海外不動産を相続して売却した場合の税金|FIRPTA・外国税額控除を徹底解説

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国際相続

海外不動産を相続して売却した場合の税金|FIRPTA・外国税額控除を徹底解説
10秒でわかる この記事の要約
・日本居住者(非永住者以外)が海外不動産を売却した場合、日本で譲渡所得税がかかる(全世界所得課税)
・米国不動産売却時はFIRPTA(外国人不動産投資税法)により売却代金の15%が源泉徴収される
・現地で支払った税金は外国税額控除で日本の税金から控除可能(ただし上限あり)
・相続した不動産を相続開始の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却すれば「取得費加算の特例」で節税できる

「相続したハワイのコンドミニアムを売却したいけど、税金はどうなるの?」

このようなご相談を多くいただきます。

結論から言うと、日本での譲渡所得税に加えて、現地でも源泉徴収されるため、手取り額は想定より少なくなることがほとんどです。

しかし、適切な手続きを踏めば、外国税額控除により二重課税を調整できます。

今回は、相続した海外不動産を売却した場合の税金について、当事務所の実務経験をもとに詳しく解説します。

海外不動産の相続税評価については「海外不動産の相続税評価の方法と注意点をわかりやすく解説」をご覧ください。

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海外不動産売却時の日本での課税

全世界所得課税の原則

日本の居住者(日本国内に住所を有する個人)は、国内・国外を問わず、すべての所得について日本で課税されます。

これを「全世界所得課税」といいます。

したがって、海外の不動産を売却して利益が出た場合、日本で譲渡所得税を申告・納付する必要があります。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得の基本的な計算式は以下のとおりです。

譲渡所得 = 売却価額 - (取得費 + 譲渡費用)

それぞれの項目について解説します。

売却価額は、実際の売却代金です。外貨建ての場合は日本円に換算します。

取得費は、被相続人が不動産を購入した際の金額(建物は減価償却後)です。取得費の詳細は「取得費(譲渡所得)をわかりやすく徹底解説!」をご参照ください。

譲渡費用は、仲介手数料、登記費用、弁護士費用などの売却に要した費用です。「譲渡費用とは? 項目ごとに該当するかどうかを一覧解説」で詳しく解説しています。

所有期間による税率の違い

不動産の譲渡所得は、所有期間により税率が異なります。

相続した不動産の場合、被相続人の取得日を引き継ぎます。

区分 所有期間 税率(所得税+住民税)
長期譲渡所得 売却年の1月1日時点で5年超 20.315%
短期譲渡所得 売却年の1月1日時点で5年以下 39.63%

譲渡所得税の計算方法の全体像は「土地建物を売ったときの税金(譲渡所得)の計算方法を徹底解説」をご覧ください。

米国不動産売却時のFIRPTA源泉徴収

米国の不動産を売却する場合、FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act:外国人不動産投資税法)により、売却代金から源泉徴収が行われます。

FIRPTAとは

FIRPTAは、非居住外国人が米国不動産を売却した際に、売却代金の一定割合を源泉徴収する制度です。

重要なのは、源泉徴収は「譲渡益」ではなく「売却代金の総額」に対して行われる点です。

つまり、たとえ売却損が出ていても、売却代金から一定額が差し引かれます。

FIRPTA源泉徴収率

売却価額 源泉徴収率
30万ドル以下(買主が居住用に使用) 免除
30万ドル超100万ドル以下(買主が居住用に使用) 10%
上記以外 15%

例えば、100万ドルで売却した場合、15万ドル(約2,250万円)が源泉徴収されます。

ハワイ州の追加源泉徴収(HARPTA)

