ジョイントアカウント(共同名義口座) 相続税、贈与税はどうなる?

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国際相続

ジョイントアカウント(共同名義口座)は海外でよく見受けられる預金口座の一種です。
日本では複数人の共同で口座を開設することが基本的にできないため事例はほぼありませんが、海外ではよくある話です。

海外でジョイントアカウントを開設した場合に日本で贈与税がかかるのか、またジョイントアカウントの名義人が死亡した場合に相続税がどのような取り扱いになるのかが気になります。

今回はこのジョイントアカウントの相続税、贈与税の取り扱いについてわかりやすく徹底解説します。

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1.ジョイントアカウントとは?

ジョイントアカウント(共同名義口座)は、複数人の名義で開設する預金口座のことをいいます。
ジョイント口座ともいいますね。

ジョイントアカウントの詳細をQ&A形式で確認していきましょう。

Q ジョイントアカウントは夫婦以外でも開設できますか?

A 開設できます

【解説】
ジョイントアカウントは夫婦や親子で開設することが多いですが、親族以外の第三者と開設することも可能です。
 

Q ジョイントアカウントを開設したあとは共同名義人の全員の同意がないと取引はできませんか?

A 最初の設定によります

【解説】
ジョイントアカウント開設時の設定によっては1名のみで入出金、振込等の取引を行うことも可能です。
 

Q ジョイントアカウントは日本でも開設できますか?

A 基本的には開設できません

【解説】
ジョイントアカウントはアメリカ等の海外で一般的な口座開設の方法ですが、日本においては単独名義でしか口座を開設できない金融機関がほとんどです。
日本で一つの口座を複数名で使用したい場合には単独名義で口座を作成して家族カードや代理人カードで対応することになります。
 

Q ジョイントアカウントで名義人の一人が死亡した場合にはどうなるのですか?

A 「生存者受取権」のある口座の場合は残りの名義人の財産になるのが一般的です

【解説】
アメリカなど英米法の国では、「生存者受取権(Right of survivorship)」が付いたジョイントアカウントが多く、このタイプでは共同名義人の一人が死亡すると、その残高はプロベートを経ずに生存名義人に自動的に帰属するのが通常です。
もっとも、州法や口座約款・設定内容によっては、死亡した名義人の持分が遺産として扱われるケースもあるため、一律に「必ず生存名義人の財産になる」とは言えません。詳細は「2.ジョイントアカウントと相続」を参照してください。
 

2.ジョイントアカウントと相続

ジョイントアカウントの名義人の一人が亡くなった場合の手続きについて解説します。

(1)開設国(海外)での相続手続き

アメリカ等でジョイントアカウントを開設して、その名義人の一人が亡くなった場合には、プロベート手続きを経ることなく残された名義人がその口座を引き継ぐことが可能です。
アメリカ等の英米法の国での相続手続きはプロベートといって遺産整理の手続きに裁判所が絡んできて1年以上の年月がかかることが多く、大変煩雑になります。
そのプロベートを回避する方法としてジョイントアカウントを採用する人が非常に多いのです。

(2)日本での相続手続き

日本人がアメリカ等でジョイントアカウントを保有していて亡くなった場合には、そのジョイントアカウントは日本の相続においてどのような手続きが必要になるのでしょうか?
他の預貯金等と同じように遺産分割手続きが必要になるのでしょうか?

過去の裁判で上記論点が問題になった事例がありました(東京地裁平成26年7月8日判決・東京高裁平成26年11月20日判決)。

東京高裁は、ハワイ州にある銀行(バンク・オブ・ハワイ)のジョイントアカウントについて、ハワイ州法上、生存者権利取得型のジョイントアカウントと解されることなどから、私法上の相続財産(遺産分割の対象となる遺産)には該当せず、生存名義人の固有財産になると判断しました。

結論としては、ジョイントアカウントは相続財産には該当せずに遺産分割を経ずに残された名義人の固有財産になると判断されたのです。
相続財産にはなりませんが、後述のとおり相続税の課税対象になり得る点には注意が必要です。

