10か月の期限が設けられている相続税申告に影響してしまいますので、できるだけ速やかに検認手続きを行いましょう。
検認手続きで間違えやすいポイント
①検認手続きは遺言書の有効性を確認するものではない
検認手続きが終わったからと言って遺言書が必ず有効なわけではありません。
おかしな点がある場合には「遺言無効確認の訴え」を起こすことができます。
②申立人は必ず検認手続きに参加する
相続人が検認手続きを欠席しても認められますが、申立人は必ず検認手続きに出席しなければなりません。
③遺言書は全て検認する
複数の遺言書が発見された場合には、全ての遺言書の検認手続きを行いましょう。
遺言書が2通以上ある場合、前の遺言と後の遺言の内容が抵触すると、抵触する部分については後の遺言が有効になります。
④遺言書があっても遺産分割協議で決められる
遺言書があっても相続人と受遺者(遺言により財産を受け取る人)全員の合意があった場合には遺産分割協議により誰が何を相続するのかを決定することができます。
詳しくは「遺言書があっても遺産分割協議は可能|間違えやすいポイントを解説」をご覧ください。
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