ハワイ州で不動産を売却する場合、FIRPTAに加えてHARPTA(Hawaii Real Property Tax Act)による州税の源泉徴収も発生します。

HARPTAの源泉徴収率は売却価額の7.25%です。

したがって、ハワイの不動産を売却した場合、合計で22.25%(FIRPTA 15% + HARPTA 7.25%)が源泉徴収されることになります。

源泉徴収された税金の還付

源泉徴収額が実際の税額を上回る場合は、米国での確定申告(Form 1040-NR)により還付を受けることができます。

米国での申告については、現地の会計士(CPA)に依頼するのが一般的です。

外国税額控除による二重課税の調整

海外で課税された税金は、一定の範囲で日本の所得税から控除できます。
これを外国税額控除といいます。

外国税額控除の仕組み

日本と米国の両方で課税される場合、以下の流れで二重課税を調整します。

1. 米国で不動産を売却し、キャピタルゲイン税を支払う(または源泉徴収される)
2. 日本で譲渡所得税を計算する
3. 外国税額控除により、米国で支払った税金を日本の税金から控除する

控除限度額の計算

外国税額控除には上限があります。以下の算式で計算した「控除限度額」が上限となります。

控除限度額 = その年の所得税額 × (調整国外所得金額 ÷ その年の所得総額)

例えば、日本の所得税額が500万円、総所得が2,000万円、そのうち海外不動産の譲渡所得が1,000万円の場合:

控除限度額 = 500万円 × (1,000万円 ÷ 2,000万円) = 250万円

この場合、米国で支払った税金のうち250万円までが控除できます。

控除しきれなかった場合

外国で支払った税金が控除限度額を超える場合、超過分は翌年以降3年間繰り越すことができます。

ただし、繰越しても控除しきれないケースもあり、完全に二重課税が解消されるとは限りません。

為替換算の方法

海外不動産の売却では、外貨建ての金額を日本円に換算する必要があります。

換算レートの選択

譲渡所得の計算における外貨換算は、以下のレートが認められています。

取引 換算レート
売却代金(収入金額) 売却日のTTM(仲値)またはTTB(買相場)
取得費 取得日のTTM(仲値)またはTTS(売相場)
譲渡費用 支払日のTTM(仲値)またはTTS(売相場)

※原則は取引日のTTM。直ちに円転した収入はTTB、直ちに外貨化して支払った費用はTTSで計算できます。

相続により取得した不動産の取得費は、被相続人が購入した時点のレートで換算します。

為替差益・為替差損の取扱い

外貨建て不動産の売却では、為替変動による損益も譲渡所得に含まれます。

例えば、1ドル100円の時に100万ドルで購入した不動産を、1ドル150円の時に100万ドルで売却した場合:

・購入時:100万ドル × 100円 = 1億円
・売却時:100万ドル × 150円 = 1.5億円
・譲渡益:5,000万円(為替差益)

ドル建てでは売却損益ゼロでも、円建てでは5,000万円の譲渡益が生じます。

相続税の取得費加算の特例

相続した不動産を売却する場合、取得費加算の特例を活用することで節税が可能です。

特例の概要

相続により取得した財産を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。

取得費に加算できる金額 = その人の相続税額 × (売却した資産の課税価格 ÷ その人の取得財産の課税価格合計)

具体例

・相続税額:3,000万円
・取得した財産の課税価格合計:1億円
・そのうち売却した海外不動産の課税価格:4,000万円

取得費加算額 = 3,000万円 × (4,000万円 ÷ 1億円) = 1,200万円

この1,200万円を取得費に加算できるため、譲渡所得が1,200万円圧縮され、税負担が軽減されます。

取得費加算の特例の詳細は「相続税の取得費加算の特例をわかりやすく徹底解説」をご参照ください。

特例適用のポイント

売却時期が重要です。相続税申告期限から3年を経過すると、この特例は使えなくなります。

海外不動産は売却に時間がかかることが多いため、早めに売却準備を進めることをお勧めします。

米国以外の国での課税

イギリス

非居住者がイギリスの不動産を売却した場合、キャピタルゲイン税(CGT)が課税されます。税率は基本税率納税者で18%、高税率納税者で24%です。

イギリスの相続については、イギリスの相続とプロベート制度を徹底解説【税理士解説】をご参照ください。

オーストラリア

非居住者がオーストラリアの不動産を売却した場合、CGT(キャピタルゲイン税)が課税されます。
オーストラリアには50%のCGT割引制度がありますが、非居住者には適用されません。
なお、外国居住者の不動産売却で買主側の源泉(FRCGW)が入り得ます。2025年1月1日以降は15%が適用される旨が案内されています。