なお、この取り扱いがすべてのジョイントアカウントでの統一の取り扱いではありません。
上記判例はハワイ州にある銀行(バンク・オブ・ハワイ)のジョイントアカウントの取り扱いであり、他の州、金融機関、口座開設時の設定方法等によっては、上記とは異なる取り扱いになることもありますので注意しましょう。

例えば、アメリカでは夫婦共有財産制(Community Property)を採用する州(カリフォルニア州等の9つの州)と夫婦別産制(Separate Property)を採用する州が存在します。
このような州法の違いでもジョイントアカウントの相続財産性に影響を及ぼします。

3.ジョイントアカウントと贈与税、相続税

(1)ジョイントアカウント開設時・入金時

ジョイントアカウント開設時、開設後の入金時に贈与税がかかるどうかが気になります。

例えば、夫婦でジョイントアカウントを開設したときに夫が1,000万円口座に入金したとします。
ジョイントアカウントは共同名義ですから、この際に夫から妻に入金額の半額である500万円を贈与したことになるのかどうかという論点です。

結論から申し上げると贈与税はかかりません!

ジョイントアカウントは共同名義となりますが、日本の税金上は、資金拠出者の財産と考えるためです。
名義預金の考え方に近いですね。
名義預金についての詳しい解説は、名義預金は相続税の対象?! 判断基準や対策を徹底解説をご参照ください。

原則は上記の取り扱いですが、仮に資金拠出者以外の共同名義者(上記具体例だと妻)に自由に使わせるためにジョイントアカウントを夫が開設したような場合には、入金時であっても贈与税の対象になる可能性はありますので注意しましょう。

(2)ジョイントアカウント出金時

入金時には原則として贈与税はかからないと確認しましたが、出金時はどうでしょうか?

これも夫婦の例で考えてみましょう。

夫が5,000万円をジョイントアカウントに入金して、その後、妻がそのジョイントアカウントから4,000万円を出金して妻名義でマンションを購入しました。
この取引に贈与税がかかるかどうかという論点です。

結論から申し上げると贈与税の対象です!

入金時で確認したようにジョイントアカウントは資金拠出者の財産です。
その資金拠出者の財産が資金拠出者以外の財産に化体した場合には贈与税の対象になるのです。

ただし、上記のような多額の一括出金でなく生活費等としてその都度ジョイントアカウントから出金している場合には贈与税は非課税になります。
贈与税が非課税になる生活費の詳しい解説は、扶養義務者からの生活費、教育費で通常必要と認められるものの贈与をご参照ください。

(3)ジョイントアカウント保有者の死亡時

ジョイントアカウントの口座名義人が死亡した場合の相続税がどうなるのかという論点です。

①資金拠出者が死亡した場合

先に見た東京高裁平成26年11月20日判決により、対象となったハワイ州のジョイントアカウントは、遺産分割の対象となる私法上の相続財産には含まれないとされています。
(なお、上記判決はハワイ州バンク・オブ・ハワイのジョイントアカウントについての判決であるためすべてのジョイントアカウントが相続財産に含まれないというわけではありません。)

したがって、そのままでは相続税法1条にいう「相続又は遺贈により取得した財産」には当たりません。

また、生命保険金や死亡退職金のように、相続税法4条〜8条で個別に列挙されている典型的なみなし相続財産にも該当しません。

しかし、共同名義人の一人が亡くなることで、残された名義人が被相続人持分に相当する利益を無償で取得しているという実態があります。
この「対価を支払わないで利益を受けた」点に着目し、国税庁はハワイ州の合有不動産(ジョイント・テナンシー)について、相続税法9条の「みなし贈与」に該当するとしたうえで、相続税の課税対象とする取扱いを示しています。

ジョイントアカウントについても、同様の考え方を用いるのが実務上のスタンダードです。

具体的には、下記の通りに整理します。

生存共同名義人は、被相続人の死亡時にその持分に相当する金額を被相続人から贈与により取得したものとみなされる(相続税法9条)

