【生前からできる相続放棄の代替案】遺留分放棄をわかりやすく解説!

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面倒な相続トラブルに巻き込まれたくないなどの理由で相続放棄を検討している人も少なくないと思います。その中でも「生前から相続放棄をしたい」という人もいるのではないでしょうか。

残念ながら、生前に相続放棄を行うことは法律上認められていません。その代わりに「遺留分放棄」を行うことで相続放棄と似たような効果を得ることができます。

ここでは、生前に相続放棄を行いたいと思っている人に向けて生前からできる対策である「遺留分放棄」についてわかりやすく解説します。相続放棄と遺留分放棄は似て非なるものです。違いについても解説していますので、最後までお付き合いください。

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相続放棄は相続が発生してからしかできない

相続放棄とは亡くなった被相続人の財産について、相続する権利を放棄することです。相続放棄が行える期間は相続開始を知ってから3か月以内(熟慮期間内)と定められています。つまり「相続開始を知った時=亡くなった後」になるため、生前に相続放棄を行うことはできません。

生前に「相続権を放棄します」という念書を用意したとしても、この念書には法的効力は一切ありません。生前に相続放棄を行うことはできませんが、その代用として「遺留分放棄」を行うことは可能です。

遺留分放棄は生前からの相続放棄の代わりになるのか

遺留分放棄とは、その名の通り「遺留分を放棄すること」です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保証されている相続の権利のことです。

もし遺言書などにより、特定の相続人が遺留分を下回る財産しか相続できなかった場合、財産を多く相続した相続人に対し不足分を請求する「遺留分侵害額請求」を行うことができます。遺留分放棄とは「遺留分侵害請求を行う権利を放棄すること」と同じ意味合いになります。

被相続人が特定の相続人に対して一切の財産を相続させない旨の遺言書を作成し、その相続人が遺留分放棄を行うことで相続放棄と似たような効果を得ることができます。遺留分放棄を行うことで他の相続人との対立がなくなり、相続トラブルに巻き込まれることも少なくなるでしょう。

遺留分については令和1年に民法の改正が行われています。詳しくは「遺留分 わかりやすく徹底解説!」をご覧ください。

遺留分放棄は誰にでも認められる?

遺留分放棄は生前からでも相続が発生してからでも行うことができます。ただし、生前に遺留分放棄を行うためには家庭裁判所への申し立てが必要です。申し立てを行うと家庭裁判所から「照会書(回答書)」が届くので、その回答を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所で審議が行われます。

遺留分放棄は申し立てを行えば簡単に許可されるものではなく「申し立てを行う相続人の自由意志」と「遺留分放棄の見返り」「遺留分放棄の合理性と必要性」の要件を満たさなければ遺留分放棄は許可されません。

遺留分放棄が認められる要件
・相続人の自由意志
・遺留分放棄の見返り
・遺留分放棄の合理性と必要性

申し立てを行う相続人の自由意志

遺留分放棄は、申し立てを行う相続人の自由意志によって行われるものでなければなりません。遺留分は個人の権利なので「他の相続人に財産を多く相続させたい」などの理由で被相続人が特定の相続人に遺留分放棄を強要したりすることはできません。

遺留分放棄の見返り

遺留分放棄には、放棄に見合うだけの見返りが求められます。見返りは金銭などの経済的価値があるものしか認められず、これまでの恩などは経済的価値があるものとは認められません。見返りは現在に限ったものではなく「過去に十分な贈与を受けたことがある」なども認められます。

遺留分放棄の合理性と必要性

遺留分放棄を行うためには「放棄を行う合理性と必要性」が求められます。つまり、放棄を行うもっともな理由が必要です。「今まで十分な額の贈与を受けている」という理由であれば合理性と必要性の要件と放棄の見返りの要件を満たすため、許可されやすいと考えられます。

遺留分放棄では負債の引継ぎが行われる

「借金などの負債を引き継ぎたくない」という理由により相続放棄を検討されている人もいらっしゃると思いますが、遺留分放棄には債務免除の効果はなく、遺留分放棄を行っていても相続が発生すると負債を引き継ぐことになってしまいます。