オーストラリアの相続については、オーストラリアの相続手続きを完全解説|プロベート・税金・回避策【税理士解説】をご参照ください。

シンガポール

シンガポールはキャピタルゲイン税はありませんが、住宅はSSDがあり、2025年7月以降に購入した物件は保有期間が4年に延長、税率も引上げされています。

シンガポールの相続については、シンガポールの相続手続き完全マニュアル【税理士が実務ポイントを解説】をご参照ください。

申告手続きの流れ

日本での申告

海外不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までに、確定申告を行います。

必要書類は以下のとおりです。

・売買契約書(原文と日本語訳)
・決済明細書(Settlement Statement等)
・取得時の契約書・領収書
・譲渡費用の領収書
・外国税額控除の証明書(現地での納税証明書等)
・為替レートの根拠資料

外国語書類の翻訳

海外の書類は、主要部分の日本語訳を添付する必要があります。
税務署から求められた場合に備え、翻訳文書を準備しておきましょう。

翻訳・認証手続きについては「相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説【海外提出用書類の準備】」をご参照ください。

よくある質問

Q1. 海外不動産を売却したら、どの国で申告すればよいですか?

日本居住者の場合、日本と現地の両方での申告が必要になることがほとんどです。日本では確定申告で譲渡所得を申告し、現地では不動産所在地国のルールに従って申告します。現地での申告は、現地の会計士に依頼するのが一般的です。

Q2. 被相続人の取得費がわかりません。どうすればよいですか?

取得費が不明な場合は、売却価額の5%を概算取得費として使用できます。ただし、これは実際の取得費より低いことが多く、税負担が大きくなります。購入時の契約書、送金記録、不動産会社への問い合わせなど、あらゆる方法で取得費の資料を探すことをお勧めします。

Q3. FIRPTAで源泉徴収された税金は、日本の税金から控除できますか?

はい、外国税額控除の対象となります。ただし、源泉徴収額がそのまま控除できるわけではなく、米国での確定申告により確定した税額が控除対象となります。源泉徴収額が実際の税額を超える場合は、米国で還付申告を行うことで差額が戻ってきます。

Q4. 海外不動産の売却損は、他の所得と損益通算できますか?

不動産の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できません(土地建物等の譲渡損失の損益通算の制限)。ただし、国内の居住用財産を売却した場合の特例は、海外不動産には適用されませんのでご注意ください。

Q5. 売却代金を日本に送金しないと、日本で課税されませんか?

いいえ、送金の有無に関わらず課税されます。日本の居住者は全世界所得に対して課税されるため、海外で不動産を売却し、代金を海外口座に置いたままでも、日本での申告・納税義務があります。

まとめ:海外不動産売却は事前シミュレーションが重要

相続した海外不動産の売却は、日本と現地の二国間で課税関係が発生するため、複雑です。

海外不動産売却時のポイント
□ 日本では全世界所得課税により譲渡所得税がかかる
□ 米国ではFIRPTA(+HARPTA)により売却代金から源泉徴収される
□ 外国税額控除で二重課税を調整できる(ただし上限あり)
□ 取得費加算の特例は期限要件に注意
□ 為替換算の方法により税額が変わる

売却前に、日本での税金、現地での税金、手取り額のシミュレーションを行うことが重要です。

当事務所では、海外不動産の相続から売却まで、一貫してサポートしております。
海外不動産の売却をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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