⬇️

その生存共同名義人が、相続又は遺贈により他の財産も取得している場合には、当該みなし贈与分は「相続開始前3年(改正後は7年)以内の贈与」として生前贈与加算の対象となり、相続税の課税価格に加算される(相続税法19条1項)

したがって、「贈与による取得なのになぜ相続税?」という点については、いったん相続税法9条のみなし贈与で捉え、そのうえで相続税法19条の生前贈与加算により相続税の課税ベースに取り込むという二段構えで理解するとスッキリします。

生前贈与加算についての詳しく解説は、生前贈与がある場合の相続税申告をご参照ください。

ここで一つ問題が生じます。
この生前贈与加算は相続又は遺贈により財産を取得した人限定の規定です。
すなわち、共同名義人が相続又は遺贈により財産を取得していないと相続税ではなく贈与税の課税となってしまうのです。

課税関係をまとめると下記の通りです。

共同名義人 課税関係
相続又は遺贈により
財産を取得した者
生前贈与加算の対象となり
相続税の対象
上記以外の者 贈与税の対象

上記を原則としますが、実務上は、死因贈与と考えることもできるようです。

例えば、ジョイントアカウントを相続人以外の第三者(例えば愛人(ジョイントアカウント以外の財産を遺贈により取得していないものとする))と共同保有していた場合に、
そのジョイントアカウントは夫から愛人への相続開始日のみなし贈与と解釈すれば贈与税の対象となります。
これに対し、夫から愛人への死因贈与と解釈すれば相続税の対象となるということです。

現在の実務ではどちらの解釈でも差し支えないこととなっています。詳しくは、下記国税庁質疑応答事例をご参照ください。

国税庁HP 質疑応答事例 ハワイ州に所在するコンドミニアムの合有不動産権を相続税の課税対象とすることの可否
上記はジョイントテナンシー(不動産)の質疑応答事例ですが、ジョイントアカウントでも同様の解釈が可能でしょう。

なお、愛人にしてみれば相続税(死因贈与と考える解釈)の方が有利だが、夫の妻や子などの相続人にすれば愛人に贈与税(みなし贈与と考える解釈)がかかった方が有利となるような利益相反のケースも想定されます。
このような混乱を避けるためにもどちらか一方の取り扱いに統一してもらいたいものです。

②資金拠出者以外が死亡した場合

ジョイントアカウントの資金拠出者以外が死亡した場合には相続税や贈与税の対象にはなりません。
ジョイントアカウントはあくまで資金拠出者の財産と考えるため資金を拠出していない者の財産にはならないためです。

③一部資金拠出者が死亡した場合

ジョイントアカウントの一部を資金拠出していた人がなくなった場合には上記①と同様に相続税の対象となります。

例えば、夫婦のジョイントアカウントで、夫が6,000万円、妻が4,000万円をそれぞれ拠出していたとします。
この場合に夫が死亡したときは、夫が拠出した持分である6,000万円相当額が、相続税の課税対象となる金額として夫の課税価格に算入されるイメージです。

なお、資金拠出相当が相続税の対象となると考えるのは夫婦別産制(Separate Property)を採用する州での考え方です。
夫婦共有財産制(Community Property)を採用する州の場合には夫婦の財産は均等に帰属しますので拠出割合に関わらず相続開始時の残高の各50%が夫婦のそれぞれに帰属します。

また、ジョイントテナンシーについては、入口時点で均等帰属になりますので死亡時ではジョイントテナンツに均等に帰属することになります。
ジョイントアカウントとジョイントテナンシーの大きな違いの一つです。
したがって、ジョイントアカウントについては開設時に贈与税課税される可能性は低いですが、ジョイントテナンシーについては、拠出割合と帰属割合が合致していない場合には購入時点で贈与税課税の対象となるのです。

ジョイントテナンシーの詳しい解説は、ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点をご参照ください。

ジョイントアカウント(共同名義口座) 相続税、贈与税はどうなる?の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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