ケースによっては、遺留分放棄により財産を相続しないのにも関わらず、負債だけを引き継いでしまうこともありますので、被相続人の負債についてはしっかりと整理するようにしましょう。
被相続人に負債があり、負債を引き継ぎたくない場合には、遺留分放棄ではなく、相続放棄を行う必要があります。

相続放棄と遺留分放棄はここが違う

相続放棄と遺留分放棄の一番の違いは「放棄する対象が違うこと」です。相続放棄は「相続する権利」を放棄するのに対し、遺留分放棄はあくまでも遺留分を放棄するだけですので、相続権もありますし、遺産分割協議への参加もできます。

また、相続放棄を行うと他の相続人の法定相続分に影響を与えますが、遺留分放棄は自分の遺留分を放棄するだけですので、他の相続人への遺留分に影響を与えません。

【相続放棄と遺留分放棄の違い】

相続放棄と遺留分放棄の違い

遺留分放棄を行う方法

相続が発生する前に遺留分放棄を行う場合には家庭裁判所への申し立てを行い、許可を得る必要があります。

・申立人⇨相続人
・申立時期⇨被相続人が存命ならいつでも可能
・申立先⇨被相続人の住所地の家庭裁判所

遺留分放棄の申し立ての順番

①必要書類を用意する

遺留分放棄の申し立てに必要な書類を用意します。必要書類は次の通りです。

<必要書類>
・遺留分放棄の許可の申立書(家事審判申立書)※1
・財産目録※1
・被相続人の戸籍謄本※2
・申立人の戸籍謄本※2

※1 遺留分放棄の許可の申立書と財産目録は裁判所のホームページよりダウンロードできます。財産目録については任意の形式で作成しても問題ありません。

裁判所のホームページ

※2 戸籍謄本は発行後3か月以内のものに限ります。

②家庭裁判所への提出

上記の必要書類と収入印紙800円分、連絡用の郵便切手を家庭裁判所へ提出します。必要な郵便切手は各家庭裁判所により異なります。

③「照会書(回答書)」の回答

書類を提出すると、家庭裁判所より「照会書(回答書)」が申立人へ送付されます。照会書には、自分の自由意志によるものなのか、見返りがあるのかなどの質問が行われますので、慎重に回答し、期限までに家庭裁判所へ返送しましょう。

④家庭裁判所での審議

「照会書(回答書)」をもとに家庭裁判所で審議が行われ、遺留分放棄を許可するのかどうかが決定されます。遺留分放棄の理由が不十分である場合には、申立人に家庭裁判所による審問が行われる場合もあります。

⑤審判書謄本が送られる

家庭裁判所での審議の結果、遺留分放棄の許可が決定すると家庭裁判所より審判書謄本が申立人へ送付され、手続きが完了します。

遺留分放棄と相続放棄は慎重に検討を

遺留分放棄は相続が発生する前に行うことができ、遺言書の作成とセットで行うことで相続放棄と似たような効果を得ることができます。ただし、相続放棄と遺留分放棄は根本的に違う制度です。相続に一切関わりたくない場合や負債を引き継ぎたくない場合は、相続発生後に相続放棄を行いましょう。

遺留分放棄や相続放棄は申立てする人の人生に大きな影響を与えます。どのような手続きを行えばよいのか、本当に遺留分放棄や相続放棄が必要なのかなどを判断する場合には、自分一人で判断せず、司法書士や弁護士に早めに依頼することをおすすめします。
相続放棄を専門家に依頼する場合の費用については「【相続放棄の費用相場はどれくらい?】パターン別の費用相場を解説!!」をご参照ください。

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この記事の執筆者:大塚 英司

東京税理士会新宿支部所属
登録番号:117702

埼玉県所沢市出身、東日本税理士法人、EY 税理士法人を経て、税理士法人トゥモローズ代表社員就任。相続に関する案件は、最新情報を駆使しながらクライアント目線を貫き徹底的な最適化を実現します。

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