贈与してないのに贈与税の対象に!? 「みなし贈与」には要注意!

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名義財産・生前贈与

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

年間110万円を超える贈与を受けたら贈与税がかかります。
この贈与税ですが、本人が贈与を受けたつもりがないのにかかる場合があります。

この贈与でないのに贈与税がかかる取引を「みなし贈与」といいます。

民法上の贈与には該当しないけど税法上は贈与とみなして贈与税を課税するという納税者にとっては厄介な規定です。
税務当局にとっては、贈与税の租税回避を防止するために必要な規定です。

今回は、このみなし贈与について実務上頻出するケース6つに絞って解説します。

なお、生前贈与の改正については、生前贈与は7年が相続税の対象へ! 令和5年(2023年)税制改正速報をご参照ください。

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贈与してないのに贈与税がかかるのは何故か?

贈与とは民法上の契約であり、あげる方ともらった方の双方が合意したことにより契約が成立します。双方の合意が必要な契約を専門用語で「諾成契約」といいます。
贈与税はこの民法上の贈与契約を根拠に課税される税金です。
ただで財産をもらったのだから税金を納めるだけの資産があるでしょ(「担税力」といいます)というわけです。

民法上の贈与契約だけに贈与税が課税されるとなっていたら税務署は毎回贈与契約があったことを立証しないと贈与税を課税できなくなってしまいます。

そのような状況だと贈与税の租税回避が蔓延してしまうということで「みなし贈与」という規定が存在するのです。

すなわち、みなし贈与とは、税務署が贈与成立の立証をしないでも贈与税が課税できるという規定なのです。

実務上、よく出てくる「みなし贈与」を6つに絞って確認していきましょう。

要注意!みなし贈与6選!

1. 自己名義でない建物にリフォームした場合

よくあるケースが、親と子が同居するために親名義の建物に子が住宅ローンを組んで二世帯住宅にリフォームすることです。
これがまさに「みなし贈与」に該当し、贈与税の対象となるのです。

理由としては、建物に対してリフォームをした場合に建物本体の価値が増加しますが、その増加部分は建物の所有者に帰属するためです。
親にしてみれば何もしてないのに自分所有の建物の価値があがった。
それをしてくれたのは子であると、その子から親に対する贈与があったものとみなされるのです。
当人同士は贈与する意識なんて一切ないと思いますが、税務署から贈与税が課される可能性があるのです。
みなし贈与の怖いところはここなのです。

リフォーム贈与の詳しい解説や解決方法は下記コラムをご参照ください。

親の持ち家に子がリフォームをする場合

2. 低額に財産を譲り受けた場合

子が時価1億円の不動産を親から3,000万円で譲り受けたとします。

子にしてみれば1億円の価値のものを3,000万円で取得してますので、仮に贈与を受けた不動産をすぐに1億円で売却したら7,000万円を得することになります。(譲渡所得税は無視してます)
この7,000万円の得する部分が、「みなし贈与」なのです。

対価を伴う売買という取引であっても著しく低額な対価による売買の場合には贈与税の対象となるのです。
対価を伴わない贈与取引でないにも関わらず贈与税が課税されるみなし贈与の怖いところです。

では、いくらくらいなら低額譲渡になってしまうのでしょうか?
はっきり言って決まりはありません。

個人から法人に対する譲渡の場合、時価の1/2未満だと低額譲渡と判定されます。

今回解説している「みなし贈与」は個人間取引に限定されています。
何故かというと贈与税自体が個人間取引でしか発生しない税金だからです。

話を元に戻しますと個人から個人に対して譲渡した場合に、いくら以下であれば低額譲渡に該当するという基準はありません!

低額譲渡に該当しないためには相続税評価額以上の金額で取引をするということです。

低額譲渡に該当してしまった場合の時価の考え方(土地、借地権、建物とそれ以外の財産で考え方が異なります)、みなし贈与額の算定方法等については別の記事で詳しく解説します。

3. 親の借地権が子に贈与されたとみなされる場合

親が借地権を所有している場合において、下記に該当するときはみなし贈与に発展する可能性があるため要注意です。

(1)親が借地している土地の底地部分を子供が買い取ったとき
(2)親の借地に子供が家を建てたとき

上記の場合に借地権評価額相当が親から子に贈与があったものとみなされる可能性があります。

借地権のみなし贈与ではないと主張するためには、それぞれ下記の届出を税務署に提出しましょう。

(1)親が借地している土地の底地部分を子供が買い取ったとき
借地権者の地位に変更がない旨の申出書
借地権者の地位に変更がない旨の申出書の詳しい解説は、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」の提出忘れで多額の贈与税が?!をご参照ください。

(2)親の借地に子供が家を建てたとき
借地権の使用貸借に関する確認書

4. 借入金の返済を免除した場合

子が親から1,000万円を借りたとします。
月々返済を続けていましたが、残債700万円のときに親から「もう返済しなくていいよ」と言われました。
すなわち、子が親から700万円の債務免除を受けたということです。

この場合に700万円相当の贈与が親から子にあったとみなされて贈与税がかかるのです。

親からしたら子の生活のこととかを思って思いやりの気持ちで債務免除してあげたのだと思いますが、この安易な債務免除にも贈与税がかかってしまうのです。

ポイントとしては、第三者との間でそのような取引をするかどうか?という観点が必要ということです。
第三者に対して700万円の借入金を簡単に免除できるでしょうか?
我が子が可愛かったら免除したのだと思います。

我が子であってもお金に関しては第三者に対して行う取引と同様の厳しさで臨めばみなし贈与には該当しないということです。

5. 生命保険契約で保険料負担者以外が受取人となっている場合

生命保険の場合には、保険料負担者と被保険者と受取人が誰なのか、保険金の種類が何なのかにより課税される税金の種類が異なります。

保険料負担者 被保険者 受取人 保険金種類 税金
長男 死亡保険金 相続税
満期保険金 所得税
死亡保険金 所得税
長男 満期保険金 贈与税
長男 死亡保険金 贈与税

上記表の下2つの黄色ハイライト部分がみなし贈与に該当します。

保険料負担者と受取人が違う人で保険料負担者が被保険者となっている死亡保険金以外を受け取った場合には保険料負担者から保険金受取人への贈与があったものとみなされて贈与税の対象となるのです。

保険金と税金の詳しい解説は、下記コラムをご参照ください。
相続税における生命保険金(死亡保険金)と保険金受取人の関係を徹底解説
生命保険金にかかる相続税 非課税枠と注意点を完全解説

6. 無対価で財産の名義変更をした場合

対価の支払いをせずに親名義の財産を子や孫名義に変更した場合には、原則として贈与があったものとみなされます。
双方に贈与したつもりはないのに贈与があったものとみなされて贈与税が課されるみなし贈与の恐ろしいところです。

贈与税がかかるとは知らずに悪気もなく自分名義の有価証券、車等を子や孫名義にしてしまうこともあるかもしれません。

安易に名義変更した場合には贈与税がかかるかもしれませんので要注意です。
なお、名義変更したとしても下記の通達に該当すれば贈与税を回避できます。
国税庁HP 名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて

上記通達を簡単に要約すると、下記の要件を満たした場合には無対価で名義変更をしたとしても元の名義に適切なタイミングで直せば贈与税がかからないということです。

①その財産の名義人となった者が、その名義人となっている事実を全く知らず、かつ、その不動産を使用収益していないとき
②その財産の名義を、その財産に係る最初の贈与税の申告等の日の前に真実の取得者の名義に変更したとき

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